上級者向け 受験マニアックス
2015年8月号 高校進学にいくらかかる?
この記事は2015年度の情報です。最新の情報は2023年6月号をご覧ください。
所得に応じて国が授業料を支援
高校の授業料はどのぐらいかかるのか、気になる保護者の方も多いでしょう。2010年度から国が世帯の所得に応じて、高校の授業料などを補助する「就学支援金制度」が始まり、家庭の教育費の負担を軽くする政策がとられています。今回はこの仕組みについて解説します。なお、2014年9月号で「高校の授業料無償化の仕組み」を紹介しましたが、2015年度の最新情報に基づいた記事になります。(2014年度版はこちら)
この「高等学校等就学支援金制度」では、授業料だけでなく修学旅行費や教材費、入学金などがカバーされます。私立高校に進学する場合でも適用されます。
国からの補助額は所得で異なる
国が補助する基本部分は都道府県共通です。所得により金額が異なります。
世帯年収の目安と補助額
250万円未満程度 | 年間297,000円 |
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250万円~350万円未満程度 | 年間237,600円 |
350万円~590万円未満程度 | 年間178,200円 |
590万円~910万円未満程度 | 年間118,800円 |
910万円以上程度 | 対象外 |

都県独自の上乗せ分をチェック
国の補助のうえに、都道府県が独自で定める追加の補助金があります。これは私立高校に通う場合に、家庭の教育費負担を重くしないための措置です。都県ごとにみていきましょう。
東京都
世帯の年収に応じて、都の上乗せ分の金額が決まっています。都内在住であれば隣接県の私立高校に進学しても、都の上乗せ分を受給できるのが特徴です。例えば東京都在住の生徒が千葉県の私立高校に通う場合は、東京都の制度、あるいは千葉県の制度のどちらを利用するかを選べます。両方の補助金をもらうことはできません。教育費がどのぐらいになるのかを比較して有利な方を選ぶことになるでしょう。

神奈川県
県内在住で県内私立高校に通う場合のみ支給されます。世帯の年収に応じて、県の上乗せ分の金額が決まっています。年収750万円未満の世帯すべてに入学金補助10万円を一律に補助しています。低所得の世帯には修学旅行や教材など使い道が決まった補助金が支給されます。

千葉県
県内私立高校に通う生徒のみに支給されます。ただし居住地は県外でも構いません。千葉県内全日制私立高校の最高授業料は40万8000円です。年収が350万円未満の世帯については、国の補助金と足して私立高校の授業料が無償となるまでの額を県が補助し、入学金補助もついています。年収350万円~640万円未満の世帯については、授業料の3分の2から就学支援金を引いた額が補助されます。つまりこの層では授業料の3分の1は家庭負担になります。低所得の世帯には授業料以外の教育費が支給されます。

埼玉県
県内在住で県内私立高校に通う場合のみ支給されます。年収500万円未満までのすべての世帯に対して、国の補助金と合わせて年間37万5000円になるよう県が上乗せします。この金額は県内私学高校の授業料平均が約37万7100円であることから算出されたものと考えられます。この金額を上回る授業料の私立高校に通う場合の超過分は、家庭負担となります。年収609万円未満の世帯には入学金補助一律10万円が支給されます。教材費や制服に使える「施設費等補助」も年収により支給されます。

初年度は「立て替え」に注意
高校の授業料などを国が補助し、さらに都県が独自に上乗せしてくれることはお分かりいただけたと思います。これらは「奨学金」ではなく返済義務はありません。純粋に「給付・補助」されるものです。
ただし、1つ注意点があります。入試後の合格手続きから初年度にかけては、ある程度まとまった額のお金を準備する必要があるということです。というのも、就学支援金の支給額は前年分の世帯年収をもとに計算しますから、具体的な額が決定するのは入学後になります。それまではいったん所定の入学金や授業料を払っておき、納めすぎた分を年度の後半以降に相殺するのです。
また、実際の補助金は国や県から直接家庭に振り込まれるわけではありません。授業料から補助金分を差引いた額を、学校が保護者に請求する形をとります。高校入試が終わり、入学手続き時に「入学金補助が出る」、4月に振り込む「授業料が安くなる」わけではありませんので、注意してください。

私立には独自の給付制度も
公的な補助制度とは別に、私立高校の中には独自の給付制度を持つところがあります。たとえば保護者が病気などで働くことが難しくなったり、雇用形態が変わり家計の見通しが立たなくなったりした場合でも、その学校に通い続けることができるように授業料などを減免してくれるのです。
金額は学校によりまちまちです。年間10万~60万円といったところでしょうか。高校本体が負担するケースや、卒業生らで作る「後援会」などがお金を出す場合があります。万が一、給付制度を利用することになっても、それで先生の生徒を「見る目」が変わるわけではありませんし、周りの生徒たちも特別扱いするようなことはありません。共に学校生活を送る仲間と最後まで一緒に過ごしたいのは自然な気持ちでしょう。
「お金のことを相談するのは恥ずかしい」という気持ちがあるかもしれませんが、給付制度はその学校に入学した生徒ならば受けられる当然の権利なのです。後ろめたい気持ちを持つことはありません。むしろ、セーフティネットがあれば安心して通わせることができます。高校を選ぶときには、私立ならではの安心の仕組みも含めて考えてみてください。
下のデータは2015年度の情報です。最新情報は2019年7月号および2019年10月号をご覧ください。
2016年度 首都圏高校入試変更点 |
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・2016年度 首都圏高校入試変更点(2015年11月26日現在) |