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上級者向け 受験マニアックス

2018年5月号 2018年度入試で起きた「公立離れ」の検証

2018年度の首都圏高校入試では、中堅校や比較的入りやすいレベルの公立高校の人気低下が目立ちました。今回の受験マニアックスでは、都県毎にこの現象を解説し、公立高校から流れた受験生がどこに向かったのか等を紹介します。

2018年度入試で起きた「公立離れ」の検証

東京

※東京都立高校では、コースを除く普通科と総合学科について、その学校の総需要を示す指標「出願ニーズ(推薦入試の合格者数+一般入試の応募者数)」の数値を元にしています。

東京都立高校は男女別定員ですが、男女ともに偏差値49以下の比較的入りやすい都立高校の人気低下が目立ち、特に男子の減少幅が大きくなっています。一方で、偏差値50以上の都立高校の人気は男女ともにあまり変わりません。

比較的入りやすい都立高校の受験生層が流れた先は私立高校になりますが、実際には都内全日制私立高校全体の応募者数は減少しています。

これは私立高校を何校も受験する生徒が少数派となり、1校しか受験しない生徒が増えているためでしょう。また、都内では文部科学省の学校基本調査によると、2015年以降通信制高校への進学者が増加しています。学校基本調査の速報値は夏にならないと公表されませんが、今年もその傾向は続いていて、全日制私立高校ではなく通信制私立高校を進学先に選んだ受験生も相当数いたと考えられます。

神奈川

※神奈川県公立高校では、コースを除く普通科と総合学科について、各校の応募者数を元にしています。

神奈川県公立高校の学力層別の人気は、他都県とは少し異なります。偏差値39以下の入りやすい公立高校の人気が下がっているのは同じですが、偏差値40〜49の比較的入りやすい公立高校の人気はあまり変わりませんでした。特筆すべきは、偏差値55〜59の中堅公立高校の人気が下がったことです。この背景には、昨年から実施されている公立高校の再編や定員削減があります。こうした学力層の受け入れ先が縮小されたため、このレベルの受験生たちが私立に流れたのです。そしてこの受験生たちには、ペーパーテストではなく推薦入試や書類選考で合格を決める傾向が見られました。もちろん中には例外もいますが、「受験勉強を頑張ってペーパーテストを受けるのは大変だから、なるべく楽に入れる所に進もう」と考える受験生が増えた面も見られました。

筆者は、この状況に危惧の念を抱いています。高校入試で挑戦することから逃げると、この先の大学入試、そして社会人生活でも、頑張らずに手の届く所で手を打つようになり、失敗をバネに成長するたくましさが身につかないのではないでしょうか。高校受験は大変ですが、根気が身についたり、努力して学力が上がる達成感を味わえるといったプラスの側面もあります。受験生の皆さんには、一生懸命勉強をして挑戦することから逃げないでほしいと思います。

なお、神奈川県では学校基本調査で通信制高校進学者数の増加傾向は見られませんが、後述の「なるべく全日制に近いタイプの通信制高校」が以前から一定数の受験生を集めていたために、変化が目立たないものと考えられます。

千葉

※千葉県公立高校では、コースを除く普通科と総合学科について、その学校の総需要を示す指標「出願ニーズ(前期選抜の合格者数+後期選抜の応募者数)」の数値を元にしています。

千葉県の公立高校の人気状況は東京都と同様で、偏差値49以下の比較的入りやすい公立高校の人気に低下が見られ、偏差値50以上の公立高校の人気はあまり変わりませんでした。減少幅は、偏差値39以下の学力層が最も大きく、次いで偏差値40〜44の学力層となっています。

今年の千葉県内公立中学卒業生数はわずかに減っていたにも関わらず、県内私立高校の応募総数は増えていたため、比較的入りやすい公立高校の受験生層は私立に流れたと思われます。ですが挑戦志向は控えめで、確実に入れそうな私立1校だけを受験するケースが増えています。なお、千葉県でも通信制私立高校への進学者は、学校基本調査では増加傾向が見られ、今年もその傾向が続いていると考えられます。

埼玉

※埼玉県公立高校では、コースを除く普通科と総合学科について、各校の応募者数を元にしています。

埼玉県でも、偏差値49以下の比較的入りやすい公立高校の人気が下がっています。東京都や千葉県と同じ現象です。また、偏差値50〜59の公立高校の応募者の減少が目立ちますが、これは、市立川口・市立県陽・市立川口総合の3校が統合して川口市立高校になったことによる受け入れ人数の削減と、市立大宮西が高校募集を停止したことによるものです。

他の学力層の公立高校の人気は特に上がっていないことから、偏差値50〜59の中堅レベルの受験生層は私立高校に流れたものと考えられます。埼玉県でも東京都と同様に県内全日制私立高校全体の応募者数は減少していますが、単願受験生が増えたことと、通信制私立高校を選ぶ受験生が増えているためでしょう。実際、学校基本調査でも埼玉県の通信制高校進学者数は増加傾向になっています。

通信制高校について

首都圏では比較的入りやすい公立高校の人気が下がっていますが、その学力層の受験生の受け入れ先として台頭してきたのが通信制高校です。最近は、平日は毎日登校するタイプの「全日制通信高校」が増えていて、全日制感覚で高校生活が楽しめると人気が上がっています。全日制高校と通信制高校の性格の差は縮まり、部活動で同じ大会に出場することも増えてきました。

高校に通うことの目的は、単に勉強して学力をつけるだけではありません。集団生活を身につける、コミュニケーション能力を伸ばす、自分と違う考えを持つ友人と交流して視野を広める、といった側面もあります。仕事、持病などの事情がある方は別ですが、公立高校も選べる状況にあって通信制高校に行く生徒には、なるべく全日制に近いタイプの学校を選んでいただきたいと思います。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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