上級者向け 受験マニアックス
2023年11月号 9月の大手公開模試から見えてきた2024年度中学入試への動向
今回の受験マニアックスでは、9月の首都圏中学受験大手公開模試(首都圏模試、日能研模試、四谷大塚合不合判定テスト、サピックスオープン、首都圏模試センターの公立一貫模試)のデータから見えてきた人気校など、2024年度中学入試への動向を紹介します。
大手公開模試の受験者数
上のグラフは、大手公開模試の受験者数と受験率(受験者数/群馬県を除く1都5県の小6児童数)を表したものです。2002年以降、受験者数は増加が続きましたが、2008年のリーマン・ショックを引き金にマイナスに転じたのち、2015年前後からは再び上昇傾向が続いてきました。
今年9月の大手公開模試受験者数を昨年と比較すると、男子が788名・2.9%減、女子が56名・0.2%減となっています。なお、受験者数は減っていますが、母体になる小6児童数も減っているので、受験率は昨年から0.1%上がり、15.7%になりました。このことから、2024年度の首都圏中学受験は、2023年度とあまり変わらない受験者総数の水準になりそうです。
なお、これまでの推移を見ると、4月は男子が1.1%増、女子が4.4%増、6〜7月は男子が2.0%減、女子が0.1%増で、9月は男女とも減っています。つまり、模試の回が進むごとに受験者が減っていることになります。コロナ禍中の受験となった昨年は、「公立より私立の方がオンライン授業が得意で質が良いから、やっぱり中学受験をしよう」と考えて遅い時期から「駆け込み受験」をする層が一定数いたのですが、今年は長きに渡ったコロナ禍もひと段落して、「駆け込み受験組」が減っているのでしょう。
また、男子と女子の動きについて、昨年は男子の中学受験志向が高く、競争率が上がって厳しい受験になったのですが、今年はその反動で男子の中学受験志向が下がり、模試受験者数が減っています。女子は逆に、2024年度に向けて高い中学受験志向が見られ、活発な受験情勢になりそうです。
なお、大手公開模試の特徴について、四谷大塚合不合判定テストとサピックスオープンは難関・上位校志向の受験生が多く、首都圏模試は中堅校志向の受験生が中心、日能研模試はその中間という傾向があります。模試別の前年対比では、日能研模試が0.8%増えていて、サピックスは0.2%減とほぼ昨年並み、首都圏模試が1.9%減、四谷大塚が1.6%減となっています。小6児童数自体が減っている中でも、中堅校から難関・上位校の間のレベルの学校を狙う受験生は増えている模様です。なお、首都圏模試センターの公立一貫模試は16.0%減と大幅に受験者を減らしましたが、元々全体から見たシェアが非常に小さい模試なので、これだけを見て「公立一貫校の人気が低下した」と考えるのは早計でしょう。公立一貫校は、各都県・各校の出題傾向の違いが大きいので、教材会社などの小規模な模試に受験生が流れていることも、この減少理由の一つかもしれません。
大手公開模試で人気が上がっている学校
大手公開模試のデータから見えてきた、2024年度入試に向けて人気が上がっている学校を、男女別、学力層別に紹介します。こちらにあげた学校は、前年同月と比べて希望件数の増加が目立つ学校です。なお、こちらは9月の模試の結果ですので、これから入試本番に向けて人気動向が変わってくる可能性もあります。あくまで現時点の状況ということで、ご覧いただければと思います。
男子
学力中堅層で人気が上がっている学校
【男子校】
足立学園、京華、佼成学園、巣鴨、成城、世田谷学園、獨協、立教新座
【共学・別学校】
郁文館、工学院大附属、駒込、サレジアン国際世田谷、淑徳巣鴨、順天、城西大城西、聖徳学園、玉川学園、多摩大聖ヶ丘、東京成徳大、東京電機大、日本工大駒場、日大第一、日大第二、文化学園大杉並、宝仙学園、武蔵野大、明治学院、明大八王子、明星、目黒日大、八雲学園、横浜創英、市川、光英VERITAS、芝浦工大柏、昭和学院、専修大松戸、流通経済大柏、浦和実業、開智、春日部共栄、埼玉栄、栄東
学力上位層で人気が上がっている学校
【男子校】
慶應普通部、攻玉社、駒場東邦、サレジオ学院、成城、高輪、桐朋、学習院、世田谷学園、明大中野、逗子開成、日本学園、東京都市大付属、獨協
【共学・別学校】
大宮開成、開智、栄東、専修大松戸、神奈川大附属、明大明治、渋谷渋谷、芝浦工大
女子
学力中堅層で人気が上がっている学校
【女子校】
江戸川女子、大妻、大妻中野、学習院女子、共立女子、京華女子、恵泉女学園、光塩女子、晃華、佼成学園女子、香蘭、品川女子学院、玉川聖学院、東京女学館、桐朋女子、東洋英和、中村、富士見丘、普連土学園、三輪田学園、立教女学院、和洋九段女子、カリタス女子、聖セシリア女子、日本女子大、横浜雙葉、国府台女子、和洋国府台、淑徳与野
【共学・別学校】
国学院久我山、サレジアン国際世田谷、淑徳、順天、城西大城西、成城学園、玉川学園、多摩大聖ヶ丘、東京都市大等々力、日大第一、文化学園大杉並、文教大付属、法政大、宝仙学園、三田国際学園、明治学院、目黒日大、横浜創英、光英VERITAS、昭和学院、千葉日大第一、流通経済大柏、麗澤、青学浦和ルーテル、大宮開成、開智、埼玉栄
学力上位層で人気が上がっている学校
【女子校】
学習院女子、品川女子学院、雙葉、立教女学院、田園調布学園、東京女学館、東洋英和、浦和明の星、普連土学園、カリタス、三輪田学園、香蘭、立教女学院
【共学・別学校】
開智、開智日本橋、中大横浜、明大明治、法政大、東京都市大等々力、広尾学園、神奈川大附属、国学院久我山、東京農大第一
人気が上がっている学校から見えてきた傾向
まず、名前が上がる男子校の数が昨年に比べて目立って少ないことから、男子の受験志向が低迷していることが伺えます。全体的に昨年の人気校が引き続き名前を連ねており、受験生の学校選びが定型化している様子も見受けられます。
また、全体的に大学の附属校の人気が根強く、「他大学受験をしなくても内部進学で大学に行ける」という安心感を得たいという考えも浸透している様子です。それから、難関大学に入るための受験教育に熱心に取り組む学校よりも、グローバル教育やSTEAM教育など多彩な学びに力を入れていて大学受験ばかりにフォーカスしない学校が選ばれる傾向も出てきていると感じます。名の知れた一流大学に入ることよりも、一人ひとりの個性や多様な価値観を重視する時代にシフトしてきているのかもしれません。
2024年度の新設校・開智所沢の人気について
来年誕生する新設校・開智所沢(埼玉県所沢市)は、こちらのリストには出てきませんが、模試で一定の希望者を集めています。初年度入試は開智グループのいずれかの学校と共同実施になること、1回の受験で開智グループの複数校の合否判定をもらえることから、さいたま市岩槻区の開智と併願するケースもあるようです。さらに今後は、東京都、神奈川県、千葉県の受験生のお試し受験先として選ばれるケースも出てくるでしょう。完全な新設校なので、2024年度入試で第一希望にする受験生は少数ですが、さまざまな学校の併願先として、注目されている状況です。