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上級者向け 受験マニアックス

2023年4月号 2023年度中学入試の出題傾向

今回の受験マニアックスでは、2023年度中学入試の出題傾向を教科ごとに紹介し、来年度に向けての対策などを考えてみます。

国語

近年、長文問題の出題テーマは多様化しています。中学入試でよく扱われるテーマとして「友情」がありますが、去年は取り扱う学校が増え、今年は減っていたのが特徴的でした。代わりに、離婚問題、ご近所トラブル、新しい家族像、コロナ禍のテレワークなど、今の社会で起きているさまざまなトピックスについて取り上げる出題が増えている印象です。

昔から、子どもには「素直に、純粋に、前向きに希望を持って育ってほしい」という願いから、大人の社会と子どもの社会とを分けて、社会問題や大人の課題、保護者の悩み事などを子どもにあまり共有しない傾向がありました。子どもが口出しをしようものなら「大人の話だから」「子どもにはまだ早い」などと言って、子どもに触れさせないように大人が心がける、というのが当たり前でした。

しかし、増えている長文問題を見ると、子ども自身にも、子どもなりの考えでよいので、当事者意識を持ってほしい、しっかりと自分で考えてほしいという学校の意向が感じられます。また、ダイバーシティが推進される中、保護者が子どもだったころに標準的だった家族像や、仕事と家庭のバランスに固執せず、多様な価値観を持ってほしいという狙いもあるのでしょう。

また、説明的な文章や資料文の出題ではテーマの多様化や文章の高度化が目立っています。今年扱われていたテーマは、天体、ウイルス感染、貿易問題、環境問題、東京の洪水のリスクなどで、一見すると国語ではなく別教科の出題文章のようにも見えます。また、「二十四節気」など、大人でも詳しく知る人は少ないテーマも出題されていました。こういった出題は、知識の有無を問いかけているわけではありません。問題をよく観てヒントに気がつく力、情報を読み解く力を見ているのだと考えられます。

出題形式としては、最近は記述式の問題が増え、自分の意見をしっかり書かせる学校が目立ちます。今年の出題をみるとこれがさらに進化して、「あなたの体験を通して答えなさい」「身近な例を探して説明しなさい」「この登場人物になったつもりで答えなさい」といった指示もあり、難易度は上がっているといえるでしょう。あるトップレベル校では「この人の意見に反論してください」という出題も見られ、ディベートのように多角的な視点を持って説明する力が求められていました。選択式の出題では、一つひとつの選択肢の文字量が増えています。中には、200〜300字の文章が5つほどあってその中から正しいものを選ぶなど、全部読むだけで一苦労といった出題もあります。これは、2021年度から始まった大学入学共通テストの出題傾向に影響を受けているのかもしれません。

多様化する出題テーマに対応するためには、今の社会で起きているさまざまな出来事について、普段からご家庭で話題にして、考えるきっかけを作ることが大切です。「大人の世界のことだから」と子どもに見せないようにするのではなく、社会の問題を少しでも解消するために自分にできることは何か、多様な生き方を尊重することの大切さなどを、時には親子で一緒に考えてみてください。

また、国語は得意な子と苦手な子の差が大きく、苦手な子どもに無理に速読法を身につけさせようとしたり、高い読解力を急に要求するのは無茶で、かえって国語嫌いを助長しかねません。苦手な子どもには、他教科の足を引っ張らない程度の得点を取ることを目指すのが大切です。練習問題に取り組む中で、知識問題や指示語の問題など、練習すれば得点できる問題をしっかり得点する習慣を身につけるとともに、少しずつ問われていることを的確に掴み取り、解答できる力をつけていくように取り組むことが大切です。

算数

最近の中学入試では算数一教科入試が少しずつ増えていることもあり、算数の問題には学校側のさまざまな工夫が見られます。単に正しく計算し、情報を処理する力だけでなく、論理的に考える力を見る出題が増えています。

中学入試によく出てくる問題に、つるかめ算や旅人算などに代表される「特殊算」があります。今年はニュートン算が目立ちました。これは成長する牧草と食べる牛、チケット売り場と買いたい人の行列などを題材とし、時間の経過で起こる事象を読みとくものです。例えば、「人気グッズの売り場窓口があります。開店前に何人が並んでいて、1分間に何人ずつ行列に加わり1人あたり何分で買い物をします。窓口を2つにしたり3つにしたら行列は何分でなくなりますか」といった内容です。特殊算の解き方にはそれぞれパターンがあるのですが、出題テーマが多様で、「これは何々算だ」と気づくまでに手間取ったり、なかなか気づかないケースも多く見られます。また、最近はただ答えの数字を書かせるだけではなく、解を導く経緯を説明させる出題もあります。

さまざまなものがある特殊算ですが、それぞれをマスターするのは確かに大変で、「なんでこんな面倒臭いことをしなければいけないの?」という声を聞くこともあります。保護者の方が、「中学で未知数を「x」とする方程式を学べば全部解けるのではないか」と考えて、家庭で方程式を教えてしまうケースもありますが、問題によっては未知数の種類が多くなって収拾がつかなくなったり、解く過程に小学生は習っていない負の数が出てくるなど、かえって手間取ることも少なくありません。逆に言えば特殊算は、小学生の知識の範囲でも、工夫すれば高度な問題が解ける技術だということができます。出題側は、こうした工夫ができる力を見ているわけです。来年度に向けても、特殊算に関してはしっかり練習を重ねることが大切です。

小学校では2020年度から新しい学習指導要領が全面実施されており、入試問題にもそれは反映されています。その代表的なものが統計分野です。従来中学校分野だった内容の一部を新たに小学校で学ぶことになりました。今年の算数の出題でも、条件から表の空欄に当てはまる数値の範囲を考える問題などが出されています。中学受験業界には、「小学校の教科書の内容よりも塾での受験対策が肝心」という考えを持つ人もいますが、そんなことはなく、教科書の内容をしっかり勉強することは、やはり重要です。

また、昨年に続いて今年も多く出題されたのが規則性で、例えば、とある条件の通りに並んでいる数字から、そのルールを見つけ出し答える問題です。大変そうに見えますが、根気よく試行していくと、途中でパターンを見つけることができます。「面倒くさい」と苦手意識を持つ子どもも多いですが、普段の受験勉強で練習を重ねて、自分でルールを見つけられたという成功体験を積むことが重要です。すると、本番でもあせらずに落ち着いて取り組むことができるようになります。出題側は、丹念に頭と手を動かす力があるかどうかを問いかけているのでしょう。

それから、例年の通り図形の問題も多く出題されていました。図形問題は、例えば「同じ長さの辺がある→二等辺三角形ができた→ならばこの角度は●度だ」など、1つの気づきが解法につながります。多様な問題でポイントを見つけ出せるよう、たくさん練習を重ねることが大切です。

算数でも出題テーマは多様になっており、問題文で時事問題が扱われることもあります。今年の例をあげると、PCR検査の判定誤差を取り上げる問題がありました。馴染みがなかったり難しそうなテーマだと臆してしまいがちですが、実は求められている計算自体はシンプルなものがほとんどです。テーマに惑わされず、余計なことを考えずに問われていることをしっかり考えることが重要です。

算数の受験勉強を見ていると、苦手意識を持つ子ほど、解法パターンや公式を暗記して、そこに数字をあてはめて手っ取り早く解こうとしていると感じます。ですが、最近の算数の出題は、筋道立てて自分でじっくり考えること、解に至る理屈を理解することを重視しています。受験勉強においては、「なぜだかわからないけどパターンで解いて答えを出す」ことはやめ、なぜその答えが出るのかをしっかり理解することが大切です。面倒くさいと思うこともあるかもしれませんが、大変でも自分で考えて答えに至った経験は、大きな糧となるでしょう。

理科

例年同様、物理・化学・生物・地学の、さまざまな内容からまんべんなく出題されていました。

毎年、時事問題が出題されますが、今年は地震に関連するものが目立ちました。東日本大震災から12年、ちょうど干支が一回りしたことや、2023年が関東大震災から100年にあたることで防災意識を高めていこうという世間の動きなどが背景にあるのでしょう。また、一昨年、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症もテーマに選ばれていました。

一方で最近の傾向として、ダブルクリップの仕組みのように、身近で仕組みなどあまり考えたこともないものに焦点をあてて原理を考える出題も見られました。このような問題は、教科書の内容や暗記事項だけでは答えることができません。普段から身の回りのさまざまなものの仕組みに関心を持ち、理科で学んだ原理と関連付けて考えることが大切です。ほかにも、家の中の地震対策、季節ごとの植物の移り変わりと食物など、身近というか、一般常識と言ってもよい内容が扱われるケースも多く見られました。学校や塾の勉強は大切ですが、それを入試のための知識として捉えるのではなく、生活の中で科学の目を持って捉えてほしい、という出題側の願いが表れています。日常の生活で、さまざまな体験を通して「生きた知識」として積み重ねていくことが求められます。コロナ禍の影響もありますが、最近の子どもたちは勉強以外の多彩な体験の機会が少なくなり、「えっそんなことも知らないの?」と感じる場面も増えています。保護者の方はまず、ご自身が一般常識を身につけているかをしっかり振り返り、身の回りの動植物や現象について、お子さんに話せるように心がけてください。また、本格的な受験勉強が始まる前に、自然体験ができるキャンプなどに参加して、好奇心を伸ばすことも効果的でしょう。

社会

出題テーマとして、社会の課題や矛盾に鋭く切り込むものが増えていると感じます。今年の出題から例をあげると、日本国憲法の範囲、米軍基地の存在意義、日本の核兵器禁止条約への不参加理由、防衛費の増大などが見られました。中学入試の世界では、真正面から社会課題を捉える出題が珍しくありません。このような出題で問われているのは、世の中で起きていることを自分のことと捉えて、小学生なりに考える姿勢だと思います。

時事問題で目立ったのは、やはりロシアによるウクライナ侵攻です。この戦争が起こった背景やNATOの立場などが取り上げられました。また、子どもたちが生まれる前に起きた日米貿易摩擦、明治期のタバコの専売化の狙いなど、馴染みがないテーマも見られましたが、この手の出題は知識の有無を問うものではありません。資料から、現代に通じる課題が導き出される作りになっています。資料の情報を整理し、日常生活や社会科で勉強したことと結びつけながら考えることが求められています。

社会課題を扱う問題に対処するには、ご家庭でもふだんからニュースを活用して、フランクに意見を交わせる環境をつくることが大切です。子どもには重たいと思われるテーマでも、小学6年生なりに考えることは大切です。その際、心がけていただきたいことは、次のようなことです。

  • 政治にかかわるような内容でも避けないこと
  • ご家族内で例えばお父さんとお母さん、あるいはきょうだいの意見が違っても構わないこと
  • 「私はこう思うよ」の意見を述べるのは構いませんが、反論があることも話題にすること
  • 大人の考えを子どもに押し付けず、子どもの考えが思慮不足でもまずは認めること

出題の形式では、図表やグラフが多く扱われ、資料から情報を読み取って答えさせるものが多くなっています。資料を元に計算させるなど、教科横断的な内容も見られます。また、選択問題については「正しいものを選びなさい」から「正しいものを全て選びなさい」になるなど、難易度が上がっていると感じます。記述式問題も、単に言葉の意味を説明させるようなものではなく、ある出来事が起こった理由を説明させるなど、「暗記すればよい」ではなく、難化の方向に動いています。

それから、小学校の教科書のコラム欄の内容などが取り上げられることも多いので、教科書もしっかり読んでおくことが大切です。

英語

私立中学では、2022年度に江戸川学園取手が英語を必修化して注目されましたが、今年はあとに続く学校が出ていません。公立中高一貫校では埼玉県を中心に英語が出題される学校もありますが、まだ静かな動きです。小学校の英語教育の内容がまだ不安定なことや、コロナ禍で新しい試みに挑みにくいことが影響しているのでしょう。現段階では来年度に向けても英語入試に大きな動きはなく、もし必修化する学校があったとしても、小学校の英語の授業をしっかり受けていれば対処できるレベルになると予想されます。今後、コロナ禍が収まって数年経つ中で、中学入試の英語に目立った動きが見られるようになるかもしれません。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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