上級者向け 受験マニアックス
2017年9月号 英語教育のこれから
グローバル化が急速に進む今、実質的な世界共通語である英語の重要性が増し、日本の英語教育のあり方が見直されています。今号では、英語力をはじめ、これからのグローバル社会で必要とされる力をどのように身につけていけばよいかをご紹介します。
グローバル社会で求められる人材
日本では今、グローバル社会で活躍する人材を育成するための教育改革が進んでいます。経済界が、世界を舞台としたビジネスができる人材を求めているのです。これからの社会で必要とされる人材に必要不可欠なのは、英語のコミュニケーション能力です。さらに、日本的な慣習だけにとらわれずに世界中のさまざまな需要を見つめ、斬新な商品を生み出したり提案できること、つまりイノベーションを起こせることが必要とされています。また、同時に人種、国籍、性別、宗教、文化などの多様性を尊重する「ダイバーシティ」の考え方が大切になってくるのです。
世界中の人材と肩を並べるには
世界でビジネスを展開するグローバル企業では、多国籍の社員を採用しています。残念な話ですが、採用選考で、語学力、コミュニケーション能力、視野の広さなどの総合力を比較すると、日本人よりも外国人の方が優れているケースが多いといいます。
では、世界中の人材と肩を並べるためには、どうしたらよいのでしょうか。大学進学の際には、世界的に見て高度な学びができる大学を選ぶ必要があります。国内に限らず、世界大学ランキングに入るような海外の大学も選択肢の一つになるわけです。さらに大学では、受け身の勉強ではなく、大学の授業や設備やさまざまな機会を、自分を成長させるためのツールとして使いこなしていくような自発的な姿勢が求められます。学内の学びにとどまらず、他大学や他団体と連携して多様な学び方をしたり、長期の海外留学を経験するのもよいでしょう。そんな大学生活を土台にして、世界で活躍できる人材として社会に出て行くことができるわけです。
中学高校で身につけるべき英語力と発信力
中学高校の6年間では、「読む」「聞く」「話す」「書く」の英語4技能を総合的に身につけることが求められています。日本の学生は、「読む」と「聞く」力はそこそこありますが、「話す」「書く」といった能動的な力が足りないことが問題になっているのです。ここでいう「話す」「書く」とは、英語で挨拶や日常会話ができたり、普通の日本語を英訳する力ではありません。自分の意見を、英語で話したり書いたりして伝えられる力のことです。
そのために必要なのは、ふだんからさまざまな事柄について自分なりの考えや意見を持ち、他者に発信するトレーニングを積むことです。これは、英語に関してだけではなく、グローバル社会で活躍するためには欠かせないことです。
こういった面で有効なのが、学校外と連携した取り組みです。最近では、スポーツに限らず、科学の甲子園、数学甲子園、俳句の甲子園など、さまざまな分野でたくさんの学校の生徒が切磋琢磨する機会があります。他校と普段から交流を深め、多様な意見交換をすることも大切です。中高一貫校の中には、全員必修で海外大学でのプレゼンを行ったり、系列の大学教員の前で発表を行うといった高度な取り組みをしている学校もあります。こういった環境の中に身を置くことで、お子さまの英語力と発信力は伸び、将来の選択肢が増えていくことでしょう。中高一貫校を選ぶ際には、学外への挑戦をどれだけ活発に行っているかが、大きなポイントになるのです。
中学高校の6年間で視野を広げる
グローバル社会で活躍する人材には、総合力が求められます。「英語さえできればいい」わけではないのです。国語の分野では、文章や資料を正確に読み解いたり自分の意見をまとめる力、数学などを通して身につく論理的な考え方、自然科学や社会科学の知識、それも枝葉末節ではなく、なぜその現象が起きるのか、なぜ歴史的な事件が起きたのか、といった物事の捉え方、そして、みんなの多様な意見や考え方を取りまとめる力、こういった力を合わせ持って課題に取り組む必要があるのです。これらの力は教科の授業や、さまざまな教育活動の中で育まれます。中高一貫校を選ぶ際には、中学高校の6年間でこうした総合力を伸ばすような授業・教育活動の計画が組まれているか、確認するようにしてください。学校が提示するカリキュラムを見てよくわからなければ、説明会や相談会の機会に教職員に聞いてみるとよいでしょう。
また、中学高校の6年間で、外国人や帰国子女など多様な文化・考え方を持った友人と接することは、お子さまの視野を広げ、その後の人生の糧になります。外国人や帰国子女が身近にいる環境の学校を選べば、英語でコミュニケーションをする力が身につきやすいでしょう。
英語の勉強はいつから?
文部科学省が公示した新学習指導要領には、2020年度から小学校で英語が教科化されることが盛り込まれています。それまでは移行期間として、具体的な実施内容は各校・各自治体の裁量に委ねられている部分が多く、小学校の英語教育の質や量は、地域、私立か公立か、教育方針などによって、千差万別となるでしょう。小学生の保護者の方は、「うちの小学校の英語教育は大丈夫?」「よその小学校の方が進んでいるみたい」などと、不安に思われるかもしれません。しかし2019年度までは、小学生のうちに無理をして、いたずらに知識を詰め込むような英語学習をする必要はないでしょう。中高一貫校では、中学に入ってから英語の勉強をスタートしてもしっかりと力がつけられるように、さまざまな工夫をしてくれています。小学生のうちから受験勉強と並行して中途半端な英語の勉強を始めるよりも、中学校入学後に心機一転頑張る方がよいと思います。
まとめ
これから中学校に入るお子さまは、グローバル社会で活躍する大きな可能性を秘めています。この先さまざまな人に会い、自分の考えを育み、自主的な学びの姿勢を身につけていくのです。中高一貫校を選ばれる際にはぜひ、英語のコミュニケーション能力だけでなく、幅広い視野、自主性、発信力などを通して総合力を伸ばしてくれるような学校を選んでください。