上級者向け 受験マニアックス
2021年8月号 私立中高一貫校における学費支援制度について
この記事は2021年度の情報です。最新の情報は2023年8月号をご覧ください。
「子どもに良質の中高一貫教育を選びたい」と思っている保護者は多いでしょう。でも、中高一貫校の多くは私立です。私立なら学費などに多くの費用がかかります。「今はいいけれど、万一家計の収入が下がったら払いきれなくなる」といった不安から、中高一貫教育を躊躇することもあるかもしれません。実際、2008年9月のリーマンショックの後は、それまで増加を続けていた中高一貫教育を選ぶ家庭が減少に転じました。しかし、現在は当時と違って、様々な学費支援制度ができています。有名なのは高校段階からの就学支援金制度ですが、中学段階でも、保護者の失業など、家計急変時の対応がとられるようになりました。今回の受験マニアックスでは、私立の中学校(中等教育学校前期)段階での学費支援と家計急変時の対応を紹介します。ぜひ制度を知り、安心して中高一貫教育を選んでいただきたいと思います。
中学段階の学費支援
中学段階での学費支援は、国と各県で実施されている制度と学校独自で実施するものがあります。
各県で行っている制度は神奈川県、埼玉県、茨城県だけですが、東京都では直接保護者が申し込む制度がなくても、学校が学費を減免すると、その分を学校に対して翌年補助する制度があります。他の県は国の実証事業のみになります。
■国の制度
対象:年収目安400万円未満で、さらに資産保有額600万円以下の世帯。
2021年度までの時限措置として「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業」の名称で実施されています。2022年度以降の継続については、今後議論されることになります。
授業料が最大で年間10万円(授業料が10万円未満の場合はその額まで)支援されます。条件としては文部科学省が実施する各種調査(アンケートや収入調査など)に協力することとなっています。
■神奈川県の制度
対象:県内在住で県内の私立中学に通う生徒
「私立学校生徒学費緊急支援補助金」という名称で実施されています。東京都など、県外の場合は対象になりません。家庭の事情があり、控除後の所得額(給与所得では総収入金額から給与所得控除額を差し引いた後の金額、自営業等では総収入金額から所得税法により算出した必要経費を差し引いた後の金額)が基準額以内で、前年よりも減少した場合に受給できます。
標準世帯の場合、控除後の所得額が128万円までなら年額16万8千円、172万円までなら年額14万9千円、511万円までなら年額9万円が受給できます。なお、国の実証事業との併用が可能です。
■埼玉県の制度
対象:県内在住で県内の私立中学に通う生徒
「父母負担軽減事業補助金」という名称で実施されています。東京都など、県外の場合は対象になりません。年収目安720万円未満の家庭を対象に、世帯の所得が前の年の半分以下に減少した場合に受給できます。上限は年額20万円ですが、上記の国の制度と併用する場合は、国の制度との合計で20万円までになります。
■茨城県の制度
対象:県内私立中学に通う生徒
「家計急変者への授業料軽減補助金」という名称で実施されています。
月額3万1千円を限度に補助します。また、昨年も同様に県内私立中学に通う生徒を対象にした「私立中学校等授業料軽減事業」が実施されており、控除後の所得額が140万円未満(寡婦控除がある場合は143万円未満、寡夫控除がある場合は147万円未満)で、保有資産600万円以下の場合、年額18万円を限度に補助がありました。2021年度も制度は継続され、夏ごろに案内される予定です。
中学段階(私立中高一貫校)の家計急変対応について
多くの私立中高一貫校では、家計が急変した家庭を対象に、学費や施設費等も含む校納金の減免制度、相当額の給付制度があります。学校によって対象となる所得の基準や減免・給付額、期間等に違いがあります。また、東京都の場合には学校判断で学費を減免した場合に行政が補填する制度もあります。
各校へのアンケートの回答や募集要項・パンフレット等に記載がある学校は次の通りです。内容は各校にお問い合わせください。なお、学費等について貸与制度(大学を卒業して就職したら返済開始)がある学校もありますが、貸与制度のみの学校は外しました。
◎東京23区
青山学院、麻布、足立学園、跡見学園、上野学園、江戸川女子、桜蔭、鷗友学園女子、大妻、大妻中野、開成、開智日本橋学園、学習院、学習院女子、共栄学園、暁星、国本女子、慶應中等部、京華、京華女子、恵泉女学園、光塩女子学院、攻玉社、麴町学園女子、佼成学園、佼成学園女子、香蘭女学校、国学院大久我山、国士舘、駒込、桜丘、実践女子学園、品川翔英、品川女子学院、芝、渋谷教育学園渋谷、十文字、淑徳SC、順天、城西大附属城西、城北、女子学院、女子聖学院、女子美術大付属、成城、成城学園、聖ドミニコ学園、世田谷学園、瀧野川女子学園、玉川聖学院、多摩大目黒、帝京大系属帝京、貞静学園、田園調布学園、東京家政学院、東京家政大附属女子、東京女学館、東京女子学園、東京成徳大、東京都市大付属、東京農大第一、東京立正、東邦音大附属東邦、東洋英和女学院、トキワ松学園、豊島岡女子学園、獨協、中村、日本学園、日大第二、日大豊山、日大豊山女子、広尾学園、広尾学園小石川、富士見、雙葉、普連土学園、文化学園大杉並、宝仙学園理数、本郷、三輪田学園、武蔵、武蔵野、明治大学付属中野、目黒星美学園、目白研心、八雲学園、立正大付属立正、早稲田、早稲田大学高等学院中学部、和洋九段女子
◎東京多摩地区
桜美林、大妻多摩、吉祥女子、啓明学園、晃華学園、工学院大附属、駒沢学園女子、サレジオ(小平)、自由学園、聖徳学園、成蹊、創価、玉川学園、帝京八王子、東京純心女子、東京電機大、東星学園、桐朋、桐朋女子、日体大桜華、八王子学園八王子、八王子実践、藤村女子、法政大学、武蔵野大学、武蔵野東、明治学院、明治大学付属中野八王子、明治大学付属明治、明法、和光、早稲田実業
◎神奈川県
青山学院横浜英和、浅野、栄光学園、神奈川学園、神奈川大附属、鎌倉女学院、カリタス女子、関東学院六浦、北鎌倉女子学園、公文国際学園、慶應義塾湘南藤沢、慶應義塾普通部、サレジオ学院、自修館、逗子開成、聖光学院、清泉女学院、洗足学園、法政大学第二、聖園女学院、山手学院、横浜共立学園、横浜女学院、横浜雙葉
◎千葉県、埼玉県、茨城県
市川、光英VERITAS、国府台女子学院、芝浦工業大柏、渋谷教育学園幕張、千葉明徳、東邦大付属東邦、日出学園、麗澤、浦和明の星女子、開智、開智未来、自由の森学園、獨協埼玉、茨城、茨城キリスト教学園、智学館、土浦日大
※この他、栃木県の学校など、ここに載っていない学校でも制度がある学校はありますので、学校にお問い合わせください。
高校段階の学費支援
高校段階では国の就学支援金と、都県で実施している独自の補助制度があります。各都県私立高校の学費データなど詳しくは受験マニアックス高校受験版の2021年6月号で紹介していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
かつては経済的理由で中学受験に踏み切れなかったというご家庭はたくさんありました。しかし、現在は各都県、各学校にさまざまな種類の学費支援制度が設置されています。こうした背景もあり、保護者の方も中高一貫校を選択するハードルが下がり、近年中学受験は拡大を続けています。
今回ご紹介した学費支援制度はあくまでも「学費」の支援です。海外留学や修学旅行、教材費、実習費など教育に伴う費用は別途必要な場合もあります。しかし、以前に比べ、はるかに支援制度は充実しています。あきらめずに積極的に制度を活用して、お子さまの個性や希望に合わせた学校選びをしていただきたく思います。