上級者向け 受験マニアックス
2023年10月号 2024年度首都圏中学入試の変更点(第2弾:2023年7月〜9月発表分)
2023年7月号とあわせてご覧ください。
受験マニアックスの7月号では、2023年4月〜6月に発表された首都圏中学入試の変更点を紹介しました。今回は、7月以降に発表された変更点を紹介します。ぜひ、7月号とあわせて確認してください。各校の変更点の一覧については、末尾添付のPDFをご参照ください。
なお、現段階で全ての学校の入試変更点が発表されているわけではありません。各校の募集要項を確認してください。
新設開校
2024年4月、埼玉県所沢市に「開智所沢中等教育学校」が開校します。同校の特色、開校の経緯、クラス・コース編成、入試の内容については、7月号で詳しく紹介していますので、ご参照ください。
共学化
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自由学園(東京都東久留米市) ※認可申請中
7月号にて既報の通り、男子部と女子部にわかれていた自由学園が共学化します。
校名変更
明治大学付属八王子(東京都八王子市)
7月号にて既報の通り、「明治大学付属中野八王子中学高等学校」が2024年度から校名変更し、「明治大学付属八王子中学高等学校」になります。小石川淑徳学園(東京都文京区)
「淑徳SC中等部・高等部」が2024年度から校名変更し、歴史と格式を感じる「小石川」という地名を冠した「小石川淑徳学園中学校・高等学校」になります。
コースの改編
目立ったコースの改編を発表した学校を紹介します。7月号では、八千代松蔭(千葉県八千代市)、上野学園(東京都台東区)、淑徳与野(埼玉県さいたま市)、明法(東京都東村山市)、芝浦工大柏(千葉県柏市)について紹介しました。以下、続報を記します。
淑徳与野(埼玉県さいたま市)
医学部進学を目指す新コースを認可申請中でしたが、正式に認可がおりました。新コースの名称は「医進コース」となり、在来コースは「特進コース」に改称されます。募集人数は、医進コースが40名、特進コースが120名を予定しています(募集人数は認可申請中)。第1回入試(1/13午前)、第2回入試(2/4午前)は両コース共通問題で、出願時に第一志望、第二志望を選べます。この他、1/11午後に新たに医進コース特別入試が実施され、試験科目は算数と理科の2科目です。医進コースの難易度は、従来の同校よりも結構高くなることが予想されます。芝浦工大柏(千葉県柏市)
7月号では、上位クラスだった「GSクラス」をなくし、いわば「特別枠だった学び」を全生徒が学んでいくことになるとお伝えしました。このコースの一本化により、全体的な合格ラインは少し上がり、学校全体の学力の底上げが生じると予想されます。
入試の方式
7月号にて既報の通り、横浜雙葉(神奈川県横浜市)、芝国際(東京都港区)、東洋大京北(東京都文京区)、芝浦工大附属(東京都江東区)、文化学園大杉並(東京都杉並区)において、入試の方式が大きく変わります。詳しい内容は7月号をご参照ください。
東京都私立中学校・帰国生入試基準の厳格化
2024年度から、東京都の私立中学校の帰国生入試の基準が厳格化され、出願資格が「海外滞在1年以上、帰国後3年以内」となります。
帰国生入試とは本来、保護者の海外赴任に同行した子どもが帰国後に教育を受けられる場所を確保するという配慮で、特例的に行われるものです。ところが近年は本来の趣旨から外れ、英語力だけを重視し、インターナショナルスクールに通う児童や二重国籍を持つ児童など、海外に一度も住んだことがない子どもにも受験資格を与えるケースが散見されていました。そこでこの度、ルールを改めることになったのです。
また、帰国生入試の日程がどんどん早期化していたことも問題視され、来年度は「11月10日以降の実施」、再来年度からは「11月20日以降の実施」と定められます。やむを得ない事情で期日前に入試を行う場合は、合格発表を期日以降にすることが求められます。
なお、「帰国生入試の出願資格を満たしていないけれど、英語が堪能な生徒に入学してほしい」と考える学校では、2月1日以降の一般的な入試シーズンに「国際生入試」と銘打った入試を行う動きも出てきています。
この基準の厳格化によって東京都の帰国生の枠から外れてしまった層や、なるべく早期に合格を決めたいと考える層は、東京都の学校を避けて神奈川県の学校の帰国生入試を受ける可能性もあります。神奈川県の私立中学の帰国生入試は、競争率が上がるかもしれません。
男女別定員から男女合同定員への移行について(公立中高一貫校)
入試で男女別定員を設定すると、男子と女子の合格ラインに差ができてしまい、入試で同じ点数を取っても一方は合格して一方は不合格になってしまうことがあります。近年の首都圏の中学・高校入試では、全体的に入試の成績が良い女子の方が不利になるケースが多く、不公平だと問題視されていました。そこで、東京都立高校の学年制普通科全校では、2024年度から一般入試・推薦入試ともに男女合同定員に移行することを発表しています。
こうした動きを受け、2024年度からは、千代田区立九段中等教育学校(東京都千代田区)、千葉県立千葉中学校・千葉高等学校(千葉県千葉市)、千葉県立東葛飾中学校・高等学校(千葉県柏市)の3つの公立中高一貫校が、男女別定員をとりやめて男女合同定員に移行します。なお、東京都の都立の中高一貫校10校については、2024年度入試に関しては、男女別定員を続行する見込みです。
こうした男女合同定員化の動きは、今後も広がっていくのでしょうか。税金で運営されていて公平性が重視される公立の学校においては、段階的に広がっていくことと思われます。一方の私立の学校では、公立に比べると導入は目立ってこないでしょう。ただ、一部に、男女で合格最低点や実質倍率が異なり、女子の方が高得点、高倍率になっている学校もあります。男子よりも女子の人気が高いことから、こうした結果になっているわけですが、こうした私立の学校に、「男の子だったら受かっていたのに女の子だから落ちたのは不公平だ」といった意見があることも確かです。今後、入試の実施方法を変えていく学校が出るかもしれません。
男女合同定員化が進むと、生徒数の男女比がアンバランスになったりすることのデメリットもあるかと思いますが、議論を重ねつつ、しばらくは試行錯誤が続くことと思われます。
全体的な傾向
香蘭(東京都品川区)、大妻中野(東京都中野区)、日本学園(東京都世田谷区)などにおいて、従来の2科4科入試から2科入試を取りやめ、4科入試のみにする動きが見られます。今春の入試で大人気だった芝国際(東京都港区)や、桜美林(東京都町田市)などにおいて、1教科入試を取りやめる動きも見られ、品川翔英(東京都品川区)では国社などの得意2科目選択を、一般的な2科4科選択に変更しますが、これは得意科目以外の科目においても、一定の学力は持っていてほしいという学校側の意思によるものでしょう。それから、プレゼン型など趣向を凝らした内容の入試を見直す動きも見られます。つまり、来年度の中学入試に向けては、オーソドックスに学力をみる方式が見直されているといえるでしょう。
また、芝浦工大附属(東京都江東区)、芝国際(東京都港区)、文化学園大杉並(東京都杉並区)、日本工大駒場(東京都目黒区)、明星(東京都府中市)、武相(神奈川県横浜市)、本庄東(埼玉県本庄市)などが、入試回数を削減します。これらの学校は人気が高くなっていて、受験生が集まっていることの表れでしょう。
それから、2023年度は早稲田実業(東京都国分寺市)が、2024年度は慶應中等部(東京都港区)が、1クラスあたりの生徒数を減らしていて、結果的に募集定員が削減されています。いずれも難関人気校ですので、競争率が上がっていくことが予想されます。首都圏の中学受験では女子の動きが活発なのに対して男子の動きはやや沈静化しており、こうした動きを受けて、男子の募集自体を減らす方向性も見え始めているようです。
2023年7月〜9月に発表された変更点一覧
現段階(2023年9月時点)で判明している2024年度首都圏中学入試の変更点一覧を紹介します。