上級者向け 受験マニアックス
2017年6月号 私立高校に通うお子さまを持つ保護者の声(進学理由・学費など)
今回は、東京都内のある私立高校のご協力で、同校で実施したアンケートをもとに、私立高校にお子さまを通わせているご家庭がどのような理由で私立を選んだのか、学費の心配は実際どうなのかをご紹介します。ご協力いただいた私立高校の結果ではありますが、広く私立高校全般に当てはまる内容です。
公立高校・私立高校への進学希望理由
東京都内の公立中学校を今春卒業した生徒で、受験時に全日制高校への進学を希望した生徒のうち、公立高校を希望した割合は、男子が75%、女子が80%でした。グラフは、この高校に入学した生徒の保護者のうち、公立高校を第一志望としていた方に、「なぜ公立高校を希望していたのか」をたずねた結果です。圧倒的に多い回答は「私立は学費が高い」でした。一方で、教育方針・教育内容や大学進学指導等を理由とした回答はかなり少なくなっていました。
公立入学を希望されていた方でその理由
一方、もとから私立高校を希望していた保護者に、その理由をたずねた結果が次のグラフです。「私立の方が教育方針や教育内容がよい」「私立の方が大学進学への指導がよい」という回答が多く、2つを合わせると7割を超えます。
私立高校への進学希望理由
公立高校と私立高校の希望理由を比較すると、「公立高校を選ぶのは経済的な理由から」「私立高校を選ぶのは教育の質から」といった傾向があるようです。公立高校に進学した生徒の中には、「私立高校に行きたかったけれど、経済的に厳しくて公立高校を選んだ」という生徒もいることでしょう。
学費が家計に及ぼす影響
高校在学3年間、学費は家計を圧迫しましたか?
実際に私立高校に通うご家庭は、学費についてどう感じているのでしょうか。グラフは、この高校の3年生の保護者に、学費が家計を圧迫したかをたずねた結果です。「かなり圧迫」と「少し圧迫」を合わせると約8割で、大半のご家庭が、家計の不安を抱えていたことがわかります。
高校在学3年間、家計の切り詰めや収入増の工夫をしましたか
次のグラフは、学費捻出のために何か対策をしたかをたずねた結果です。「支出の切り詰め」と答えた方が44%いらっしゃり、「パート・内職の開始」「共働きの開始」を合わせて6割のご家庭が、何らかの対策をしています。マニアックス前号では、国の就学支援金や私立高校進学に対する各都県の授業料補助の仕組みをご紹介しましたが、こうした制度が切実に求められていることがよくわかります。
また、次の2つのグラフのように、予備校・塾・家庭教師にかかる費用も、家計を圧迫する要因となっています。大学受験に向けては、「学校の勉強だけ」というご家庭は少数派で、他校の生徒と切磋琢磨する機会を求めるためでしょう。
高校在学中にお子さんの勉強のために予備校・塾・家庭教師を利用しましたか
(予備校・塾・家庭教師を)利用した方で、高3の1年間費用はどのくらいかかりましたか
公立と私立の学費格差是正に向けて
都内私立高等学校(全日制)
私立高校の運営には、各自治体からの助成金が出ています。グラフは、都内私立高校の2015年度決算の結果(出典元:東京都生活文化局)です。各家庭からの収入が56.0%、東京都からの補助金は34.3%となっています。
東京都の実績値では、生徒一人あたりの学校運営経費に占める公費負担分は、都立高校が972,708円、都内私立高校が382,628円となっています。都立高校を増設して都立希望者を全員受け入れると、都の財政負担は大幅に増加してしまいます。私立高校が生徒を受け入れている分、都の財政負担は抑えられているわけです。それならば、私立高校運営費の助成をもっと増やしてもよさそうなものです。助成金を拡大すれば、私立高校の学費水準を抑えることができるのです。
この高校を含む都内の私立高校では、公費助成拡大を求めた活動を行っています。同校の場合、学内に保護者による委員会があり、勉強会や署名活動などを行っています。
公立と私立の学費格差に対する保護者の意識
グラフは、公立と私立の学費格差についての保護者の意識です。左が新入生、右が高校3年生の保護者の回答です。格差を小さくするべきという意見が多いことがわかります。
また、「学費が高いのを覚悟」という回答は、新入生では9%ですが、高校3年生では16%と増えています。在学中に私学の教育内容に価値を感じ、考えが変わった家庭があることの表れでしょう。
教育費の私公間格差をどう思いますか
お子さんを3年間私立高に通わせ、公私の教育費格差をどう感じますか
私立の学費負担軽減に向けて
教育方針・教育内容や大学進学指導の質の高さに魅力を感じて私立を希望するご家庭は多いですが、入学後に学費が家計を圧迫しているケースは少なくはありません。ご家庭の経済的な負担が少なくなるよう、学費補助、運営経費助成の仕組みを拡充することが求められています。