上級者向け 受験マニアックス
2016年1月号 2020年スタートの大学入試「新テスト」とは?
この記事は2015年度の情報です。最新の情報は2019年6月号をご覧ください。
4年後の大学入試からセンター試験廃止

今年も1月16日から大学入試センター試験が始まり、全国で約56万人が受験しました。この大学入試センター試験が廃止され、4年後の2020年から新しい大学入試のテスト(注 2020年4月~翌年3月の間に実施されるテスト、の意味)が始まることをご存知でしょうか。
大学入試のあり方を議論する文部科学省の会議では、現在、2020年から導入する2つの共通テストを検討中です。「大学入学希望者学力評価テスト」と「高等学校基礎学力テスト」です。ちょうど今の中学1年生が大学受験をするのが2020年にあたり、今後、中学受験をする小学生は新テストを利用して大学受験することになります。
2つのテストは受験対象者や難易度が異なります。「大学入学希望者学力評価テスト」は、現在4年制大学に一般入試で受験する学力の高校生が対象です。一方「高等学校基礎学力テスト」は、高校生としての必要最低限度の学習内容を身につけたことを証明するテストです。推薦・AO入試で大学進学する高校生が受験者のイメージです。
4年制大学に行くなら「大学入学希望者学力評価テスト」を受ける
2つの新テスト導入を前提に、今後、中高一貫校の授業や学習内容がどう変わるかを予測してみたいと思います。
「高等学校基礎学力テスト」は高2以上から複数回受験でき、出題範囲は高校1年までです。中高一貫生ならば、ここを楽に通過できる学力を身につけたいものです。いわば、中学から高校1年までの学習成果を振り返るためのテスト、という位置づけです。高2から受験できますから、「大学入学希望者学力評価テスト」よりも1年早く、2019年からの実施が計画されています。
「大学入学希望者学力評価テスト」は、現在でいう大学入試センター試験に当たるテストで、高校3年生が受験します。現在のセンター試験と大きく異なるのは、思考力や判断力、表現力が問われ、記述式での解答も求められる点です。昨年12月に文部科学省が公表した、数学と国語のイメージサンプル問題にその特徴がよく表れています。
数学は変わった問題や難しい問題が出るわけではありません。ただし、途中式を書かせる問題が多く、論理的思考力が問われます。現在、中学受験を目指している小学生は、塾の先生から「計算式は書きなさい」と口酸っぱく言われていると思います。大学入試までその習慣は役立ちますから、今から面倒がらずにしっかり書くくせをつけましょう。
これからの中高一貫校は新テスト対応型の授業になる
国語は表やグラフなどの資料を読んで答える問題が中心になります。記述式の解答も論理性が問われます。国語の問題というと、「登場人物の心情理解」「著者の主張の読解」といったイメージがありますが、そのようなイメージとは大きく異なることに注意が必要です。
当然、中高一貫校でも論理性や思考力を重視した授業が多くなってくるでしょう。文章やレポートを書く機会が増え、主張を発表する機会も増えます。中高一貫校に入ったら、そこに正面から取り組んで、中学受験の勉強で身につけた記述力から、もう一歩進んだ、深い思考を伴った書き方ができるようになりたいものです。それが2020年の新テストに対応した学力を伸ばすことにつながります。
2020年以降、大学入試の英語については、民間団体が実施している既存の英語資格・検定試験を利用し、そのスコアなどを活用する方向になっています。入学に必要なレベルの上限は、英検なら2級、TOEFL iBTで42~71点、IELTSで5.0あたりが想定されています。特に日本人は英語を「書く」「話す」のが苦手とされます。「読む」「聞く」だけでなく発信力をつける勉強が中学段階から必要です。ディベートやディスカッションに積極的に取り組むとよいでしょう。
2020年の大学入試改革の原点となっているのは、答えが一つに定まらない問題に自ら答えを探せる「実践力のある人材育成」です。論理的思考力や資料を読み解く力、話せる・書ける英語力などは、大学入試に必要だから、という理由を越えて、社会の要請でもあるのです。
新テストが導入されれば、おのずと中学・高校の授業も変わってきますし、すでに対応した授業改革を始めている学校もあります。ご家庭でも、学校選び、そして今、お子さんが学んでいる受験勉強に「2020年対策」の視点を持つことが、有意義な中高6年間を過ごすキーポイントになるでしょう。