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上級者向け 受験マニアックス

2016年12月号 新しいタイプの入試について

この記事は2016年度の情報です。最新の情報は2017年12月号をご覧ください。

「日本を訪れる外国の方をもてなす計画を立てましょう」。
「あなたの特技を3分間でアピールしてください」。
「ブロックをつかってテーマに沿った作品をつくりましょう」。

これらはすべて、実際に行われた中学校の入試問題です。

最近、「国語・算数・理科・社会の教科ごとに、黙々と解答用紙を埋めていく」といった従来の様式とは異なる、新しいタイプの中学入試が増えています。2016年は特に、こういった入試の多様化が本格的に進みました。
2017年入試でもさらに増えるでしょう。

その背景、求められる力、具体的な入試の種類や内容、導入している中学校例をご紹介します。

新しいタイプの入試について

背景:社会が求める人材を育成するために

近年、経済界から、大学新卒の新入社員に対して、「指示されないとなかなか動けない」「決まった仕事はこなすが、課題になかなか気づかない」「他者と交渉したり協調して物事を進める力が不十分」などといった声が発せられています。日本人と外国人の新入社員がいる場合、外国人の方が「即戦力になる」「物おじしない」「積極的でコミュニケーションが上手い」と評価されることも多いようです。

経済界が子どもたちに身につけて欲しいと求めている力は、じっくりと考える思考力や、自分を表現する力、物事を鵜呑みにせずに多面的に分析するクリティカル・シンキング、主体性、協調性、そして英語で表現し、交渉する力などです。

政府・文部科学省も、今後の日本の教育ではこうした人材の育成を目指す方針で、大学・高校の教育を改革しようとしています。その方策の一つが2020年の「大学入試改革」です。そこで問われるのは、単に知識を身につけていることではなく、思考力や判断力、表現力、主体性、協調性、そして高度な英語力などです。

こういった社会情勢を背景に、先陣を切ったのが私立中学校です。新しいスタイルの入試が目立って増えてきている背景には、時代の変化を見据えて、将来的に社会で活躍できる人材を育成したいという想いがあるのです。

求められる力

私立中学校の方と話をしていてよく聞くのは、「入試で満点を取る必要はない。それよりも、伸びしろを見せて欲しい」という意見です。もちろん、小学校で習った基本的な知識と技能は身につけていなければいけませんが、求められるのは、意味も理解しないまま暗記した知識や、過去問や模試を繰り返して身につけた、定型的な問題を解く技能ではありません。知識や技能をもとに、自分で考え、他人と協働して、新しいものを生み出す力です。そこで、思考力、判断力、表現力、コミュニケーション能力などを見る入試が増えているのです。

新しいスタイルの入試の種類と内容

新しいスタイルの入試について、はっきりとした名称や種類分けはありません。学校によって、ネーミングも内容もさまざまで、入試のネーミングを見ただけではどのような内容なのかわからなかったり、分類しようとすると混乱してしまうこともあります。本稿では、ざっくりとした種類にわけてご説明します。学校によっては内容が異なることもありますので、ご留意ください。また、実際に行われた入試例と導入中学校例についても、ご紹介します。

【思考力入試】

自分でしっかりと考えて、アイデアやものをつくり出す創造的な力、自分の考えを表現する力をみる入試。一人ではなく、受験生同士でグループになって取り組む場合もあります。

  • タイの米作りに関する問題の解決案をレゴブロックで作成し、文章でも説明する。
  • 受験生8名程度のグループワーク。「おもてなし」をテーマにグループ内で話し合いを行い、その結果をプレゼン用紙にまとめる。
    ※レゴブロックはデンマーク製の玩具のブロックですが、1980年ごろからヨーロッパで教材としての活用が進み、現在はロボットプログラミング教育などにも利用されています。
2017年の実施中学校例

桜丘、十文字、聖徳学園、聖学院、東京成徳大学、東京都市大学等々力、東洋大学京北、日大豊山女子、富士見丘など

【総合型入試】

教科を横断した内容の設問が特徴。特定の教科の知識を使うのではなく、複数の教科の知識と技能を使って解答します。テーマとなるのは身の回りで起きている出来事などが多く、さまざまな観点から物事を考える力が求められます。

  • 環境に関する長文、それに付随するグラフ、絵等の資料を読み解き、グラフを描いたり、絵について解釈を述べたり、未来についての自分の意見を書くなど。
2017年の実施中学校例

共立女子、大妻中野、大妻嵐山、光塩女子、品川女子学院、東京女子学園、藤嶺藤沢、開智未来、国際学院、土浦日大など

【適性検査型入試】

公立の中高一貫校で行っている適性検査に準じた内容です。「旧来型の中学受験に特化した、知識・技能を再現する力」よりも、もっと広く、判断力や説明する力を求めるものです。東京都内の私立中学の適性検査型入試は、多くの学校が定型化した出題ですが、東京都以外では、学校によってさまざまなパターンをとっています。以下に、東京都の適性検査型入試の特徴についてご紹介します。

  1. 教科横断型であり、複数の科目の知識と技能を使って解く必要がある。
  2. 問題を解くための知識・技能は、小学校の教科書の枠から逸脱しない。
  3. 2.以外の内容は必ず明示され、見ればわかるように作題されている。
  4. 記述式の設問が多い。自分の意見や体験に基づく記述があり、正解が一つではない出題がある。
  5. 算数、社会、理科は、単純な問と解答ではなく、対話型の問題文を読んで解答する形式が多い。
  • 途上国の安い労働力で生み出された商品を、加工して先進国が消費することについて考える問題。
  • 18歳選挙権をテーマに現代社会の課題を若年層と高齢者層の二つの立場から考える出題。
2017年の実施中学校例

共立女子第二、佼成学園、玉川聖学院、千代田女学園、八王子学園、立正大付属立正、聖徳大学附属女子、浦和実業、昌平、聖望学園など

【自己アピール入試(プレゼン型)】

大学入試でいうとAO入試に似ています。スポーツや習い事など、自分がこれまで一生懸命に打ち込んできた、好きなこと・得意なことをアピールします。

  • 3分間の自己アピールタイムを使って、特技についてのプレゼンを行う。その場でダンスや武道を披露してもよい。その場で見せることが難しい場合は、事前に収録した動画を見せる等の方法でもよい。
2017年の実施中学校例

跡見学園、佼成学園女子、昭和学院、女子聖学院、中村、二松学舎大学附属柏、宝仙理数インター、桐朋女子など(※ なお、最近始まったものではありませんが、伝統的に桐朋女子の2月1日の入試は自己アピールの面が強い内容です。)

【英語入試】

2016年は、帰国子女ではない、普通の受験生を対象とした英語入試の増加が目立ちました。求められる英語のレベルは学校によってかなり異なり、大きく3グループに分かれます。

  1. かなり高度な英語力を要求するもの。グローバル系のコースを設置している学校などが中心で、中高在学中の海外留学、卒業後の海外大学への進学まで視野に入れている。
  2. コミュニケーション力を中心に英語力を見る。ネイティブによるインタビューや、口頭での英問英答などがある。
  3. 英語塾に通っている等で、中学校の英語学習を先取りしている生徒が対象。「英語が得意」なことを、強みにしてもらおうというもの。難易度は英検4〜5級程度。

一般的には英検3〜4級程度の難易度の入試が多いですが、中には、問題用紙が表紙からすべて英語だったり、自分のことについて英語でスピーチをしたり、詩に対して抱いた印象を自分の言葉で解答したりといった、かなり難易度の高い入試もあります。

2017年の実施中学校例

駒込、淑徳SC、城西大学附属城西、帝京、東京家政学院、文京学院大学女子、八雲学園、山脇学園、横浜富士見丘学園、麗澤など



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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