上級者向け 受験マニアックス
2022年9月号 内申(評定)を上げる方法
2021年度から中学校の新学習指導要領が全面実施になり、内申(評定)の付け方も変わりました。公立高校を受験する場合や、私立高校の推薦入試を受ける場合など、内申点が合否を決める上で結構なウエイトを占めます。今回の受験マニアックスでは、内申(評定)の新しい評価の観点について解説し、内申点(評定)を上げる方法を改めて考察します。また、東京都と千葉県の内申(評定)の付き方が公表されましたので、そのデータもあわせて紹介します。
新しい三つの評価観点
内申(評定)の評価観点は、新学習指導要領実施に伴い、以下のように変わっています。
従来の評価観点(2020年度まで)
観点別評価は国語が5観点、他の8科目では各4観点です。
国語 | 国語への関心・意欲・態度 |
---|---|
話す・聞く能力 | |
書く能力 | |
読む能力 | |
言語についての知識・理解・技能 | |
社会 | 社会事象についての関心・意欲・態度 |
社会的な思考・判断 | |
資料活用の技能・表現 | |
社会事象についての知識・理解 | |
数学 | 数学への関心・意欲・態度 |
数学的な見方や考え方 | |
数学的な表現・処理 | |
数量図形などについての知識・理解 | |
理科 | 自然事象への関心・意欲・態度 |
科学的な思考 | |
観察実験の技能・表現 | |
自然事象についての知識・理解 | |
英語 | コミュニケーションへの関心・意欲・態度 |
表現の能力 | |
理解の能力 | |
言語文化についての知識・理解 |
音楽 | 音楽への関心・意欲・態度 |
---|---|
音楽的な感覚や表現の工夫 | |
表現の技能 | |
鑑賞の能力 | |
美術 | 美術への関心・意欲・態度 |
発想や構想の能力 | |
創造的な技能 | |
鑑賞の能力 | |
保体 | 運動や健康への関心・意欲・態度 |
運動や健康への思考・判断 | |
運動の技能 | |
運動や健康への知識・理解 | |
技家 | 生活や技術への関心・意欲・態度 |
生活を工夫し創造する能力 | |
生活の技能 | |
生活技術についての知識・理解 |
2021年からの評価観点(全科共通)
- 知識・技能
- 思考・判断・表現
- 主体的に学習に取り組む態度
中学校の先生は、この新しい三つの観点別にA・B・Cの評価を行い、それを総合して「5・4・3・2・1」の成績をつけていくわけです。内申(評定)を上げていくためには、この三つの観点のそれぞれで高い評価をとっていく必要があります。
三つの評価観点の中身と、評価を上げるポイント
知識・技能
「知識」とは、授業で学んだ単語、用語や語句、ことがらなどや公式をしっかりと覚え、理解しているかどうかという部分。「技能」とは、数学や理科などで計算問題が解ける、理科の実験器具を正しく使える、国語や英語の文法を正しく使えるといった部分です。「知識・技能」は、昔から変わらない学習のベースになる部分です。評価を上げるには、定期テストで高い得点をとることがとにかく大切です。
思考・判断・表現
「思考・判断・表現」とは、学習に取り組む上で、自分でしっかりと考えて表現する力のことです。まずは、理科や社会のレポートでも技術・家庭や美術などの作品提出でも、きちんとしたものを期日までにしっかり提出することを心がけましょう。最近は、授業を通してわかったことや自分自身に身についたことを生徒自身が頻繁に振り返りを行い、用紙に書いて提出することも増えているようです。配られるのは小さな用紙かもしれませんが、決して軽々しく考えずに、自分の学習をしっかり考えて、記入するようにしてください。こうした積み重ねが、「思考・判断・表現」の評価を上げることにつながります。
また、「思考・判断・表現」の力は、一人で取り組む学習だけでなく、グループワークやディスカッションなど、他の人と協働して取り組む場面でも求められます。話し合いには積極的に参加し、自分の意見をしっかり発信するとともに他の人の意見もしっかり聞いて解決法を探り、コミュニケーションをとっていきましょう。
主体的に学習に取り組む態度
「主体的に学習に取り組む態度」とは、真面目にやる気を持って授業に取り組んでいるかどうかという部分です。人それぞれに得意・不得意はありますが、苦手なことでも根気強く努力して取り組み、あきらめずにやり抜く姿勢を見せることが大切です。グループワークやディスカッションにおいても、積極的な態度で取り組むことが重要になってきます。
特に注意したいのが、音楽や美術、体育といった実技系教科。得意不得意の個人差が大きく、苦手意識があるとやる気が出ずに、白けた態度をとったりふざけてしまうケースが見られます。これは自らの内申(評定)を下げることにつながり、非常にもったいないことです。
「主体的に学習に取り組む態度」とは、苦手であっても自分なりに努力する姿勢を評価します。「どうせダメだから」とやる気のない態度でいると、「1」や「2」がついてしまう可能性がありますが、真面目に一生懸命取り組めば、「3」以上の可能性が高まります。
また、近年は教科横断の考えが強くなっていますので、苦手な教科の内容が、他の教科の定期テストなどで出てくる可能性もあります。例えば、ロシアのウクライナ侵攻が大きな関心を集める今、美術の授業で戦争の悲劇を描いたピカソの「ゲルニカ」が扱われ、それが社会科のテストの素材になるかもしれません。教科ごとに分断して考えるのではなく、教科横断型の視点を持って、苦手教科にも前向きに取り組んでいただければと思います。
5段階評定を一つひとつ上げることが合格につながる
5段階評定において、普通に授業に参加して課題を提出していれば、多くの場合、「3」は取れると言えます。「2」は、授業に真面目に参加していなかったり課題を提出していなかったりする場合が多く、「1」は、よほどのことがない限り付きません。通知表に「1・2」がある場合には危機感を持ち、まずはそこを「3」に上げるようにしてください。それから、前述した三つの観点の評価を上げるポイントを踏まえ、「3」を「4」に、「4」を「5」に上げる努力を続けましょう。日頃から真面目に主体的に授業に取り組み、内申(評定)を頑張って上げることが、合格につながっていくのです。
【参考資料】東京都と千葉県の内申(評定)の付き方
東京都と千葉県の公立中学の内申(評定)の付き方の平均値が、それぞれの教育委員会から公表されていますので紹介します。神奈川県と埼玉県については、調査・公表の予定はないとのことです。
東京都の2021年度の内申(評定)の付き方の平均
評定 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
---|---|---|---|---|---|
国語 | 12.8 | 25.2 | 46.2 | 12.5 | 3.2 |
社会 | 13.9 | 24.1 | 43.9 | 14.4 | 3.8 |
数学 | 13.6 | 23.0 | 43.5 | 15.2 | 4.8 |
理科 | 13.0 | 23.4 | 46.2 | 13.9 | 3.6 |
音楽 | 12.7 | 25.4 | 49.1 | 9.8 | 3.0 |
美術 | 12.1 | 26.5 | 50.1 | 8.7 | 2.7 |
保健体育 | 11.5 | 26.4 | 48.4 | 10.6 | 3.0 |
技術・家庭 | 11.0 | 25.9 | 50.2 | 10.2 | 2.7 |
外国語(英語) | 14.9 | 21.9 | 42.8 | 16.1 | 4.2 |
千葉県の2021年度の内申(評定)の付き方の平均
評定 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
---|---|---|---|---|---|
国語 | 21.2 | 23.8 | 43.3 | 8.8 | 3.0 |
社会 | 27.3 | 23.3 | 36.8 | 9.3 | 3.2 |
数学 | 24.2 | 24.3 | 35.6 | 12.6 | 3.3 |
理科 | 24.2 | 23.8 | 39.7 | 9.1 | 3.2 |
音楽 | 22.2 | 30.4 | 41.0 | 3.1 | 3.3 |
美術 | 20.8 | 32.2 | 40.9 | 2.9 | 3.1 |
保健体育 | 21.4 | 30.9 | 41.4 | 3.1 | 3.3 |
技術・家庭 | 20.0 | 30.1 | 43.3 | 3.5 | 3.0 |
外国語(英語) | 25.0 | 19.8 | 39.8 | 12.1 | 3.2 |
- 薄いブルー:前年度より1%以上減/濃いブルー:前年度より2%以上減/薄いベージュ:前年度より1%以上増/濃いベージュ:前年度より2%以上増
東京都では、全体に「5」がとりにくくなっています。また、「2」の増加が目立っています。
千葉県では、全教科で「4」が減り「3」が増えています。また、主に実技系教科で「5」が増えています。
東京都と千葉県を見比べると、評定の分布も、前年度からの動きも、かなり異なることがわかります。特に「5」に目を向けると、東京都では全教科で10%台、千葉県では全教科で20%台となっており、大きな違いが見られます。これは、千葉県の方が東京都より優秀な生徒が多いというわけではなく、評定の付け方の基準が異なるということです。