上級者向け 受験マニアックス
2014年6月号 国公立大合格者増加の裏側
地方の国公立大合格者数が増加
首都圏の公立高校では、最近、地方の国公立大学合格者が増えています。たとえば都立高校全体をみてみると、関東1都6県以外の国公立大学合格者数は、2010年で256人でしたが、2013年で673人と2.6倍になっています(「毎日新聞社・高校の実力」による)。日比谷や国立、西、八王子東など「進学指導重点校」だけでなく、武蔵や白鴎のような中高一貫校、小山台、三田、新宿などの進学指導推進校・特別推進校でも増えています。
都立高校の「地方国公立志向」が強まったのでしょうか。いいえ、そうとは言えません。ある都立高校の先生にうかがったところ、地方の国公立大学に合格した卒業生の一人が、最終的には都内の中堅私立大学に進学を決めたというのです。その私立大学は新校舎が話題で、快適さでは地方の国公立大学を大きく引き離していました。
その先生は「地方の国公立大より、都内のきれいな私大のほうがいいに決まっている」とでも言いたげでした。都内の私大に行くのなら、わざわざ地方の国公立大を受ける必要はないはずですが……。
結局、都内の私大に決めるパターン
ここにひとつの仮説が浮かび上がります。それは「本当は首都圏の国公立大を目指したが、準備が間に合わず(期待したほど成績が伸びず)、ランクを下げて地方の国公立を受けた」可能性です。生徒に対して「せっかく国公立大受験の準備をしたのだから記念に受けておけば」という助言がないとも限りません。
「国公立大学の合格者数が増えた」とひとくくりに表現されていても、すべて東大や一橋、東工大であるはずがありません(ただし、進学重点校はこのいずれかの合格を期待されていますが)。合格実績のグラフ中の内訳はどうなのか、卒業生は明確な意思を持って受験や進学をしたのかを、受験生や保護者は見極めていきたいものです。「国公立大○名」に踊らされない冷静な目を持ちたいものです。
惑わされずに実態をチェックしよう
地方の国公立大がすべてよくないと言っているのではありません。なんと言っても私大の医学部は高額です。下宿生活の出費を考えても地方の国公立大の医学部に行くことにメリットがあります。また、秋田市の国際教養大学のように、独自の教育方法や分野・専攻を持ち、意欲ある学生を集めている大学もあります。しかし、定員割れや、そこまでいかなくても実質倍率が1倍台だったり、追加合格を出している地方の国公立大学は増えてきました。都市部の高校が、地方国公立大学の実態に関係なく合格者数を単純合計して「合格実績」とすることにはいささか疑問を感じます。以前、センター利用型の私立大学入試で、1人の受験生が有名大学の合格を数十校も稼ぎ、高校はそれを実績として公表、「水増しだ」との批判が起きたケースがありましたが、これと五十歩百歩ではないでしょうか。
学校説明会では、数字に踊らされず、実態に目を向けていきましょう。たとえば学校説明会で合格者数ではなく「進学実数」をたずねるのもいいでしょう。あるいはもっと突っ込んで、「地方の国公立大学に合格した生徒は、どのような目的があったのですか?」と振ってみてもいいでしょう。ぜひ表向きの数に惑わされることなく、実態に近いデータ収集をしてください。