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上級者向け 受験マニアックス

2017年 特別号 進路の費用

 子育てに関する悩みで多いのが教育費の問題です。幼稚園3歳から高校卒業までの15 年間について学習費総額の単純合計を見ると、全て私立に通った場合が最も支出が多く、最も支出額が少ない公立に通った場合の約3.38倍になります。しかし、教育機会の平等化のために、東京都や埼玉県では私立高校の授業料負担の軽減化を拡充しました。

 教育費が安ければ家計にとっては助かりますが、子どもの将来を考えると、安いことが最優先ともいえないでしょう。とくに中学・高校時代は将来を左右する大切な時期です。この時期に経験させたいことや学んでほしいことがたくさんあります。進路を決めるための費用を考えていきましょう。

幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間の学習費総額

幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間の学習費総額

学年別にみた補助学習費とその他の学校外活動費

学年別にみた補助学習費とその他の学校外活動費

『学校外活動費』を学年別に見ると、公立では中学校第3学年における約435,000 円が、私立では小学校第6学年における約740,000 円が最も多くなっている。『補助学習費』と『その他の学校外活動費』の割合を見ると、公立では小学校第6学年以降において、私立では小学校第5学年以降において『補助学習費』の割合が『その他の学校外活動費』の割合を上回っている。
学習塾、習い事などへの支出は、中学校、高等学校、大学などへの進学が近づくにつれて増加傾向が見られる。

(注1)「補助学習費」とは、家庭での学習に使用する物品・図書の購入費、家庭教師費、学習塾費等の支出。
(注2)「その他の学校外活動費」とは、体験活動や習い事(ピアノ・水泳・習字等)等のための支出であり、用具の購入費を含む。

東京と埼玉では私立高生の授業料軽減助成が拡充

東京都 軽減額調整のイメージ(年収目安が約350万円~約590万円の場合)

東京都 軽減額調整のイメージ(年収目安が約350万円~約590万円の場合)

 公立高校に通う生徒は2010年から授業料は無償化されていますが、私立高校に通う生徒には世帯収入910万円未満を対象に、授業料の一部に充てる費用として『高等学校就学支援金』を国が学校に支払い、学校が生徒の授業料と相殺することで、教育費負担を軽減する制度があります。

 これは国の法律に基づく全国一律の制度ですが、東京都では2017年度から、都内在住で私立高校に通う生徒の保護者の経済的負担を軽減するために『私立高等学校等授業料軽減助成金』事業をスタートさせ、助成額を大幅に拡充させます。国と合わせて、44万2千円(都内私立高校平均授業料相当)まで、収入に応じて段階的に助成を受けることができます。都内在住者であれば、都外の私立高校に通っていても助成を受けることができます。

 また埼玉県でも、世帯収入が609万円未満を対象に、埼玉県内の私立高校平均授業料相当の37万5千円まで助成する補助制度が拡充されます。

 授業料以外でも、世帯収入の上限はありますが、教科書・学用品などの助成や、施設費などの納付金、入学金の給付を受けることもできます。

 世帯収入が該当する場合は高校の授業料などの負担が軽減するので、私立高校への進学のハードルは低くなります。また、中高6年間のうち3年間の授業料負担が軽くなることから、中学受験を考える家庭が増えるのではないかと言われています。

 『学年別にみた補助学習費とその他の学校外活動費』のグラフからも読み取れるように、公立中学校に通っている生徒の学校外活動費は塾などに通う補助学習費を含めて約43万5千円と高くなっていて、高校受験の準備に費用がかかっていることがわかります。同様に、私立小学校の6年生では中学受験に備えて74万円の学校外活動費が支出されているのです。

 高校の授業料負担が軽減されたとしても、大学進学を考えると、国立大学では1年間の学費が67万3700円、公立大学では68万2100円、私立大学では131万9700円となっているので、東京大学などの国立大学への合格実績が高い私立中高一貫校に対する注目はますます高まることが考えられます。また私立中高一貫校では、補習や講習などによって学力の定着を図っているほか、受験指導にもきめ細かく取り組み、予備校へ通うことなく希望大学への合格を勝ち取っているケースも多いのです。

東京都 私立高校の授業料負担軽減

東京都 私立高校の授業料負担軽減

埼玉県 私立高校の授業料負担軽減

埼玉県 私立高校の授業料負担軽減

授業以外の教育が進路を豊かにする

一生の人間関係という最大の財産が得られる

 私学では生徒会費、部活動費、同窓会費などを必要とする学校が多くあります。生徒会費は月数千円程度のようですが、部活動費はクラブの活動内容などによって異なります。強豪と言われるようなレベルの高いスポーツ系クラブでは遠征や合宿などの費用も必要になります。文化系のクラブでも、学校外でのプレゼンテーション大会やシンポジウム、フィールドワークへ出かける場合には費用がかかります。同窓会費は高校進学後から徴収されるケースが大半です。

 こうした費用により得られる経験で人間的にたくましく成長するほか、一生を通して付き合う人脈を得ることができます。

 中高一貫校では思春期にあたる6年間を同じ学校で送ります。この濃密な6年間で人間関係を築く場は、ホームルームクラスをはじめ生徒会や部活動、課外活動など多岐にわたります。とくに異学年交流ができる生徒会活動と部活動、大きな行事の準備を行う実行委員会の活動などによる経験で人間的にたくましく成長していきます。

 また、私学では恩師である先生方が長く在籍されていることから、卒業後も学校を中継点として在校時の人間関係が継続・進展するなど、絆の強さが私学の特徴と言えます。

中学生から体験できる海外研修や国際理解教育

 私立中高一貫校では英語の授業だけでなく英会話教育を充実させている学校が数多くあります。ネイティブ教員が常駐して授業時間以外でも英語でコミュニケーションをとる学校生活の中で英会話力が身につくほか、異文化に触れて視野を広げることができます。

 また、諸外国をより深く知るための『国際理解教育』や、実体験することを目的とする『海外研修』も私学では多く行われています。これは公立校に比べ格段に充実しています。

 海外の学校と姉妹校提携や教育協力関係を結び、留学生を受け入れるとともに、自校からも長期・短期の留学制度を作り、生徒を派遣しています。また、中高希望者を対象とする『海外語学研修」、さらには全員参加の『海外修学旅行』、長期・短期の留学制度などを実施するほか、ホームステイやその国ならではのアクティビティなど内容も多彩です。中高生の間に海外を体験するには盛りだくさんのプログラムです。

 特に英語・国際関連のコースを設置している学校は、そのコースに限らず、学校全体で国際理解協力や海外研修に力を入れているところが多いのです。なかには『国際部』などの専門部署を設置して、こういった教育プログラムに力を注いでいる学校もあります。

 こうした留学や研修に参加するには授業料以外の費用が必要です。行先によって費用に違いはありますが、平均的には2週間ほどの日程で30〜60万円といったところです。私学が実施する海外研修や留学などは、一般の留学ツアーなどを利用するよりも安価で、何よりも“安心感〞に大きな違いがあるのです。研修は学校独自の教育プログラムの一環ですから、英語科の先生方を中心に多くの学校スタッフが同行します。また、生徒単独での留学の場合にも学校の先生が現地へ足を運び綿密な計画と交流を図るほか、現地にいる卒業生が生徒をフォローしてくれるようです。

 帰国後にも単位不足で留年することなく、留学先で取得した単位を認めて進級できるシステムも多くなっているようです。

高校
中学
独自性のある課外講座・体験学習
2015年に入り急速に広まる

 個性や能力が目覚ましく伸びる中学・高校時代には学力を高めることも重要ですが、社会性を高め、感性を磨く教育も必要です。私学には多くの課外講座や体験学習が設けられ、生徒を全人格的に成長させることをめざしています。

 音楽・演劇・美術・古典芸能など優れた芸術を鑑賞する行事、自然に親しみ生命の大切さを理解する各種の体験学習、海や山で身体を鍛える臨海・林間学校やスキー教室、高度な技術や工芸、楽器演奏などを専門家の指導で実体験する特別講座、企業や行政・司法機関などの現場を訪問して社会のあり方を探る社会科見学など。長期休暇の期間や公立校が原則として休みの土曜日などに行っていて、こうした独自のプログラムは公立校よりも多いのです。

 多くの場合、学校の建学の精神や教育理念などに根ざしたもので、教科学習とも連動した学習が実施されます。事前・事後学習や体験によって得た知見を発表する機会も設けられています。教室内での授業以外のオプション的な取り組みと捉えがちですが、こういった教育実践による成長に私学で学ぶ大きな意味があるのです。

 費用はまちまちですが、芸術鑑賞の場合は学校側や主催者の配慮もあり、安価に抑えられています。観察やフィールドワークが盛り込まれた宿泊を伴う体験学習なども、学校の宿泊施設を利用することが多く、長期休暇の宿泊研修でも3〜5万円程度のようです。土曜日などに開催される特別講座も、その分野の専門家となった卒業生を講師に迎えるなどしてロールモデルとしているケースもあります。

先生の熱心さが教育の質を支える

 毎日子ども達と接して学習と生活の指導に携わる先生方の存在が、私学の教育の質を支えています。私学と公立校の大きな違いは異動がないことです。一部の大学付属校や系列校を持つ場合を除き、学校に採用されれば定年までその学校で教鞭をとり続けることがほとんどです。教えを受ける生徒にとって、これは非常に重要です。卒業後も学校へ行けば先生に会うことができ、悩みを相談することもできるからです。

 3〜5年程度で学校を移らなければならない公立校の先生と違い、じっくりと腰を据えて教育に取り組めるのです。公立校にも熱心で優秀な先生は多くいますが、私学の先生は一生の職場に対する情熱と愛着が生徒や学校への思いの強さにつながります。担当教科の教授法や研究に情熱を傾ける先生が多く、研修なども頻繁に行われます。授業以外の活動や学校生活全般にも熱心に取り組み、生徒一人ひとりへの対応もきめ細かく、生徒の資質や希望に基づく進路指導や受験指導を行う先生が多いのです。

 一つの学年を中学入学から高校卒業まで6年間を通して受け持つ『担任持ち上がり制』や担当教員全員で学年を見守る『学年担任団』制など、一人ひとりの生徒をきめ細かく見守る制度など独自のシステムを取り入れている私学も多いのです。また、思春期の生徒たちの心のケアのためにカウンセラーを置いている学校も多くあります。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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