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上級者向け 受験マニアックス

2021年2月号 東京都と埼玉県(2回目)の進路希望調査結果

この記事は2020年度の情報です。最新の情報は2024年2月号をご覧ください。

今回は、東京都の教育委員会が発表した都内公立中学3年生の進路希望調査結果、および埼玉県の教育委員会が発表した県内中学3年生の2回目の進路希望調査結果(1回目の結果は1月号にて紹介済み)をご紹介します。各校の募集人員、希望者数、倍率の詳細については、添付のPDFをご覧ください。

東京都の公立中学校3年生の進路希望調査結果

発表:2021年1月7日
調査:2020年12月
対象:都内公立中学校3年生

1.全体的な傾向

卒業予定者数は、男子が37,952名で前年より男子が1,098名減少、女子が35,039名で、前年よりも1,244名減少しました。全体では3.1%の減少です。前々年はわずかですが男子が増加するなど、生徒数減少期でも微減に留まっていましたが、前年、今年と本格的に減っています。都内では今回の公立中3年生が生徒数の底で、中2以降は増加に転じる見込みです。

全日制都立高校(高専も含む)への進学希望者数は、男子が1.3%減、女子が1.1%減です。今年も男女とも都立の志向が下がっています。全日制と同様の感覚で通学できる都立の昼間定時制も、男女とも希望率は0.3%下がりました。1月26・27日に実施された推薦選抜は応募者が増えましたから、都立志向が下がったと聞いて違和感があるかもしれません。しかし、コロナ禍対応で今回は集団討論がなくなったことから、「それなら」と出願した受験生が増えたためで、都立希望者の中で「集団討論がある推薦はいやだ」と考えた受験生が減っただけですから、2月の一般入試はこのままでいくと応募者の増加は期待できません。一方、全日制国立・私立・他県公立(多数派は都内私立希望)は男子が0.7%、女子は0.2%上がっています。前年に続く上昇ですが、前年は男子が1.6%、女子は0.9%上がっていましたから、全日制私立高校志向もブレーキがかかってきました。

上昇が目立つのは都立以外の定時制・通信制です。男女とも0.8%上がっています。この中には、昼間定時制の中央大学高校のような人気校のほか、N高校に代表されるような新しいタイプの通信制高校の人気が上がっていると考えられます。その他各項目の希望率はほぼ前年並みで、進路希望の傾向に目立った変化は見られません。

2.学科・課程別の人気動向

倍率の上昇が目立っているのは、普通科コース制、科学技術科、ビジネスコミュニケーション科、家庭科、産業科です。しかし、普通科コース制とビジネスコミュニケーション科については1倍に届かない倍率となっています。定員割れの状態が若干改善したという状況なので、入試が難化するとは思われません。
科学技術科は2校しか学校がなく、そのうちの1校である科学技術高校の人気が上がったことによる影響かと思われます。
注目は家庭科です。上昇の背景には、家庭科と福祉科の専門校である新設開校の赤羽北桜がスタートすることによる人気です。目立った上昇ではありませんが、家庭科とともに福祉科の倍率も上昇しています。ただし、福祉科はこれまで定員割れを続けていたため、今回の倍率の上昇は初物人気といえるでしょう。

3.希望倍率が高い都立高校

都立高校学年制普通科の、男女別の希望倍率上位5校を紹介します。

受験年度

21年

20年

19年

18年

17年

男子1

三田

2.08

青山

2.19

石神井

2.14

戸山

2.16

調布南

2.11

男子2

戸山

2.06

戸山

2.10

戸山

2.13

三田

2.08

竹早

2.10

男子3

城東

1.988

石神井

2.03

江戸川

2.05

駒場

2.00

豊多摩

2.03

男子4

豊島

1.986

城東

1.99

小岩

2.02

北園

1.99

駒場

2.00

男子5

田園調布

1.97

狛江

1.95

南葛飾

2.00

豊多摩

1.93

江戸川

1.98

女子1

三田

2.93

広尾

2.45

小平

2.41

三田

2.46

小平

2.53

女子2

広尾

2.26

三田

2.37

2.21

石神井

2.27

竹早

2.49

女子3

深川

2.22

青山

2.27

小岩

2.16

竹早

2.25

青山

2.17

女子4

青山

2.19

竹台

2.16

三田

2.14

小平南

2.24

小金井北

2.12

女子5

竹早

2.15

昭和

2.09

本所

2.12

向丘

2.18

調布南

2.09

男子

今回は三田がトップです。トップ5校にもよく出てくる学校ですが、2018年のように2位までで、トップになるのは珍しいことです。人気は高いものの特筆する倍率ではないため、今回の場合は三田をしのぐ人気校がなかったということでしょう。2位は前年と同様の戸山で、人気に目立った変化はありません。3位の城東は前年4位から上がりましたが、倍率そのものは前年並みです。4位の豊島と5位の田園調布は、近年トップ5に登場したことはありません。両校とも前年より希望倍率が上がっており、募集定員は変わっていませんから、この2年で人気が上がってきた結果のトップ5登場です。豊島の場合は、来年度に完成予定の新校舎への期待も人気の理由のひとつでしょう。

女子

女子のトップは、こちらも三田です。女子の三田は2018年にもトップになっていて、男子よりもトップ5に登場する回数が多いのですが、今回の希望倍率3倍に迫る水準は近年例がなく、高い人気がさらに高くなった状況です。2位は前年トップだった広尾で、今回は若干希望者が減りましたが、高い人気を保っています。3位は深川で同校がトップ5に登場するのは珍しいことです。前年より人気が上がっています。2倍を超える高倍率だった2016年よりもさらに希望者が多くなりました。4位は前年3位の青山で、希望倍率は若干下がりましたが、高い人気が続いています。5位は竹早で、同校も時々2倍台でトップ5に登場します。前年、前々年と登場しませんでしたが、今年は人気が上がりました。

4.難易度別の希望動向

都立高校普通科(単位制も含む)の、難易度別の人気を男女別に考察します。

男子

今年は、二番手校の希望者が増えていますが、それ以外のすべての難易度帯の学校では希望者が減少しています。比較的入りやすい都立高校では都立離れが目立っていますが、最上位校でも減っており、全体的に都立離れが広がっています。前年はすべての難易度帯の学校で希望者が減っており、今年も同様の動きです。

女子

女子でも男子同様に二番手校の希望者が増えていますが、前年と比べると微増にとどまっています。前年も全体では希望者が減ったものの、減少は入りやすい学校が中心で「上位校人気は高く、入りやすい学校で都立離れ」という様相でしたが、今回は全体的な都立離れと言えます。入りやすい学校に限れば今回も都立高校離れは続いています。

埼玉県の中学3年生の進路希望調査(第2回)結果

発表:2021年1月12日
調査:2020年12月
対象:県内中学校3年生
※第1回の進路希望調査結果は、1月号にて紹介済みです。

1.全体的な傾向

中学校(私立・国立も含む)の卒業予定者数は61,182名で、前年よりも1,359名減少です。前年に続く大幅減少となっています。高校進学希望者は60,929名で、前年より1,312名減っています。高校進学希望率は、4年連続で98.7%です。

進学希望先別に見ると、県内の全日制公立高校への進学希望者数は40,408名で、第1回調査より2,545名減、前年同時期より2,052名減でした。一方、県内の全日制私立高校への進学希望者数は11,281名で、第1回調査より1,897名増、前年同時期と比べると568名増でした。
県外の全日制私立高校の進学希望者数は4,061名で、第1回調査より729名増、前年同時期と比べると127名減でした。第1回調査時には全日制公立高校を希望していた生徒の中から、県内外の私立に希望を変更した生徒が多く出ています。

公立中学の3年生のみのデータを見ると、公立高校希望率は2017年度から連続して下がっています。今回は前年より1.8%と大きく減少しており、公立離れが進行しています。一方、県内私立高校の希望率は前年に続いて、大きく上昇しています。県外全日制(多くが都内の私立)は2018年度以降上昇が続いていましたが、今回は8.0%と前年7.9%からわずかな増加となっており、ブレーキがかかった状況です。公立の昼間部希望が多数派の定時制は0.1%の減少。通信制は0.9%上がっています。

2.希望倍率が高い公立高校

希望倍率が高い普通科公立高校をご紹介します。
表は、希望倍率1.5倍以上の高校を倍率順に並べたものです。全体的な公立離れの影響で高倍率校も減っており、今回表に登場する1.5倍以上の学校は、前年と同じ15校ですが、2016〜2019年度向けの進路希望調査では20校から24校登場しており、私立志向の高まりがうかがえます。

 今回  前年度
順位 校名 倍率 順位 校名 倍率
1 市立川越 2.9 1 市立浦和 2.13
2 川口市立 2.42 2 浦和西 1.96
3 市立浦和 2.29 3 市立川越 1.93
4 川越南 1.99 4 鳩ヶ谷 1.89
5 浦和西 1.78 5 川口市立 1.86
6 大宮 1.76 6 1.79
7 越ヶ谷 1.72 7 市立大宮北 1.779
8 南稜 1.71 8 越ヶ谷 1.777
9 市立大宮北 1.7 9 川越南 1.68
10 越谷南 1.69 10 上尾 1.66
11 上尾 1.68 11 和光国際 1.65
12 1.63 12 大宮 1.56
13 所沢北 1.59 13 浦和県立 1.539
14 鳩ヶ谷 1.59 14 鴻巣 1.535
15 熊谷西 1.55 15 市立浦和南 1.53

トップは前年3位だった市立川越で、3年ぶりにトップに返り咲きました。希望者が大幅に増えて倍率も大きく上がっています。2位は前年の5位から上がった川口市立です。希望者が増えているだけでなく、併設中学開校に伴って募集定員も削減されていて倍率が大きく上がりました。3位は前年トップの市立浦和です。この10年を振り返ると市立浦和と市立川越のトップが5回ずつで拮抗しています。今年は順位が下がったものの倍率は上がっていて、市立川越と川口市立の人気ぶりがわかります。4位は前年9位から上がった川越南で、希望者の増加で倍率も上昇しました。5位は前年2位だった浦和西です。希望者は少し減っています。6位は前年の12位から上がった大宮で、希望者は増えています。7位は前年が8位の越ヶ谷で、希望者数は前年並みです。8位の南稜は、前年は登場していませんが、1.5倍を超えて登場することが多い学校です。前年はやや人気が下火だったのが回復したのでしょう。9位は前年が7位だった市立大宮北です。少し希望者が減りました。10位の越谷南は、前年は登場していませんが1.46倍と、もう少しで登場する位置でした。今までにも時々登場していた学校です。
11位は前年10位だった上尾です。順位は下がりましたが倍率はやや上がっています。12位は前年6位だった蕨で、希望者が少し減りましたが1.5倍のラインは守っています。13位の所沢北は、前年は登場していません。同校も今まで時々登場していた学校で、希望者がかなり増えています。14位は前年4位だった鳩ヶ谷です。同校の希望者数は最近隔年現象的に変化していて、今回は減りましたが、1.5倍のラインは守りました。15位は熊谷西です。同校の登場は5年ぶりですが、1.4倍台後半でもう少しで登場する、という年も多く、比較的人気が高い学校です。ただ、今年については希望者が減っていて、募集定員削減が倍率を押し上げました。

3.難易度別の希望動向

どの難易度の学校でも、中3生徒数の減少を反映して減っていますが、トップレベル校や中堅校ではわずかな減少に留まっています。減少が目立ったのは中上位校などです。比較的入りやすい学校では、希望倍率が前年同様1倍を切っています。公立離れと言われていますが、トップレベル校の人気は前年と変わらず、それ以外の学校に差が出ているといえるでしょう。

4.県内私立高校の人気の傾向

希望者が多い県内私立高校をご紹介します。県の発表では、私立中学在籍生の内部進学も含めた希望者数となっていますので、併設中学がある学校は、中3生の在籍人数を全体の希望者数から差し引いて表を作りました。併設中学がない学校はそのままの数字です。

順位 今回 前年度 10月対比(増加数30名以上)
校名 希望者数 校名 希望者数 校名 伸び率
1 埼玉栄 497 星野 395 秀明英光 144.80%
2 浦和学院 456 浦和実業学園 390 細田学園 83.90%
3 星野 433 埼玉栄 388 武蔵越生 74.60%
4 花咲徳栄 373 浦和学院 372 花咲徳栄 74.30%
5 叡明 371 早大本庄 363 秋草学園 63.90%
6 浦和実業学園 322 花咲徳栄 329 東京成徳大深谷 59.10%
7 東京農大第三 299 東京農大第三 323 浦和麗明 54.20%
8 早大本庄 299 叡明 246 東野 53.40%
9 細田学園 296 武蔵越生 233 東京農大第三 51.00%
10 正智深谷 294 西武台 221 国際学院 48.50%

今回のトップは前年3位の埼玉栄、2位は前年4位の浦和学院、3位は前年トップの星野です。この3校はいずれも希望者は400名を超えています。400名を超えるのは2018年度の星野の410名、浦和学院の408名、2017年度の星野の401名以来です。いずれも400名ちょっとで、今回の埼玉栄のような500名近くや浦和学院の456名、星野の433名といった水準には達していません。4位は前年6位の花咲徳栄、5位は前年8位の叡明で両校とも希望者がかなり増えています。6位の浦和実業学園は前年の2位から下がりました。希望者は減っています。7位は東京農大第三と早大本庄で、早大本庄は前年の5位から下がりました。東京農大第三は前年と同様の順位ですが、希望者は少し減っています。9位の細田学園はこの10年表に登場したことはありません。今までは100名台の希望者数が多く、多い年でも200名ちょっとでした。人気が大きく上がっています。10位の正智深谷は3年ぶりの登場です。同校もこの10年、多い年でも256名で、100名台の年も多く見られましたから人気が上がっています。募集規模が大きい学校が上位に来ますが、今年の私立志向が表れた結果でしょう。



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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