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上級者向け 受験マニアックス

2021年4月号 2021年度中学入試の出題傾向

この記事は2021年度の情報です。最新の情報は2023年4月号をご覧ください。

今回の受験マニアックスでは、2021年度中学入試の出題傾向を教科ごとに紹介し、来年度に向けての対策などを考えてみます。

国語

基本的な出題パターンの「長文は物語文などと説明的文章が各1題+知識事項を中心とする小問」は、今年も多くの学校で踏襲されました。随筆は少し出題が減ったほか、昨年は増加が目立った表やグラフを読み解くような教科横断型の出題も少し減っています。こちらは、昨年の揺り戻しでしょう。ここの設問では、知識やテクニックだけで解答できる出題よりも、自分自身の経験や考えを求められるような出題が目立っています。

長文の出題テーマは多様化しています。昨年目立ったのは「言語」や「コミュニケーション」に関連したテーマでしたが、今年は「自然環境」に関連したテーマが増えました。また「子どもたちに現代社会について考えてほしい」という学校側のメッセージのあらわれか、「格差」や「少子高齢化」、あるいは病人や障害者など「社会的弱者への対応」をテーマにした出題が増加傾向にあります。さらに、コロナ禍ということもあり、社会の閉塞感といった部分にも踏み込むケースが多く見られます。昨年も「離婚」や「夫婦の問題」など「子どもには難しいのでは?」と思うテーマの出題がありました。子どもに対して、大人が避けがちになるテーマでも、他人事として捉えるのではなく、身近な生活にも影響がある問題ということを「12歳なりに受け止める力」を学校側は求めています。

昨年同様に選択肢の出題の文章が長くなる傾向が見られます。なかには選択肢がそれぞれ100~200文字程度あるような出題もあり、全てに目を通さなければ答えられない時間のかかる問題です。長文の選択肢は、前年の正解率によって文字数を調整しているように思われる学校もありました。一方、「正しいものを全て選びなさい」といった複数選択型出題も、全体としては増えていますが、こちらも難度調整で出題したりしなかったり、といった変化も見られます。

記述問題では、自分の経験や考えを交えて答えるような問題が増えています。簡単な例ですが、「緊急事態宣言が発出され、多くの人々の行動や生活のパターンが変わりました。こうした変化の中で、あなたが困ったことは何ですか?」といった出題の場合、「休校になって図書室の本が借りられなくなって困った」や「動画の授業を見るためのタブレットがインターネットにうまくつながらずに困った」といった、自分自身のことを解答する必要があります。「あなたが困った」という部分をしっかり読み込まずに、「テレワーク」など、テレビ等で耳慣れたキーワードを並べても、自分自身が経験していないことならば得点になりません。

社会問題や夫婦の問題など、子どもには難しいのでは、と大人が避けがちになるようなテーマについての出題も、大人が考えるような幅広い知識や豊富な経験に裏付けられた高度な解答を学校側が求めているのではなく、12歳なりの視点や自分の経験に基づいた捉え方をした解答を期待しています。日頃から、自分なりの考えを文章で表現する練習を積んでおきましょう。

算数

中学入試でよく見られる国語・算数・理科・社会の4科目では、最終的に算数の得点が合否を分けるケースが多くなります。理由の一つは、小問の設問数が少ないことです。設問の数が少なければ1題あたりの配点が高くなりがちです。特に注意したいのは、小問の(1)の結果を使って(2)を解く、(2)の結果を使って(3)を解く、といった連続問題の場合です。多くの場合、(1)はあまり難しくなく、基本的ですが、ちょっとした計算ミスや勘違いなどで(1)を間違えると(2)や(3)は正解せず、あっという間に15点くらいの差がついてしまいます。また、そもそも算数が苦手という受験生が多いのも現実です。こうしたことから、どうしても算数のウエイトが高くなってしまいます。

実際、毎年の出題では算数の難度の調整に手間をかけている学校は少なくありません。難しすぎると受験生が得点できませんから、合格者と不合格者の差がつきにくくなります。逆に、やさしすぎてもやはり差がつきにくく、合否判定の時に困ることになります。今年の各校の受験者の平均点をみると、開成や白百合などで平均点の上昇が目立ちました。例年通りに出題したつもりでも受験生の学力層が上昇して平均点が上がった学校もあれば、特に今年は新型コロナウイルス感染症の拡大により学習が遅れた受験生を意識して難度をセーブした学校もありました。

平均点が高い場合、多くの受験生が前の年より高得点になっています。こうした出題に接した受験生のなかには、「やった! 解けた! 順調!」と、手応えを感じながら入試に臨んでいた受験生も多かったのではないかと思います。でも、「あなたが手応えを感じた」ことは、「他の受験生も手応えを感じて」います。平均点が上がるということは、それだけ点数が取れやすくなり、結果的にケアレスミスの差が合否を分けることにつながります。手応えを感じたときこそ、ケアレスミスには注意しましょう。

近年の傾向ですが、図形や表、グラフに長い文章が与えられた問題が目立ちました。しっかりと条件を把握し、手順を踏んで解答することが求められています。また昨年同様に、複雑な平面図形や立体図形を組み合わせて長さや面積を求める問題、立体の切断面についての問題、点が移動するなど状況が変化していく問題などが今年も多く出題されました。難しく苦労する問題もありますが、難易度は比較的安定傾向です。全体的に難化傾向だったのが、整数の性質です。こうした問題も、手間をかけて作業していけば解答に結びついていきます。

算数の難問に立ち向かうには、日々の基礎基本の練習と同時に、自分で工夫して問題を解く力を身につけることが大切です。図形の問題などでは、さまざまなパターンが出題されます。受験生の立場だと、「また新しいパターンが出てきた」と感じるでしょう。これらをすべて解法として覚えようとすると、きりがありません。塾の教材や志望校の過去問を通じて、ある程度の量をこなすこと、つまり「解いた経験を積む」ことの中で、「この問題はこう解くのだ」と、その問題単独で捉えるのではなく、共通する「コツ」を見出し、それを身につけるようにしてください。そのためには、自分であれこれと試し、工夫することが大切です。前述の「そもそも算数が苦手」である受験生は、自分で工夫する力が不十分であることが少なくありません。日々の基礎基本の練習とともに、いろいろな問題を工夫して解くなかで、解き方のポイントや感覚がつかめるはずです。受験生の皆さんには、ぜひ受け身ではなく、時間をかけて能動的に勉強を進めていただきたいと思います。

理科

物理・化学・生物・地学など、さまざまな分野から満遍なく出題されます。基本事項と各分野の定番問題をしっかりと確認することも大切ですが、知識の背景までしっかりと覚えておきたいものです。最近では、カラーで出題される問題もあり、名称ではなく写真を選ぶ問題もあります。代表的な事例では、青紫色に変化する「ヨウ素デンプン反応」の問題の場合、青紫色という言葉だけを覚えるのではなく、実際に写真を選ぶことができるような練習を日常的にしておきましょう。

毎年、時事問題は出題されます。今年は「新型コロナウイルス」をはじめとして、「はやぶさ2」、「ゲリラ豪雨」、「マイクロプラスチック問題」などが出題されました。また千葉県の学校を中心に、新たに認定された地層「チバニアン」などがあります。さらに最近注目されている「リチウムイオン電池」や「燃料電池」なども取り上げられました。

地学分野で目立ったのは、桜蔭で出題された江戸時代の「不定時法」です。現代と違い、江戸時代は日の出と日没によって、時間の間隔を決めていたため、季節によって、昼と夜の時間の長さが変わります。そうした時間に関する問題が出題されました。

全体的には今年も基本的な問題が多く出題されているため、基礎基本を日々の勉強でしっかりと押さえられていれば、合格最低点を取ることはできるでしょう。そして、知識の背景や根拠を踏まえて、自分の考え方を記述する力をつけることが、さらに合格へ近づけるポイントとなります。国語や算数と同様に、応用問題あるいは知らない知識の出題でも、自分の持っている基礎知識と組み合わせて、問題に対応していくことが大事になってくるでしょう。

社会

今年はやはりコロナ禍により、社会の問題が特にハードになったという声が多く挙がりました。しかし、全体の設問を見ると、極端に難しくなったわけではありません。特徴としては、細かな知識を問う問題が減少しました。

全体的な傾向として、記述問題は例年通り増加傾向です。今年は特に原因や理由を答えさせる問題が多くありました。 また理科にも同様のことが言えますが、グラフや表を読み取る力が求められています。グラフや表に示されていない範囲を含めて知識として解答すると正解にならないケースも見られました。知識よりも「グラフや表から読み取れること」、つまり、正確に解釈する力を求めているわけです。さらに最近では、例えば東海道五十三次の浮世絵のように、グラフや表だけではなく、さまざまな種類の図や資料が問題に登場しています。また古い時代の資料として、江戸時代以前だけでなく、明治期の資料が扱われる出題も見られました。

時事問題については、今年は新型コロナウイルス感染症に派生するテーマが非常に多く出題されました。感染症そのものから、医療の歴史、感染症治療に関わった人物、疫病と宗教などです。さらに身近なテーマとして「ロックダウン」や「時短営業」、「休業協力金」、「Go To トラベル」などを扱った学校も多く見られました。その他には「消費税」、「キャッシュレス決済」など経済に関わるテーマ、また「オリンピック延期」や「SDGs」に関連する問題が目立ちました。

他の科目同様、知識として覚えることはもちろん大切ですが、あらゆることを覚えるのは不可能です。今求められている力は、社会の変化や新しい物事に対して、自分がどう受け止めるか、それをどのように表現するか、ということです。例えば筑波大駒場では「自転車の事故を防ぐにはどうすればいいですか?」といった子どもたちの常識で判断できる出題がありました。こうした問題は知識として覚えるものではありません。感染症やSDGsなどの大きなテーマでも、知識だけで答えるのではなく、自分の常識から判断し、自分なりの考え方を伝えることが必要です。与えられた状況を読み取った上で、常識に合わせて判断していく、その際、必要な常識の部分の基礎知識をしっかり学び、応用していくことで、入試問題にも対応することができるでしょう。

子どもには重たいと感じられるテーマもありますが、世の中で起きていること、社会の最新事情に関しての感度を高めておきましょう。繰り返しになりますが、小学6年生なりの視点から自分の意見、考え方を日常的に持つトレーニングをすることが合格への近道となります。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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