上級者向け 受験マニアックス
2018年11月号 併願作戦(公立高校の普通科を第一希望とする場合)
この記事は2018年度の情報です。最新の情報は2021年12月号をご覧ください。
今回の受験マニアックスのテーマは、公立高校の普通科を第一希望とする場合の併願校選びです。まず、併願校選びの参考になる合同説明会・相談会がどのようなものか、その活用方法をご説明し、次に2016〜2018年度入試で実際にどのような併願校が選ばれていたかの傾向とデータをご紹介します。
合同説明会・相談会
併願校を決める前にぜひ参加していただきたいのが、合同説明会・相談会です。たくさんの学校がブースを出して相談を受け付けるため、情報収集には最適です。中には100以上の学校が一堂に会する大規模な会もあります。
来春に向けての実施も、もう少なくなってきました。2018年10月下旬、11月の合同説明会・相談会の開催予定一覧は、以下をご確認ください。
イベント名 | 日時 | 会場 |
---|---|---|
2018私立中高進学相談会 in 秋葉原 | 11月11日[日] 12:30~16:30 | 秋葉原UDX 2Fアキバ・スクエア |
合同説明会・相談会に行く理由
最近、「同じ公立高校を志望する子があの私立を併願にするから」「先輩たちの併願校選びのデータを見るとここが定番だから」など、周りに流されて併願校を決める受験生が多いように見受けられます。しかし、受験生は一人ひとり違う個性を持っており、希望する校風や夢に見る高校生活は異なるはずです。周りの様子も選択の一助にはなりますが、それだけで安易に併願校を決めるのは避けたいものです。そこで、併願校選びに活用したいのが合同説明会・相談会です。各校のブースにいる教職員や中立の立場の相談員にぜひ色々な質問を投げかけ、「本当に自分に合っている学校はどこなのか」を広い視野で探すようにしてください。
よく質問されている事柄
合同説明会・相談会で、受験生はどのような質問をして、各校の先生はどのような回答をしているのでしょう。筆者が多くの学校の先生と話して、特に多いと感じた5項目をご紹介します。
①校風や教育内容
「どんな校風ですか」は、最も多い質問と言えるかもしれません。公立高校の多くは校風や教育方針があまり独特ではなく、公立高校を第一志望とする受験生はクセのない校風を好む傾向があるため、各校の先生方も「質実剛健」「文武両道」といった普遍的な回答をすることが多くなっています。高校生活は、学校から「こういう生徒になりなさい、ああしなさい」と言われるものではなく、自分で考えて主体的に楽しむものだと考えると良いでしょう。
また、教育内容については「勉強は厳しいですか」という質問がよくされています。それに対して各校の先生方は「みんなちゃんとこなしているから大丈夫ですよ」といった回答をしています。今中学生の皆さんから見ると、高校生の勉強は大変に見えるかもしれません。しかし、実際高校に入ると、自然に高校生としての勉強量をこなすようになります。「高校の勉強は難しくて大変そう」とあまり考え込まない方が良いでしょう。
②大学進学状況
大学への進学実績や進学指導についてもよく質問がされています。一つ留意して欲しいのは、2017年度、2018年度は首都圏の有名大学を中心に、合格者数が相当絞られたということ。質問した高校からの大学合格実績が下がっていても、それが当たり前だととらえてください。もし、大学合格実績が上がっていたら、そこは相当進学指導に力を入れていて、勉強をハードにしている高校だと言えるでしょう。また、「国公立大学何名合格」といった数字だけで判断せず、自分のやりたいことを貫けるか、将来の希望に合った大学に進学できるかを、卒業生の例なども含めて聞いてみると良いでしょう。
③難易度の目安・内申の基準
今の自分の学力で合格できるのかといった質問もよくされています。
試験を受けてその結果で合否が決定する一般入試(オープン入試やフリー入試と呼ばれることもある)の難易度については、高校の先生に質問をしても「偏差値これくらいだったら大丈夫」といった具体的な答えはまず出てきません。塾の先生に相談した方が良いでしょう。
推薦入試や併願優遇など、内申点によって出願基準が定められている入試については、学校のホームページ等で出願基準を公表している学校と、公表していない学校があります。公表してない学校の場合も、合同説明会・相談会の場で先生に聞くと、目安をそっと教えてくれるケースが多いです。出願基準がわかったら、それに届くよう、2学期(2期制の場合は後期の中間)の勉強を頑張りましょう。また、学校の成績以外にも、クラブ活動での活躍、英検や漢検などの資格、出席日数などの加点項目をつけている場合もあるので、加点項目についてもしっかり確認しましょう。
なお、埼玉県内の学校を受験する場合と、埼玉県在住の生徒が近隣の都県の学校を受験する場合は、大手の公開模擬テストの成績で基準を教えてもらえます。模擬テストの結果を持参すると話がスムーズに進みやすいでしょう。
④面接について
「面接でどんなことを聞かれますか?」「面接の注意点はありますか?」といった質問も多いです。しかし高校入試の面接は、中学生らしく実直に正直に、一つひとつの質問に答えられれば、ほぼ問題はありません。あまり心配しなくても大丈夫です。不安な場合は塾の先生に頼んで、入試直線に練習をしてもらうと良いでしょう。
⑤部活動・クラブ活動
部活動やクラブ活動は高校生活の中で大きなウエイトを占め、受験生の関心が高いところです。自分がやりたい部活動・クラブ活動があるかどうかや、どんな活動をしているのかなど、色々と聞いてみてください。そして「入ってみたいな」と思えば併願校に選び、「ちょっと違うかな」と思ったら他をあたると良いでしょう。
一つ注意したいのは、強くて部員数も多い部活。一生懸命本気で取り組む覚悟なら良いですが、「楽しくワイワイやりたいな」という程度の気持ちだと、周りに埋もれて活躍できないまま3年間が過ぎるかもしれません。自分の希望に合った雰囲気の部活動・クラブ活動を探すようにしましょう。
すでに合同説明会・相談会に行ってきたのに、学校が絞り込めないとき
「合同相談会・説明会に行って、学校のパンフレットはもらってきたけれど、どの高校にしてよいのかわからない」という受験生も多いでしょう。やはり「百聞は一見に如かず」で、高校の雰囲気、良さは行かないと本当のところはわかりません。
スクールポットでこれから開催される各校の入試説明会が検索できます。
https://www.schoolnetwork.jp/hs/event/index.php
パンフレットをもらってきている学校の中から、通学の面で時間がかかったり、内容で「ちょっとついていけない」と感じた学校は別として、他の学校は時間の許す限り行ってください。
説明されることは、合同説明会・相談会の上の①~⑤をもっと詳しくした内容ですが、それ以上に「雰囲気」がわかります。先輩たちの様子を見て、「ここなら!」という学校を見つけてください。成績が少し足りなくても努力すれば上がります。不本意な学校で3年間過ごすなら、納得のいく高校に向けて、あと数か月がんばりましょう。
直近3年間の先輩たちの併願校選びデータ
2016年度から2018年度の入試で、実際にどのような併願校が選ばれていたのか、その傾向と詳しいデータをご紹介します。
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の順に記載します。
- データは「統一模試」(㈱エデュケーショナルネットワークが提供している塾内模試)の結果をもとに、合否追跡調査から独自に集計したものです。
- 学校名、課程名は2018年度のもので、略称も含みます。
- 各校ごとの私国立高校併願校を、合否に関わらず件数の多い順に掲載しています。
- 公立高校の方が志望順位が高い場合、私国立高校の方が志望順位が高い場合のどちらも含めます。
- 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の公立高校普通科のデータを掲載していますが、合否追跡調査にご協力いただいた件数がわずかだった学校については掲載していません。
東京都
都立高校には、7つの進学指導重点校があります。また、学年制普通科と単位制普通科の制度の違いもあります。ここでは、公立大学や難関私大進学を目標とする1.進学指導重点校・単位制の最上位校と、2.公立普通科上位校に分けて、併願校選びの傾向をご紹介します。
1.進学指導重点校・単位制の最上位校
進学指導重点校は、日比谷、戸山、青山、西、八王子東、立川、国立の7校です。
この中で青山は、以前はおしゃれな雰囲気を高校選びのポイントにしていて、併願校に青山学院を選ぶ受験生が多かったのですが、この数年で早稲田系、中央大学系などその他の大学附属校を選ぶケースも多くなってきました。受験生の併願校選びの視点が、日比谷や戸山と近くなってきたようです。
八王子東は、地元の受験生が多数派という地域に根ざした学校で、併願校には早慶の附属校があまり出てきません。併願校1位の帝京大学と4位の八王子学園は、同じ八王子市の高校です。併願校2位の拓殖大第一と3位の早稲田実業、5位の桜美林高校は同じ多摩地区の学校です。
同様に、立川の併願校には同じ多摩地区の錦城、帝京大学、拓殖大第一、明大付属明治が、国立の併願校には同じ多摩地区の早稲田実業、錦城、拓殖大第一、明大付属明治が見られます。
単位制で特筆すべきは新宿。新宿高島屋の向かいという抜群の立地で、大変人気がある高校です。以前は早慶との併願はあまり多くなく、GMARCHの附属校と私立の進学校(最難関レベルは除く)が併願校の中心でしたが、最近は早慶との併願が増え始め、今回のデータでは上位5校中3校が早大系です。
また、同じく単位制の国分寺も多摩地区で非常に人気がある高校ですが、地域に根ざした学校で、同じ多摩地区の拓殖大第一、錦城、中央大附属などの進学校が併願校に選ばれることが多くなっています。
2.公立普通科上位校
地域や学力レベルによって、さまざまな併願校が選ばれています。
おしゃれな雰囲気で人気が高い三田、小山台、駒場には、遠方・多方面から通う生徒がたくさんいます。そのため、広範囲の学校が併願校に選ばれています。
その他の高校で併願校に選ばれやすい高校には、ある特徴があります。"校風や教育方針があまり独特ではなく、複数のコースを持っていて、募集定員が多い"ことです。北園の併願校として選ばれている淑徳巣鴨や桜丘などはまさにそのパターンです。
神奈川県
神奈川県の公立高校で最難関校として際立った存在なのは、横浜翠嵐と湘南の2校です。ここでは、1.横浜翠嵐と湘南、2.旧学区トップレベル校、3.公立普通科上位校に分けて、併願校選びの傾向をご紹介します。
1.横浜翠嵐と湘南
神奈川県の公立高校の中で突出した学力レベルである両校の併願校には、早慶の付属校、国立の東京学芸大附属の名前が見られます。神奈川県の公立高校としては非常にめずらしいケースです。両校に挑む受験生は、徹底的に最難関進学校を志望する傾向が強いといえるでしょう。
2.旧学区トップレベル校
このグループの高校は、川和、希望ヶ丘、横浜平沼、光陵、柏陽、多摩、相模原、鎌倉、茅ヶ崎北陵、厚木の10校です。これらの高校の併願校には国立が選ばれることもありますが、むしろ附属校志向が強くなっています。グループ内で比較的学力レベルが上位の学校では早慶の附属校が、それ以外ではGMARCHの附属校が選ばれる傾向があります。また、前述の横浜翠嵐や湘南のように首都圏最難関レベルの高校を選ぶよりも、地元で定評がある進学校を選ぶケースが多くなっています。
3.公立普通科上位校
東京都と同様に、"校風や教育方針があまり独特でなはなく、複数のコースを持っていて、募集定員が多い"高校が選ばれやすい傾向があります。東急・小田急沿線の高校の併願校には都内の高校の名前もよく見られますが、これは互いに通いやすいことが理由でしょう。一方で横浜市内のJRや京急、相鉄などの沿線の高校の併願校は、横浜市内や横浜周辺の高校がほとんどになっています。
千葉県
千葉県の公立高校の中で、県立千葉、県立船橋、県立東葛飾の3校は御三家と呼ばれていて、難度が突出しています。ここでは、1.御三家と2.公立普通科上位校に分けて、併願校の傾向をご紹介します。
1.御三家(県立千葉、県立船橋、県立東葛飾)
千葉県の公立高校の中でトップレベルの3校です。併願校には、市川、昭和学院秀英、日大習志野など、県内の上位の私立高校が選ばれています。最難関校の県立千葉では渋谷学園幕張も選ばれますが、県立船橋、県立東葛飾では渋谷学園幕張は少し敬遠されているようです。また、県立千葉では国立の筑波大学附属も選ばれています。県立東葛飾の併願校5位には、都内の早大高等学院も入っています。
2.公立普通科上位校
東京都、神奈川県と同様に、"校風や教育方針があまり独特でなはなく、複数のコースを持っていて、募集定員が多い"高校が選ばれやすい傾向があります。
地域別に見ると、千葉市内では千葉敬愛、千葉商科大、敬愛学園、昭和学院が、松戸や船橋地区では千葉商科大、東京学館浦安、昭和学院が、常磐線沿線では、芝浦工大柏、専修大松戸、麗澤、二松学舎柏、流通経済大柏がよく選ばれています。佐倉や成田の方では地元の高校を併願することが多く、伝統的に成田高校がよく選ばれています。他に、八千代松陰、千葉英和、東京学館などの名前も見られます。佐原や銚子方面などでは敬愛八日市場や鹿島学園が、内房の方では木更津の拓殖大紅陵や志学館などが定番となっています。
埼玉県
埼玉県は東京都、神奈川県、千葉県と比べて公立志向が強い地域です。公立の男子校・女子校があるのも大きな特徴です。
公立高校の中で難度が突出しているのは、男子校の県立浦和と女子校の浦和第一女子です。ここでは、1.県立浦和と浦和第一女子、2.公立トップレベル校、3.公立普通科上位校に分けて、併願校の傾向をご紹介します。
1.県立浦和と浦和第一女子
両校の併願校には、早慶の附属校や最難関進学校が名を連ねています。地域の中では、栄東や開智が選ばれています。
2.公立トップレベル校
このグループの高校は、春日部、川越、川越女子、市立浦和、大宮、蕨、所沢北、越谷北の8校です。併願校には早慶の附属校や国立高校、GMARCHの附属校も選ばれていますが、東京志向は少し薄まっており、栄東、開智、川越東など県内の進学校を選ぶケースがよく見られます。
地域別に見ると、西部地区では西武文理、城西川越、狭山ヶ丘が、南部地区では大宮開成が、東部地区では獨協埼玉や春日部共栄、昌平などがよく選ばれています。
3.公立普通科上位校
東京都、神奈川県、千葉県と同様に、"校風や教育方針があまり独特でなはなく、複数のコースを持っていて、募集定員が多い"高校が選ばれやすい傾向があります。
また、埼玉県全体の傾向として、南部地区のさいたま市に全県から「ひと・もの」が流入しており、併願校選びにおいても南部地区の高校の人気が高くなっています。
南部地区では、地域内の高校がよく併願校に選ばれています。代表的な私立併願校には、大宮開成、武南、浦和学院、浦和実業、埼玉栄、栄北、国際学院がありますが、受験生は自分の学力に応じた高校とコースをそれぞれ選んでいます。併願状況はパターン化していて、ここに挙げた私立以外はほとんど登場しません。
大宮以北でも同様に、国際学院や秀明英光といった地区内の私立併願校よりも、南部地区の高校を併願するケースが増えてきています。
草加、越谷、春日部など東部スカイツリーライン沿線の東部地区でも、人気の南部地区の私立高校を併願校として選ぶケースが多くなっています。さらに、第一希望の公立高校選びにおいても、南部地区の高校を選択することが増えています。東部地区内の私立併願校としては、獨協埼玉、春日部共栄、昌平などがありますが、南部地区人気におされ、以前よりも選ばれることが減っています。
西武池袋線、東武東上線、西武新宿線あたりの西部地区でも、東部地区と同様の事態がおこっています。西武地区内の私立併願校には、西武文理、狭山ヶ丘、聖望学園、山村学園、山村国際など比較的有名な高校があるのですが、これらを選ばずに南部地区の高校を併願するケースも増えています。
北部地区は少し情勢が異なります。南部地区の大宮近辺の高校を併願先に選ぶケースも少なくはありませんが、入りやすい高校を中心にして、併願をほとんど考えない受験生も増えてきています。地域の私立併願校としては、本庄・深谷地区の本庄東、本庄第一、東京成徳大深谷、正智深谷など選ばれています。少し西の方で、東京農大第三、武蔵越生、大妻嵐山、埼玉平成を選ぶケースもあります。