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上級者向け 受験マニアックス

2024年2月号 東京都と埼玉県(2回目)の進路希望調査結果

今回は、東京都の教育委員会が発表した都内公立中学校3年生の進路希望調査結果と、埼玉県の教育委員会が発表した県内中学校3年生の2回目の進路希望調査結果(1回目の結果は2023年12月号で紹介)を紹介します。各校の募集定員、希望者数、倍率の詳細については、添付のPDFをご覧ください。

東京都の公立中学校3年生の進路希望調査結果

発表:2024年1月9日
調査:2023年12月13日
対象:都内公立中学校3年生

1.全体的な傾向

昨年度まで、この調査は男女別に集計を行っていましたが、2024年度の入学者選抜から都立高校の学年制普通科の男女別定員が撤廃されるため、今回からは男女合計での発表になっています。

下のグラフは、都内公立中学校の卒業予定者数、全日制高校進学希望者数、全日制都立高校進学希望者数を受験年度基準で表したものです。

都内公立中3
            生進路希望推移(受験年度)

卒業予定者数は2022年度から3年連続で増加していますが、今回の増加幅は小さく416名、率では0.5%のみ増えています。全日制高校への進学希望者数は前年より319名減少しています。全日制都立高校への進学希望者数は前年より69名増えています。卒業予定者数が今回とほぼ同じ2016年度と比較すると、都立だけでなく、私立や国立、他県も含めた全日制高校進学希望者は約3,500名、全日制都立高校進学希望者は約5,800名も減っていて、都立高校の人気低下が全日制高校人気低下の大きな理由となっていることがわかります。

下の表は、各項目別の進路希望状況を前年と比較したものです。

区分 24年人数 24年率 23年人数 23年率 人数差異 率差異
卒業予定者数 78,108 100.0% 77,692 100.0% 416 -
都立全日制高校・高専 49,431 63.3% 49,362 63.5% 69 -0.3%
全日制国立・私立・他県公立 19,242 24.6% 19,584 25.2% -342 -0.6%
全日制志望校未定 369 0.5% 415 0.5% -46 -0.1%
都立昼間定時制 2,321 3.0% 2,295 3.0% 26 0.0%
都立夜間定時制 498 0.6% 432 0.6% 66 0.1%
都立以外定時制 175 0.2% 168 0.2% 7 0.0%
都立通信制 119 0.2% 117 0.2% 2 0.0%
都立以外通信制 3,675 4.7% 3,143 4.0% 532 0.7%
特別支援学校 1,017 1.3% 1,013 1.3% 4 0.0%
専修・各種学校 486 0.6% 452 0.6% 34 0.0%
就職希望者等 117 0.1% 114 0.1% 3 0.0%
その他 658 0.8% 513 0.7% 145 0.2%

希望率で見ると、全日制都立高校は0.3%低下しています。全日制国立・私立・他県公立(都内私立希望者が大部分)は0.6%低下しています。ここ数年を振り返ると、3年前は男女ともに私立志向が結構上がり、一昨年は男子の私立志向が下がったものの女子の私立志向はやや上がっていました。昨年は男女ともに私立志向が下がっていました。今回の男女比は不明ですが、おそらく男女とも私立志向が下がっているのでしょう。つまり、一昨年までは都立高校の人気低下の反面、私立高校に受験生が流れている傾向が見られたのですが、昨年、今回と、私立高校人気に陰りが出て、希望率が下がっているというわけです。0.3%や0.6%など、1%に満たない変化は小さく感じますが、上記のように数年積み重ねると大きな変化になります。

そこで10年間の推移を見てみます。次のグラフは、全日制高校の進学希望率の推移で、全日制高校のみの率、チャレンジスクールやフレッジスクールといった「実質全日制」を含めた率を示しています。

全日制高校進学希望率推移(受験年度)

全日制高校の進学希望率はこの10年で下がりつづけ、昨年はついに90%を切ったことに驚きましたが、今回はさらに下がって88.4%になりました。これは、首都圏でも随一の低さでしょう。「実質全日制」も同様に下がり続け、今回は91.6%になりました。従来の慣習に捉われない多様な高校選択が広がっていることがわかります。

次のグラフは、全日制都立希望率、都立以外の全日制希望率の推移です。「実質全日制」は含んでいません。都立以外の全日制のほとんどは、都内の私立・国立高校と、隣接県の私立高校です。

全日制都立と都立以外希望者率推移(受験年度)

全日制都立の希望率は、やや低下が穏やかになってきたものの下がり続けていて、今回は63.3%となりました。都立以外の全日制の希望率は、2017年以降上昇が続いていましたが、2022年から低下に転じ、今回は25.1%でした。つまり、私立高校の人気も明らかに下がっていて、全日制高校以外を選択するケースが増えていることがわかります。

それでは、全日制の都立高校も私立高校も選ばなくなった受験生はどこに流れているのでしょうか。人数ではまだ少ないものの、希望率の増加が続いているのは都立以外通信制です。今回は、前年より532名、率では0.7%の増加となりました。おそらくこのうちの多くは、N高校に代表されるような新しいタイプの通信制高校を選んでいると思われます。都内公立中学校3年生の中で、都立以外通信制を希望する割合は4.7%。つまり、40人のクラスならば2人くらいが選んでいることになります。通信制高校を選択肢として考えるケースが増えており、通信制高校の存在感が増していることがわかります。

2.都立高校の学科・課程別の人気動向

都立高校の学科・課程別の人気動向について、希望者数が100名以上で前年よりも希望倍率が0.1倍以上変動したものを紹介します。

0.1倍以上上がったのは、普通科コース制(0.89倍→1.14倍)と単位制工業科(0.60倍→0.78倍)の2つのみでした。普通科コース制は隔年現象による変動だと思われます。単位制工業科は上がったといっても定員割れで、該当する学校は六郷工科の1校のみなので、限られた範囲での倍率アップです。つまり、都立高校において目立って人気が上がっている学科・課程はほとんどないといえます。

0.1倍以上の低下が見られたのは、農業科(1.20倍→1.08倍)と国際科一般生徒(2.34倍→1.80倍)の2つのみでした。農業科は1.0倍台の年が多かったのですが昨年は1.20倍と人気が目立って上がり、その反動で今年は落ち着いたという結果でしょう。国際科一般生徒は国際高校の1校のみで、昨年がこの10年で最高倍率になるほどの人気だったので、高倍率が敬遠されて倍率が戻ったのでしょう。いずれも少数派の中での変動となります。

都立高校の学科・課程別の人気動向については、多くの受験生に影響するような動きはほとんどなく、挑戦志向などは見られない落ち着いた情勢になっています。

3.希望倍率が高い都立高校

下の表は、都立高校学年制普通科の希望倍率上位5校を、前年と比較したものです。前年までは男女別に算出されていましたが、今回から男女合計になっています。参考までに、前年の男女別の希望倍率を元に男女合計の希望倍率を計算した数値も載せています。

  24年 23年参考男女 23年男子 23年女子
1 豊島 2.37 鷺宮 2.22 石神井 2.06 鷺宮 2.55
2 本所 2.14 昭和 2.07 豊島 2.02 昭和 2.34
3 城東 2.011 神代 2.07 調布南 2.01 神代 2.26
4 三田 2.008 豊島 2.05 江北 1.99 広尾 2.23
5 広尾 1.92 石神井 1.99 狛江 1.98 小岩 2.15

今回のトップは豊島で、前年は男子の2位、男女合計の4位でした。女子はこの10年トップ5に登場したことはなく、男子はたびたび登場しているため、男子の人気が高いことが窺えます。今年2位の本所、3位の城東、4位の三田は、前年は表に全く登場していません。本所は今年目立って人気が上がっています。城東は2021年、2020年は男子のトップ5に登場していて、男子の人気が高い学校です。ただ、2021年、2020年に表に登場した時の希望倍率は2倍未満でしたので、今回は人気が高まっています。三田は前年は表に登場しませんでしたが、前々年までは女子のトップ5の常連で、男子も3年ごとに登場しているので、高い人気が続いている学校です。今回5位の広尾は、前年は女子の4位、2021年と2020年も女子のトップ5に登場していて、女子の人気が高い学校です。今回も女子の希望者が多いと考えられます。

また、前年のランキングには多摩地区の学校名も見られましたが、今回は多摩地区の学校はゼロとなっていて、都心志向が強くなっていることが窺えます。また、東京でも東の方、下町の方では従来から都立志向が高いのですが、今回も本所(墨田区)や城東(江東区)といた学校名が見られることから、下町エリアで都立志向が高い伝統が続いていることがわかります。

なお。以前はこちらの表に進学指導重点校が見られたのですが、2023年も2024年も進学指導重点校は一切登場していません。トップレベル校ではなく上位校に人気が集まるようになっています。このことからも、東京都の高校受験における挑戦志向が低下していることがわかります。

4.難易度別の希望動向

都立高校普通科(エンカレッジスクール、フレッジスクール、コース制、島嶼部を除く)の、難易度別の人気を考察します。

  • 前年は単位制以外は男女別だったので、前年の男女合計を改めて計算。
  • 偏差値はWもぎの都標準偏差を使用。
  • 今回の結果は2024年度用の都標準偏差で分類しているため、各偏差値帯の学校は前年までと異なる場合あり。
希望者数と平均倍率前年対比(前年は男女計)

今回の卒業予定者数は増えていますが、416名、率では0.5%とわずかな伸び率なので、ほぼ前年並みということができます。従って、都立高校普通科の人気が前年並みなら、どの偏差値帯も希望者数はほぼ同じになるはずですが、そうはなっていません。まず、偏差値39以下が9.4%増加、偏差値40〜44が4.0%増加していて、入りやすい高校を希望する生徒が増えています。反対に最上位の偏差値65以上は8.2%減っていて、受験生の挑戦志向が低下していることが窺えます。偏差値45〜49の中堅よりもやや下の学力層も3.9%減少しています。その他、偏差値50〜54、55〜59、60〜64というボリュームゾーンから上位校の人気は前年並みです。

2024年度入試では、コロナ禍がひと段落したことから全体的な挑戦志向が戻ってきたり、都立高校普通科の男女別定員が撤廃されたことから学力や内申点が高い傾向がある女子の間でワンランク上の学校選びがされるようになったりする可能性が考えられましたが、蓋を開けてみると、挑戦志向は活発ではなく、反対に安全志向が目立つ結果となりました(都立高校学年制普通科の男女別定員廃止については、2023年10月号で詳しく紹介しています)。なお、偏差値65以上の希望者が減ったのは、男女合計定員になるから男子の合格が難しくなると考えた男子受験生が、難関校を敬遠したことも一因にはありそうです。一方、入りやすいレベルの都立高校の希望者が増えているのは、2017年から2021年くらいにかけて私立高校の人気が目立って上がり、「入りやすい」「滑り止めになる」と思われていた私立高校の難化傾向が見られたことから、私立高校を断念した受験生が都立高校に回帰した側面があるのでしょう。

なお、今回は偏差値45〜64の間の希望倍率が前年ときれいに重なる形となりましたが、これは非常に珍しいことです。卒業予定者数は若干とはいえ増えていて、この学力層の都立高校には定員を削減しているところもあるので、普通に考えれば希望倍率はやや上がるはずなのですが、前年並みとなっています。この背景には、通信制を選ぶ生徒が増えていることがあるのでしょう。偏差値65以上の希望倍率が下がっていることから、学力上位層の中でも通信制を選ぶ動きが出ていることが窺えます。通信制高校について「不登校や引きこもりの生徒が行くところ」から「自分のやりたいことに打ち込みながら学業も両立できる場所」といったイメージが強くなってきて、従来の高校の枠に捉われたくないと考える生徒たちが、自ら進んで選んでいると考えられます。

今回の東京都の進路希望調査結果を総括すると、受験生の積極的な学校選びの姿勢が小さく「行きたい学校選び」ではなく「安全に行ける学校選び」になっていること、それぞれの学校の特色ではなく学力レベルや合格可能性を見て志望校を選ぶ傾向が強くなっていることが窺える結果となりました。

埼玉県の中学校3年生の進路希望調査(第2回)結果

発表:2024年1月11日
調査:2023年12月15日
対象:県内中学校3年生

※第1回の進路希望調査結果は、2023年12月号で紹介しています。

1.全体的な傾向

県全体の卒業予定者数は62,737名で、前年より690名減少しています。前年、前々年は増加していましたが、今回は減少に転じました。高校進学希望者数は61,690名で、前年より823名減少しています。

下の表は、高校進学希望者の進路希望先の内訳です。

項目 高校進学希望者 全日制進学希望計 県内全日制高校 県外全日制高校 県内公立定時制希望 通信制希望
国立 公立 私立 国立 公立 私立
今回調査 61,690 55,438 271 40,027 10,855 115 387 3,783 1,025 3,822
10月調査 60,557 55,531 293 41,643 9,885 119 378 3,209 821 2,912
10月対比 1,133 -93 -22 -1,616 970 -4 9 574 204 910
前年同期 62,513 56,798 303 40,528 11,489 146 316 4,016 943 3,406
前年比 -823 -1,360 -32 -501 -634 -31 71 -233 82 416
今回調査 100% 89.9% 0.4% 64.9% 17.6% 0.2% 0.6% 6.1% 1.7% 6.2%
10月調査 100% 91.7% 0.5% 68.8% 16.3% 0.2% 0.6% 5.3% 1.4% 4.8%
10月対比 - -1.8% 0.0% -3.9% 1.3% 0.0% 0.0% 0.8% 0.3% 1.4%
前年同期 100% 90.9% 0.5% 64.8% 18.4% 0.2% 0.5% 6.4% 1.5% 5.4%
前年比 - -1.0% 0.0% 0.1% -0.8% 0.0% 0.1% -0.3% 0.2% 0.7%

全日制高校の進学希望者数は55,438名で、前年より1,360名減少しています。卒業予定者数は690名の減少ですから、その減少幅よりも大幅に減っています。また、10月の第1回調査と比べると93名減少していますが、第1回調査から第2回調査にかけて減るというのは、ほとんど例がないのでは、と思える現象で、非常にめずらしいことです。10月の段階では全日制高校に行こうと考えていた生徒が、違う選択をするようになったというわけです。

また例年、10月と比較すると全日制公立高校の希望者が減って反対に全日制私立高校の希望者が増える傾向があり、今回も同様になっています。ただし、第1回調査から第2回調査にかけて県内全日制私立高校の増加数が1,000名を切ったことはなかったのに、今回は970名の増加に留まりました。例年と比べると、全日制私立高校の人気に陰りが出ているようです。

一方で通信制高校の進学希望者は、前年より416名、10月よりも910名増えています。卒業予定者数が減っている中でこれだけ希望者が増えるというのは特筆すべきことで、通信制高校の人気が目立って上がり、反対に全日制高校離れが進んでいることがわかります。

下の表は、公立中学校(義務教育学校含む)卒業予定者のみの進路希望状況を示したものです。県外全日制は国公私立の合計、定時制と通信制は県内県外・公立私立の合計です。

公立中のみ項目 卒業予定者 高校進学希望者 全日制進学希望計 県内全日制高校 県外全日制 定時制希望 通信制希望
国立 公立 私立
今回調査 58,702 57,695 52,102 268 39,700 7,891 4,153 1,013 3,756
前年同期 59,326 58,436 53,349 302 40,366 8,346 4,335 939 3,361
今回調査 - 98.3% 88.8% 0.5% 67.6% 13.4% 7.1% 1.7% 6.4%
前年同期 - 98.5% 89.9% 0.5% 68.0% 14.1% 7.3% 1.6% 5.7%

公立の中学校のみでも、卒業予定者数、高校進学希望者数ともに減っています。全日制高校の希望状況では、昨年増えていた県内国立(筑波大坂戸)が減り、県内公立、県内私立、県外全日制も減っています。県内私立は昨年の14.1%から13.4%に下がっており、県内私立高校の人気低下が全日制高校進学希望者減少の大きな要因になっていることがわかります。通信制は395名増加して、率でも5.7%から6.4%に上がっています。

この10年の変化を見てみます。次のグラフは、公立一貫校を除いた公立中学校(義務教育学校を含む)の卒業予定者数、全日制高校全体の希望者数、全日制公立高校希望者数の推移です。卒業年度ではなく受験年度で表記しています。

公立中3生進学希望者数推移(受験年度)

公立中学校卒業予定者数は2020年度に6万人を切り、2021年度は57,850名まで減りましたが、前々年、前年は5万9千名台、今回は5万8千名台です。全日制高校全体と全日制公立高校の進学希望者数は、前年、今回と減少が続いています。

下のグラフは公立中学校卒業予定者中の、全日制公立高校の希望率(左目盛)と、県内全日制私立高校希望率(右目盛)、県外全日制私国立高校希望率(右目盛)、通信制高校希望率(右目盛)の推移です。県外全日制は、前掲の表から県外公立(埼玉県の場合、隣接県協定による千葉県が多い)を抜いて、私立と国立のみで作りました。

公立中3の校種別希望率推移(受験年度)

全日制公立高校の希望率は2016年度に上がりましたが、それ以降は下降が続き、今回は67.6%になりました。県内全日制私立高校の希望率は2017年度から2021年度まで上昇が続きましたが、2022年度からは下がり始め、今回も下がっています。県外全日制私国立高校の希望率は2018年度から2020年度に上昇しましたが、それ移行は横ばいからやや下降傾向です。一方で通信制高校の希望率は上がり続け、上昇幅も大きくなっています。今回はいよいよ、通信制高校と県外全日制私国立高校の希望率がほぼ重なりました。まだわずかに県外全日制私国立高校が上ですが、来年度には通信制高校が上まわりそうです。N高校やS高校といった新しいタイプの通信制高校も人気ですが、埼玉県では頻繁にスクーリングをする全日制に近いタイプの通信制高校もあわせて人気になっています。

2.地域別の県内全日制私立希望率

続いて、公立中学校3年生の県内全日制私立高校の希望率を、地域ごとに見てみます。下のグラフは、卒業予定者数1,000名以上の市について、県内全日制私立高校の希望率を前年と比較したものです。

公立中3生の私立志向 卒業予定者1000名以上

全県の平均は13.5%で、前年の14.1%から下がっています。前年より私立志向がはっきりと上がった地域は新座市と深谷市で、他は上がったとしても1%未満の小幅な上昇です。一方で前年より私立志向が下がった地域は多く、さいたま市、川口市、川越市といった人口が多い市は軒並みマイナスになっています。入間市は1.9%減、春日部市は1.3%減と、下降傾向が目立っています。入間市、さいたま市、戸田市、越谷市は、前年も今年も連続して下がっていて、私立志向の低下が続いています。

3.希望倍率が高い公立高校

希望倍率が高い普通科公立高校のランキングを紹介します。下の表は、希望倍率1.5倍以上の高校を倍率順に並べたものです。2016年度〜2019年度は20〜24校が登場していましたが、それ以降は5年連続で15校が登場しています。近年は全日制私立高校志向が下がってきているため、受験生が私立に流れているというよりも、公立で高倍率になる人気校が減っていると捉えた方がよいでしょう。

今回
順位 校名 倍率
1 市立川越 2.64
2 市立浦和 2.34
3 越ケ谷 1.723
4 浦和西 1.715
5 川口市立 1.71
6 大宮 1.70
7 和光国際 1.69
8 所沢 1.67
9 川越南 1.62
10 越谷南 1.610
11 上尾 1.609
12 1.59
13 市立浦和南 1.56
14 県川越 1.55
15 熊谷西 1.52
前年
順位 校名 倍率
1 市立浦和 2.85
2 川口市立 2.69
3 市立川越 2.01
4 越谷南 1.82
5 越ケ谷 1.752
6 上尾 1.747
7 大宮 1.72
8 川越南 1.71
9 浦和西 1.70
10 市立浦和南 1.67
11 鳩ケ谷 1.59
12 所沢 1.56
13 県浦和 1.53
14 和光国際 1.51
15 所沢北 1.50

全体的に、例年の人気校が名を連ねていること、トップレベル校よりも上位校の人気が高くなっていることが特徴として挙げられます。

トップは前年の3位から上がった市立川越、2位は前年トップだった市立浦和で、2012年度以降、常にトップはこの両校のどちらかです。3位は越ケ谷で、前年の5位から上がりましたが、倍率そのものは若干下がっています。4位の浦和西は前年の9位から上がっていますが。倍率は前年と同水準です。5位は前年2位だった川口市立で、人気校ですが高倍率が続いて敬遠ムードか起きたようです。6位は前年7位の大宮で、倍率は同水準です。7位は前年の14位から上がった和光国際で、希望者が増えて順位が上がっています。8位の所沢も同様で、前年の12位から上がりました。9位の川越南は希望者が少し減って、前年の8位から下がりました。10位の越谷南は希望者が少し減り、前年の4位から下がりました。11位の上尾は希望者が少し減って前年の6位から下がりました。12位の蕨は、前年は17位で1.49倍ともう少しで登場するところでした。希望者は少し増えています。13位の市立浦和南は前年10位で、希望者が少し減っています。14位の県川越、15位の熊谷西は前年は登場していません。両校とも今回は希望者が増えて倍率が上がっています。

次に、専門学科・総合学科についても同様に希望倍率1.5倍以上の高校を紹介します。前年は12校、今回は13校が登場しています。

今回
順位 校名 倍率
1 大宮光陵・美術 1.95
2 戸田翔陽・総合(Ⅰ部) 1.92
3 大宮・理数 1.88
4 市立大宮北・理数 1.70
4 市立川越・情報処理 1.70
4 杉戸農業・食品流通 1.70
7 川越総合・総合学科 1.676
8 川口市立・スポーツ科学 1.675
9 和光国際・外国語 1.63
10 市立川越・国際経済 1.61
11 川口市立・理数 1.58
12 新座総合技術・食物調理 1.53
12 杉戸農業・生物生産技術 1.53
前年
順位 校名 倍率
1 川口市立・理数 2.10
2 大宮光陵・美術 2.03
3 大宮・理数 1.98
4 新座総合技術・デザイン 1.78
5 市立大宮北・理数 1.65
5 越谷総合技術・情報技術 1.65
7 所沢北・理数 1.60
7 熊谷工業・情報技術 1.60
9 川口市立・スポーツ科学 1.58
10 いずみ・生物系 1.57
11 久喜工業・情報技術 1.53
12 越谷北・理数 1.50

専門学科、総合学科は募集定員が小さいところが多く、応募者数が少し増減するだけで倍率や順位が大きく変わりやすくなっています。今回1位になったのは前年3位だった大宮光陵・美術で、倍率自体はやや下がっています。2位の戸田翔陽は、昼間定時制総合学科の学校で、全日制感覚で通えることが特徴です。これだけ倍率が高くなったのは久しぶりで、6年ぶりの登場です。実際は他の学校に希望者が流れ、もう少し落ち着いた倍率になると思われます。また、3位の大宮・理数、同率4位の市立大宮北・理数、11位の川口市立・理数と、理数系の学科が3つ登場していて、この分野の人気の根強さが窺えます。また、同率4位に市立川越・情報処理と杉戸農業・食品流通、同率12位に新座総合技術・食物調理が入っており、専門学科の中で情報系と食品系の人気が高いことがわかります。

4.難易度別の希望動向

普通科普通コース(昼間定時制を含む、伊奈学園総合は含まない)と総合学科の高校について、難易度別の人気状況を見てみます。

  • 偏差値は北辰テストの50パーセンタイル偏差値(男女単純平均・小数点以下四捨五入)に基づく。
  • 2023年度結果偏差値に合わせているため、各偏差値帯の学校は前年と異なる場合あり。
偏差地帯別希望者数・希望倍率普通科・総合学科

希望者数(棒グラフ)では、ボリュームゾーンである偏差値50〜54の希望者が増えていますが、前年は減少が目立ったため、隔年的な動きでしょう。前年は横ばいだった偏差値55〜59も少し増えていて、こちらはやや人気が上がったようです。一方、偏差値60〜64は今回希望者が減っていて、前年も少し減っていたので、この学力層では公立離れが進んでいるようです。偏差値45未満の希望者も大きく減少していて、やはり公立離れが起きています。

希望倍率(折れ線グラフ)については、最上位の偏差値65以上が最も高い水準で、以下偏差値が下がるにつれて倍率も下がる傾向は例年と同様です。偏差値60〜64は希望者数の減少に伴い、希望倍率も下がっています。偏差値50〜54、偏差値55〜59は希望者数の増加に伴い希望倍率が上がっています。偏差値45未満は高校再編で募集停止になった高校が6校もあり募集定員が減っているので、希望者数が大幅に減っても希望倍率は前年並みとなっています。

5.県内私立高校の人気の傾向

下の表は、県内私立高校の希望者数上位10校です。中学を併設して中3生が在籍している学校は、在籍中3生徒数を全体の希望者数から引き、公立中学校からの希望者数の推定値としました。

順位 今回 前年度 10月対比
(希望数30名以上)
校名 希望者数 校名 希望者数 校名 増加率
1 埼玉栄 472 浦和学院 545 秋草学園 74.8%
2 浦和学院 454 浦和実業学園 499 秀明英光 70.0%
3 浦和実業学園 450 埼玉栄 496 国際学院 50.0%
4 叡明 352 叡明 427 開智未来 47.6%
5 花咲徳栄 328 山村学園 287 本庄第一 44.6%
6 早大本庄 291 栄北 284 浦和実業学園 39.3%
7 武蔵越生 252 早大本庄 284 花咲徳栄 30.7%
8 東京農大第三 251 花咲徳栄 278 東京成徳大深谷 29.7%
9 正智深谷 233 東京農大第三 271 西武文理 28.1%
10 春日部共栄 226 西武台 242 正智深谷 26.6%

希望者数のトップは前年の3位から上がった埼玉栄です。前々年もトップで、前年は浦和学院にトップを奪われましたが、今回はトップに返り咲きました。ただ、希望者数は前年よりも減っています。2位は前年トップだった浦和学院で、希望者が減っています。3位は前年2位だった浦和実業学園で、希望者が減っています。4位は前年と同じ叡明で、順位は変わっていませんが希望者は減っています。5位は前年8位だった花咲徳栄で、希望者が増えています。6位は前年7位の早大本庄で、希望者数はわずかに増えています。7位の武蔵越生は3年ぶりの登場です。前年は11位で、もう少しで表に登場する位置でした。今年は人気が上がり、希望者が増えています。8位は前年9位だった東京農大第三で、順位は上がりましたが希望者は少し減っています。9位の正智深谷の希望者数は前年と同数です。前年は12位で登場しませんでしたが、県内私立高校希望者数が全体的に減っていることから、今回は順位が上がっています。10位の春日部共栄はこの10年間で表に登場したことがない学校ですが、今回は人気が上がり、希望者が大幅に増えています。

表の右は10月対比で希望者が30名以上増えた学校の増加率のランキングです。前回調査からの受験生の動向として、ご参照いただければと思います。1位の秋草学園や2位の秀明英光は秋が深まってから希望者が増える傾向があり、例年通りの動きです。4位に登場した開智未来は学校の規模が非常に小さい学校で、立地的にも茨城・栃木・群馬との県境に近い静かな環境にありますが、しっかりと受験生の人気を集めているようです。なお、増加率の数字を見ると受験生の動きが目まぐるしく感じるかもしれませんが、1回目調査から2回目調査にかけて希望者が大幅に増えるのは例年のことで、しかも増えているのは入試相談のケースが中心ですから、倍率が上がって大変だ、とあせる必要はないでしょう。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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