上級者向け 受験マニアックス
2022年4月号 2022年度中学入試の出題傾向
この記事は2022年度の情報です。最新の情報は2023年4月号をご覧ください。

今回の受験マニアックスでは、2022年度中学入試の出題傾向を教科ごとに紹介し、来年度に向けての対策などを考えてみます。
国語
例年、長文問題の出題テーマは多様化しています。今年は「友情」に関連したテーマが増えました。さらに昨年は目立たなかった「言語」や「コミュニケーション」といった出題テーマが再びトレンドとなっています。その他にも「社会問題」「科学技術の進歩」「環境問題」などの出題テーマも目立ちました。また、小学6年生には難しい用語や漢字、あるいは出題される文章の内容を理解するための土台の知識が必要かもしれない、と思いたくなるような問題が目立ってきました。例えば、ある男子校では落合陽一の著書『働き方5.0: これからの世界をつくる仲間たちへ』からの出題があり、コンピュータやAIに関連した用語も多く見られました。ある女子校ではカール・マルクスの『資本論』の解説書からの出題もありました。「クリエイティブ・クラスと非クリエイティブ・クラス」、「富が集まるクラス(階級)と集められないクラス」といった、社会の格差や矛盾を捉えてもらいたいという姿勢の表れでしょう。小学6年生には難しいと感じられる文章で、実際、受験生がこうした問題をすべて知識として学んでカバーすることはまず難しいと思います。学校側もそれは期待していなくて、むしろ文章を読んでその場で考えさせたいと思って出題しているはずです。ですから、少々難しい用語などがあっても、全体像を掴んで判断する読解力が求められていると考えられます。
長文問題以外の設問で目立ったのは、新聞コラム程度の文量の二つの文章による問題です。二つの文章の共通点、あるいは二つの文章から導き出せる結論を問われるといった内容です。また、昨年同様に選択肢の出題の文章が長くなる傾向が見られます。なかには選択肢がそれぞれ100〜200文字程度あるような出題もあり、全てに目を通さなければ答えられない時間のかかる問題です。昨年からの変化として選択問題の解答の複数選択化が挙げられます。いくつか選択肢のある問題の中から正解を一つ選ぶのではなく、「正しいものを全て選びなさい」というパターンが増えてきました。
増加傾向のある設問としては、あるテーマに対して、自分自身の考え、あるいは経験をもとにした回答が求められる問題です。出題テーマの中にはオリンピック・パラリンピックに関連して「あなたが日本代表チームの監督ならば、どのような作戦で試合に臨みますか」というような問題もありました。こうした問題には模範解答を作ることができません。日頃から自分の考えや経験を文章で表現するトレーニングが大切です。さらに、今までの「国語」という概念から外れるような出題、教科横断型の出題が増えていることもあり、これまでのような縦書きの文章の読解だけではなく、アンケート集計結果の経年変化などのグラフや図、あるいは地図や4コマ漫画などさまざまな題材・分野の読解も増加しつつあります。
算数
難関・上位校を中心に、近年注目されている「データサイエンス」に関連した論理や統計分野からの出題が目立ちました。また、昨年同様に、場合の数や数字の規則性などの出題も増えています。中堅校などでも、そうした分野の出題は増えていますが、全体としては割合、速さ、平面図形、立体図形などの分野からの出題がやはり定番となっています。
数列や場合の数の問題、平面図形をはじめとする図形問題などが今年も多く出題されています。それぞれ昨年よりもバリエーションが広がっており、難化傾向にあります。場合分けで例を挙げると「すごろくを使ってある地点まで進む場合、何通りの行き方があるか」といった問題があります。この場合はしっかりと手を動かして、その状況を書いていくしかありません。最後まで粘り強く取り組む力が問われているといってよいでしょう。また、つるかめ算や時計算などの定番の特殊算を応用した問題や連続する整数の和を応用した問題などが例年に引き続き今年も多く見られました。目立った出題としては、ある事象について理由を説明させる問題です。例えば「何匹もの魚が放してある大きな水槽の中に印をつけた魚がどのくらいいるのか」といった割合から答えを推測するようなデータサイエンス分野にも通じる内容となっています。
立体図形の問題では「立体図形の影」をテーマにした問題が以前よりも増加傾向にあります。こうした問題は影の部分を平面図形に置き換え、実際に作図して答えを導き出します。場合分けの問題同様に、しっかりと手を動かして取り組む姿勢が問われているといえるでしょう。こうした出題に取り組むには、割合、速さ、平面図形、立体図形などの定番分野をしっかりと身に付けることが非常に大切です。日々の基礎基本の練習とともに、いろいろな問題を解く経験を積むなかで、着眼点のポイントや感覚がつかめるはずです。
理科
物理・化学・生物・地学など、さまざまな分野から満遍なく出題されます。基本事項と各分野の定番問題をしっかりと確認することも大切ですが、知識の背景までしっかりと覚えておきたいものです。
毎年、時事問題は出題されます。今年は昨年に引き続き「新型コロナウイルス感染症」のほか、自然災害や環境問題に関連したテーマからの出題が目立ちました。注目は新型コロナウイルス感染症がどのように問題文で取り扱われているかです。いわゆる中学受験の理科の教材では扱われていない「ウイルスの性質」を問われるケースがありました。ただし、これは知識として問われているわけではありません。国語同様に図やグラフが含まれた長文を読解することで答えが導き出せるようになっています。とはいえ、動植物の体のつくりや各部の働きなどの基礎基本の知識は大切です。ウイルスも、こうした生物の体の仕組みや働きと関連させて取り上げられる出題もあるからです。知識に基づいた読解力、思考力が求められています。
また、グラフ問題や計算問題、実験の手順や結果について記述で説明する問題などは今年も非常に多く出題されています。計算問題は力学分野や化学分野では頻繁に出題されます。こうした出題は日頃からのトレーニングが大切です。また、算数同様に与えられた条件に対して、自分でグラフを作って整理するなど、実際に試してみることが求められています。
生物分野でも、植物や生き物などあらゆるものが題材となります。都会に住んでいる場合は難しいかもしれませんが、なるべく受験学年に入る前に実際の自然に触れる機会を持つことをおすすめします。直に触れたときの感動や感覚が知識をつける際には必ず役に立つことでしょう。
社会
全体的な傾向としては、難問奇問と言われるような出題はほとんどありません。その上で目立った出題となったのは、国語同様に選択問題の解答の複数選択化です。答えが一つだけではなく、複数選ぶ必要があるため、しっかりとした知識が求められます。
また、記述問題は例年通り増加傾向です。1行や2行程度の文量で特に原因や理由を答えさせる問題が多くあります。 また他教科と同様にグラフや図などの資料を読み取る力が求められています。知識よりも「グラフや図から読み取れること」、つまり、正確に解釈する力が求められています。例えば「東京都、金沢市、岡山市の3つの都市の雨温図を読み解く」といった出題だと、従来はそれぞれの都市のグラフ(それも定番の雨温図)が並べて提示されて、それに対して設問があるのが一般的でしたが、3つの都市のグラフを1つにまとめて、定番なら棒グラフで表示されるグラフを、あえて折れ線グラフとして、その相違を見つけさせるような出題も見られました。図のパターンだけを覚えるのではなく、しっかりと与えられた資料の本質を理解することが大切です。
時事問題については、やはり今年も新型コロナウイルス感染症に派生するテーマが非常に多く出題されました。その他のテーマには「核兵器の廃絶」、あるいは「再生可能エネルギー」などSDGsに関連する問題が目立ちました。また「ミャンマー問題」や「バイデン政権の誕生」などの政治に関連するテーマもありました。いずれの出題も、やはり知識として覚えることはもちろん大切ですが、与えられた解説文やグラフや写真などを読み解き、自分の常識から判断し、自分なりの考え方を伝えることが必要です。
社会だけに限らず、他教科でも時事問題は出題されています。「衆議院選挙」「岸田政権の誕生」などの政治ニュースから「オリンピック・パラリンピック」「地球温暖化研究によるノーベル賞物理学賞の受賞」といった華々しいニュースまでさまざまなテーマがある一方、ある学校では「国債の発行残高」についての時事問題が問われました。地味なニュースかもしれませんが、時事問題集の中にはしっかりと紹介されています。大きなニュースばかりが印象に残ってしまいますが、こうした小さなニュースも取りこぼさずに注目してもらいたいと思います。もちろん前述した通り、出題としては解説文やグラフや図などをしっかりと読み解けば、解答することは可能です。しかし、一度目を通しておくことで理解がより深まり、安心して問題に取り組むことができます。繰り返しになりますが、小さくても大事なニュースを見過ごさずにチェックしていただきたく思います。
