上級者向け 受験マニアックス
2014年9月号 高校の授業無償化の仕組み
この記事は2014年度の情報です。最新の情報は2023年6月号をご覧ください。
授業料だけでなく、入学金の補助も
今回は高校の授業料について解説していきます。2010年度から始まった高校の授業料無償化制度はご存知の方も多いでしょう。正式には「就学支援金制度」といいますが、首都圏の状況をみてみるとこの4年で内容が充実し、すっかり定着したことがわかります。授業料だけでなく修学旅行費や教材費、入学金まで補助の範囲が広がってきているのです。公立高校だけでなく私立高校に進学する場合でも適用されます。
日本はOECD加盟国の中で家庭の教育費負担が多く、公的な給付型奨学金が少ないことが指摘されていました。国の制度に橋下徹・前大阪府知事が府独自の援助金を上乗せしたこともあり、家庭の所得格差が子どもの学力格差とならないよう、教育費の家庭負担を軽くする施策が広がっていきました。
国が補助する就学支援金の基本部分は都道府県共通です。所得により金額が異なります。
世帯年収の目安と補助額
250万円未満程度 | 年間297,000円 |
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250万円~350万円未満程度 | 年間237,600円 |
350万円~590万円未満程度 | 年間178,200円 |
590万円~910万円未満程度 | 年間118,800円 |
910万円以上程度 | 対象外 |

都県独自の上乗せ分をチェック
さらに都道府県が独自で定める追加の補助金があります。これは私立高校に通う場合に、家庭の教育費負担を重くしないための措置です。
東京都
世帯の年収に応じて、都の上乗せ分の金額が決まっています。都内在住であれば隣接県の私立高校に進学しても、都の上乗せ分を受給できるのが特徴です。例えば東京都在住の生徒が千葉県の私立高校に通う場合は、東京都の制度、あるいは千葉県の制度のどちらを利用するかを選べます。両方の補助金をもらうことはできません。教育費がどのぐらいになるのかを比較して有利な方を選ぶことになるでしょう。

神奈川県
県内在住で県内私立高校に通う場合のみ支給されます。世帯の年収に応じて、県の上乗せ分の金額が決まっています。年収750万円未満の世帯すべてに入学金補助99,000円を一律に補助しています。低所得の世帯には修学旅行や教材など使い道が決まった補助金が支給されます。

千葉県
県内私立高校に通う生徒のみに支給されます。ただし居住地は県外でも構いません。千葉県内全日制私立高校の最高授業料は39万6000円です。年収が350万円未満の世帯については、国の補助金と足して私立高校の授業料が無償となるまでの額を県が補助し、入学金補助もついています。年収350万円~640万円未満の世帯については、授業料の3分の2から就学支援金を引いた額が補助されます。つまりこの層では授業料の3分の1は家庭負担になります。低所得の世帯には授業料以外の教育費が支給されます。

埼玉県
県内在住で県内私立高校に通う場合のみ支給されます。年収500万円未満までのすべての世帯に対して、国の補助金と合わせて年間37万5000円になるよう県が上乗せします。この金額は県内私学高校の授業料平均が約37万5000円であることから算出されたものと考えられます。この金額を上回る授業料の私立高校に通う場合の超過分は、家庭負担となります。年収609万円未満の世帯には入学金補助一律10万円が支給されます。教材費や制服に使える「施設費等補助」も年収により支給されます。

初年度は「立て替え」に注意が必要
2014年4月に入学した現・高校1年生から、授業料以外に入学金や教材費などの補助金も追加されるようになりました。ほっとした保護者も多かったのではないでしょうか。
ただし、利用にあたっては注意点もあります。入試後の合格手続きから初年度にかけては、ある程度まとまった額のお金を準備する必要があるということです。というのも、就学支援金の支給額は前年分の世帯年収をもとに計算しますから、具体的な額が決定するのは入学後になります。それまではいったん所定の入学金や授業料を払っておき、納めすぎた分を相殺するのは年度の後半以降になります。
また、実際の補助金は国や県から直接家庭に振り込まれるわけではありません。授業料から補助金分を差引いた額を、学校が保護者に請求します。
高校入試が終わり、入学手続き時に「入学金補助が出る」、4月に振り込む「授業料が安くなる」わけではありませんので、注意してください。
