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上級者向け 受験マニアックス

2019年8月号 国際バカロレア(IB)について

首都圏では、国際バカロレア(IB)プログラムを実施する学校が徐々に増え、普及・拡大が進んでいます。今回の受験マニアックスでは、国際バカロレア(IB)の中身や学校選択にあたっての留意点について、ご紹介します。

国際バカロレア(IB)とは

【概要】

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate 以下、IB)とは、国際バカロレア機構(本部:スイスのジュネーブ 以下、IB機構)が提供する国際的な教育プログラムで、1968年から実施されています。そもそもは、外交官や国際機関職員、企業の海外駐在員などの子どもに対し、世界共通で通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を認定することを目的としてつくられました。スタートからの約50年でプログラムは徐々に進化し、現在はグローバルに活躍し未来を担う人材を育成するための教育プログラムとして、世界153以上の国・地域、約5,000校にて実施されています(2019年7月現在)。

【使命と学習者像】

IB機構は、「IBの使命」と「IBの学習者像」を以下のように定めています。使命を具現化したものが、学習者像だと言えます。

IBの使命(The IB mission)
  • 国際バカロレア(IB)は、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的としています。
  • この目的のため、IBは、学校や政府、国際機関と協力しながら、チャレンジに満ちた国際教育プログラムと厳格な評価の仕組みの開発に取り組んでいます。
  • IBのプログラムは、世界各地で学ぶ児童生徒に、人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続けるよう働きかけています。
IBの学習者像(The IB Leaner Profile)
  • 探究する人(Inquirers)
  • 知識のある人(Knowledgeable)
  • 考える人(Thinkers)
  • コミュニケーションができる人(Communicators)
  • 信念をもつ人(Principled)
  • 心を開く人(Open-minded)
  • 思いやりのある人(Caring)
  • 挑戦する人(Risk-takers)
  • バランスのとれた人(Balanced)
  • 振り返りができる人(Reflective)

使命と学習者像をご覧いただくと、日本の従来までの教育観とは異なっているところが多いことに気がつくと思います。知識や思いやりなどは日本の教育でも重視されてきましたが、探究、コミュニケーション、挑戦、振り返りといった部分は、日本では系統的な育成があまり行われてこなかったため、個人の資質に依存する面が強く、苦手だったり、積極的には取り組みたくないと考える日本人も少なくありません。
また、従来の日本ではこういった資質は家庭でのしつけや日常生活、成長するにつれて部活動やアルバイトなどを通じて培うものという考え方が主流でしたが、IBでは学びを通して学習者像に基づく資質を身につけていくことを目指しています。

【教育プログラムの種類】

1968年のスタート時は大学入学資格を得るためのDP(Diploma Programme)のみだったIBですが、徐々に改定が進み、DPの前段階のプログラムもできました。各プログラムの内容は以下の通りです。

PYP(Primary Years Programme)

対象年齢:3〜12歳
言語:何語でも可
日本では幼稚園・小学校で実施される。探究する人としての基礎教育を行ったり、バランスが取れた人間に成長するための基礎学力を身につける。日本の学習指導要領の内容に、IBの教育内容をプラスして行う。日本語での実施が可能だが、ぐんま国際アカデミーのように英語で実施する学校もある。

MYP(Middle Years Programme)

対象年齢:11〜16歳
言語:何語でも可
4~5年間のプログラムで、日本では通常中学1年次〜高校1年次の4年間で実施される。教科学習と並行して、社会の現状や自分と社会のつながりを分析・理解し、深く考えたり挑戦する人間に成長することを目指す。日本語での実施が可能だが、英語で実施する学校、科目によって日本語・英語を使い分ける学校もある。

DP(Diploma Programme)

対象年齢:16〜19歳
言語:原則として、英語、フランス語、スペイン語のどれかで実施(一部に日本語での履修が認められている科目がある)
日本では高校2年次〜高校3年次の2年間で実施される。自分の個性や強みを明確にして、進路を極められる人間に成長することを目指す。IB機構が定めたカリキュラムに則って学びを進め、国際バカロレア資格(IBディプロマ)取得を目指す。

IBCP(Career-related Programme)

対象年齢:16〜19歳
言語:一部科目は、英語、フランス語、スペイン語のどれかで実施
学問と職業体験を両立したプログラムで、日本では未導入。生涯のキャリア形成に役立つスキルの習得を重視しており、選択科目の学習と、実地体験や職業体験を同時に行う。修了後は就職するか大学に進学するかの道を選ぶ。

【IB実施校の認定】

IBの各プログラムを実施する学校は、IB機構の調査員の訪問・審査を受け、認定されます。審査は一度で終わりではなく、認定校になった後も毎年行われます。IBの理念や仕組みに適合していないと判断された場合は、認定を取り消されることもあります。
また、IBを実施する学校の先生は、IB機構が開催する国際的な研修会(ワークショップ)に参加し、トレーニングを受ける必要があります。この場合には海外で研修に参加するのが一般的ですが、日本でも一部の大学にIB教員育成の講座が開設されていて、そちらでトレーニングを受けることもできます。オンラインで実施されるものもあります。

【費用面について】

PYPとMYPはそれほど費用がかかりませんが、DPは一人あたりのプログラム受講料が約100万円かかります。費用面の負担はかなりのものだと言えるでしょう。この費用の支払い方法は学校によって異なり、IBコースの授業料に含まれるケースや、授業料とは別途集金するケースがあります。東京の都立高校のように、東京都が予算から生徒のIBプログラム受講料を支出しているため、ご家庭の負担が軽減されているケースもあります。

DPのカリキュラムとDP資格取得要件

【選択で6科目を履修】

DPのカリキュラムでは、下表の6グループの科目から一つずつ選択し、計6科目を履修することが定められています(ただし、グループ6芸術は他グループの科目に代えることも可能)。また、6科目のうち3〜4科目は上級レベル(HL:High Level)、残りは標準レベル(SL:Standard Level)で受講します。これは、大学入学前に専門分野の知識やスキルを準備しておこうという観点から定められたものです。上級レベルは日本の学習指導要領の学びよりもかなり専門的で難しくなっているものもあります。6科目の授業は基本的に英語で行いますが、一部、日本語で学んでも良い「日本語DP対象科目」もあります。

グループNo. グループ名 科目
1 言語と文学(母国語) 言語A:文学、言語A:言語と文学、文学と演劇※1
2 言語習得(外国語) 言語B(標準レベルおよび上級レベル)、初級語学
3 個人と社会 ビジネス、経済地理、グローバル政治、歴史、心理学、環境システムと社会※2、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、社会・文化人類学、世界の宗教(標準レベルのみ)
4 理科 生物化学物理、デザインテクノロジー、環境システムと社会※2、コンピュータ科学、スポーツ・運動・健康科学(標準レベルのみ)
5 数学 数学スタディーズ(標準レベル)数学SL(標準レベル)数学HL(上級レベル)、数学FHL(最上級レベル)
6 芸術 音楽美術、ダンス、フィルム、文学と演劇※1
  1. ※「文学と演劇」はグループ1と6の横断科目
  2. ※「環境システムと社会」はグループ3と4の横断科目

※赤字は日本語DP対象科目

【必修で三つのコア科目を履修】

前述の6科目に加え、三つのコア科目が設定されていて、これらは完全必修です。IBの学習者像を育む特徴的な科目で、時間や手間、探究心ややる気が求められる内容です。従来型の日本の教育とは一線を画したものと言えるでしょう。

科目 概要
課題論文
(EE:Extended Essay)
学習している科目に関連した研究課題を設定して自ら調査・研究を行い、成果を論文としてまとめる。英語の場合は4,000字、日本の場合は8,000字。
知識の理論
(TOK:Theory of Knowledge)
学際的な観点から個々の学問分野の知識体系を吟味し、理性的な考え方と客観的精神を養う。さらに、言語・文化・伝統の多様性を認識し国際理解を深めて偏見や偏狭な考え方を正し、論理的思考力を育成する。最低100時間の学習。
創造性・行動・奉仕
(CAS:Creativity, Action, Service)
教室以外の広い社会で経験を積み、様々な人と共同作業することにより、協調性、思いやり、実践の大切さを学ぶ。最低150時間の学習。

TOKは、哲学、道徳、倫理をミックスしたような内容で、幅広い知識に基づいたしっかりしたものの考え方を身につけたり、他者との違いを理解して尊重できるようになることを目指します。仕上げとして、一人ひとりが英語でのプレゼンを行います。 CASの中身は、ボランティアや募金運動、企業でのインターン、地域と連携したイベント開催などです。夏休みなどの長期休暇などを利用して、まとまった期間取り組むことが求められます。

【国際バカロレア資格の取得要件】

DP資格を取得するためには、カリキュラムを全て履修するだけでなく、外部評価と内部評価を受け、一定の点数を取る必要があります。

外部評価(トータル評価の7〜8割を占める)

IB機構が実施する世界共通試験(IB試験)を受験します。出題・解答は基本的に、英語、フランス語、スペイン語のどれかで行います(日本人学生はほとんどが英語を選択)。IB試験は毎年5月と11月に実施され、日本の学校では高校3年の11月に受験して、翌年1月5日に結果が出ます。評価を行うのはIB機構が認定した評価員約5,000人です。
ここで、歴史の設問例を二つご紹介しましょう。かなり難しい内容で、深い知識と洞察力、英語力、文章力などが求められるのがわかると思います。

♦アフリカまたはアジアで21世紀に誕生した国家を一つ選び、その主要な国内問題と、それらがどの程度解決されたかを論ぜよ。
♦経済社会問題への対応について、二つの多党制国家の政策を比較対照して論ぜよ。
(文部科学省ウェブサイト 国際バカロレア日本アドバイザリー委員会 報告書 参考資料集より)

こういった問題は正解がなく、様々な観点からの答えが想定されます。日本人の感覚だと「本当に公正な採点がされるの?」と疑問に思ってしまいますが、IB機構側は「評価員をしっかりトレーニングしているので大丈夫」と述べています。細かい部分を見るというよりは、「世界情勢をしっかり把握しているか」「論理が成り立っているか」「説得力があるか」といった部分を重要視した採点が行われていると言えるでしょう。

内部評価(トータル評価の2〜3割を占める)

学校の先生が各科目ごとに課題を設定して行う評価で、成績表や内申点のようなものです。学校によって評価が甘かったり厳しすぎるといけないので、課題と評価結果をIB機構の外部評価員に提出し、必要に応じて調整等を行うことで、評価の客観性・正確性を確保しています。

DP資格の点数

上記の外部評価と内部評価を合算してトータルの評価を行いますが、その内訳は以下の通りです。

  • 6科目:各7点(計42点)
  • 課題論文とTOK:最大3点(CASは評価対象外)

45点満点のうち24点以上を取得すると、DP資格を取得することができます。なお、例え6科目で42点を取ったとしても、必修の3科目を落とすと資格は取得できません。平均点は毎年30点前後で安定しており、DP資格取得率は毎年8割程度となっています。
なお、DPは対象年齢が19歳までとなっていますので、高校3年次に資格が取れなくても、翌年に個人で受験して再チャレンジすることができます。また合格した場合でも、より良いスコアを目指し、再受験するケースもあります。

IBプログラムの利点

IBプログラムを履修したりDP資格を取得することの利点とはどういったものなのでしょうか。

第一の利点は、海外大学進学を目指す場合に、DP資格を活用できるということでしょう。現在、世界中の1,800以上の大学で、DP資格のスコアを使った入学者選抜が採用されており、ハーバード大学、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学などの名門大学も含まれます。活用のされ方は様々で、DP資格のスコアだけで入学できるケース、一定のスコアがあれば加点されるケースなどがあります。例えばケンブリッジ大学の場合は、「●●コースはIBスコアが40〜42、HLで7,7,6または7,7,7のスコアをとっていれば入学を認める」といった基準を定めています。かなり厳しいものではありますが、IBでハイスコアさえ取れば、世界有数の大学進学の道が開かれるというわけです。

また、IBプログラムを通じて世界的に通用する高度な英語力を身につけることができますので、英語を使って自在にコミュニケーションが取れることは、その後の人生のあらゆる場面において、強力な武器となることでしょう。

しかし、海外大学進学や英語力強化を目指すだけなら、IBではない手段でも実現できます。IBプログラムを通じて、国際的な感覚や深い洞察力、高いコミュニケーション能力や探究心などの多角的な人間力を身につけられることこそ、IBならではのアドバンテージだと言えるでしょう。

日本の大学進学への活用

海外大学進学に有利というイメージが強いIBですが、最近は日本の大学入試でDP資格を活用できるケースも増えています。日本の大学、そして社会が、IBの学習者像を備えた人材を求めていると言えるでしょう。

海外大学と同様、DP資格の活用法には様々なパターンがあります。大学が定めた点数を取っていれば合格とするケース、大学が定めた点数を取っていればAO入試の出願を認めるケース、DPプログラムを履修していれば24点取れていなくてもAO入試の出願を認めるケース、大学が指定した科目のみが一定の点数以上だったら合格とするケース(全体のスコアは問わない)、大学が指定した科目のみが一定の点数以上だったらAO入試の出願を認めるケース(全体のスコアは問わない)などです。

ここで、筑波大学と慶應義塾大学のIB活用入試の事例をご紹介します(2019年7月現在のHP公表データ)。

筑波大学

入試名称:国際バカロレア特別入試
導入年度:平成26年度から実施
対象学部:全学部
対象者:DP資格取得者のみ
募集人数:各学部若干名
備考:学群や学類によって、DP資格取得を要件とするもの、一定レベル以上の成績を要件とするものがある。同様に、学群や学類によって、それぞれ大学が指定するIBの科目を履修していることが出願資格に含まれる。

慶應義塾大学

入試名称:国際バカロレア資格取得者(日本国内)対象入学試験
導入年度:平成26年度から実施
対象学部:法学部(法律学科および政治学科)
対象者:DP資格取得者のみ
募集人数:20名
備考:DP資格を取得していることが出願資格。第1次選考(書類選考)と第2次選考(論述試験、面接)を経て、合否を決定する。

この他にも、東京大学、お茶の水女子大学、東京外国語大学、首都大学東京、青山学院大学、学習院大学、中央大学、法政大学、明治学院大学、立教大学、横浜市立大学などの様々な大学で、国際バカロレアを活用した入試が実施されています。

日本のIBプログラム実施状況

【首都圏のIB認定校・予定校一覧】

日本政府は将来の我が国を担う人材として、DP資格取得者に強い期待をかけており、IB認定校を200校に増やすという目標を掲げています。文部科学省でも、グローバル人材育成の観点から、国際バカロレア(IB)の普及・拡大を推進しています。
2020年度は首都圏で開智望中等教育学校(新規開校)と聖ヨゼフ学園の2校が新たに中高段階でIBプログラムを開始しますが、今後も導入校は増えていくことが予想されます。
以下に、首都圏のIB認定校・予定校一覧を記します(2019年7月現在。一条校のみ、インターナショナルスクールは除く)。

東京都
  • 開智日本橋中学・高等学校(MYP、DP)
  • 玉川学園中等部・高等部(MYP、DP)
  • 東京学芸大学国際附属国際中等教育学校(MYP、DP)
  • 都立国際高等学校(DP)
  • 武蔵野大学附属千代田高等学院(DP)
神奈川県
  • 県立横浜国際高等学校(DP)
  • 法政大学国際高等学校(DP)
  • 聖ヨゼフ学園小学校・中学校・高校(PYP、MYP候補、学年進行でDP認定見込)
  • 三浦学苑高校(学年進行でDP認定見込)
埼玉県
  • 昌平中学校・高校(MYP、学年進行でDP認定見込)
  • 筑波大学附属坂戸高校(DP)
  • 市立大宮国際中等教育学校(MYP、学年進行でDP認定見込)
茨城県
  • 茗渓学園高等学校(DP)
  • 開智望小学校・中等教育学校(PYP、MYP、学年進行でDP認定見込)
群馬県
  • ぐんま国際アカデミー初等部・中等部・高等部(PYP、MYP、DP)

【IBはどんな子に向いている?】

IBに向いているのは、どのようなお子さんなのでしょう。まず第一に、英語が好き、英語力が高いことが必須条件だと言えます。また、大好きなことに関しては大人顔負けの集中力で取り組める子、世の中の色々な事柄に対し「なぜだろう」「どうしたらいいんだろう」と常に疑問を持って深く考えている子、人前に立ったりみんなをまとめるのが好きな子などは、IBに向いている資質です。

【中学受験生がIB教育を受けるケース】

これから中高一貫校を受験するお子さんがIB教育を受けるパターンは二つあります。一つ目は、MYPとDP両方のプログラムの認定を受けている学校に入り、中高6年間を通してIBを学ぶパターン、二つ目は、DPプログラムのみ認定を受けている学校に入り、高校2年・3年の2年間でIBを学ぶケースです。
前者の場合は、MYPの段階でIBの学習者像を徐々に身につけてからDPに移行することになるので、比較的スムーズにDPの学びを進められるでしょう。後者の場合も、中学の3年間や高校1年次でMYPに近い教育内容を実施している学校が多いので、高校2年になるまでにDPを学べるだけの学習姿勢や英語力は身につきやすいと言えるでしょう。

【高校2年進学時の選択】

IBのDPを実施している学校はDP以外のコースも設置しているケースが多く見られます。中学1年からMYPを受けてきた場合でも、高2になる段階で、DP資格取得を目指すか、普通の日本の学習指導要領に基づいたコースに進むかを、選択できるようになっているのです。
DP資格取得は、正直言って厳しい道です。海外大学進学などの高いモチベーションや、IBの学びを面白いと思える資質などがないと、修了するのはかなりハードです。生徒の個性や将来の目標によっては、IBよりも日本式の学びの方が向いているケースもあります。高校2年に進学する段階で、本当にDPの学びに挑むのか、じっくりと考えていただければと思います。

ただ中学入学時点では、そこまで深く考える必要はありません。IBを実施する学校に入ることで、人間力や考え方の幅が広がり、将来の選択肢が広がる面はあります。また、IBの教育に揉まれる中で、それまで気がつかなかった長所が見えてくることもあるでしょう。日本語での発表だと大人しくておどおどしている生徒が、英語でのプレゼンになると人が変わったように堂々とするケースもよく見られます。
たとえ高校2年進学時にDPコースを選ばないとしても、IBの理念を持つ学校で過ごすことは、プラスの意味を持つと言えるでしょう。

【実際の授業の中身について】

筆者はIBの授業の見学をしたことが何回かありますが、先生が前に立って一方的に何十人もの生徒に説明をする、従来からの授業スタイルとはかなり違います。DPではかなり分厚い、英語で書かれた教科書を予習してきたうえで、授業中は先生と生徒が英語でやり取りを行います。当然、語学レベルはかなり高度です。グループに分かれて課題を進めたり話し合いをすることも多く、生徒同士の議論が白熱することも多々あります。大学のゼミに近いかもしれません。
とある世界史の授業では、植民地から独立した国々を取り上げた本について、「この本、ヨーロッパ人の視点から書かれている気がする」という発言をした生徒がいました。日本だと、ある出来事がヨーロッパ人の視点で教科書に書かれていれば、その視点だけでしか学ばないケースが多いのではないでしょうか。でも実際にはアジアやアフリカ、あるいはラテン・アメリカの人々の視点からの見方もあるはずです。高校生でも深い洞察ができるのは、IBのプログラムが一方的なものの見方だけに陥らないように考えられているからで、幅広い知識や教養、洞察力、批判的な思考力や様々なものの見方を身につけていけば、既存の枠にとらわれない斬新な発想やものの見方をすることができる人材が育つでしょう。

【IB修了者の今後】

近年、IBプログラムの普及・拡大が進んでいますが、実際にIBを修了した人がどのような力をつけ、社会で活躍しているのかというデータは、まだ集まっていません。これから先、IBを修了した人が徐々に増えていく中で、その実際の成果が問われていくことでしょう。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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