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上級者向け 受験マニアックス

2017年12月号 新しいタイプの入試を突破するには

昨年12月の受験マニアックスでもお伝えしましたが、近年の中学受験では新しいタイプの入試が増えてきています。これは、「国語・算数・理科・社会の各教科ごとに、身につけた知識や技能を使って解答用紙を埋めていく」といった従来型の入試とは異なるもので、思考力・表現力・判断力・主体性・協調性などを発揮して、自分なりの工夫をして問題に臨んだり、答えが一つではないような出題に答えるといったタイプのものです。また、得意分野を生かす英語入試や1教科入試が増加してきたのも近年の傾向です。

今回の受験マニアックスでは、新しいタイプの入試が増えてきた背景とともに、突破するためにはどうしたらよいのかをご紹介します。

※新しいタイプの入試の詳しい種類と内容については、受験マニアックス2016年12月号もあわせてご覧ください。

新しいタイプの入試を突破するには

新しいタイプの入試が増えてきた背景

中学入試の形式は、時代とともに変遷しています。20年くらい前までは、その後の2教科や4教科がほとんどになった入試と違って、もっと多様で、作文や面接、1教科入試を実施している学校も見られました。しかし次第に国立大学志向が高くなってくる中で、中学入試を重量化しようという動きが進みます。センター試験で5教科7科目や8科目にわたってよい成績をおさめるためには、中学入学時点から、特に理科や社会でもっと知識を持っていないと、学力が上がりにくく、間に合わないのではないか、という風潮が生まれました。また、上位校から比較的入りやすい学校では、出題傾向の均質化も進みました。学習塾が指導方法をシステム化していく中で、多様で独特な入試よりも、画一的な入試を求めるようになってきたためです。なお、難関校は例外で、今も昔も変わらずに独自の入試形式を貫いているところが多くなっています。

重量化・均質化に傾いていた中学入試が変わってきたのは、7〜8年前のことです。その背景には中学受験の沈静化、つまり、中学受験生の数が減ってきたことが挙げられます。中学受験生を広く獲得するために、入試の形式が多様化したのです。また、これくらいの時期から公立中高一貫校が次々と開校して、それまでの中学入試のスタイルとは異なる適性検査型入試を行うようになりました。そこで、併願受験生獲得のために、私立中学校でも適性検査型入試が、特に東京で広がりました。さらに、経済界などから、グローバル化への対応力や、思考力・表現力・判断力・主体性・協調性などを持った人材の育成を教育機関に求めるようになり、そのために教育改革や大学入試改革が行われることになったことも背景にあります。

新しいタイプの入試は一つの選択肢

新しいタイプの入試が増えたからといって、必ず挑戦しなければいけないということはありません。新しいタイプの入試はまだ少数派で、従来型の入試が多数派です。公立一貫校や一部の国立中学校の適性検査型は別として、上位校や中堅校、中堅までの各校では、新しいタイプの入試しか用意していないわけではなく、従来型の入試も実施しています。入り口が色々と用意されるようになったと考えるとよいでしょう。学校側としても、努力して勉強を積み重ねて知識や技能を身につけた受験生、コツコツとした勉強よりは自由な発想や表現が得意な受験生、英語力やグローバルな視野を持った受験生など、さまざまなタイプの生徒を受け入れ、お互いによい刺激を与え合って成長してほしいと考えているのです。

志望する中学校に新しいタイプの入試があって、それが本人に向いていて合格の可能性が高いと思えば、積極的に挑戦していただければと思います。また、一つお伝えしておきたいのは、新しいタイプの入試を選んだからといって、中高6年間、さらにその先もずっとその路線で進んでいく必要はないということです。中学受験時に興味があったり得意だったことと、その先の学校生活や社会生活でやりたくなることが違ってくるのはよくあることです。

また、多くの学校では入試を複数回、さまざまなタイプで行なっていますので、強く志望する学校については、従来型の入試も新しいタイプの入試も組み合わせて、何回も挑戦するのもよいでしょう。

各タイプの入試の攻略法

1. 思考力型・表現力型・総合型

細かい知識や技能はあまり重視されず、自分で考えたり表現する力が求められるスタイルの入試です。新卒採用に例えると、「学歴よりも人物重視。今までの努力や勉強の履歴よりも物事を深く考える力や表現力を重視し、これからの伸びしろに期待する」といった感じでしょうか。

このタイプの入試でまず大切なことは、問題となる資料を読み取る力です。資料には、表、グラフ、インタビュー、元の資料から抜粋した文章などさまざまなスタイルがあり、見たことがある資料が出てくるとは限りません。初めて見る資料に入試で向き合って、ポイントとなる場所を見つけ、根拠を示しながら自分の意見を加えて解答することが求められます。

ある学校の出題例を紹介します。フランスとエジプトの、耕地面積とトラクターの台数の年次変化のグラフが与えられていて、そこから両国の農業の変化の違いを記述するものです。フランスの方がエジプトよりも農業機械の普及、機械化の進捗が早いことに気付けば正解です。難しいと感じるかもしれません。小学校の教科書はもちろんですが、塾のテキストにも、特にフランスとエジプトを対比させた耕地面積の変化や、トラクターの導入台数などのグラフなど、まず見ません。そんな問題を出題するなんて、と感じるかもしれませんが、「知識」としてフランスとエジプトの耕地面積やトラクター台数の変化、そして農業の機械化を知っていてほしいと考えて出題されたのではなく、グラフを見ながら相違点に気付き、それを文章で表現する力を求めて出題したわけです。

こうした出題に対応するためには、日常から色々な資料を読み、ポイントとなる部分や根拠を見つけ出して、自分の意見を一定の文字数で書く練習を積むことが大切になります。文章を書くといっても、自分の意見をただ書くだけではなく、元になった資料とリンクさせながら書く必要があります。塾の授業などを通して、レポート作成や報告書作成といった練習を積んでおくと、有利になるでしょう。

2.発想力型・判断力型

自由な発想や機転が求められるタイプの入試です。以下に2つの例を記します。

(1)漢字パズル
  • 「口」という字に2画足して、別の漢字をなるべくたくさんつくってください。
  • (解答例)田、由、四、石、右、兄、只、叶、目、古、占 など
(2)計算パズル
  • 2を4つ使って10を作ってください。
  • (解答例)2×2×2+2=10

このタイプの問題を解くために大切なのは、普段からパズルやクイズを解いて頭の柔軟性を保つことです。大人からみると「難しい」と思いがちですが、意外と子どもの方が自由な発想でポンポンと答えを出したりもします。受験生本人にも、楽しみながら練習に取り組むような環境を用意するとよいでしょう。

3.プレゼン型・自己アピール型

このタイプは2つのパターンに分かれます。一つ目は、自分の得意なことや好きなことを表現するパターンです。この場合は事前に準備ができますので、これまでやってきた得意なこと・好きなことについて、いつからどうして始めたのか、今はどこまで到達しているのか、楽しかったことやうれしかったことは何か、辛かったことは何か、これからの目標などをしっかりとまとめて、話せるようにします。原稿やパネル資料などもしっかりと準備すると効果的です。また、このパターンの最大の敵は、本番で緊張してうまく発表できなくなることでしょう。これを克服するためには、何よりも練習が大切です。慣れ親しんでいる人の前ではうまくできても、知らない人の前に出るとダメ、という受験生もいますので、例えば塾の他のクラスの担当の先生のように、普段はあまり接点がない大人の前で、予行練習を繰り返すとよいでしょう。

もう一つのパターンは、その場で与えられた課題に対してプレゼンや自己アピールをする形式です。最初に課題となる資料が与えられるのですが、それは文章だったりリスニングだったりします。まずは、問題で求められていることが何かをしっかり把握するために、文章に線を引いたり要点をメモしたりしましょう。リスニングへの対処法としては、塾の先生などに頼んで、口頭で読んでもらったことの要点をメモする練習をするとよいでしょう。また、このパターンの中には、問題が出た後に図書館に行って、制限時間内に資料を探して解答をまとめるといったスタイルもあります。普段から小学校の図書室や地域の図書館で調べ活動をすることに慣れている受験生はこうした入試に対応しやすいのですが、こうした経験が少ない受験生には、かなりハードルが高いスタイルです。無理をせずに別のタイプの入試を選んだ方がよいかもしれません。

4.英語入試

中学入試の英語は、学校によって求められる英語力にかなりの違いがあります。英検4級ぐらいまでのレベルの入試であれば、英語が好きで普段から英語塾などで習っている受験生なら対処できるでしょう。目安として、英検4級の問題で合格点が取れれば大丈夫でしょう。ただ、英語は使わないと忘れてしまうものなので、「5年生の時に英検4級を取ったから大丈夫」ではなく、普段お世話になっている英語の先生に再度見てもらうなどして、今の実力をもう一度確認するようにしてください。

英検3級レベルの入試は、一気に難度が上がります。目安として有効なのは、公立高校の英語の入試問題です。書店で売っている、公立高校入試問題集を購入してためしに解いてみるとよいでしょう。満点とは言いません。首都圏1都3県の公立高校入試の場合、概ね6割以上の点数が取れていれば、合格の可能性は高くなります。

さらに上の準2級レベルの入試は、率直なところかなりの高難度です。対応できない高校生や大学生も珍しくないレベルです。海外で現地校に在籍していた帰国生やインタースクールに通っている受験生が対象ですが、中にはそれ以外で挑戦する受験生もいるでしょう。まずは、英検準2級の問題が解けるかどうかを確認してください。他に適当な練習問題を探すのは難しいので(英語そのものの難度は適切でも、テーマが小学生には難解だったり、理解するための基礎知識や概念ができていないことも多い)、普段お世話になっている英語の先生に相談して、問題をピックアップしてもらい、練習するとよいでしょう。また、準2級レベルまでいくと、エッセイを書く出題も増えてきます。エッセイは、単に英語力だけではなく、自分の意見を持って文章を書く力、さらにそれを英語で行う力が求められます。やはり英語のプロの先生の指導を仰いだ方がよいでしょう。このレベルの入試については、英語のプロの先生に十分な実力がついたとお墨付きをもらったら挑戦してもよいと思いますが、別のタイプの入試もありますから、よく相談して挑戦してください。

5.1教科入試

ある入試日程に、1教科入試しかない場合は別として、複数教科の入試があるのに1教科入試を選ぶ理由は2通りあります。「①得意教科を生かしたい」場合と、「②苦手教科を避けたい」場合です。また、4教科や2教科で学習していても、高い志望順位の学校で、複数回受験で1教科入試も受験する場合もあります。

①の得意教科を生かして挑む受験生に気をつけていただきたいのは、基本問題をおろそかにしないことです。好きな教科のテストでは、つい難しい問題に一生懸命になりがちで、一方の基本問題は手を抜いてしまうこともあります。しかし、合否の分かれ道が、基本問題になることも十分ありえますので、「基本問題は絶対に落とさない。その上で難しい応用問題に挑む」という姿勢を忘れないようにしてください。

②の苦手教科を避けて1科目入試を選択する場合も、まずは基本問題を落とさないことを心がけましょう。全問をきっちりと回答する必要はありませんので、問題全体を眺め、手のつけやすそうなところから一つ一つ確実に解いていってください。点数をたくさん稼ごうと焦るよりも、手をつけた問題は確実に得点していこうというつもりで臨むことが、合格ラインへの近道になります。

複数回受験で4教科入試や2教科入試の他に、1教科入試も受験する場合は、まず1教科入試の科目が得意科目だった場合は①と同様に考えてください。くれぐれも基本問題で失点しないように。1教科入試の科目が苦手科目の場合は少ないかもしれませんが、「得意でも不得意でもない」という場合は十分ありうるケースです。この場合は②の姿勢を忘れないようにしてください。また、基本問題の多くは2教科や4教科入試と難度面ではあまり変わりません。同じように取り組んでください。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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