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上級者向け 受験マニアックス

2015年8月号 タブレットの普及で問われるICT教育の質

2015年に入り急速に広まる

2015年に入り急速に広まる

タブレット端末などを活用するICT(情報通信技術)教育が今年に入って急速に広まっています。校舎内の無線LANが整備され、教室からネットワークにアクセスできるようになったことや、端末が安価になり大量導入しやすくなったことが普及の背景にあります。また、第2次安倍内閣はIT戦略として、2020年までをめどに「デジタル教科書・教材の導入」「電子黒板の1クラス1台の整備」「生徒1人1台の情報端末の導入」をうたっており、ICT教育は今後も大きな注目を集めるでしょう。

これまで先進校でしか経験できなかったICT教育が、多くの私立中学で広がりつつあるのは受験生にとって喜ばしいことです。一方で教えている内容や活動には学校ごとの違いがあるようです。

タブレットで頭がよくなる?

今年に入り次々と導入されているのがタブレット端末です。多くの学校では、学年ごとに導入したり、特進クラスなどのコース単位で段階的に取り入れたりしています。タブレット端末には学習に役立つアプリや、共有のシステムがインストールされており、授業や自主学習に用います。

導入した学校の先生方からは、アプリを活用して「子どもたちが勉強するようになった」との声を聞きます。タブレット向けには英単語練習から、数学のドリル、歴史や理科などあらゆる教科のアプリがあります。どのようなアプリを採用するかは学校の判断によりますが、どれでもゲーム感覚で解くことができるうえ、物珍しさも手伝って生徒が熱中して取り組んでいるからでしょう。また、部活の合間に暗記ものの練習をしている風景も見られるようになってきました。その意味で知識を覚えたり、数式を使いこなしたりするのに、タブレット端末とアプリは最適な学習ツールといえます。

ICTの本質は時間と空間の節約

これまでは「コンピュータ教室」などに移動しなければ使えなかったパソコンがタブレット端末の導入により普通教室で使えるようになりました。手元に1台があれば図書館に行かなくても資料を検索し、活用することができます。いちいちロッカーを開けなくてもドリルはすぐに開けますし、先生が配ってくれるプリントも職員室に取りに行く必要はありません。共通のデータベースにアクセスして取り出すことができます。

つまり、ICT機器を使うことの意味は「時間と空間の節約」にあるのです。タブレットを使うこと、イコール頭がよくなること、ではありません。時間と空間が節約できるから、勉強する時間が増えたり、もっと調べ学習が進む、と考えることができます。ここを忘れてしまうと、タブレット端末があればあたかも学力が上がるような錯覚を起こしがちです。そのような考えで使っているだけでは、生徒たちはそのうちアプリで勉強するのも飽きてしまうでしょう。

情報をシェアして発想を広げる

異なる考え方を共有できる

ICT機器を用いるもうひとつのメリットは「異なる考え方を共有できる」点にあります。たとえば数学で一人ひとりがどんな解き方をしたのかを共有するのに便利なのです。すでに数学の計算問題をアップロードして世界の子どもと共有できるクラウドサービスもできています。生徒はほかの人の解き方や問題の立て方を見て「こんなやり方もあったのか」と新たな気づきを得ることができます。

情報を共有(シェア)して発想を広げる。これは紙とペン、黒板といった昔ながらのツールで出来ないことはありません。でも、時間と空間を節約できるICTの特性を活かせば、生徒はすぐにフィードバックを得られ、その場で思考力を鍛えることができるのです。裏を返せば生徒に「何を考えさせるか(issue)」がはっきりしている授業でなければ、ICTの特性は活かされないとも言えるでしょう。

繰り返しますが、ICT機器そのもので頭がよくなるのではありません。ツールとして使いこなし、時間と空間を節約する、情報共有で発想を広げるから学習にも意欲や集中力が増すのです。ここをわかっている学校を見極めるには、ドリルや暗記系の問題だけでなく、学年が進んで応用的な問題を解くときにどのようにタブレット端末を活用しようとしているかを見てください。また、授業以外の行事や生徒会活動などで活用されているかもチェックしてみてください。

デジタルネイティブは大人より賢い

タブレット端末を与えると、ノートをとらなくなったり、学習以外の情報検索に熱中したりしてしまうのでは、という心配がありますね。でも、どうやらそれは今の子どもたちには過剰な心配かもしれません。今の保護者世代が初めてコンピュータにふれたのは、早くて10代前半、社会人になってからという人もいるかもしれません。しかし、今の小学生は生まれたときから周囲にパソコンが存在した「デジタルネイティブ世代」です。

インターネットを検索したら履歴が残ることや、危険なウェブサイトがあることなどは十分承知です。特に学校が管理するネットワーク上でそのようなことをしてはいけないことぐらい中学生になれば理解できます(むしろ、家庭でそうした問題に関心がないことのほうが気になるのですが)。

また「パソコンばかりでノートをとらない」という声もあるようですが、先進校の先生はこのように話しています。「かつて教員の間で“ICT教育でもノートはとらせるべきか”といった議論がありました。しかし、生徒に任せてみると自分に合った方法を選ぶようになったのです」。

パソコンやノートは「手段」にすぎません。「目的」はその単元内容を理解できたかどうかです。パソコンやタブレットを使うべきだ、という硬直した考えではなく、学ぶ側の視点に立って柔軟に使わせる学校の姿勢が大事なように思います。勉強の仕方はひととおりではありません。子どもにはICT機器を道具として使いこなす「学び」の感覚を身につけさせてあげたいものです。

 



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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