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上級者向け 受験マニアックス

2020年8月号 2021年度首都圏高校入試の変更点(私立高校編)(第1弾:2020年4月〜6月発表分)

この記事は2020年度の情報です。最新の情報は2023年7月号および2023年11月号をご覧ください。

今号では、来年度の首都圏私立高校入試について、現時点で発表されている変更点をご紹介します。大勢が判明する秋頃に、第2弾をご紹介する予定です。来年度の首都圏公立高校入試については、前号(7月号)でご紹介しています。
(2020年9月9日「埼玉県内私立高校の2021年度入試での出題範囲について」を追記)

大きく変わる学校

共学化やコース制の大幅改編、高校募集再開など、大きく変わる学校をご紹介します。

■共学化
光英ヴェリタス(VERITAS)高等学校(現:聖徳大学附属女子)

2021年4月より中高ともに共学化して校名を光英ヴェリタス中学・高等学校に改称して新たにスタートします。音楽科は募集停止します。入学時点で学力レベルによるコース分けは行いません。

八雲学園

2021年度から高校募集も共学となります (中学は2018年度から共学化)。特進と進学の2コース編成です。募集規模は小さいですが、来年度より共学の1期生を迎えます。

広尾学園小石川(現:村田女子)

商業色が強かった村田女子高校は、広尾学園と教育連携を結び、2019年度、2020年度と、教育内容の改革に基づいてコースや学科の改編を段階的に行ってきましたが、いよいよ2021年度から共学化し、校名を「広尾学園小石川高校」に変更します。コースは本科とインターナショナルの2コース編成となります。「広尾学園と同等、同質の教育」が同校の教育方針です。広尾学園は本科、インターナショナル、医進・サイエンスの3コース制ですが、キャパシティの関係で小石川には医進・サイエンスコースを設置しません。本科は、広尾学園では2019年度から高校募集が停止となっているため、小石川のみ高校から入学可能となります。難度面では、従来の村田女子よりは当然難化することが予想されます。

■新規コース制実施
西武文理

来年度より英語科が募集停止となるかわりに、普通科エリート選抜東大→グローバル選抜、普通科一般→グローバル、理数科→理数科先端サイエンスと大きく変更します。英語科は募集を停止しますが、その内容を全コースに反映させていく改編です。なお、スポーツの普通科スペシャルアビリティコースは変更ありません。

桜丘

来年度よりコースの名称が変わります。特待コース→スーパーアカデミック(難関選抜)コース、特進コース→アカデミック(文理特進)コース、クリエイティブリーダーズコース→グローバルスタディーズ(グローバル探究)コースと改称します。また、新たにキャリアデザイン(キャリア探究)コースが設置されます。

佼成学園女子

特進文理コース・特進文理コースメディカルクラスが統合して特進コースに変更となります。またコース名を、特進文理コーススーパーグローバルクラス→国際コーススーパーグローバルクラス、特進文理コース留学クラス→国際コース留学クラスとそれぞれ改称します。進学コースは変更ありません。

大宮開成

特進選抜Sコースが募集停止となります。

千葉日大第一

特進クラス・進学クラスの2コース制の入試を実施します。従来から他大学進学を目指す特進クラスを設置していましたが、原則として入学後の希望制でした。2021年度からは入学時点から分かれることになります。

千葉県公立高校入試の前後期一本化の影響

千葉県では2021年度から公立高校の前後期入試が一本化されますが、それにともなって私立高校入試では後期の日程が、今春までの2月5日開始から2月15日開始に繰り下げられます。日程としては、東京都私立高校の一般入試開始日である2月10日よりも遅くなることになります。千葉県の全日制私立高校は54校あり、このうち後期実施校は今春の入試でも半数の27校に減っていて、一部の難関・上位校を除くと実質的に2次募集的になっていましたが、専修大松戸、日大習志野、千葉日大第一が来春から後期入試を廃止することを発表し、さらに都内進学校と併願できる難関・上位校が少なくなることになります。現時点で後期入試について未公表の学校がありますが、今後募集要項の公表が続くと、さらに後期を取りやめる学校が増えそうです。 もともと後期入試は再挑戦をする受験生を考慮した設定でしたが、安全志向が高まっている昨今の状況とともに新型コロナウイルス感染症拡大の影響があるため、来春は後期入試で再挑戦する受験生の数は例年よりも少なくなりそうです。

東京都の私立高校入試における出題範囲除外について

新型コロナウイルス感染症拡大防止の影響により各中学校で休校が長期化したことを受けて、東京都立高校は入試の出題範囲について一部を除外することを決めています。この都立高校の動きに対して、東京都私立中学高等学校協会は出題範囲について「各校の判断」と決めました。そこで編集部では、帰国生募集のみなどを除いて来春も入試を実施する予定の各校に、出題範囲や告知方法についてのアンケートを実施しました。対応が未定の学校もありますが、8月8日到着分までで一旦アンケートを取りまとめました。

都立の出題範囲の除外については前号(7月号)前々号(6月号)でご紹介しています。

8月8日までに到着したアンケート回答は134校で、全体の7割強にあたります。

出題範囲について

出題範囲については、「都立の出題範囲除外に準拠する」が最多で60%、「部分的に準拠する」は6%で、合計すると66%となり、ほぼ3分の2になります。「部分的に準拠する」とは、コースや科目によって異なるなどの場合です。八王子学園八王子を例に挙げると、文理特進コースについては従来の動向の出題方針通り、他のコースは都立に準拠するとの回答でした。

京華、成女、玉川聖学院、東京成徳大学、日本大学第二、明治学院東村山は科目によって異なるとしていて、英語は都立では除外範囲の関係代名詞等を長文でも出題しないという方針ですが、京華、東京成徳大学、玉川聖学院、日本大学第二は、知識問題としては出題しないものの、長文の中に出てくることはある、としています。成女は自校基準、明治学院東村山は例年通りの出題です。国語は中3の漢字が都立の除外範囲です。玉川聖学院、東京聖徳大学、日本大学第二、明治学院東村山は、表現はいろいろですが実質的に都立準拠と考えられます。京華は中3範囲からも出題することがあるとしていて、成女も独自基準としています。部分準拠の学校ではありませんが、国学院久我山は漢検3級レベルで検討中とのことです。数学では玉川聖学院と東京成徳大学が除外範囲を標本調査のみとして、三平方の定理は出題するかもしれないとしています。京華、成女、日本大学第二、明治学院東村山は都立準拠としています。

珍しい事例は駒込で、原則都立に準拠としていますが、合否に直接影響しない範囲で選択または配点考慮問題として出題することはありうるとのことでした。同校によると例えば8割は準拠するものの、他の2割は除外範囲からも出題し、この部分が得点できるなら特待として認定したい(ただし準拠部分はしっかりできていること)とのことです。

都立の出題範囲除外には縛られない、と回答したのは11%で、青山学院、足立学園、川村、錦城学園、駒澤大学、淑徳、多摩大学目黒、東京女子学園、東洋大学京北、豊島岡女子、日本大学豊山、明治大学付属中野、目白研心、工学院大学附属、明治大学付属中野八王子です。このうち来春の入試では従来型の学力テストを行わず、内申、エッセイ、面接で選抜するという東京女子学園を別とすると、全体的に志望順位が高い受験生が多い上位校が目立ちます。ただし、東洋大学京北は注釈や配点上の配慮は行うとしているほか、青山学院は推薦と帰国の適性検査について、一部配慮するとしています。

都立の出題範囲除外への対応は公表しない、としているのは開成、慶應義塾女子、日本体育大学荏原、早稲田大学高等学院、国際基督教大学(ICU)、多摩大学附属聖ヶ丘でした。最上位校の多くが独自路線、また最上位校以外の一部の学校も独自路線という事だと考えられます。

出題範囲の除外について、まだ決めていないとしたのは17%あり、まだ回答が到着していない学校も検討中ということでしょう。

出題範囲、または出題から除外する範囲の受験生への告知について、印刷した募集要項やウェブ出願ガイド、あるいは資料等に印刷して明示する予定の有無については各校の方針が分かれています。募集要項等に明示、募集要項等に別紙を添付、入試資料などに掲載するなどとしているのは34%と最多ですが、過半数とはなっていません。明示しないとしているのは15%、まだ決まっていないのは31%と、2番目に多くなっています。各校とも伝え方を思案しているようです。その他では、印刷物には掲載しないがホームページへの掲載や説明会で告知する、としている学校が多数派です。日本大学豊山女子はそれだけでなく公式SNSや説明会等の参加者にメールで伝える、としています。その一方で、問い合わせがあれば回答、あるいは質問があれば口頭で回答、としている学校もあります。口頭としているのは錦城学園、淑徳SC、潤徳女子、安田学園、帝京大学です。

出題(除外)範囲の印刷物への明示について

「印刷をしない」という回答には、懸念事項として新型コロナウィルスの第2波、第3波があった場合、それにともなう出題範囲の除外がさらに進むことを想定して、印刷物よりも素早く情報を更新できる手段での告知の方が好ましいという考え方があると思われます。また印刷物以外の手段の場合、特に併願受験生の場合はオンラインも含め、必ず説明会に参加させたいとする学校側の狙いもあるでしょう。志望校としての意思が固まっていく段階で、受験生は頻繁にホームページにアクセスする必要があります。また、質問があれば回答する、という姿勢の学校も少なからずあります。出題範囲を明示することで、範囲外の学習で手を抜くことがないように、という学校側の意向の表れだと考えられます。

なお、以上のアンケート結果はあくまでも8月8日時点の回答のため、出題範囲(除外範囲)や告知方法については今後も変更される場合が考えられます。繰り返しになりますが、出題範囲(除外範囲)等の変更を迅速に告知できるようにホームページや公式SNSを開設している学校も多いので、受験生の皆さんには頻繁に志望校のサイト等をチェックしていただきたいと思います。

埼玉県内私立高校の2021年度入試での出題範囲について

埼玉県の公立高校入試でも、出題範囲の一部を除外することを決めています。私立高校の方針について、東京都と同様に編集部でアンケートを実施しました。未着や対応が未定と回答した学校もありますが、9月4日到着分までで一旦アンケートを取りまとめました。

9月4日までに到着したアンケートの回答は40校で、埼玉県内私立高校全体の約85%にあたります。

出題範囲について

出題範囲については、「公立の出題範囲除外に準拠する」が最多で56%、「部分的に準拠する」は7%で、合計すると6割を超えます。「部分的に準拠する」とは、科目によって異なるなどの場合で、青学浦和ルーテル、獨協埼玉、山村国際です。青学浦和ルーテルと獨協埼玉は、国語と数学はほぼ公立の出題範囲に準拠するものの、英語は青学浦和ルーテルが「文法は8割程度中2までから出題」、獨協埼玉が「基本的に準じるが一部はその限りではなく、例えば関係代名詞は受験生が答える形にはしないが、長文に含める場合がある」との回答でした。英語は学校が求めるレベルを変えない、という姿勢がうかがえます。

山村国際は、英語については獨協埼玉と同様、原則公立に準拠するが長文やリスニングに関係代名詞を含む場合がありうるが直接は問わない、としています。同校は国語についても基本的に公立に準拠するが漢検3級程度を出題する場合がある、としていて、数学は公立の除外範囲でも基本的な教科書レベルは出題する場合がある、としています。

公立の出題範囲除外には縛られない、と回答したのは29%で、浦和麗明、叡明、大妻嵐山、大宮開成、開智未来、川越東、埼玉栄、埼玉平成、栄東、淑徳与野、西武台、早大本庄です。比較的志望順位が高く受験生が多い上位校が多いものの、中堅校も見られます。早大本庄は別として、入試相談の受験生が多数を占めていますから、公立で除外される範囲を出題し、受験生が解けなかったとしても他の問題が解けていれば合格は問題がなく、除外される範囲の出題で正解できれば上位コース合格が期待できる、ということでしょう。淑徳与野は出題傾向を変えないとしています。

公立の出題範囲除外への対応は公表しない、としているのは慶應義塾志木でした。最上位校は独自路線で行く、ということです。出題範囲の除外について、まだ決めていないとしたのは2校あり、まだ回答が到着していない学校も多くは検討中でしょう。

出題範囲、または出題から除外する範囲の受験生への告知について、印刷した募集要項やウェブ出願ガイド等に印刷して明示する予定があるのかどうかについてはグラフのように「その他」が多数派になりました。

出題(除外)範囲の印刷物への明示について

まず募集要項等に明示したり、募集要項等に別紙を添付、入試資料などに掲載するなどとしているのは12%しかなく、明示しないとしているのは17%で、浦和学院、慶應義塾志木、栄東、淑徳与野、東京農大第三、細田学園、早大本庄でした。独自路線の難関・上位校だけではなく、一部の中堅校も含まれています。まだ決まっていないのは15%で、伝え方を模索しているようです。

多数派の「その他」は56%でした。ホームページに掲載、説明会で口頭にて伝達、問い合わせがあれば回答する、などがその内訳です。県からの出題範囲除外の発表が7月になってからで、その時点で来春の募集要項がすでに印刷工程に入っている学校も多く、刷り直しはしないと決めた学校が多いからでしょう。

なお、出題範囲(除外範囲)や告知方法については現時点での予定で、今後も変更される場合が考えられますので、注意が必要です。

2020年4月〜6月に発表された変更点一覧

現段階(2020年7月時点)で判明している2021年度首都圏高校入試(私立高校)の変更点一覧をご紹介します。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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