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上級者向け 受験マニアックス

2018年3月号 大学入試改革に備えて

日本の教育が大きく変わりつつある今、2020年から始まる大学入試改革が話題となっています。
しかし、何がどう変わるのか、高校に進学したらどのような勉強をすれば良いのか、方向性が見えずに漠然とした不安感をお持ちの方もいらっしゃるでしょう?
今回の受験マニアックスでは、大学入試改革の方向性と現状をご紹介します。

大学入試改革に備えて

大学入試改革とは

日本の大学入試の制度や評価内容を変えようというもので、2020年から先行実施、2024年から本格実施が予定されています。次項に記すように、大学教育の中身を変えることが目的で、その手段として入試改革が位置付けられています。現在の「大学入試センター試験」は、システムチェンジして、「大学入学共通テスト」(以下「共通テスト」)に切り替わります。また、同時に小学校・中学校・高校の学習指導要領も改訂し、日本の教育全体を改革しようという動きになっていて、その1つが大学入試の改革になっています。

大学入試改革が行われる背景

一昔前の日本社会では、指示されたことを正確にこなす人材が求められてきました。「出る杭は打たれる」ということわざもあるように、ともすれば、個性的な試みをする人は疎まれがちな部分もあったかもしれません。しかし、グローバル化が進みビジネスや、それを支える技術のあり方が多様化した今、言われたことを鵜呑みにせず、自分なりにじっくりと考えて提案する力、自分の考えを表現する力、グローバルな舞台で通用する英語力などが求められるようになってきました。しかし、今までの日本教育ではなかなかそこまでできていないことから、日本の教育制度や内容そのものを見直す必要性が叫ばれてきました。

従来の大学の一般入試は、「入試を突破するための勉強を重ね、それまでに身につけた知識や技能を使って解答用紙を埋めていく」という形式が主流でした。そこで重視されてきたのは、センター試験に代表されるような、「知識問題や読解・計算などの技能の面で、習ったことを正確に再現できる力」です。難関の国立大学などでは高度な判断力や論理性をどのくらい身につけているかが試される二次試験(正式には個別学力検査)もありますが、東大など、一部を除いて個別学力検査のウェイトの方が低い大学が多く、基本は「習ったことを正確に再現できる力」が重視される仕組みです。大学教育も、「学問研究の成果を学ぶ」という性格が強かったことから、このような仕組みの入試が有効だと考えられてきました。

しかし、世界の潮流は、大学教育に「学問研究を通して、課題解決能力を身につけること」を求めるように変わってきています。日本の大学も例外ではありません。そうなると、大学に入学する学生に求められる力も変わってきます。テストで点を取るためだけの勉強や、受験勉強ばかりの高校生活などが疑問視されるようになり、これからの大学入試では、課題解決能力の土台となる、思考力・積極性・課題解決能力・表現力・コミュニケーション能力などの「多面的・総合的な力」を評価しようということになったのです。

実施スケジュール

大学入試改革は2020年から実施され、共通テストもスタートします。しかし新学習指導要領は、小学校は2020年度から、中学校は2021年度から、高校は2022年度から始まります。つまり、2020年から2023年の間は、現行の学習指導要領で学んだ生徒が大学入試を受けることになります。そこで、この4年間は「先行実施期間」とされ、従来の教育を受けた生徒が対処できるよう、可能な部分のみを変えることになりました。2024年からは、新学習指導要領に基づいた共通テストが本格実施されます。

大学入試改革と次期学習指導要領実施スケジュール

記述式問題

共通テストでは記述式問題が導入されることになっています。メディアでも盛んに報道されているので、不安に思う方も多いでしょう。しかし一気に導入されるわけではなく、2020年からの先行実施期間中は、国語と数学でそれぞれ3問程度にとどまる見込みです。さらに採点側の効率性も考えなければならないので、完全な自由記述ではなく、ある程度正解のパターンが絞られた内容になりそうです。

昨年の11月に、全国の約4割の高校で、共通テストの試行が行われました。マスコミでは「記述式が難しかった」、「こうした出題に対応する勉強はしてきていない」など、大変革になります、といった論調が見られましたが、今回はあくまでも試行ですから、採点に手間がかかり、受験生も解答するのに苦労するような問題をわざと多めに出している面がありますから、大げさに考える必要はありません。

難関大学を目指す生徒たちは、従来の大学入試においても、前述のように二次試験で相当難度の高い記述式問題に対処してきましたし、それを見据えた勉強をしてきました。共通テストで記述式が導入されるからといって焦る必要はまったくないでしょう。中堅大学を目指す生徒たちは、記述式に苦手意識を持っているかもしれませんが、それは周りの受験生も同じ事です。記述式問題が完璧でないと合格できないということにはならないので、あまり恐れることはありません。とはいえ、大学生活でも社会人生活でも、自分の考えを説明したり意見をまとめて文章にすることは非常に重要なことです。大学入学以降に困らないように、高校生のうちから記述の練習をしておくことは大切です。

英語の4技能試験

大学入試センター試験では、英語の4技能のうち「読む」と「聞く」を評価する問題のみが出題されていましたが、共通テストでは、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能を評価することになります。しかし、大学入試の場面で「話す=スピーキング」を評価するのは現実的ではないため、「英検」や「TOEFL」のような民間の資格・検定試験を「認定試験」として利用することになりました。2020年から2023年までの先行実施期間は、民間の認定試験と共通テストが併存します。受験生は高校3年生の4月〜12月までの2回の認定試験の結果を大学に提出して入試の一部に活用してもらう他、共通テストの英語を受験することもできます。2024年以降、認定試験のみになるのか共通テストとの併存になるのかは、現在検討中とのことです。

難関大学では高いレベルのスピーキング力やエッセイのライティング力が求められると思いますが、今から心配することはありません。高校に入ってから、ネイティブと話す機会やネイティブにエッセイを添削してもらう機会を積極的につくるなど、さまざまな手段でトレーニングを積めば良いでしょう。一方で中堅大学を目指す場合、あまり高度な力は求められないと思われるので、まったくダメ、というのは問題ですが、高校での学習で標準的な力を身につければよいでしょう。しかし、グローバル社会でのスピーキング力やライティング力の必要性は増す一方ですので、高校生のうちに積極的に力をつけた方が良いことは確かです。

一般入試はどうなる?

従来の一般入試は多くの場合、試験当日のペーパーテストの出来不出来で明暗が分かれるものでしたが、大学入試改革では、ペーパーテストの得点以外の多面的・総合的な力も評価基準に加えることになります。

これまでの一般入試でも、内申点や運動系の部活の成績などが評価の対象になることはありました。しかし、今度新たに評価されるようになるのは、それとはまた違った内容です。例えば、小論文やレポート、読書感想文・エッセイなどで表現すること、説明することの力があること、数学部・化学部・文芸部・社会部などの文化系の部活で熱心な取り組みを行っていること、自由研究や課外活動、生徒会活動、各種コンクールへの参加、ボランティア活動なども評価されるようになります。どんな活動内容を評価するかは、大学や学部がそれぞれ決めます。

しかし、「大学入試で評価されるからこういう活動をしよう」となるのは本末転倒です。高校生活では、自分の興味・関心があることに、深く積極的に取り組み、それを大学が入試で評価してくれるのならばアピールする、という意向でいていただければと思います。たとえ取り組んだ内容が大学入試の評価に直接結びつかないとしても、高校生活の多彩な経験は思考力や課題解決能力、表現力などを伸ばし、共通テストにおいても役に立つことでしょう。

AO入試・推薦入試はどうなる?

2020年度から、現行のAO入試は「総合型選抜」に、推薦入試は「学校推薦型選抜」に改称されます。また、内容の見直しも行われます。

AO入試や推薦入試は本来、生徒の多面的・総合的な力を評価することを目的として生まれたものです。AO入試は生徒が一生懸命取り組んだ分野での活躍を、推薦入試はコツコツと勉強を積み重ねてきたことを評価するという理念を持っています。ですが実際には、推薦入試は受験勉強を避けるために、AO入試は部活動でいい成績をおさめた生徒を入学させるために実施されていることが多くなっています。

こういった背景から、大学入試改革では、AO入試や推薦入試でも学力をしっかり評価する方向にシフトします。詳しい内容は決まっていませんが、共通テストを活用するか、大学毎に決めた評価方法で学力を測ることとなります。また、秋には合格が決まってその後の勉強がおろそかになるという指摘もあったため、実施時期が遅くなります。

大学側の動き:3つのポリシー

大学側は大学入試改革に際して、2020年までに「ディプロマ・ポリシー」、「カリキュラム・ポリシー」、「アドミッション・ポリシー」を発表することになっていて、すでに発表した大学もあります。これらは、大学でどのような力をつけて社会に送り出すのか、そのためにどんなカリキュラムを組むのか、そして、それに対応するには、入学時点でどんな資質が必要なのかを明確に示した、大学の教育方針のことです。各大学は、学部ごとに、この3つのポリシーに基づいて、入試で評価する内容とそのレベルを決めて、それに基づいて入試の内容や出題の難度を決めることになります。

このように書くと、大変そうに感じますが、実際には一定レベルの「習ったことを正確に再現できる力」も必要ですから、現行の大学受験勉強のような内容を、枝葉末節まで追求する必要はなく、その分の力を英語でのコミュニケーション能力の伸長や、興味・関心がある分野での取り組みに充てて、それも大学入試で評価する、と捉えるのが正解です。 近年は、せっかく大学に入学しても学びの内容や雰囲気が合わずに、通わなくなったり自主退学してしまう学生の存在が問題視されていますが、3つのポリシーに基づいた入試は、こうしたドロップアウトの防止にも一役買ってくれるでしょう。

「JAPAN e-Portfolio(ポートフォリオ)」について

大学入試改革では、高校生活における日頃の活動が評価されるようになります。高校から大学に提出される調査書や、受験生本人が自己アピール書のような形で提出することになりますが、大学ごと、学部・学科ごと、さらには入試方式ごとで、提出する内容や形式が異なることも想定されています。これを1つ1つ作成することは大変な手間となります。そこで文部科学省が大学関係者や高校関係者などに委託して開発中なのが「JAPAN e-Portfolio」です。これは、生徒個人が、普段の活動についての感想や総括、レポートや課題研究などを日々少しずつ入力するためのサーバシステムで、家庭のパソコンやスマートフォンから入力しておき、大学入試の時には、必要なデータの管理番号を出願時に入力(現段階では出願もすべてインターネット経由が想定されています)することで、必要な情報が大学側に送られるものです。先進的な私学では、昨年くらいから類似のシステムが校内に設置されている事例も見られます。現段階では、大学入試の出願には連動しませんが、生徒が学校内外での普段の活動をパソコン等から入力するもので、担任の先生が生徒の成長を把握しやすくすることが設置の直接の目的ですが、同時に生徒にとっても入力の習慣づけや、わかりやすく入力する練習用の役割も果たしています。

このように書くと、「高校生活でいろいろな活動に取り組んだものの、どれもうまくいかず、誇れるような成果がない受験生はどうすればいいの?」と心配する人もいると思いますが、「JAPAN e-Portfolio」の最大の狙いは「振り返り」です。うまくいかなかったら、なぜうまくいかなかったのか、うまくいかなかったことを通して何を学んだのかが書かれていればよいのです。例えば、「次に取り組むときは××を〇〇のように変更して取り組もうと思う」が書かれていればオーケーで、それが大学に対する受験生のアピールになります。

保護者世代の感覚からすると、自分の活動を自分でアピールすることは、なかなか馴染めないかもしれません。しかしこれからの高校生にとって、e-ポートフォリオは一般的になってくると思われます。「私のやっていることは大したことじゃない」「こんなことは評価されないだろう」という謙虚さは捨て、積極的に自己アピールをすることが大切です。海外大学でも、自己アピール資料による「ポートフォリオ入試」は主流になっていますが、これからの時代には、セルププロデュース力が求められるのです。

総括

今の中学生は、先行実施期間中に大学入試を迎えることになります。世間では不安をあおるような噂も流れていますが、先行実施期間中は実質それほど大きな改革は行われず、従来型の教育を受けてきた生徒にも十分対処できる入試になると予想されます。動じることなく冷静に、日々の勉強を積み重ねていただければと思います。変動の時代だからこそ、基礎学力を高めていくことが大切になるのです。

大学入試改革についてはまだはっきりと決まっていない事項も多いため、受験マニアックスでは今後もその動向を追い、適宜皆さまにお伝えしていきたいと思います。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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