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上級者向け 受験マニアックス

2019年2月号 「AI」「グローバル化」と中学受験

首都圏では中学受験志向が高まっています。2019年度入試では、新設校や共学化などで大きく変わった学校、さらに伝統的な有名校だけでなく、近年注目度が高まっている学校の話題が受験系のマスコミを賑わせていました。
今までのマニアックスで折に触れて紹介してきたように、中学受験志向は縮小から拡大に転じて4年目を迎えました。なぜ今、中学受験生が増えているのか、受験生や保護者は中高一貫校に何を期待しているのか、「AI」「グローバル化」という観点から考えてみます。

AIの進化で、無くなる仕事・残る仕事

「シンギュラリティ(技術的特異点)」という言葉をご存知でしょうか。
AI(人工知能)が、自らさらに優れた知性を生み出すことで人間の想像力が及ばないほど優れた知能が誕生する、という仮説で、「2045年にやってくる」「いやもっと早いだろう」「そんなものは来ない」など、さまざまな意見が飛び交っています。「今後10〜20年で、今ある仕事の半分はコンピュータに取って代わられ、多くの人が職を失う」といった論文も発表され、人々に衝撃と不安を与えていますが、同時に、「機械に人間が負けるはずがない」という楽観論も聞かれます。

今の小学生のお子さんたちが大人になる頃、世の中はどのようになっているのでしょうか。
AIは、要するにソフトウェアです。すでにものづくりの世界では、多くの産業用ロボットが活躍しています。これから機械に取って代わられやすいのは、多くのデータを取り扱うような経理・財務や顧客管理・在庫管理など事務系の仕事でしょう。テレビでは日々新しいソフトウェアのCМが流れています。これらのソフトウェアがさらに高度化して使いやすくなれば、税理士、会計士などは需要が減るでしょう。官公庁などへの届け出文書の規格化や電子化がさらに進めば、行政書士などの需要も減るかもしれませんね。企業の中でも、あるいは独立して事務所を構えるにしても、このような「ホワイトカラーのベテランが担う仕事」へのAI導入が進むと、こうした分野で必要とされる人材の数は減っていくでしょう。ひょっとすると、今の社会で「この資格を持っていれば安心」と言われる資格も、あと10年も経てば評価されなくなるかもしれません。資格をもった人間が行うよりもAIに任せた方が早くて安くて正確にできるなら、このような動きは加速するでしょう。例えば、30年ほど前はあちこちの駅の改札口で駅員さんが切符を切る姿が見られましたが、今ではほとんど見かけません。自動改札です。こうした動きがホワイトカラーのベテランにもやってくる、と考えればイメージしやすいでしょう。

AIの発達は、人間から仕事を何もかも奪うのでしょうか。それは違います。AIに代わられる仕事とは、「AIにやらせた方が効率的な仕事」に限られます。手作業の繊細さが求められる職人仕事、音楽家・小説家・画家・デザイナーなどクリエイティブな仕事、細やかなホスピタリティが求められる仕事などは、高度になるとAIで担うことはできません。また、多様な人々を取りまとめて1つのプロジェクトを動かしていくような仕事もAIには無理です。人間はこれまでの歴史の中で、いろいろなモノの製造を機械化し、データ処理を行うコンピュータを開発し、さまざまな現場で活躍するロボットをつくってきました。昔は全て人の手と頭でやっていたことを、機械やコンピュータに任せて、大量生産、効率化、コストダウンなどを実現してきたのです。AIの発展も、これまで人類が繰り返してきた技術革新の一つの段階と考えられるわけです。

大切なのはAIを使いこなすこと

AIが、人間と比べて優れているところは、難解な数式を解く、複雑な情報を処理する、たくさんの物事を記録する、といったことです。また、オセロやチェス、将棋など、戦略をパターン化、数値化できるようなゲームにおいて、人間の名人に勝つこともあります。これら「AIが得意なこと」に共通しているのは、「確かなデータがあって、それに基づいて学習ができること」です。裏を返せば、元となるデータがなければ、AIは何もできないのです。

「AIが人間と同じように感情を持つことはできるのか」という議論がありますが、少なくとも現時点では全くめどはたっていません。人間の感情や意識がどのように形づくられているのかは、当の人間にもわかっておらず、それをデータ化してAIに学ばせることが不可能だからです。

また、この先AIがどんなに進歩しても、人間のように文章を読んだり書いたりすることは難しいだろうと言われています。文章を読んで感動する、楽しくなる、悲しくなるといったことを理解できず、文章から想像を膨らませることもできないため、人の心を動かすような文章も書けないのです。「AIが物語を書いた」というニュースもありますが、データベースの中から統計的によく使われる表現や単語をつなぎ合わせて形にしただけで、何かを伝えようとしている訳ではないのです。

このようにAIは、自分で感じる、判断する、想像する、新しいアイデアを考える、といったことはできません。そこを担うのは、いつの時代も人間なのです。
これから先、AIがますます発展した社会では、「AIが得意なことはAIに任せ、その上で人間が、データを有意義に使ったり、的確な判断を下したり、多くの人々の考えを融合してさらなるアイデアを生み出す」という流れが重要になります。

したがって、AIの発達で、社会が大学卒業生に求める資質は、今までとは変わっていくでしょう。「ホワイトカラーのベテラン」の需要が減れば、こうした職種の企業の求人は減り、独立して事務所を構えてもこうした仕事は来ないわけです。一方、クリエイティブな仕事、細やかなホスピタリティが求められるような職種の求人は増えていくでしょう。大学卒業までに、こうした求人に対応できる力を身につけようとする大学生は増えていくと思われます。そして、大企業は、AIを使いこなしてクリエイティブな活動ができる資質を持ったうえで、さらにこうした活動をする多様な人々を取りまとめて物事を推進する力を持った人材を求めていくはずです。将来の幹部候補生になるからです。

グローバル化社会のこれから

「多様な人々を取りまとめて行動できる力」は、もっぱら採用試験の面接で「大学のゼミやサークルでリーダーシップをとってきたか」、「大学で豊かな人間関係を築いてきたか」などが見極められている、とイメージされがちですが、過去の話です。現代、そしてこれからの社会では、やはり「グローバル」が前提です。

日本人にもいろいろな個性の人がいますが、文化的な同質性を土台にした狭い多様性しかありません。海外の人々と一緒に活動すると、大きな違いを感じるでしょう。留学を経験したある大学生は「日本人同士の個性の違いはモノクロ写真での濃淡の違いで、多民族・多国籍の人々の個性の違いはカラー写真での色の違いだ」と言ったそうですが、大企業はカラー写真の様々な色(個性)を踏まえて、人々の力を結集し、動かすかことができる力を期待しているわけです。

多民族・多国籍の人々をまとめるには英語が不可欠です。ですから現在、今までの日本の英語教育の反省の上に立って、英語の4技能「聞く・読む・話す・書く」のうち、特に「話す・書く」を重視した英語教育に改善しようとしています。しかし、それこそAIによる自動翻訳機能がさらに進化すると、「話す・書く」もAIが代わりにやってくれる時代がやってくるでしょう。もちろん、自力で意思疎通ができることは利点にはなりますが、英語力だけでは「求められる人材」にはなれないのです。

これから先、ビジネス、文化活動、社会貢献活動などさまざまな場で国際的に活躍するには、英語力以外に、プラスアルファの力が求められます。それは、世界中のさまざまな文化やものの見方を考察できること、人を惹きつけるプレゼンテーション力、豊富なアイデア、新たなチャンスをつくり出す提案力などの総合的な人間力であり、もっと具体的に言えば、様々な文化的な背景を持つ各国の人々のチームを取りまとめて動かして、プロジェクトを進めていく力です。

中学受験への期待

それでは、「AI」や「グローバル化」と中学受験志向の高まりは、どのような関連があるのでしょうか。

AIが発展してグローバル化がますます進んだ未来の社会で活躍する人材には、考察力、提案力、コミュニケーション能力、豊富なアイデアなど、多彩な力が求められます。ただ「勉強ができる」「知識が豊富」「一流大学を出ている」というだけでは、活躍しにくい世の中になるでしょう。そこで、こうした世の中の動きに合わせ、21世紀型の新しい教育を展開する私立中学や公立中高一貫校に注目が集まっているのでしょう。

また、中高一貫校の多くは高校受験がないので、アクティブラーニング型の多彩な授業ができる、海外留学やボランティア活動など貴重な経験を積める、興味関心があることを探究できる、といった利点が大きくなっています。また、中学受験では有名大学の附属校人気が高まっていますが、筆者が大学附属校を希望するご家庭のお話しをうかがうと、大学受験に気を取られずに中高の6年間でいろいろな経験ができる面に魅力を感じている方が多いと実感します。

進んで情報を求め、自身で判断を

首都圏では、これからの社会の変化を見据えて中学受験を考えるご家庭が増えてきています。当初は都心部で始まったこの動きは、神奈川県、千葉県、埼玉県といった周辺にも広がってきています。しかし、「AI」や「グローバル化」と言われても、正直まだピンとこない方もいることでしょう。特に、社会の変化を実感しにくい地方部では、「学校の勉強を頑張って地域トップの学校に行き、良い大学に入れば将来は安泰」という考え方は根強いかもしれません。

ですが、社会は確実に、ものすごいスピードで変化しています。「本当かな」「新しい時代の教育とはどんなものだろう」と疑問に思ったら、スーパーグローバルハイスクールやスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けている地域の学校へ見学に行き、教員の考えを聞いてみることをおすすめします。それらの学校では、急速な社会の変化を見据え、先進的な21世紀型の教育に力を入れています。

あらゆる情報があふれる現代社会。気になる情報、欲しい情報は自分で調べ、選び、確かめることが大切です。今とは大きく変わるであろう未来の社会で生き生きと活躍するため、中高の6年間をどう過ごすべきか、じっくりと考え、納得できる進路を選んでいただければと思います。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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