上級者向け 受験マニアックス
2014年7月号 探究型学習に積極的な高校に注目しよう
将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図る文部科学省の「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」事業が2014年度からスタートしました。 (http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/sgh/index.htm)
それに伴い私立高校で「グローバル(系の)コース」新設の動きが出始めています。また2015年度から都立国際高校は「国際バカロレアコース」を新設と、グローバル教育がなにかと話題になっています。
かつては、こうした教育においては英語だけが注目されがちでした。カリキュラムのうえでも英語の授業時間数を増やし、海外ホームステイを行なって「国際化対応の教育」をうたう傾向にありました。しかし、今回はちがいます。語学力に加えて主体的に学習を進める「探究学習」、さらにその成果を世に問うことを含めた教育を「グローバル教育」としようという考え方が主流になりつつあります。
受け身で学ぶ時代の終わり
探究学習とはひとつのテーマを「調査・研究・発表」といったプロセスを通して掘り下げていきます。小中学校の夏休みの「自由研究」みたいに感じるかもしれませんが、高校の場合はより長い時間を費やして取り組みます。時には1年~2年半かけてひとつのテーマを追いかけ、口頭発表は英語で行なう場合もあります。フィールドワークや実験、論文執筆や口答発表は大学や企業で行なわれているものに近い形になります。小中学校の「自由研究」とはかなり違うものです。
「探究学習をしていたのでは大学受験に間に合わない」「詰め込みでいいから大学受験に必要な知識を身につけるべきだ」と、考える保護者もいらっしゃるかもしれません。しかし、大学、特に難関大学の文系学部では、すでに「解答のない課題に対して主体的に考え、取り組む力」を持つ人が、「従来から知られている知識や技能だけを身につけている人」より高い評価になってきました。授業では1年次からグループワークやディスカッションがさかんですし、就職活動でも、こうした能動的な取り組みで身につけたことを話すよう面接で求められます。講義を聴いて試験を受け、レポートを提出してさえいればいいという時代は終わっています。高校のうちに探究学習を経験することは、大学や社会に出てからのアドバンテージになるのです。
探究学習力と大学入試突破力
とはいうものの、高校3年間だけで探究学習力と高い大学入試突破力の両方を身につけるには時間的にかなり厳しくなります。実際、探究学習力と入試突破力の両立を図った実例としてスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の活動があります。SSHは2002年度から始まった取り組みで、2014年度は全国で199校が指定され、高校生たちが理系分野の探究活動に日々取り組んでいます。指定校では、生徒全員がSSHの活動に全面的に参加しているケースは少なく、特定のコースやクラブ活動として実施しているケースが大半です。参加している生徒は探究学習と通常の教科の学習、さらに大学受験の準備と、かなり多忙な日々を送っています。のんびりした高校生活ではありません。ですが、生徒たちに聞くと、ほとんど「忙しいけれど充実した毎日」と答えます。
付属高校から進学校に広がり始めた
従来、探究学習は大学の付属高校で先駆的に取り組まれてきました。内部推薦で大学へ進学できるため時間のゆとりがあったからです。しかし冒頭で紹介したように付属校でない進学校の中にも、グローバル教育を推進する高校が次々と現れています。これらの高校は探究学習力と高い大学入試突破力の両方を育成するだけでなく、探究学習を通して大学受験に必要な知識も身につけさせることで効率化を図ろうと、意欲旺盛です。忙しい高校生活にはなりますが、学問に向かい合う、探究する姿勢を身につけられるような取り組みをしているかどうか、高校選びの基準も変わってくるでしょう。
その学校の本気度を見極める方法
よい探究学習をしている高校を見極めるのは簡単ではありません。定期考査の点数や大学合格実績のように「数値」としてとらえられないからです。発表や論文などの最終成果だけでなく「プロセス」も重視するため、活動を直接見ていない外部の者からは「わかりにくい」面もあります。
そこで提案するのが次の3つのポイントです。学校説明会などで入試担当の先生に積極的にきいてみましょう。
1)学内で探究学習のコンクールをしたり、論文集を出したりしている
探究学習のレポートが「論文集」「紀要」などにまとめられており、生徒や保護者に配付されたり、外部の人でも閲覧できるようになっていれば、計画に基づいて生徒全員が取り組んでいるとわかります。積極的な学校では校内コンクールで優秀な研究を表彰しています。
2)学外に探究学習の成果を発表している
学外の研究コンクールや論文賞に応募させると生徒のモチベーションアップにつながります。また学校自身も他の学校の取り組みを知り「自校の探究学習は社会から一定の評価を得られるだけのプログラムなのか」と検証ができます。それだけ真剣に取り組んでいる証になるのです。
3)AO入試の実績を詳しくきいてみます
探究学習にしっかり取り組んでいる生徒は大学のAO入試で力を発揮できます。「AOは楽な入試、部活の実績で応募できる。だから一般受験生より学力が低い」といった誤解が一部にあるようですが、国立大学や難関私立大学ではAO入試で相当のレベル、高校時代の取り組み実績が求められます。またAO入試で合格した後もセンター試験対策の勉強を義務づける高校もあります。AO入試の合格実績の中身や分野について詳しくきいてみるのもよいでしょう。