上級者向け 受験マニアックス
2023年7月号 2024年度首都圏高校入試の変更点(公立・私立)(第1弾:2023年4月~6月発表分)
この記事は2023年7月現在の情報です。最新の2023年11月号とあわせてご覧ください。
今号では、来年度の首都圏公立・私立高校入試について、現時点で発表されている変更点を紹介します。大勢が判明する秋頃に、第2弾を紹介する予定です。
各校の変更点一覧については、末尾に添付したPDFを参照してください。
神奈川県公立高校選抜制度の変更について
2024年度から、神奈川県公立高校の選抜制度が一部変更されます。一番の注目点は、共通選抜で必須だった面接が特色選抜に移行し、全校実施ではなくなる点でしょう。各校は「調査書の評定・評価」と「共通の検査」を行い、学校によっては「特色検査」もあわせて行って、合格者を決定します。以下に、主な変更点や選抜の得点計算方法を紹介します。
①調査書の評定・評価
現在と同じ9教科5段階評定で、中2の45点満点と、中3は評定合計を2倍した90点満点を合計した135点満点が原則ですが、特定の科目を2倍にして計算するなど、重点化を行う学校があります。また、合格者の10%は中3の調査書の各教科の「主体的に学習に取り組む態度」の評価について、評価Aは3点、評価Bは2点、評価Cは1点として合計した27点満点の数値を用います。
②共通の検査
ほとんどの学校は全県共通の5教科の学力検査ですが、特色検査を行う学校は3教科まで減らすことができるため、理科か社会を実施しない4教科などもあります。多くの高校は500点満点ですが、一部に特定教科2倍などの重点化を行って、600点満点になるなどの学校も出ています。
③特色検査
2024年度からは、新たに「面接」も特色検査に位置付けられます。特色検査は、「実技検査」と「面接」のように複数実施することもできます。
④換算と合計
①の評定・評価は、135点満点や重点化を行った合計得点や、10%の合格者用の27点満点の得点を100点満点に換算し、「a」とします。②の共通の検査も100点満点に換算し、「b」とします。特色検査がなければ、「a」と「b」を2:8~8:2(整数値)で合計して上位から合格者を決定します。
評定点÷135×100=a、学力検査得点÷500×100=b(ただし下線の135と500は、重点化の場合はそれぞれ重点化された満点、10%の合格者の評定点は27点満点)
比率f(評定):g(学力検査)は、高校・学科ごとに下図の7通りから選択します。総合点(S)=a×f+b×gとして、Sの高い順に合格します。
「自己表現検査」と「面接」など、特色検査を複数行う場合は、例えば評定4:学力検査6:自己表現検査3:面接2で合計15とするなど、評定+学力検査を10としたうえで、特色検査の合計が1~5になるように比率が設定されます。
各校の選抜内容
神奈川県の公立高校の各校の具体的な選抜内容がどのように変わるのかは、県教育委員会のホームページに掲載されています。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/dc4/nyusen/nyusen/senko_kijun.html
主なところを紹介します。
注目されていた面接の実施校は大きく減少し、全日制の普通科では舞岡、上矢部、市立橘、愛川、横浜旭陵の5校のみになりました。総合学科は麻生総合のみ、専門学科は吉田島、商工、藤沢工科、市立川崎(昼間の定時制普通科は実施せず)、横須賀南で、学科で異なるケースでは市立横浜商業・国際学、市立橘・国際、厚木北・スポーツ科学、上矢部・美術が面接を実施します。
第1次選考での調査書の評定(内申)と学力検査の比率は、川和のように4:4→4:6と、なくなった面接の分を丸々学力検査側に載せた事例もありますが、評定(内申)と学力検査に半々で上乗せした学校も出ています。
この他の変更点では、津久井が普通、福祉とも自己表現を実施しますがプレゼン型です。いわゆる記述型の高難度の自己表現の実施校は変わりません。多くの学校は昨年と同じ比重ですが、横浜翠嵐が比重を2から3に引き上げ、横浜平沼は逆に2から1へ引き下げています。
公立高校の選抜日程
首都圏各都県の選抜日程が発表されましたので、まとめてご紹介します。
東京都
★推薦による選抜
項目 | 日程 |
---|---|
願書(書類)受付日 | 2024年1月12日(金)~18日(木) |
実施日 | 2024年1月26日(金)・27日(土) |
合格者の発表 | 2024年2月2日(金) |
★学力検査等による選抜(一般入試)
第一次募集および分割前期募集 | 分割後期募集および第二次募集 | |
---|---|---|
項目 | 日程 | 日程 |
願書(書類)受付日 | 2024年1月31日(水)~2月6日(火) | 2024年3月6日(水)窓口 |
実施日 | 2024年2月21日(水) | 2024年3月9日(土) |
合格者の発表 | 2024年3月1日(金) | 2024年3月14日(木) |
- 分割後期募集は、あらかじめ定員の一部を割り振って必ず実施されるのに対して、第二次募集は、第一次募集を終えて定員に満たない場合に実施されます。
- 推薦に基づく選抜、第一次慕集および分割前期募集ではインターネット出願を実施予定で、改めて定める日(2023年度入試では2022年12月20日だった)から上記の願書(書類)受付日の最終日まで入力可能の予定。別途中学校発行の書類を志望先の高校に提出する必要があり、上記の日程で高校に提出する。2023年度入試の場合、原則として郵送必着。2024年度も郵送必着かどうかは9月公表予定。分割後期募集および第二次募集はインターネットではなく、窓口出願のみ。
- 国際高校の国際バカロレアコースは学力検査に基づく選抜だが、推薦に基づく選抜と同時に実施し、出願は窓口のみ、2024年1月23日(火)・24日(水)とします。
- インフルエンザ等の学校感染症罹患者の追検査は、推薦に基づく選抜では実施しない。学力検査に基づく選抜では、分割後期募集および第二次募集の日程となります。
神奈川県
共通選抜 | 募集期間 | 2024年1月24日(水)~31日(水) |
---|---|---|
志願変更 | 2024年2月5日(月)~7日(水) | |
学力検査 | 2024年2月14日(水) | |
特色検査 | 2024年2月14日(水)~16日(金)※ | |
追検査 | 2024年2月20日(火) | |
合格者の発表 | 2024年2月28日(水) | |
定通分割選抜 | 募集期間 | 2024年3月5日(火)・6日(水) |
志願変更 | 2024年3月7日(木) | |
共通(学力)検査 | 2024年3月14日(木) | |
特色検査 | 2024年3月14日(木)・15日(金)※ | |
合格者の発表 | 2024年3月21日(木) | |
二次募集(全日制) | 募集期間 | 2024年3月1日(金)・4日(月) |
志願変更 | 2024年3月5日(火)・6日(水) | |
学力検査 | 2024年3月8日(金) | |
合格者の発表 | 2024年3月13日(水) |
- 特色検査の日程は学校によって異なります。
- 二次募集は、全日制では共通選抜を終えて定員に満たない場合に実施されます。
- クリエイティブスクールは学力検査を実施せず、面接・自己表現活動です。
- 2024年度から面接が全校実施から特色検査に移行、実施しない学校も出てきます。
- 共通選抜ではインターネット出願が実施されます。出願期間は上記募集期間の通りです。なお、定通分割選抜と二次募集は従来通りです。
千葉県
入学願書等の提出期間 | 2024年2月6日(火)~8日(木) |
---|---|
変更受付期間 | 2024年2月14日(水)・15日(木) |
学力検査等の期日 | 第1日目 2024年2月20日(火) 学力検査・国数英 |
第2日目 2024年2月21日(水) 学力検査・理社 各高校で定めた検査 | |
《面接・集団討論・自己表現・作文・小論文・適性検査ほか》 | |
追検査受付期間 | 2024年2月26日(月)・27日(火) |
追検査の期日 | 2024年2月29日(木) |
入学許可候補者の発表 | 2024年3月4日(月) |
(第2次募集、地域連携アクティブスクールを含む、通常の全日制では欠員が出た場合のみ実施)
入学願書等の提出期日 | 2024年3月7日(木) |
---|---|
変更受付期日 | 2024年3月8日(金) |
検査の期日 | 2024年3月12日(火) 面接、必要に応じて各校が定めた検査等 |
入学許可候補者の発表 | 2024年3月14日(木) |
埼玉県
出願期間 | 2024年2月7日(水)~9日(金) |
---|---|
2月7日は郵送のみ受付 | |
志願変更 | 2024年2月14日(水)・15日(木) |
学力検査 | 2024年2月21日(水) |
面接・芸術系の実技検査等 | 2024年2月22日(木) 実施校のみ |
入学許可候補者発表 | 2024年3月1日(金) |
追検査 | 2024年3月4日(月) |
追検査入学許可候補者発表 | 2024年3月6日(水) |
大きく変わる学校
共学化、校名の変更、コース制の改編など、大きく変わる学校を紹介します。その他の学校の変更点については付録の「2023年4月~6月に発表された変更点一覧」をご覧ください。
共学化・校名変更
羽田国際高等学校(東京都大田区)
蒲田女子高等学校が共学化し、校名を「羽田国際高等学校」に変更します。新校舎をつくるほか、既存の校舎も大規模にリニューアルして、フレキシブルに学べる環境づくりを行うとのことです。コースは、特別進学、総合進学、幼児教育の3コースになる予定です。蒲田女子高等学校は「羽田空港に一番近い私立学校」として、2021年度から株式会社JALスカイ、ANAビジネスソリューション株式会社との教育連携をスタートし、両社のCAなどを招いたキャリア教育の授業を展開してきました。共学化して新しく生まれ変わる羽田国際高等学校でも、JAL、ANAとの教育連携を強化した「ウイングスプログラム」を展開していきます。具体的には、「羽田留学」と称して、羽田空港で働くさまざまな職種の方、海外の高校生などと交流したり、海外研修などを行っていく予定です。学校説明会が満員になるなど、受験生からの注目度は高くなっています。自由学園(東京都東久留米市)
男子部、女子部並立から共学募集に変更の予定です。明治大学付属八王子(東京都八王子市)
明治大学付属中野八王子中学高等学校が2024年度から校名変更し、明治大学付属八王子中学高等学校になります。従来の校名から「中野」が抜ける変更です。なお、これまで八王子にある学校に「中野」という名前がついていた理由は、明治大学付属中野が母体になって設立されたからです。明治大学付属校は他に、明治大学付属明治(東京都調布市)、明治大学付属中野(東京都中野区)がありますが、今回の校名変更により、明治大学付属中野中学・高等学校との違いがはっきりして、わかりやすくなるといえるでしょう。
キャンパス移転
東工大附属(東京都港区)
入試の変更点ではありませんが、2026年4月に現在の田町から大岡山の新設キャンパスに移転することを発表しています。2024年度の入学生は、高校1、2年生は田町、高校3年生からは大岡山の新キャンパスで学ぶことになりますので、ご留意ください。
入試の形式変更・コースの改編
横浜創英(神奈川県横浜市)
2024年度の入試から、一般入試の入試相談をやめ、オープン入試のみに変更します。これは、注目すべき動きだといえます。
従来、神奈川県の大多数の私立高校の一般入試では伝統的に「入試相談」が行われ、公立中学校と出願予定先の私立高校の間で相談し、内申点や出席日数が基準に達していれば、合格を実質的に確約することが行われていました。神奈川県の私立高校受験生にとっては、安心材料になっている一方、自由な挑戦志向を妨げているという声もありました。なお、慶應義塾など一部の難関校では入試相談は行われておらず、当日の試験の点数で合否が決まっています。
横浜創英は人気と難易度が上がっているため、入試当日の得点次第で合否を決めるオープン入試のみにする決断をしたと考えられます。同時に、帰国生入試を新設するほか、従来の特進・文理・普通の3コース制から普通コースの募集を停止します。これらの入試の変更は、中堅校から難関校に転換しつつあることのあらわれだといえるでしょう。神奈川県の私立高校入試のあり方に、一石を投じる動きだともいえます。関東国際(東京都渋谷区)
普通科と外国語科がある学校で、外国語科では英語、中国語、ロシア語、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、イタリア語、スペイン語の9コースを展開していましたが、2024年度からフランス語コースが新設される予定です。聖徳学園(東京都武蔵野市)
近年、膨大なデータから有益な知見を引き出して活用する「データサイエンス」が注目されており、大学ではデータサイエンス系学部の新設が続いていますが、聖徳学園は2024年度からデータサイエンスコースを新設します。IT化が進む社会で活躍できる人材を育成したいという狙いがあるのでしょう。芝国際(東京都港区)
2023年度に東京女子学園が共学化して誕生した学校で、初年度の入試では多くの受験生を集め大人気になりました。最難関選抜、難関選抜、特別進学、国際生という4コース制でしたが、難関選抜と特別進学の募集を停止し、学校全体の学力レベルの底上げを図ります。人気校らしい動きだといえるでしょう。郁文館グローバル(東京都文京区)
グローバルサイエンストラック(トラックはコースと同じ意味)の募集を停止し、オナーズ(Honors)クラスを新設します。世界ランキング 100 以内の海外大学が進学目標になります。
この他、目黒日大はスポーツ・芸能コースの、日本学園がスポーツコースの、安田学園は進学コースの募集を停止します。いずれも他のコースの人気が上がっているための募集停止です。また、神田女学園がコース名を変更する予定です。
学習指導要領の改訂と安全志向について
2021年度から中学校の学習指導要領が改訂され、内申(評定)の付け方が変わりました(詳細は受験マニアックス2022年9月号)。これによって、自身の内申(評定)がどれくらいか、目安がわかりにくくなったり、不安になったりするという声があがっています。実際、2023年度の入試では志望校選びにおいて、挑戦志向は弱まり、安全志向が強くなっている傾向がみられました。内申点が合格基準に届いているか不安を抱え、志望校を1ランク下げたという話も聞きます。
来年度に向けては、新学習指導要領になってから3年目になったこともあり、内申(評定)への不安は軽減されてくることが見込まれます。また、同時に新型コロナウイルスの影響も落ち着いていますので、学校選択の幅が広がることが予想されます。2024年度の首都圏高校受験においては、憧れの学校を目指して頑張ってみようという挑戦志向が少しもどってくるかもしれません。
2023年4月~6月に発表された変更点一覧
現段階(2023年7月時点)で判明している2024年度首都圏高校入試の変更点一覧をご紹介します。