上級者向け 受験マニアックス
2018年8月号 私立高校の授業料補助制度、「私立小中学校等就学支援実証事業」について
この記事は2018年度の情報です。最新の情報は2023年8月号をご覧ください。
国と都道府県はそれぞれ、私立高校に通う場合の授業料補助制度を設けています。
今回の受験マニアックスでは、国、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の
それぞれの補助制度の概要、年収と授業料自己負担額のシミュレーション、および4都県の比較をご説明します。
あわせて、2017年度から始まった「私立小中学校等就学支援実証事業」についてもご紹介します。
ぜひ実態を知り、活用していただければと思います。
また、付録として各都県私立高校の学費データを添付します。
(以下の説明で、年収は目安です。世帯人数等で変わります)
国の就学支援金
はじめに、私立高校に通う場合の国の就学支援金について紹介します。こちらは全国共通です。世帯年収により、補助額は段階的に下がります。各都県では、国の就学支援金に上乗せする形で、独自の補助制度を設けています。
※上記は2018年度の制度に基づいています。
※年収は目安です。
※学費等が就学支援金等の支給上限額を下回る場合は、その金額までの支給になります。
東京都の補助制度
対象:都内在住。都内に住んで近隣の県の高校に通う場合にも支給される。
2017年度から補助制度が手厚くなり、家庭の負担は大幅に軽減しています。年収760万円未満の家庭には、都内私立高校の平均授業料目安と国の就学支援金の差額分が支給されます。
※ 上記は2018年度の制度に基づいています。
※年収は目安です。
※東京都の上乗せ分…都内在住であれば、隣接県の高校に進学しても支給
年収と授業料自己負担額のシミュレーション(東京都の制度)
授業料の例(年額) | 世帯年収 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
生活保護 | ~250万円 | 250~350万円 | 350~590万円 | 590~760万円 | 760~910万円 | 910万円以上 | |
350,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 231,200円 | 350,000円 |
400,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 281,200円 | 400,000円 |
449,000円 ※年収760万円未満の世帯への授業料補助額上限 |
0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 330,200円 | 449,000円 |
500,000円 | 51,000円 | 51,000円 | 51,000円 | 51,000円 | 51,000円 | 381,200円 | 500,000円 |
550,000円 | 101,000円 | 101,000円 | 101,000円 | 101,000円 | 101,000円 | 431,200円 | 550,000円 |
※2018年度の制度・データに基づく。
※東京都内全日制私立高校平均授業料は455,345円。
※授業料以外の奨学給付金として、生活保護世帯には52,600円が、年収250万円未満の世帯には89,000円(23歳未満の扶養されている兄弟がいる場合は138,000円、通信制は38,100円)が支給される。
神奈川県の補助制度
対象:県内在住で県内の私立高校に通う生徒。
東京都と同様に、国の就学支援金との差額分をここまで支給します、という制度です。年収750万円未満のすべての世帯に入学金補助10万円が給付されるのが特徴です。2018年度は昨年度よりも手厚さが増し、東京都の制度に近づきました。
- 2017年度:生活保護と年収250万円未満の世帯は県内私立高校の平均授業料目安までを支給。年収250万円以上の世帯では世帯年収により段階的に支給額が下がり、補助金で足りない部分は各家庭負担。
- 2018年度:年収590万円未満のすべての世帯に対し、県内私立高校の平均授業料目安までを支給。年収590万円以上の世帯では、補助金で足りない部分は各家庭負担。
※上記は2018年度の制度に基づいています。
※年収は目安です。
年収と授業料自己負担額のシミュレーション(神奈川県の制度)
授業料の例(年額) | 世帯年収 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
生活保護 | ~250万円 | 250~350万円 | 350~590万円 | 590~750万円 | 750~910万円 | 910万円以上 | |
350,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 156,800円 | 231,200円 | 350,000円 |
400,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 206,800円 | 281,200円 | 400,000円 |
432,000円 ※年収590万円未満の世帯への授業料補助額上限 |
0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 238,800円 | 313,200円 | 432,000円 |
460,000円 | 28,000円 | 28,000円 | 28,000円 | 28,000円 | 266,800円 | 341,200円 | 460,000円 |
500,000円 | 68,000円 | 68,000円 | 68,000円 | 68,000円 | 306,800円 | 381,200円 | 500,000円 |
※2018年度の制度・データに基づく。
※神奈川県内全日制私立高校平均授業料は430,317円
※年収750万円未満の世帯には、入学金補助100,000円が別途支給される。
※授業料以外の奨学給付金として、生活保護世帯には52,600円が、年収250万円未満の世帯には89,000円(23歳未満の扶養されている兄弟がいる場合は138,000円、通信制は38,100円)が支給される。
千葉県の補助制度
対象:県内の私立高校に通う生徒。居住地は県外でも良い。
年収350万円未満の家庭には、国の就学支援金との差額で授業料が無償になるように支給され、入学金補助もつきます。年収350万円以上640万円未満の家庭は授業料の三分の二の額まで支給されます。固定の金額ではないため、図は県内最高額で示しています。
※上記は2018年度の制度に基づき、年間授業料414,000円を基準に作成。
※年収は目安です。
※千葉県の上乗せ分…県内私立高校のみ支給、ただし居住地は県外も可。
年収と授業料自己負担額のシミュレーション(千葉県の制度)
授業料の例(年額) | 世帯年収 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
生活保護 | ~250万円 | 250~350万円 | 350~590万円 | 590~640万円 | 640~910万円 | 910万円以上 | |
200,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 66,667円 | 66,667円 | 81,200円 | 200,000円 |
250,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 83,333円 | 83,333円 | 131,200円 | 250,000円 |
300,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 100,000円 | 100,000円 | 181,200円 | 300,000円 |
350,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 116,667円 | 116,667円 | 231,200円 | 350,000円 |
414,000円 ※千葉県内全日制私立高校の授業料最高額 |
0円 | 0円 | 0円 | 138,000円 | 138,000円 | 295,200円 | 414,000円 |
※2018年度の制度・データに基づく。
※千葉県内全日制私立高校平均授業料は310,336円
※年収350万円未満の世帯には、入学金補助半額または50,000円の安い方が別途支給される。
※授業料以外の奨学給付金として、生活保護世帯には52,600円が、年収250万円未満の世帯には89,000円(23歳未満の扶養されている兄弟がいる場合は138,000円、通信制は38,100円)が支給される。
埼玉県の補助制度
対象:県内在住で県内の私立高校に通う生徒。
年収609万円未満の家庭すべてに県内私立高校の平均授業料目安と国の就学支援金の差額分が支給され、さらに入学金補助10万円が給付されます。あわせて、年収500万円未満の家庭には、施設費等補助20万円が給付されます。なお、埼玉県独自の制度として、私立高校や大学に通う子どもを3人以上抱える多子世帯については、年収720万円未満まで補助額を拡大しています。
※上記は2018年度の制度に基づいています。
※年収は目安です。
年収と授業料自己負担額のシミュレーション(埼玉県の制度)
授業料の例(年額) | 世帯年収 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生活保護 | ~250万円 | 250~350万円 | 350~500万円 | 500~590万円 | 590~609万円 | 609~910万円 | 910万円以上 | |
270,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 151,200円 | 270,000円 |
320,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 201,200円 | 320,000円 |
378,000円 ※年収609万円未満の世帯への授業料補助額上限 |
0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 259,200円 | 378,000円 |
420,000円 | 42,000円 | 42,000円 | 42,000円 | 42,000円 | 42,000円 | 42,000円 | 301,200円 | 420,000円 |
470,000円 | 92,000円 | 92,000円 | 92,000円 | 92,000円 | 92,000円 | 92,000円 | 351,200円 | 470,000円 |
※2018年度の制度・データに基づく。
※埼玉県内全日制私立高校平均授業料は377,642円
※年収609万円未満の世帯には、入学金補助100,000円が別途支給される。
※年収500万円未満の世帯には、施設費等補助200,000円が別途支給される。
※授業料以外の奨学給付金として、生活保護世帯には52,600円が、年収250万円未満の世帯には89,000円(23歳未満の扶養されている兄弟がいる場合は138,000円、通信制は38,100円)が支給される。
※年収609万円以上720万円未満で、県内私立高校に通う生徒を含め、私立高校生または大学生等を3人以上抱える世帯には、259,200円までの県の補助額が支給される。
4都県の比較
以下のグラフは、国の就学支援金と合算した各都県の年収ごとの支給金額を比較したものです。東京都の補助制度の手厚さが際立っていることがわかります。
※上記は2018年度の制度に基づいています。
※年収は目安です。
※千葉県は授業料や授業料の2/3が支給額(グラフは授業料年額414,000円で作成)。
※埼玉県の多子世帯のみ対象の補助額は反映していません。
「私立小中学校等就学支援実証事業」
ここまでは私立高校の授業料補助制度についてご説明してきましたが、2017年度からは私立小中学校に通う場合の国の助成制度「私立小中学校等就学支援実証事業」も始まっています。これは、私立小中学校に通う世帯を対象に、文部科学省の調査に協力することを条件として年間10万円の授業料補助を行うものです。全国で適用されますが、2021年度までの時限的な制度で、運用は各都道府県が行います。
私立の学校には、男女別学、宗教教育、その他さまざまな特色のある教育を打ち出しているところが多く、色々な理由で公立ではなく私立を選ぶご家庭があります。また、いじめ等の人間関係が原因で地元の公立学校に行けず、私立に通う場合もあります。そこで、経済的な理由で私立の学校を選べないケースを減らすべく、この制度は始まりました。
2017年度は文部科学省の見込みを上回る申請があったとのことで、こうした制度への期待が高いことが示されました。2017年度は年収400万円未満の世帯を対象としましたが、2018年度は7月の本稿作成段階でも年収その他の条件の一部修正などが進んでいるとのことで、実際の申し込みの受付は2学期以降になるようです。
まとめ
私立高校の授業料補助制度や「私立小中学校等就学支援実証事業」は、経済的な理由によって学校選択の自由が奪われることがないようにと、国や自治体が整えている制度です。実際のところ、世帯収入に捉われずに私立に進むケースは増えています。利用するのは当然の権利ですので、気後れせずに積極的に活用し、お子さまの個性や将来の希望に合った学校に通わせてあげるようにしてください。