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上級者向け 受験マニアックス

2024年2月号 広い世界に目を向けよう

グローバル化が進み、変化し続ける現代社会。将来活躍するためには、狭い世界にとどまらず、世界に目を向けた行動をすることが必要となります。そのための土台となるのが、中学・高校時代の過ごし方。今回の受験マニアックスでは、自身と世界をつなげるための第一歩となる中高一貫教育の特長について、具体例を交えて紹介します。

チャンスが縮小する国内と、無限の可能性が広がる海外

下のグラフは、日本の総人口のこれまでの推移、これからの推計を表したもので、2023年の推計です。

  • 出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ(https://www.ipss.go.jp/)のデータを元に作図。
 日本の人口の推移と将来推計

日本の人口は第1回国勢調査が行われた大正時代から増加し続けてきましたが、2010年前後にピークを迎え、現在は減少に転じています。少子高齢化が進んでいることもあり、今後も減り続けると推定されていて、マスコミでは2056年には1億人を切ると報じていますが、これはグラフの「出生中位」の場合。現在のように、出生数が政府の予測を下回る状態が続けば、「出生低位」のようにもっと早くに1億人を切るか、場合によってはさらに早まるかもしれません。2056年というと、現在中学受験に臨んでいる小学6年生は40台半ば。子育てにお金がかかっている時期でしょう。

人口が減ると国内の経済規模が小さくなります。特に「もの」を売るビジネスでは需要自体が減るからです。日本国内だけで完結するビジネスは、業種による違いはあっても全体としては縮小していくのではないでしょうか。国内で稼げないなら、当然海外で稼ぐことが生活水準を維持するために必要になります。これからの社会を考えるとき、国内だけの狭い世界にとどまらず、積極的に海外に目を向け、言語、文化、生活習慣などが異なる人々と協働することが求められます。当然、「空気が読めない」のが当たり前の人々とのコラボです。こうした場では、自分自身を積極的にアピールし、グローバルにチャンスを広げていくことが必要になります。

前向きさと好奇心と「ちょっとした勇気」で世界に飛び出したある生徒の例

世界を舞台に活躍するのに、「若すぎる」ことはありません。ある中高一貫校に通う生徒の例を紹介しましょう。

その生徒は中学2年の時に起業して講演会主催や動画編集を行う会社をつくり、高校1年の時に交換留学でカナダに渡航しました。現地の高校では地元をPRする動画作成に携わり、教師や生徒、地元の人々と交流を深めました。1年間で帰国する予定でしたが、帰国前になって周囲から留学費用の減免などの特別な条件で、「高校卒業までいてほしい」と誘われました。活動が周囲の人々に評価されたからです。ただ、交換留学と違って私費留学は高額です。特別な条件ならば、ということで保護者も了解し、カナダの高校で学び続けています。卒業後はカナダで新しいビジネスを始めるアイデアがあるということで、それに向けた勉強にも取り掛かっています。

「中学生で起業」「特別な条件で留学」「海外で新ビジネス」などと聞くと、自分たちとは違う世界の話だと感じる方も多いかもしれません。ですが本人は、「私はずば抜けた取り柄があるわけでも、頭がいいわけでもない。絵に描いたような一般人です」と話しています。筆者も、Web会議ツールを使ってその生徒と話したことがありますが、「エリート」「秀才タイプ」ではなく、親しみやすい素朴な雰囲気の「どこにでもいそうな普通の高校生」という印象を受けました。ただ、失敗してもいいからやってみよう、という前向きさ、失敗したらやり直せばいい、というおおらかさ、そして未知の世界への好奇心は、人一倍持っていると感じました。

この生徒のケースは、「ちょっとした勇気」で交換留学に行き、地元の活動に携わって、それをきっかけに人間関係が広がり、さらに次のステップへと進んでいるわけです。海外で活躍などというと、別世界のように感じますが、「ちょっとした勇気」を持って広い世界に飛び出せば、さまざまな可能性が広がっていくことを体現してくれています。

「模擬国連」などの取り組みで、世界に目を向ける

中高一貫校には、先進的なグローバル教育に力を入れているところがたくさんあります。前段のように長期の海外留学に行くことは費用面でも手続き面でもハードルが高いかもしれませんが、日本にいながらにして世界を知ることができる取り組みもいろいろと展開されています。

その一つの例が「模擬国連」です。模擬国連とは、大学生や中高生がさまざまな国の大使になりきって国会を模した会議を開き、特定のテーマについて議論して決議を出すという取り組みです。中高生の部では、首都圏の中高一貫校が中心になって共同開催したり、予選を突破した学校が集う全国大会が開かれたりしています。中高一貫校の中には“模擬国連部”がある学校もあり、全国大会を目指して世界情勢のリサーチやスピーチ練習に日々取り組んでいます。

模擬国連ではランダムに担当国を割り振られ、その国の歴史や文化を調べた上で、その国の大使として責任ある発言をする必要があります。日本人にとってほとんど馴染みがない国の担当になった場合は、その国の大使館のホームページを英語で読み解き、情報を得ることもあるそうです。さらに、スピーチ力、プレゼン力、交渉力、幅広い視野なども求められます。議事の進行やスピーチを英語で行う大会の場合は、語学力も必須となります。日本にいながら世界について深く考えることができ、グローバルな視野を身につけられる取り組みだといえるでしょう。

筆者が見学した先日の模擬国連会議では、災害リスクの軽減をテーマに議論が繰り広げられていたのですが、チームに分かれた議論の中で、とても印象的な発言がありました。決議文の案に、災害弱者になりがちな女性への配慮がうたわれていて、イスラム圏の国の担当になったある女子生徒が、「『女性』と特定しての配慮を求める文言は、宗教上認められない」といった趣旨の発言をしたのです。もちろんこれはその生徒自身の考えではなく、担当国について深くリサーチした上で「この国の大使ならこう言うだろう」と考えて発言したものでしょう。日本や欧米の価値観では常識や正義だと思われていることも、国によっては非常識や、宗教上認められない内容になることがあります。当然、イスラム教の国でも、国によってこうした問題への対応にも濃淡があります。生徒たちは模擬国連を通じて、世界には多様なものの考え方があることを知り、世界を分析する目を養っていくのです。

模擬国連は中学・高校時代に世界に目を向ける取り組みの一つの例ですが、中高一貫校では他にも、短期の海外研修がカリキュラムに組み込まれていたり、海外を再現した英語オンリーの施設で宿泊体験をしたり、外国人教員が副担任になったりと、グローバルな視野を育む取り組みが色々と展開されています。

 大妻中高で開催された模擬国連会議
 大妻中高で開催された模擬国連会議
 大妻中高で開催された模擬国連会議

2023年12月26・27日に大妻中高で開催された模擬国連会議。
今回は防災をテーマに、37校から約400名が参加しました。

良質な中高一貫校への入学が、世界に目を向ける第一歩となる

中高一貫校の特長に、「高校受験がない分、好きなことにじっくり打ち込める時間がとれる」「高校受験に縛られず、多彩な体験の取り組みや枠組みにとらわれないカリキュラムが実施できる」「中学1年から高校3年までの幅広い年齢層の個性豊かな生徒が在籍していて、お互いによい刺激を与え合える」といった点があります。前述した生徒も、「私はごく普通の小学生だった。でも、中高一貫校に入学して学校生活を送るうちに、やりたいことを見つけることができた」と振り返っています。良質な中高一貫校に入学して視野を広げる学びを享受することは、広い世界に目を向けるための第一歩だといえるでしょう。特に、世界を舞台に自由な活躍をしていたり、模擬国連に熱心だったりする先輩がいることは、世界と自身のつながりを感じたり、「自分も挑戦したい」と勇気を持つための、よいきっかけとなるでしょう。

お子さんのグローバルマインドを育み、世界に目を向けて活躍する将来を積極的に切り開く。そんな前向きで楽しい意識を胸に、親子で中学受験に臨んでいただければと思います。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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