上級者向け 受験マニアックス
2018年1月号 過去問演習への取り組み方
この記事は2017年度の情報です。最新の情報は2022年12月号をご覧ください。
2018年度の高校入試がいよいよ近づいて来ました。今回の受験マニアックスでは、今の時期から取り組みを強化したい過去問演習について、取り組み方のポイントをご紹介します。
過去問を始める時期と量
入試本番の2カ月前には始めたいものです。過去問演習を行って初めて気づく弱点があるかもしれないので、早めに取り掛かるに越したことはありません。量については、最低3年分、できれば5年分を解いておきたいものです。
単元の学び残しがないように
大前提として、未修単元をなくすようにしてください。数学・理科・社会は、テキストや問題集が単元ごとになっていることが多く、未修単元の確認がしやすいでしょう。一方で国語と英語は未修単元がわかりにくい部分がありますので、普段からお世話になっている塾の先生などに確認すると良いでしょう。もし、未修単元が見つかった場合には、塾の冬期講習などを活用して未修単元を制覇してから、過去問演習に取り組むようにしてください。
単元を融合した問題への対策
数学・理科・社会については、上記のように単元ごとに学習をするケースが多いのですが、実際の入試問題では単元を融合した問題がよく出てきます。融合問題は、それまでの単元ごとの学習では歯が立ちにくい面があります。最初はできなくても構いませんので、たくさん練習を重ねて慣れるようにしてください。どれが融合問題かよくわからない場合は、塾の先生などに聞くと良いでしょう。そして、適当な練習台を提供してもらってください。
英語と国語の入試問題は、長文や会話文形式が多いのが特徴で、そもそも融合問題です。よく見られるのは、単体の問題ならできるのに、同じことを長文や会話文形式の問題で問われると、途端にできなくなってしまうケースです。そこだけを切り取って考えれば良いのに、前後のいろいろなことが気になってしまうのです。そういう弱点がある生徒の場合は、意識して長文や会話文形式の問題をたくさん解く練習をすると良いでしょう。
1・2年次に習った単元を復習する
過去問演習に取り組んでいると、1・2年生の内容など結構前に習った単元を忘れてしまっていて、あまり解けない場合があります。これは、単元がはっきり分かれている数学・理科・社会で特に起こりがちです。忘れてしまっている単元に気がついた場合は、塾の冬期講習の復習対策講座などを活用して、弱点を克服しておきましょう。
「必ず取る問題」を落とさない
入試問題の中には、比較的簡単で得点しやすい「必ず取る問題」があります。短答式の問題や、長文問題の中でもあっさりと聞いている問題などです。また、公立の過去問では小問ごとの正答率が公表されていることが多いので、正答率が高いものは「必ず取る問題」となります。過去問演習を行う際は、「必ず取る問題」で確実に得点することを心がけてください。そのために大切なのは見直しです。50分が制限時間なら、手がつかない問題があっても40分で一応終わりまで解いて、最後の10分ほどで、「必ず取る問題」の見直し、解き直しを行うように習慣づけましょう。
時間配分
最初のうちは時間配分がうまくできず、制限時間内に解答が終わらなくて当たり前です。時間感覚を体で覚える意味もあって過去問演習を行うのです。時間配分のやり方を身につけるには、とにかく数をこなすことが大切です。自宅だと50分などの制限時間の間、ずっと集中力を持続するのが難しい場合は、学校の図書室や塾の自習コーナーを使って、過去問演習に取り組むと良いでしょう。
3教科と理科・社会の学習バランス
入試科目は、多くの私立とごく一部の公立が国数英の3教科、国立・公立の大部分・私立の一部が国数英理社の5教科で、ごくまれにそれ以外もあります。大多数の受験生は3教科の私立入試を先に受けることになりますので、私立入試までは3教科が6〜7割、理社が3〜4割くらいの割合で過去問に取り組むのをおすすめします。そして私立入試が終わったら、理社5〜6割、3教科4〜5割の割合に修正しましょう。
小論文・作文への対策
ふだんから書くことに慣れていて得意な生徒は良いですが、そうでない場合は、とにかく数をこなして練習を重ねましょう。ふだんからお世話になっている塾の先生にテーマを考えてもらって週2本くらいのペースで書き、添削をしてもらうのがおすすめです。
文章を書くのが得意な生徒の場合に気をつけたいのは、文章の上手さではなく内容です。よくあるのは、自分の意見を問われているのにテレビや本で見聞きしたことを書いてしまう、元の資料から小論文を書かなければならないのに載っていない情報も含めて書いてしまうなどです。サラサラと上手な文章を書けてもこれでは高得点に繋がりませんので、求められている内容になっているかを、塾の先生などに確認してもらうと良いでしょう。
作文の場合に気をつけたいのは、出題テーマが抽象的な場合です。例えば、「高校生としてスマホと付き合う上で気をつけなければならないこと」だと書きやすいのですが、「スマホ」だけがテーマだと、どんな切り口で書けばいいのか迷ってしまいます。そして思いついたままに書くと、まとまりがなく言いたいことがよくわからない文章になってしまいがちです。テーマが大枠な場合には、書き始める前に自分の中で細かい切り口を決め、起承転結といった論理の展開をしっかり意識してまとめるようにしてください。
小論文や作文のテーマは実にさまざまですが、学校ごとの傾向はあります。志望校の過去問を入手して、5年分くらいの出題テーマについて実際に書いてみて、塾の先生などに添削してもらうと良いでしょう。
入試問題の特徴と対策
1.国立/難関私立/東京都立の学校独自問題/埼玉県公立の学校選択問題
入試問題の難易度は高く、記述式が多いのが特徴です。記述式以外の問題も手ごわい内容となっています。「最初から全問正解を目指すのではなく、難問は諦めてもいいから合格点を取る」というつもりでいることが大切です。そのため、1問目から順番に解くのではなく、最初に問題全体に目を通し、手をつけやすいところから解いていく習慣をつけてください。
国立と難関私立については、過去問演習を重ねるうちに学校ごとの出題傾向がつかめてきますので、十分に過去問を解いて慣れておくと良いでしょう。
東京都立の進学指導重点校7校と進学指導重視型単位制3校は、これまでグループ作成問題を出題していましたが、2018年から学校ごとのオリジナルの入試問題になります。中でも、日比谷、西、国立の3校は、これまで以上に記述式問題が増えそうなので要注意です。これら10校の対策としては、グループ作成問題になる前の各校の過去問を入手し、解いてみるのが良いでしょう。
埼玉県の公立では、数学と英語について難易度の高い入試問題=学校選択問題を、学校側が選択して出題する制度が2017年から始まり、2018年は2年目を迎えます。過去問演習を行うにも過去問が1年分しかないのですが、英語は、難関私立高校の入試問題や、公立でも難しめの大阪府・愛知県の長文問題などで練習することをおすすめします。数学も、難関私立高校や、東京都立の進学指導重点校が2017年まで出題していたグループ作成問題を練習すると良いと思います。
2.各都県公立の標準問題/中堅私立
入試問題の難易度はそれほど高くありませんが、それでも過去問3年分くらいをしっかりと練習してください。後半に難しい問題が出ることが多いのですが、そこを得点できる受験生はあまり多くはありません。最初から最後まで全問正解しようとは考えず、「『必ず取る問題』」は落とさず、手ごわい問題は半分くらい得点できれば良い」という気持ちで過去問演習を行うと良いでしょう。
また、これらの学校では解答がマークシート式も珍しくありません。志望校がマークシート式を採用している場合は、実際の解答用紙が付いている過去問集を購入して、必ず一度は塗りつぶす練習をしておきましょう。本番で初めてその学校の解答用紙を見た、という事態は避けてください。また、特に数学や理科では、計算した結果の数値を選択肢から選ぶのではなく、100の位はこの数字、10の位はこの数字、1の位はこの数字、といった具合に分割して答えるケースもあります。こうした形式に慣れていないと、「正しい答えがわかっていたのに順番を間違えて塗ってしまった」という、非常にもったいない事態にもなりかねません。
最近の大きなトレンドとしては、これらの学校の入試問題でも記述式が増えてきています。数学や社会といった、これまではあまり記述式が見られなかった科目でも同様です。過去問にあまり記述式が見られなくても、2018年度入試では記述式が増える可能性がありますので、対策を怠らないようにしてください。