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上級者向け 受験マニアックス

2020年6月号 学習内容の重点化通知に伴う入試の動きについて

2020年6月5日、文部科学省より「学校の授業における学習活動の重点化に係る留意事項等について」の通知が出されました。今回は、通知で示された内容とともに来春の高校入試の動きについて考えてみます。

通知の内容

コロナ禍で学校での通常の学習活動で指導を終えることが困難な場合の特例的な対応として、小6・中3の学習内容のうち、家庭・地域活動など学校外で個人でも取り組みが可能な学習活動を教科書ごとに具体的に示しました。学年末までに学校で学習内容をすべて終わらせることができない場合、学校では学校でしか実施できない内容を重点的に学習し、個人の取り組みで可能な内容は、無理に学校では取り上げなくてよい、とするものです。あくまでも「参考資料」の位置づけで、授業時間数が各地の休校期間・分散登校の期間等で異なることから、全国一律に、という話ではなく、地域事情に合わせて設定することや、個人で取り組み可能な部分の事前指導の充実、ICT機器を使用する内容については環境が整っていない家庭の児童・生徒については個別に対応することなどが示されています。

各教科に共通することとして、発展的な内容は全員が学ばなければならない内容ではない、としているほか、国語や英語(外国語)なら「読んでくること」や「わかったことを書きだしてくること」、美術や音楽でも「(見て、聞いて)鑑賞したことをもとに気づいたことを書いてくること」、数学では「問題演習」などの時間がかかる内容や、「調べる」「立案する」「日常生活に当てはめて考える」「課題を見つけて解決方法を考える」などが、個人で取り組み可能な内容になっています。

教科書の進度を考える

6月から分散登校・短縮授業が始まりました。6月は通常年度の半分、7月は夏休み短縮で通常年度の6月1か月分程度の授業時間数、8月も夏休み短縮で12日間程度授業実施、9月以降は通常の予定回数通り授業を行うと仮定して、高校入試までにどのくらい進度が進むか考えてみました。

たとえば、大日本図書版の中3数学では「練習」(問題演習のページ)、「○章の問題」のページがすべて個人で取り組み可能な内容とされたほか、「いろいろな問題、考えてみよう」「社会にリンク」「研究をしよう」「挑戦しよう」「レポートを書こう」などの発展的な内容、実社会での数学の活用についての内容、主体的に取り組みたい内容なども同様です。発展的な内容では「関数のグラフと方程式」「三角形の重心」「円に内接する四角形」「円と接戦」「乱数を用いた標本抽出」が、個人で取り組み可能な内容になっています。

すると、定期試験の期間設定などの影響があるものの、12月には標準の授業進度に追いつけそう、という結果になりました。教科の特性や教科書出版社によって違いはありますが、それぞれ重点と指定された部分は必ず学習するとして、そこから漏れた内容をカットすれば、3月までには一応「中3範囲の学習を終える」ことができることになります。しかし、あくまでも机上の計算です。大日本版の教科書自体も、発展内容を授業で全部1時間ずつ取り上げたとしても年間124時間+余裕16時間で設定していますから、毎回の授業が標準授業展開通り進まないこともある、という前提に立っています。中3内容の前半の「多項式の計算」や「平方根」で躓けば「二次方程式」「関数」「三平方の定理」など、その後の学習内容に、直接的に響きますから、無茶な進行はしないでしょう。
そこで問題になるのが、高校入試でどこまで出題されるのか、です。

都立高校入学者選抜等における配慮事項

東京都教育委員会では6月11日、文部科学省の通知を踏まえ、都立高校入学者選抜等における配慮事項を発表しました。その中で、学力検査の出題範囲について、次の分野を除外すると発表しています。

出題範囲から除外する分野について
国語

中学3年生の教科書で学習する漢字

数学

中学3年生で学習する内容のうち、次に挙げる内容

  • 三平方の定理
  • 標本調査
英語

関係代名詞のうち、主格のthat、which、who及び目的格のthat、whichの制限的用法
※同様の働きをもつ接触節も出題しない。

社会

公民的分野のうち、次に挙げる内容

  • 『私たちと経済』の「国民の生活と政府の役割」
  • 『私たちと国際社会の諸課題』
理科

各分野のうち、次に挙げる内容

第1分野

  • 『運動とエネルギー』の「力学的エネルギー」
  • 『科学技術と人間』

第2分野

  • 『地球と宇宙』の「太陽系と恒星」
  • 『自然と人間』

数学、理科、社会のように比較的学習内容が単元で別れているものはイメージしやすいのですが、国語と英語、特に長文問題についてはイメージしにくいので、東京都教育委員会に問い合わせたところ、次のような回答でした。

Q.――国語では5社(学校図書、光村図書、教育出版、東京書籍、三省堂)の教科書が都内公立中学校で使用されていて、それぞれ学年の漢字が異なっているので、除外されない中1・中2範囲の漢字は、5社の教科書で共通の内容と考えてよいか。
A.――その通り。5社の教科書すべてで、中3で出てくるものは、漢字単体の設問としては出題しない。

Q.――国語の学力検査問題で、中3の教科書で習う漢字が長文の文章中に登場した場合は振り仮名をつける、ひらがな表記にする、といった対応を行うのか。
A.――検討中。現時点(6月23日)で具体的な回答は控えるが振り仮名やひらがな表記も含め、受験者に有利・不利が出ないよう対応する。

Q.――英語の関係代名詞や同様の働きの接触節について、注釈付きで長文等に出てくることがありうるのか。
A.――それはない。注釈をつけても受験生が混乱する。長文等でも除外分野は出さない。

Q.――今回の除外は日比谷などの自校作成(独自問題実施)も同様の扱いか。
A.――同様の対応を行う。

近隣各県の公立高校は? 私立・国立高校は?

今回の東京都の配慮事項が、近隣各県にも波及していくのかは、6月時点では未公表です。全国的に見れば大阪府や新潟県などでも同様の発表がありました。茨城県は出題範囲を変更しないと報じられています。神奈川、千葉、埼玉県ともある程度東京都に近い対応をするかもしれません。受験生の皆さんには、随時HPをチェックしていただきたいです。

国立高校は今後出題範囲を発表するかどうか、現時点では何とも言えませんが、特に東京都の国立高校は実技のウェイトが高い東京藝術大附属音楽以外、高難度の学校ばかりですから、仮に東京都立と同様の対応を行ったとしても、例年並みの高難度の出題になりそうです。

一方、私立高校については必ずしも東京都教育委員会の除外分野に縛られる必要はありません。東京都私立中学高等学校協会は常任理事会・理事会の申し合わせで、出題範囲は各校の判断と決めています。東京都内では、特に都立高校の押さえとして受験する生徒が多い学校については、上記の除外する分野からの出題を見合わせる学校が増えそうです。しかし、難関校や有名大学附属校などの第一志望の一般入試受験生が多い学校では、オリジナルのカリキュラムで受験対策を行っている進学塾からの受験生が多いことから、出題される可能性は十分あります。ただし、学校で習っていない範囲を出題したと批判されることを懸念する場合は、説明や注釈などで補うか、除外する分野を使った問題と使ってない問題を選択できる形にするかもしれません。たとえば「三平方の定理」を用いた標準的な問題と、中2や中3の最初までの範囲の知識しか直接には使わないものの、かなり深く考える必要がある工夫した出題です。こうした動きは中堅校でも特待生選抜入試などでは同様の動きになる可能性があります。各校の募集要項発表時に出題範囲についてどのように触れるか注目されます。

神奈川、千葉、埼玉県の私立高校は各県公立高校の方針が公表されてからの動きになりますが、神奈川県では、全体的に東京に近い形になる可能性は高いと思って良いでしょう。千葉、埼玉の私立高校では、難関校はともかくとして、一般の私立高校では何らかの出題除外分野が出る可能性は非常に高いと思われます。千葉県の高校入試は、公立では前後期一本化となりますが、私立高校は変わらず、1月17日開始です。また埼玉県は1月22日スタートとこちらも変わっていません。もともと東京都や神奈川県の私立高校一般入試よりも日程が早いため、出題範囲を抑えている学校が多くなっています。応用問題などは中2や中3の初めのころまでの知識の範囲で構成する出題が増えそうです。

中学2年生の学習内容のウェイトが高くなる

もともと高校入試の出題範囲は、私立・国立・公立とも中3内容のみということはありません。来春の入試では中学2年生の学習内容のウェイトが高くなる学校が増えると思われます。中2内容というのは、前半くらいまでの範囲では、基礎・基本の部分が大きいためストレートに出題することは難しいですが、後半になると、工夫をすれば応用の問題として出題できる内容もかなりあります。これを踏まえると、中2の学習内容が合否を分けることになるかもしれません。

ここで問題になるのが、中2内容の単元の総復習をするタイミングです。
例年なら各塾の夏期講習等で復習する機会も多かったのですが、今年の夏休みは地域によって違い、短いところでは12日間、長いところでも、23日間程度となっています。そうなると、おそらく各塾の夏期講習も例年通りの内容にはならないでしょう。夏期講習で中2までの単元の総復習を行うとしても、充てることのできる授業時間数が減るかもしれません。秋以降、中3範囲の勉強を進めていくのに並行して、特に中学2年生後半の内容をしっかり復習していく時間を確保することを受験生の皆さんには心がけていただきたいと思います。

東京都のその他の発表について

東京都教育委員会では学力検査の出題範囲の他にも重要な発表を行っています。都内の生徒のみの話ですが、紹介しておきます。

  • 都立高校の文化・スポーツ特別推薦では、「推薦の基準」で中学校体育連盟(中体連)の大会などでの実績や、検定資格等の証明を求める学校がありましたが、大会や資格・検定試験の中止を受けて、来年度についてはこうした実績・資格を求めず、実質的に誰でも受けることが可能になりました。そのかわり実技検査が拡大しています。詳細は9月頃に各学校から発表はありますが、決してハードルが下がったわけではありませんので、気をつけてください。
  • 中高一貫校の高校募集枠のある白鷗、両国、大泉、武蔵、富士の5校がグループ作成問題の国語・数学・英語の問題を出題していました。来年度入試ではこの5校のうち、武蔵と富士が募集停止となりますが、募集が行われる両国と大泉と白鷗の3校はグループ作成を取りやめ、共通問題の実施になります。一般的には、グループ作成などの別問題をやめて共通問題にすると人気が上がりますが、両国と大泉は来年度が最後で2022年度から募集停止、白鷗も実施年度未定ながら募集停止が決まっているため、応募者が大きく増えることは考えにくいと思われます。
  • 東京都立高校では全国に先駆けて入試で英語のスピーキング能力も評価するように準備を進めてきましたが、昨今の新型コロナウィルス感染症の影響により、1年延期になりました。東京都の方法は毎年11~12月に独自のスピーキングテストを行い、その成績を都立高校入試の出願時に添付して、合否判定時に成績を点数化して学力検査に合計するものです。当初の予定では、今年の秋に全都内公立中学3年生対象のスピーキングテストを予行演習として実施(今年の中3生は結果を入試で使用しない)し、来年(今年の中学2年生の受験)から本格実施となっていましたが、予行演習、本格実施とも1年延期になり、今年の中学1年生の高校入試から本格実施になります。今年の中学2年生が予行演習をするので、現在の中学1年生の皆さんは、先輩たちの姿を見て、しっかりと準備をしてください。


[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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