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上級者向け 受験マニアックス

2022年4月号 2022年首都圏入試を振り返る(私立編)

この記事は2022年度の情報です。最新の情報は2023年4月号をご覧ください。

2022年の高校入試が終了しました。今回の受験マニアックスでは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の私立高校の入試状況の振り返りを紹介します。
各校の詳しい応募者数や受験者数、応募倍率等については、添付のPDFをご覧ください。 なお公立高校の入試状況の振り返りは、前号(3月号)でご紹介しております。

東京都・私立高校

1.全体の状況

以下の表は、編集部の速報アンケート集計による、この3年間の私立高校応募者数の推移です。

東京都私立高校の応募者数(2020年〜2022年)

地域 23区 多摩 合計
区分 入試 22年 21年 20年 22年 21年 20年 22年 21年 20年
速報値 応募者数 応募者数 速報値 応募者数 応募者数 速報値 応募者数 応募者数
男子校 推薦 1,376 1,651 1,406 - - - 1,376 1,651 1,406
一般 6,524 6,050 6,875 240 215 246 1,376 6,265 7,121
合計 7,900 7,701 8,281 240 215 246 8,140 7,916 8,527
女子校 推薦 3,169 3,356 3,525 1,049 1,024 990 4,218 4,380 4,515
一般 4,101 3,821 4,861 1,812 1,797 1,873 5,913 5,618 6,734
合計 7,270 7,177 8,386 2,861 2,821 2,863 10,131 9,998 11,249
男女校 推薦 15,090 15,401 15,073 3,566 3,556 3,951 18,656 18,957 19,024
一般 44,988 41,941 45,362 18,955 19,077 19,911 63,943 61,018 65,273
合計 60,078 57,342 60,435 22,521 22,633 23,862 82,599 79,975 84,297
合計 推薦 19,635 20,408 20,004 4,615 4,580 4,941 24,250 24,988 24,945
一般 55,613 51,812 57,098 21,007 21,089 22,030 76,620 72,901 79,128
合計 75,248 72,220 77,102 25,622 25,669 26,971 100,870 97,889 104,073
  • 一部に未公表校や二次募集が含まれていないケースがあるため、最終数値ではありません。
  • 前年度の数値は、前年のマニアックスでの速報以後の判明分、修正分を反映させています。
  • 神奈川県対応の書類選考型入試は、一般入試に含まれています。
  • 摩地区の男子校は桐朋だけで、同校が推薦を実施していないため、多摩地区男子校の推薦欄には数字が入りません。

推薦入試・一般入試を合計した都内私立高校の応募総数は、前年より3,000件近く増加した100,900件弱でした。地区別では23区が約3,000件増加ですが、多摩地区は前年並み、厳密には若干ですが減少しています。未公表校の結果や追加入試結果が公表されるとこれらの結果に上乗せされますが、今年は公立中卒業予定者数が3,411名、率では4.7%増加しています。表の私立高校の応募総数は23区が4.2%増加したものの、多摩地区は増えていない結果です。

私立高校の人気は、推薦入試の応募者数が1つの指標になります。全体の応募総数が減っているにもかかわらず、前年は23区男子校、男女校、多摩地区女子校で、推薦入試の応募者が増えていました。しかし、今年は23区の女子校が前年対比で微減、多摩地区女子校は微増になったほかは前年より減少しています。これにはコロナ禍の影響もあります。

前年の受験生はコロナ禍で、早めに入試を終えたいとする私立推薦希望者の増加が例年よりも増えていたこともあり、今年の受験生は、実際の入試ではオミクロン株の急速な蔓延に襲われますが、三者面談の時点では、「第6波」に対する警戒はあったにせよ、早く入学校を決めたいとする切迫感は、前年の受験生よりもゆるかったはずです。こうしたことが影響して推薦入試の応募総数が減ったのでしょう。

一般入試は、前年と比べて23区の男子校と男女校の応募総数の増加が目立ちました。23区の女子校は前年も減りましたが、今年も少し減っています。豊島岡女子が完全中高一貫化で募集停止になったことと、星美学園が共学化したことが理由の1つで、特に豊島岡女子は大きな影響がありましたが、もともと女子校の人気が低下していることが背景にあります。多摩地区の男子校では、桐朋のみとなりますが、同校が少し増えたほかは女子校も男女校も前年並みの応募者数です。多摩地区と23区では、23区の方が公立中3生徒数の増加が大きく、多摩地区も生徒数は増えているものの、あまり大きくないことが理由の大きな部分ですが、武蔵野市や調布市など、23区からあまり遠くない地域の受験生が23区の学校を選んだ面があり、都心志向となっています。

以下のグラフは応募総数を公立中3生徒数で割った1人あたりの都内私立高校応募数です。

公立中3生1人あたり都内私立応募数

一昨年までは1.37~1.38程度だったものが、前年は1.34、今年は1.32に下がっています。このように減少した背景の1つには、近年強くなっている安全志向のため、推薦・単願や、公立第一志望でも併願優遇で1校だけに出願した受験生が増えたことが挙げられます。そのため、私立高校複数校に応募して、第一志望校や、少しでも高い志望順位の高校の合格をめざす受験生が減少しました。もう1つは通信制高校に受験生が流れたことです。進路希望調査では全日制高校全体、全日制都立、全日制都立以外の希望率は低下していました。もちろん、「1.32」という水準自体は、神奈川、千葉、埼玉県よりも高いのですが、前年に続いて今年も下がった結果でした。

続いて23区と多摩地区に分けて、応募者数の増加が目立った学校を取り上げます。

2.23区で応募者が多かった学校

以下のグラフは、今年度入試の応募者数上位20校です。これらの学校について、人気の傾向、前年・一昨年の応募者数との比較などを紹介します。

応募総数上位20校
  • 【1位】朋優学院
    前年もトップでしたが、国公立TGコースの新設で、さらに増えました。難化傾向が進んでいるにも関わらず高い人気です。
  • 【2位】國學院
    隔年現象で今年は増加しているようなグラフですが、もともと難関校の併願受験生が多い学校のため、単純な隔年現象というよりも、前年はコロナ禍による安全志向や受験手控えの影響があっての減少だったのでしょう。
  • 【3位】関東第一
    前年は2位でした。同校の応募者は増えていますが、國學院ほどは伸びずに3位になっています。
  • 【4位】早大学院
    前年は3位でした。同校も隔年的な変化ですが、前年は安全志向が強くなって応募者が減ったわけで、コロナ禍がなければ前年ももっと増えていたでしょう。
  • 【5位】青山学院
    前年は8位でした。同校は前年もコロナ禍の安全志向の影響をあまり受けなかった学校で、今年も前年並みの応募者数です。
  • 【6位】淑徳巣鴨
    前年の12位から上がりました。グラフのように応募者の増加が続いています。
  • 【7位】桜丘
    前年は登場しませんでしたが、今年は応募者が大きく増えました。前年は新コース制を実施したにも関わらず、少しですが一昨年よりも応募者が減っていました。今年は新コース制が受験生に浸透したのでしょう。
  • 【8位】中大杉並
    前年9位から上がりました。グラフのように僅かですが減っています。
  • 【9位】安田学園
    前年10位から上がりました。応募者数は少し増えました。
  • 【10位】明治学院
    前年の14位から上がっています。もともと隔年現象で応募者が増減している学校で、今年は順番通り増えました。
  • 【11位】駒場学園
    前年同様の11位です。前年はキャパシティの関係で出願区準を引き上げて応募者が大きく減りましたが、今年は前年並みです。
  • 【12位】駒込
    前年の15位から上がりました。順位は上がりましたが、応募者数はやや減っています。
  • 【13位】豊島学院
    前年は18位でした。前年、今年と順調に応募者が増えて順位が上がりました。
  • 【14位】修徳
    前年は登場していません。グラフのように順調に応募者が増えていて、今年は登場しました。
  • 【15位】青稜
    前年は7位でした。隔年的な変化ですが応募者が大きく減っています。これは前年、コロナ禍対応で一般入試の併願優遇を、神奈川方式の書類選考としたために激増しました。やはり東京都内では公式ルールでは認められていないため、今年は通常通りの筆記試験実施に変更して大きく減っています。隔年的な変化ですが、むしろ前年が例外と捉えた方がよいでしょう。
  • 【16位】岩倉
    応募者数減少傾向が見られましたが、今年はコース改編で応募者増加に転じています。
  • 【17位】杉並学院
    隔年的な増加で、今年はグラフに登場しています。
  • 【18位】淑徳
    前年が15位で、グラフのように少しずつ応募者が減っています。難化が進んだ影響かもしれません。
  • 【19位】駒澤大学
    前年と同様です。今年は応募者がやや増えています。
  • 【20位】日大櫻丘
    前年の13位から下がりました。今年は全校ではありませんが、櫻丘に限らず応募者が減っている日大系の学校が目立ちます。

グラフに登場した各校のほかに、応募総数200名以上で、前年より応募者が10%以上増えたのは、開成、科学技術学園、巣鴨、正則学園、保善、品川エトワール女子、下北沢成徳、東京家政大附属女子、東洋女子、富士見丘、上野学園、大森学園、共栄学園、錦城学園、国士舘、実践学園、城西大附属城西、駿台学園、正則、大東文化大第一、中央大学、貞静学園、東京、東京農大第一、東京立正、日本工大駒場、広尾学園、文教大付属、豊南、目黒学院、目白研心、立正大付属立正でした。

3.多摩地区で応募者が多かった学校

以下のグラフは、今年度入試の応募者数上位10校です。これらの学校について、人気の傾向、前年・一昨年の応募者数との比較などを紹介します。

応募総数上位10位
  • 【1位】昭和第一学園
    前年に続いてトップです。前年まで隔年現象での増減が見られましたが、今年から工学科の募集を停止して進学カラーが強くなったことで、受験生が連続して増えたのでしょう。
  • 【2位】拓殖大第一
    前年と同様に2位です。応募者が少し減っていますが、同校も前年までの隔年現象から、今年は増減の傾向が変わりました。
  • 【3位】八王子実践
    前年と同様に3位でした。同校は前年までコース改編を繰り返しながら段階的にレベルアップを進めてきました。応募者は今年も少し減りましたが、レベルアップしたためでしょう。
  • 【4位】八王子学園
    前年の6位から上がった八王子学園です。応募者数の減少傾向が続いていましたが、今年は増加して人気が反転しています。
  • 【5位】錦城
    前年も5位でした。応募者は若干減りましたが、前年並みといってもよいでしょう。
  • 【6位】中大附属
    前年10位でした。前年は安全志向の強まりで応募者が減りましたが、今年は増えています。
  • 【7位】大成
    前年同様に7位です。応募者数の増減は小さく、安定した人気です。
  • 【8位】早稲田実業
    前年同様に8位です。前年並みの応募者数ですが、同校では学習指導体制を変更するため、今年から募集定員を減らしています。そのため、応募者数は前年並みでも厳しい入試になりました。
  • 【9位】国際基督教大
    前年と同じ9位です。帰国生が多い学校で、今年は帰国生の応募者が減ったものの一般の受験生が増えました。
  • 【10位】桜美林
    前年は4位でしたが、今年は応募者が大きく減りました。併願受験生を中心に、人気がやや過熱していたのが落ち着きました。

グラフに登場しない各校で、応募総数200名以上、かつ前年度よりも応募総数が10%以上増えたのは桐朋、共立女子第二、駒沢学園女子、白梅学園、工学院大附属、聖徳学園、帝京大学、明星学園、武蔵野大学、明治学院東村山、明法でした。

  • 推薦、一般、前後期、書類選考、帰国生入試など、各入試の合計です。一部、二次募集等が含まれていない場合があります。

神奈川県・私立高校

1.全体の状況

以下の表は、編集部の速報アンケート集計による、私立高校応募者数の推移です。

神奈川県私立高校の応募者数(2018年〜2022年)

区分 推薦入試 一般入試
年度 22年速報 21年 20年 19年 18年 22年速報 21年 20年 19年 18年
男子校 378 362 302 501 417 2,301 2,059 2,436 2,661 2,911
女子校 767 782 699 700 721 443 805 1,240 1,503 2,071
男女校 4,666 4,303 4,414 4,078 3,834 15,479 13,247 31,194 33,458 34,800
合計 5,811 5,447 5,415 5,279 4,972 18,223 16,111 34,870 37,622 39,782
区分 書類選考入試 オープン入試(フリー受験)
年度 22年速報 21年 20年 19年 18年 22年速報 21年 20年 19年 18年
男子校 599 613 650 1,089 801 121 117 183 240 181
女子校 1,538 1,212 599 475 481 119 137 145 117 108
男女校 25,639 26,491 9,808 8,829 8,423 2,427 1,653 1,860 1,831 2,250
合計 27,776 28,316 11,057 10,393 9,705 2,667 1,907 2,188 2,188 2,539
区分 合計 オープン入試は、オープンやフリーと銘打った入試をカウントしていて、以前はオープンと銘打たなかったのに現在はオープンと銘打つようになった場合は、その時点からオープンに含めており、慶應義塾のように、オープン型でもオープンと銘打たない学校は一般入試として集計しています。
年度 22年速報 21年 20年 19年 18年
男子校 3,399 3,151 3,571 4,491 4,310
女子校 2,867 2,936 2,683 2,795 3,381
男女校 48,211 45,694 47,276 48,196 49,307
合計 54,477 51,781 53,530 55,482 56,998
  • 一部に未公表校や二次募集が含まれていないケースがあるため、最終数値ではありません。
  • 前年度の数値は、前年のマニアックスでの速報以後の判明分、修正分を反映させています。

推薦・一般・書類選考・オープンを合計した県内私立高校の応募者数は、前年は約51,800件でしたが、今年は54,000件を超えていて、約2,700件増えています。今年の公立中学卒業予定者数は1,955名、約3%増えていました。それに対して私立高校の応募総数は5%を超える増加で、生徒数の増加よりも高い増加率です。冒頭に記した進路希望調査では県内私立希望率が上がっていましたが、その希望状況が応募総数に反映した結果です。

以下のグラフは県内全日制私立高校の応募総数を県内公立中3卒業予定者数で割ったものです。

公立中3生1人あたりの県内私立応募数

2018年は0.825の水準でしたが、その後減少し、前年は0.8に達していません。今年は0.81を超えました。ただ、東京都や千葉、埼玉県では1を超えているのに、神奈川県では高かった2018年でも0.825で、1に届いていません。他都県より低い水準で、受験生1人あたり1校も応募していません。

今年の応募状況は、前年コロナ禍対応で大幅に増えた書類選考が、前年より少し減ったものの、やはり最多です。前年激減した一般入試(学科や面接)は、今年は増えたものの、書類選考の三分の二程度の応募者数になっています。推薦入試の応募者数は微増、オープン入試も小幅の増加です。

書類選考は神奈川県独特の制度で、事前提出の作文などもありますが、出願すれば学科試験や面接もなく、あとは合格発表を待つだけで、合格後の入学手続きまで学校に行く必要はありません。出願基準をクリアする必要はありますが、12月に公立中学校と出願予定先の私立高校との間で行われる入試相談で確認が行われるため、ここで問題がなければ「出願=合格」となるものです。しかし、入試の直前まで必死に準備する、いわゆる「受験勉強」は不要です。また、もともと推薦入試は学科試験を課さないルールで、ごく一部の難関校以外、まず不合格者は出ません。この書類選考と推薦入試を合計すると、全県の応募総数の6割以上が学科試験なしで受験しています。「受験勉強」を必要としない入試で合格した受験生が、高校の学習に遅れずにしっかり取り組んでくれることを願うばかりです。

2.応募者が多かった学校

以下のグラフは、今年度入試の応募者数上位10校です。これらの学校について、人気の傾向、前年・一昨年の応募者数との比較などを紹介します。

応募総数上位10位
  • 【1位】桐蔭学園
    トップの常連校です。グラフのように今年は大幅に増加、4,000名を超えました。以前の男女別学時代のイメージが完全に払拭されて、今どきの進学校としての姿が受験生に支持されているのでしょう。
  • 【2位】向上
    前年と同様の2位です。前年並みの応募者数です。
  • 【3位】相洋
    前年と同順位です。今年は応募者が少し減りましたが、3位を維持しています。
  • 【4位】柏木学園
    前年の8位から上がった柏木学園です。グラフのように隔年的な変化です。前年、アドバンストコースだけで書類選考を実施していましたが、今年はこれを取りやめて学科試験を全コースで実施しました。それでも増えるのは同校の人気が上がっているからでしょう。
  • 【5位】横浜隼人
    前年の6位から上がっています。少しずつですが、応募者の増加が続いています。
  • 【6位】光明相模原
    前年は5位でした。応募者が少し減りました。
  • 【7位】湘南工科大
    前年は5位です。同校も今年は少し応募者が減っています。
  • 【8位】横浜清風
    前年はグラフに登場していません。書類選考の併願受験生を中心に、今年は応募者の増加が目立ちました。
  • 【9位】横須賀学院
    前年7位です。前年並みの応募者数ですが、他校の影響で順位は下がっています。
  • 【10位】横浜
    前年は9位です。一昨年、共学化で大人気なり、前年出願基準を引き上げて応募者は大きく減りましたが、今年はレベルアップした出願基準でも応募者が増えています。

このほか、グラフに登場しない各校で、応募総数200名以上、かつ前年度よりも応募総数が10%以上増えたのは慶應義塾、藤沢翔陵、鎌倉女子大、麻布大附属、鵠沼、鵠沼、橘学苑、中大附属横浜、鶴見大附属、東海大相模、平塚学園、法政大学国際、横浜創英で、特に横浜創英、橘学苑、平塚学園、東海大相模は増加が目立ちました。

  • 推薦、一般、前後期、書類選考、帰国生入試など、各入試の合計です。一部、二次募集等が含まれていない場合があります。

千葉県・私立高校

1.全体の状況

以下の表は、編集部の速報アンケート集計による、私立高校応募者数の推移です。

区分 22年速報値 21年 20年 19年 18年
前期 55,776 54,194 51,414 52,895 54,418
後期 549 658 1,311 2,048 2,474
56,325 54,852 52,725 54,943 56,892
前期の割合 99.0% 98.8% 97.5% 96.3% 95.7%
女子校の割合 2.7% 3.1% 3.3% 3.1% 3.2%
  • 一部に未公表校や二次募集が含まれていないケースがあるため、最終数値ではありません。
  • 前年度の数値は、前年のマニアックスでの速報以後の判明分、修正分を反映させています。

今年は千葉県でも久しぶりに公立中卒業予定者数が増加していて、前年より1,424名増加した49,327名でした。増加率は3.0%です。私立高校の応募総数の速報値は表のように前年最終より1,500名近く増加、率では2.7%でした。前年は卒業予定者数が減っていましたが、公立高校入試が前後期を一本化していて、不安になった受験生によって私立高校単願の受験が増えたり、私立高校の併願出願校数を増やすなどしたことで、応募総数が増えていました。今年、卒業予定者の増加率ほどは私立高校の応募総数の増加率が高くないのは、公立高校の入試改革が2年目になり、受験生の不安が少し払拭されたからでしょう。今後、未公表の入試結果を合計すると最終的には56,000件程度になるかもしれません。

以下のグラフは、応募総数を公立中3生徒数で割った1人あたりの県内私立高校の応募数です。

公立中生1人あたりの県内私立応募数

この5年間の推移で2015年から2017年にかけて下がり続け、2018年は上昇、2019年、2020年と再び下がっていて、上記のように前年は一気に上がりました。今年は若干下がっていますが、2020年以前よりは高い水準です。

一昨年まで、県内私立高校の応募総数が減っていた理由は、公立中3生が減っていたことだけではなく、挑戦受験が減って、私立を複数校受験するケースが減っていることも理由でした。進路希望調査で私立志向が高まっても専願や単願が増えれば受験生1人あたりの応募数は減ります。このグラフから、挑戦受験は少し以前の状況に戻ってきたようです。

2.応募者が多かった学校

以下のグラフは、今年度入試の応募者数上位10校です。これらの学校について、人気の傾向、前年・一昨年の応募者数との比較などをご紹介します。

公立中3生徒数と私立・公立高校の応募総数の前年比較
  • 【1位】専修大松戸
    トップの常連校。前年に続いて今年も応募者が増えていますが、以前は隔年的に変化していました。私立挑戦受験が増えたためでしょう。
  • 【2位】八千代松陰
    前年同様に2位です。前年は最上位コースとしてAEМコースを新設、受験生に支持されました。今年はやや減っていますが、もともと隔年的な増減が見られた学校のため、傾向は変わっていないようです。
  • 【3位】千葉英和
    前年の7位から上がりました。特にコース等の改編は行っていませんが、併願受験生を中心に増加が続いて人気が上がっています。教育内容への期待が大きいことの他に、同校は1回分の受験料で2回受験できたり、得意科目選択受験ができること、入学後についても施設費、維持費などがすべて基本の学費に含まれているため、一見すると学費が高く見えますが、就学支援金の対象になる部分が大きいことなどが理由です。
  • 【4位】芝浦工大柏
    前年は3位でした。今年は応募者が減っています。
  • 【5位】木更津総合
    前年は6位です。今年は美術コースを新設していますが、増加の理由はそれよりも木更津地域での人気の高まりでしょう。
  • 【6位】千葉敬愛
    前年は4位でした。今年は応募者が減っています。
  • 【7位】秀明八千代
    前年8位でした。2017年に各コース合計の応募者数が激増、それ以後前年までほぼ同じ応募者数を維持してきましたが、今年は再び増えています。
  • 【8位】日大習志野
    前年は5位でした。少し応募者が減りました。高い人気が続いていましたが、一段落したようです。
  • 【9位】東京学館
    前年と同様の9位です。今年は応募者が少し増えています。
  • 【10位】敬愛学園
    前年は登場していません。グラフのように隔年現象で応募者が増減していて、前年は12位で登場しませんでした。一昨年は8位で登場しています。

グラフに登場しない各校で、応募総数200名以上、かつ前年度よりも応募総数が10%以上増えたのは日本体育大柏、千葉商科大付属、市川、西武台千葉、昭和学院、渋谷幕張、千葉日大第一、麗澤、東海大付市原望洋、光英VERITASで、特に昭和学院は53%増と大幅な増加で、増加率は県内トップです。同校によると、想定以上の入学者数で、教室配置や教員採用で苦労されているとのことです。

  • 推薦、一般、前後期、書類選考、帰国生入試など、各入試の合計です。一部、二次募集等が含まれていない場合があります。

埼玉県・私立高校

1.全体の状況

以下の表は、編集部のアンケート集計による、私立高校応募者数の推移です。

埼玉県私立高校の応募者数(2018年〜2022年)

応募総数 男子校 女子校 共学校 合計
2022年速報値 5,864 2,077 56,106 64,067
2021年 5,794 2,562 54,647 63,003
2020年 5,981 2,711 55,672 63,003
2019年 6,437 2,637 56,952 66,026
2018年 6,727 3,080 59,120 68,927
  • 一部に未公表校や二次募集が含まれていないケースがあるため、最終数値ではありません。
  • 前年度の数値は、前年のマニアックスでの速報以後の判明分、修正分を反映させています。

今年は公立中3の卒業予定者数が、前年の57,850名から59,425名と、久しぶりに増えていて、応募総数は1,000名あまり増加しています。学校種別では、増加の中心は共学校で、男子校はやや増えたものの、女子校は大きく減っています。今年は県内の女子校の共学化はありませんので、既存女子校の人気が表れた結果です。

以下のグラフは、応募総数を公立中3生徒数で割った1人あたりの県内私立高校の応募数です。

公立中3生1人あたりの県内私立応募数

2018年は私立志向の高まりが私立高校複数出願の増加に結び付き、1人あたりの応募数が増えてグラフのように1.12を上回りました。2019年は減少、2020年も少し減って、前年は若干増えたものの、今年は再び少し減っています。前年12月の2回目の進路希望調査では、少し下がっていましたが、それが応募総数にも表れた結果でしょう。

2.応募者が多かった学校

以下のグラフは、今年度入試の応募者数上位10校です。これらの学校について、人気の傾向、前年・一昨年の応募者数との比較などを紹介します。

公立中3生徒数と私立・公立高校の応募総数の前年比較
  • 【1位】浦和学院
    前年に続いてトップです。前年、今年と応募者が少しずつ増えています。
  • 【2位】浦和実業
    前年同様の2位です。一昨年は4,000名近い応募者数がありましたが、前年は大きく減って、今年は少し増えました。
  • 【3位】早大本庄
    前年同様の3位です。前年は16%減っていましたが、今年は15%増えていて隔年的な変化です。
  • 【4位】栄東
    前年の6位です。今年は16%という応募者の増加でした。
  • 【5位】花咲徳栄
    前年同様の5位です。少しですが今年も応募者が増えています。
  • 【6位】埼玉栄
    前年の8位から上がっています。もともと隔年現象がみられる学校で、今年は順番通りの増加です。
  • 【7位】叡明
    応募者が14%減って前年の4位から下がっていますが、難化傾向が続いていて、今年は進学Ⅲ類の募集を停止したので、学校側も承知の上の結果でしょう。
  • 【8位】開智
    前年は登場していませんが、僅差で11位でした。応募者の増加が続いていて、今年は堂々の登場です。
  • 【9位】秀明英光
    応募者が少し減って、前年の7位から下がっています。
  • 【10位】山村学園
    前年が16位で、今年は大きく増えています。今年は規模が大きいコースの改編を実施していて、受験生に支持されたようです。

グラフに登場しない各校で、応募総数200名以上、かつ前年度よりも応募総数が10%以上増えたのは西武台、大宮開成、栄北、立教新座、山村国際、本庄第一、西武文理、獨協埼玉、開智未来でした。

  • 推薦、一般、前後期、書類選考、帰国生入試など、各入試の合計です。一部、二次募集等が含まれていない場合があります。


[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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