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上級者向け 受験マニアックス

2018年3月号 2018年 首都圏中学入試の概況

今回は、首都圏1都5県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・茨城県・栃木県)の、2018年度の中学入試の概況をお伝えします。全体の傾向の分析と併せて、東京23区、東京多摩地区、神奈川県、千葉県、埼玉県、公立中高一貫校の詳細な入試概況データ(速報版)も、PDFにてご確認いただけます。

1.小6児童数は最小、しかし中学受験生は増加

図1は、首都圏1都5県の小学6年生の全体数と中学受験をした児童の数の推移です。小学6年生の児童数は2011年以降低下を続けており、2018年は特に大幅に減少、この10年で最小となりました。一方、中学受験者数は2009年をピークに減少していましたが、2015年を境に緩やかな増加傾向に転じています。2018年は小6児童数が大幅に減少したにも関わらず、中学受験者数は増加しており、中学受験の人気が高まっていることがわかります。

図1 小学6年生の児童数と中学受験者数の推移(首都圏1都5県〈群馬除く〉)

図1 小学6年生の児童数と中学受験者数の推移(首都圏1都5県〈群馬除く〉)
※ 受験者数は編集部推定
※ 児童数は文部科学省の学校基本調査から作成、義務教育学校(小中一貫校)を含む

図2は、首都圏1都5県の公立中高一貫校の応募者数の推移です。2013年までは新規開校が活発だったこともあり応募者数は増加していましたが、2014年からは人気にかげりが見られ、2018年も減少しました。このことから、2018年の中学受験者数の増加は、私立中学の人気によるものだとわかります。

図2 公立中高一貫校の応募者数推移(首都圏1都5県〈群馬除く〉)

図2 公立中高一貫校の応募者数推移(首都圏1都5県〈群馬除く〉)

中学受験生が増えているのは、中高一貫教育の質の高さに期待する保護者が多いためでしょう。ここ3〜4年は特に、「グローバル化対応」、「21世紀型」、「知識基盤社会対応」、「リベラルアーツ」、「活用型の学力観」、「イノベーター育成」…といった、新しい価値観の教育への期待が高まっています。これは、海外の人々とも不自由なくコミュニケーションがとれて、複雑な現代社会のいろいろな課題に対しても積極的に解決策を提案し、豊かな教養をベースにした幅広い視野と自由な発想を持つ人材を育てる教育です。

2.人気校の応募状況

【男子校】

図3は、男子校の応募者数の上位30校を示したものです。◆は前年と比べた増減の割合を表しています。

1位は今年も東京都市大付属です。2015年の応募者数は5,000名を超えていましたが、2016年、2017年と減少していました。今年はやや増えています。2位は早稲田、3位は成城、4位は芝で、ここまでが2,000名を超えています。入試回数が多い学校が上位にくる傾向がある中で、1回しか入試を行わない浅野、開成、麻布、栄光学園は高い人気です。中でも浅野は8位と一桁内に入ってい、特に人気が高いことがわかります。

前年と比べた増減の割合を見ると、巣鴨が46%と大きく伸びました。入試回数を2回から3回にして、第一志望・併願双方の受験生が増えたことが要因でしょう。他、学習院も29%と大幅に増えましたが、この背景には首都圏で大学付属校の人気が上がっていることがあります。進学校では、攻玉社の17%増が目立ちました。

図3 男子校の応募者数上位30校

図3 男子校の応募者数上位30校
※ 2回以上入試を行う学校は、各回の合計
※ 地方の寮制学校は除く

【女子校】

図4は、女子校の応募者数の上位30校を示したものです。1位の豊島岡女子、2位の浦和明の星は昨年と同様で、この2校が2,000名を超えています。3位の吉祥女子、4位の洗足学園は僅差です。この2校は2,000名にはわずかに届きませんでしたが、安定して高い人気を続けています。

前年と比べた増減の割合を見ると、横浜女学院は112%増と倍以上に伸びました。国際教養コースを新設し、2コース制を実施したことが受験生に支持されたのでしょう。68%伸びた実践女子学園は反対にコース制を取りやめましたが、実質的に午後入試を2回新設したために応募者が増加しています。三輪田学園の67%増、品川女子学院の35%増も同様で、初めての午後入試を新設したための増加です。他には、跡見学園と頌栄女子学院が20%台、吉祥女子、共立女子、富士見、大妻多摩と女子学院が10%台の増加で人気が上がっています。

図4 女子校の応募者数上位30校

図4 女子校の応募者数上位30校
※ 2回以上入試を行う学校は、各回の合計
※ 地方の寮制学校は除く

【男女校】

図5は、男女校の応募者数の上位30位です。1位は今年も栄東で、入試回数が減ったにも関わらず1万名を超えています。全国でも1位の応募者数です。2位は昨年と同様に開智で、先端入試を増設して5千名を超えました。3位の広尾学園、4位の三田国際学園は昨年と同順位、5位の市川と6位の東邦大東邦の両校は昨年と順位が入れ替わりました。7位の専修大松戸、8位の都市大等々力は昨年と同順位で、ここまでが3,000名を超えています。9位の桐蔭学園、10位の渋谷教育幕張も昨年と順位は変わらず、トップ10の人気は固定化しています。

前年と比べた増減の割合を見ると、昭和学院秀英が43%増と大幅に増えています。1月20日に新設した午後入試が大人気となったためです。この他、かえつ有明が32%、大宮開成が22%、開智日本橋、東京農大第一、桜美林が10%台の増加で人気が上がっています。

図5 男女校(共学・別学)の応募者数上位30校

図5 男女校(共学・別学)の応募者数上位30校
※ 2回以上入試を行う学校は、各回の合計
※ 地方の寮制学校は除く

3.大学付属校人気の背景

2018年の中学入試の特徴は、内部進学率が高い、早慶とGMARCH各大学の付属校の応募者が増えたことです。男子校では慶應普通部、立教池袋、早大学院、早稲田が、女子校では、学習院女子と香蘭女学校(立教系列)、男女校では慶應中等部、慶應湘南藤沢、早稲田実業、明大明治、明大中野八王子、青山学院、中大附属横浜、中大附属、法政大学、青山学院横浜英和といった学校の応募者が増え、人気が上がりました。

一部の新聞では、2024年から本格実施される「大学入試改革」への不安が付属校人気を高めたなどと報じられています。それも理由の一つかもしれませんが、筆者が受験相談会などで保護者とお話して感じるのは、もっと別の理由です。それは、先述したような新しい価値観の教育、次世代の人材に求められる力を育成することが、中・高・大の10年間の一貫教育では実現可能なのではないか、という期待です。有名大学付属校を選択することで、大学受験のための勉強をする時間を「多彩で良質な教育」のために使うことができるのではないかと期待されているのでしょう。ただ、それだけでなく、新しい価値観に基づく教育内容をうまく身につけることができなかったとしても、こうした大学の出身者なら、就職等で困ることは少ないだろう、という計算もあっての選択、という面もあります。

4.女子校の不振

近年、女子校の人気は低下していますが、2018年もその傾向は続いていました。

図6は、東京都と神奈川県の男子校、女子校、男女校それぞれの1校平均の応募者数を算出した結果です。他県は男子校や女子校が極めて少なく、選択しにくいので東京都と神奈川県に絞りました。1校平均の応募者数は女子校が最も少なく、男子校の約半分にしかならないことがわかります。

図6 東京都・神奈川県の私立・国立の校種別1校平均応募者数

図6 東京都・神奈川県の私立・国立の校種別1校平均応募者数
※ 2018年の速報値による
※ 未公表校、公立中高一貫校は除く

図7は、東京都と神奈川県の男子校、女子校、男女校それぞれの総応募者数の3年間の推移です。男子校も少しずつ減少していますが、女子校の減少幅の方が目立ちます。この調子だと、あと数年で男子校・女子校の差がなくなりそうです。図6とあわせて見れば、男子校全体の応募者数の減少よりも、女子校全体の応募者数減少が、大きな影響を与えていることが伺えます。一方で男女校の人気は上がっています。

図7 東京都・神奈川県の私立・国立の校種別応募総数の推移

図7 東京都・神奈川県の私立・国立の校種別応募総数の推移
※ 2018年の応募者数は速報値なので、増える見込みあり

女子校の人気不振が続いているため、女子校からの共学化が促進されています。図5の男女校応募者数上位30校の中でも、広尾学園、三田国際学園、東京都市大等々力、開智日本橋、かえつ有明、宝仙学園理数はいずれも元女子校です。また、渋谷教育渋谷と星野学園は女子校で出発し、中学開校時に共学募集を開始、さらに大宮開成も最初は女子校で途中から共学化、その後に中学募集を開始した学校です。このように、今人気校となっている男女校には、女子校から共学化してイメージを一新した学校が多くなっているのです。

一方で、人気が上がっている女子校もあります。それらは、大学進学やグローバル化対応、「リケジョ」育成に向けた理系教育などに力を入れていて、受験生の期待が高くなっている学校です。「お嬢様学校」「良妻賢母」といった古くからの女子校のイメージは受け入れられなくなってきていて、大学進学や社会での活躍を念頭に入れた先進的な教育を行う女子校は生き残っているといえるでしょう。

5.難易度別の学校選択傾向

図8は、1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の、難易度別応募者数の比較です。2017年と2018年の応募者数を男女別にグラフにしました。

図8 1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の難易度別応募者数

図8 1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の難易度別応募者数

※ 公立中高一貫校は除く

※ Aグループは難関校、Bグループは上位校と続き、Eグループは入りやすい学校

※ 難易度は入試前の予想偏差値を元に設定。
2017年と2018年で学校のグループが変わっていることもある。

※ 各グループの学校名は、各都県のPDFを参照

男子は上位校のBグループが最多で、全体の4割を超えます。難関校のAグループと中堅校のCグループ、比較的入り易い学校のDグループはいずれもBグループの半分以下です。Cグループが昨年より減ったのは、中堅の学力層の受験生が「Aグループは無理でも、せめてBグループ校に行きたい」と流れたのと、昨年はCグループだった学校がBグループに移行したケースがあったためでしょう。Dグループの増加は、中学受験のすそ野の広がりを示すものです。また、「中学受験に挑戦する以上、せめてDグループ校に」という動きから、Eグループ校の人気は陰りが出ています。

女子もBグループが最多ですが、男子ほどは集中しておらず、全体の三分の一ほどです。次いでCグループとDグループがほぼ同じ応募者数です。A・Bグループは、わずかですが昨年より応募者が増えていて、難関校、上位校の人気が高くなっています。Cグループの減少、Dグループの増加、Eグループの減少は、男子と同様の理由です。

6.まとめ

大学入試改革や新学習指導要領の実施などを控え、日本の教育が変革期を迎えた今、中学受験の人気は高まっています。思考力、判断力、表現力、主体性、英語力、コミュニケーション能力など、時代が求める力を身につけるため、中高一貫校の多彩で先進的な教育内容が支持されているのでしょう。

2019年は東京都で「ドルトン東京学園中等部」、埼玉県で「細田学園中学校」と「さいたま市立大宮国際中等教育学校」が開校する予定です。他、目黒区の日出中学校が日大の準付属校となって大きく変わるほか、横浜富士見丘学園も共学化するなど、大きな変更があります。また、慶應湘南藤沢では、帰国生だけなく一般の受験生も、国算社理の4教科か国算英の3教科のどちらかを選択できるようにします。

教育改革の中で中学受験も大きく変わろうとしていて、来年の入試ではそれがより顕著になり、受験生と保護者の選択肢は広がります。これからの中学入試の新しい動きに注目したいものです。

私国立中学入試概況



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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