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上級者向け 受験マニアックス

2023年9月号 読書のすすめ

「読書の秋」がやってきました。皆さんは幼いころから「本をたくさん読みなさい」と言われてきたことでしょう。ですが、なぜ読書は大切なのでしょうか。
今回の受験マニアックスでは、今の子どもたちの読書習慣、読書と学力の関係などを紹介しながら、読書習慣を身につけることの意味を考えます。

今の子どもたちはどのくらい本を読んでいるのか

下のグラフは、公益社団法人全国学校図書館協議会が行っている「学校読書調査」(第66回調査以前は全国学校図書館協議会と毎日新聞社の共催、第67回調査は全国学校図書館協議会が実施)の結果です。小学生、中学生、高校生が1カ月にどのくらい本を読んでいるのか、31年分の推移を示しています。小学生は右肩上がりで、2022年は平均で月に13.2冊読んでいます。中学生も少しずつ増加していますが、冊数は小学生の半分以下です。高校生はずっと停滞しており、月に2冊未満という結果です。なお、同調査では、1カ月間で1冊も本を読まない「不読者」の割合も発表しており、2022年は小学生(4〜6年生)が6.4%、中学生が18.6%、高校生が51.1%となっていました。こうした結果から、小学生の頃には読書習慣があっても、中学、高校と成長していくと、本を読まなくなる傾向があることが読み取れます。高校生の半数以上は、月に1冊も本を読んでいないのです。

出典:「学校読書調査」(調査者:第66回調査以前は全国学校図書館協議会と毎日新聞社、第67回調査は全国学校図書館協議会)
  • 出典:「学校読書調査」(調査者:第66回調査以前は全国学校図書館協議会と毎日新聞社、第67回調査は全国学校図書館協議会)

この背景には、どのようなことがあるのでしょう。小学生の頃は、大人に促されながらも、学校の図書室、学校の「朝の読書」の時間などで、日常的に本に親しんでいます。ところが中学生、高校生になると、どんどん本から離れてしまいます。「本を読まないでSNSや動画配信ばかり」と考えたくなるかもしれませんが、「部活や定期テストの勉強、受験勉強などで忙しくて」というケースも決して少なくありません。

なお、学研教育総合研究所が調査・発表している「中学生白書」(2020年8月調査)によると、女子より男子の方が、低学年より高学年の方が、より読書量が減る傾向が見られます。

本を読む習慣と学力の関係

昔から「本を読むと頭が良くなる」などといわれますが、文部科学省が実施した「令和5年度全国学力・学習状況調査」の結果には、それを裏付けるようなデータが見られます。

下のグラフは同調査の結果として公表されたものです。家庭の社会経済的背景(SES:Socio-Economic Status)を表す指標として「家にある本の冊数」を用い、授業で工夫して発表している生徒ほど、各教科の正答率が上がることを示しています。棒グラフの数値は、各教科の平均正答率です。ここで注目していただきたいのは、小学校国語、小学校算数、中学校国語、中学校算数、中学校英語の全ての教科において、家にある本の冊数が多い群ほど、総じて平均正答率が高い点です。

出典:「令和5年度全国学力・学習状況調査の結果」(文部科学省)
  • 出典:「令和5年度全国学力・学習状況調査の結果」(文部科学省)

なお、家庭の社会経済的背景の指標に何を用いるかはとても難しく、複雑な問題です。こちらの統計では、「家にある本の冊数」を指標にしていますが、「本のジャンルは?」「本を家族の誰が読んでいるの?」など、疑問に思う部分ももちろんあると思います。しかしながら、家に本がたくさんあるほど、子どもの頃から本を手に取りやすい環境が整っているといえるのではないでしょうか。つまり、本に親しみやすい環境で育った子どもは学力が伸びやすい、読書体験が学力の土台になっているという傾向がみえてきます。

どんな本を読めばいいのか

子どもの頃から本に親しみ親子で本屋さんに行っていた人、好きな作家やシリーズが決まっている人などは、自然と自分で読みたい本を選ぶことができます。ですが中には、「本を読みなさいと言われても、何を読んだらいいのかわからない」という人もいるでしょう。そんな場合はまず、自分が好きなものについて解説している本、好きなものが出てくる小説など、興味を持てる本を手に取るとよいでしょう。本屋さんに行って、平積みされているものの中から表紙の印象で選んでも構いません。まずは、どんな本でもいいので読んでみること、活字に触れることが大切です。

なお、本をあまり読んでこなかった人の場合、いきなり分厚い長編にチャレンジすると、挫折して嫌になってしまうかもしれません。まずは薄い短編などを読み、色々なジャンルを少しずつ試しながら、本の楽しさを知り、自分で選ぶ力を育んでいただければと思います。

中学生のうちに読書習慣を身につけよう

ドキドキワクワクするようなフィクションも、偉人の伝記などのノンフィクションも、宇宙や動物などについて解説した図鑑も、本の中には、自分の日常生活だけでは得られない体験、知識などがたくさん詰まっています。自分の知らない世界、色々な人の考え、他人の生き方などを知ることは、多彩な観点で物事を考えたり、自由なアイデアを生み出す上で、大きなヒントになります。本をじっくり読むことで、書いてあることを自分なりに解釈し、自分の考え方や行動に反映していくことができるようになります。

例えば、理科の実験を思い出してください。実験器具の使い方について、いろいろな手順、やり方を守らなくてはならず、面倒くさいと思ったことがあるでしょう。手順ややり方を守らないと、しっかりした結果が出なかったり、最悪の場合はケガをすることもあります。面倒だと感じた手順ややり方は、以前に失敗した人がいて、同じ失敗を繰り返さないために考え出されたものです。それが現在は「実験の方法」として定着したことで、面倒でも手順ややり方を守らなければいけない、と言われるわけです。読書も同じで、さまざまな場で先人たちが起こしたミス、失敗を振り返って、同じことを繰り返さないためのアドバイスになります。もちろん、失敗ばかりでなく、成功体験もあるでしょう。自分がその中身を模倣することで、思いのほかうまくいくこともあり、「ラッキー!」と感じることも期待できます。

最近は子どもに限らず大人も、SNSやネットのまとめ記事などから知識を得て、わかったような気になっていることが多くなっていますが、自分で考えずに手っ取り早く得た知識は、本をじっくり読んで得た知識よりも浅いといえると思います。

また、最近の報道を見ていると、どのメディアも一律な見方になってきて、批判的な意見をはっきり打ち出さなくなったと感じます。こうしたメディアに触れていると、「へえ〜、こういうものなんだ」で終わってしまい、問題点を見つけ出したり、前提を疑ったり、課題を解決しようという意識が弱くなってしまいます。例えばある人物がいたとき、ヒーローだと感じる人もいれば、悪者だと感じる人もいるのが世界の実態です。世界中のいろいろな人のものの見方を知り、自分で考えられるようになるためにも、読書は非常に大切なのです。

中学生になり、部活や勉強で忙しくなって、本から離れてしまっていませんか? 普段から本に親しむ生活を送ることは、結果的に学力上昇にも結びつきますし、人生を豊かにしてくれます。高校生、大学生、社会人になると、どんどん忙しくなり、じっくりと読書をする習慣を身につけるのが難しくなっていきます。ぜひ、中学生のうちに、一生ものの読書習慣を身につけてください。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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