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上級者向け 受験マニアックス

2019年6月号 私立高校の授業料補助制度について

この記事は2019年度の情報です。最新の情報は2023年6月号をご覧ください。

国と都道府県はそれぞれ、私立高校に通う場合の授業料補助制度を設けています。
今回の受験マニアックスでは、国、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県のそれぞれの補助制度の概要、年収と授業料自己負担額のシミュレーション、および4都県の比較をご紹介します。
ぜひ実態を知り、活用していただければと思います。

また、付録として各都県私立高校の学費データを添付します。

(以下の説明で、年収は目安です。世帯人数等で変わります)

2020年度の就学支援金について 千葉県では実質的にも手厚くなる(2019年11月追記)

2020年度から国の就学支援金制度が増額される予定になりました。年収590万円(年収は目安、家族構成によって異なります。以下同じ)以下の世帯には、全国一律の「私立高校の平均授業料を勘案した水準」が支給されるようになります。現在は年収によって、29万7000円~17万8200円が支給されていますが、これが40万円前後まで引き上げられることになります。年収590万円~910万円以下は11万8800円、910万円を超えると支給されない点は、変更されません。
この増額によって、千葉県では年収350万円~590万円以下の場合、県独自の支援制度による上乗せ分が授業料(県の平均ではなく、通う学校の授業料)の三分の二となっていますから、三分の二の金額が上記の「勘案した水準」よりも低い場合、「勘案した水準」まで増額されることになります。千葉県での年収350万円以下や、東京都、神奈川県、埼玉県では、すでにこの分を都県独自の上乗せ制度で補填していますので、都県独自分が国の支給に移行することになります。
今後、2020年度の国の予算が成立すれば、「平均授業料を勘案した水準」が具体的にいくらになるのかが公表されますが、1都3県では40万円前後ですから、おそらくその水準でしょう。また、今回の変更に合わせて、年収の基準も従来の「地方税の所得割額」から「課税所得」に変更されます。さらに国の予算の成立を受けて、都県の独自の上乗せ分の金額も変更される見込みです。正式決定は各都県の2020年度予算の成立後になり、さらに支給方法などの変更もありますから、都県ごとの制度がはっきりするのは2020年4月になるでしょう。

国の就学支援金

私立高校に通う場合の国の就学支援金について紹介します。こちらは全国共通です。世帯年収により、補助額は段階的に下がります。各都県では、国の就学支援金に上乗せする形で、独自の補助制度を設けています。

就学支援金制度(国の制度)
  • 上記は2019年度の制度に基づいています。
  • 年収は目安です。
  • 学費等が就学支援金等の支給上限額を下回る場合は、その金額までの支給になります。

東京都の補助制度

対象:都内在住。都内に住んで近隣の県の高校に通う場合にも支給される。

2017年度から補助制度が手厚くなり、家庭の負担は大幅に軽減しています。年収760万円未満の家庭には、都内私立高校の平均授業料目安と国の就学支援金の差額分が支給されます。

東京都の制度
  • 上記は2019年度の制度に基づいています。
  • 年収は目安です。
  • 東京都の上乗せ分…都内在住であれば、隣接県の高校に進学しても支給
年収と授業料自己負担額のシュミレーション(東京都の制度)
授業料の例
(年額)
世帯年収
生活保護 ~270万円 270~350万円 350~590万円 590~760万円 760~910万円 910万円以上
350,000円 0円 0円 0円 0円 0円 231,200円 350,000円
400,000円 0円 0円 0円 0円 0円 281,200円 400,000円
456,000円
※年収760万円未満の世帯への授業料補助額上限
0円 0円 0円 0円 0円 337,200円 456,000円
500,000円 51,000円 51,000円 51,000円 51,000円 51,000円 381,200円 500,000円
550,000円 101,000円 101,000円 101,000円 101,000円 101,000円 431,200円 550,000円
  • 2019年度の制度・データに基づく。
  • 東京都内全日生私立高校平均授業料は460,546円
  • 授業料以外の奨学給付金として、生活保護世帯には52,600円が、年収270万円未満の世帯には98,500円(23歳未満の扶養されている兄弟がいる場合は138,000円、通信制は38,100円が支給される。)

神奈川県の補助制度

対象:県内在住で県内の私立高校に通う生徒。

東京都と同様に、国の就学支援金との差額分をここまで支給します、という制度です。年収750万円未満のすべての世帯に入学金補助10万円が給付されるのが特徴です。

神奈川県の制度
  • 上記は2019年度の制度に基づいています。
  • 年収は目安です。
年収と授業料自己負担額のシュミレーション(神奈川県の制度)
授業料の例
(年額)
世帯年収
生活保護 ~270万円 270~350万円 350~590万円 590~750万円 750~910万円 910万円以上
350,000円 0円 0円 0円 0円 156,800円 231,200円 350,000円
400,000円 0円 0円 0円 0円 206,800円 281,200円 400,000円
444,000円
※年収590万円未満の世帯への授業料補助額上限
0円 0円 0円 0円 250,800円 325,200円 444,000円
460,000円 280,000円 28,000円 28,000円 28,000円 266,800円 341,200円 460,000円
500,000円 68,000円 68,000円 68,000円 68,000円 306,800円 381,200円 500,000円
  • 2019年度の制度・データに基づく。
  • 神奈川県内全日制私立高校平均授業料は433,060円
  • 年収750万円未満の世帯には、入学金補助100,000円が別途支給される
  • 授業料以外の奨学給付金として、生活保護世帯には52,600円が、年収270万未満の世帯には98,500円(23歳未満の扶養されている兄弟がいる場合は138,000円、通信制は38,100円)が支給される

千葉県の補助制度

対象:県内の私立高校に通う生徒。居住地は県外でも良い。

年収350万円未満の家庭には、国の就学支援金との差額で授業料が無償になるように支給され、入学金補助もつきます。年収350万円以上640万円未満の家庭は授業料の三分の二の額まで支給されます。固定の金額ではないため、図は県内最高額で示しています。

千葉県の制度
  • 上記は2019年度の制度に基づき、年間授業料414,000円を基準に作成。
  • 年収は目安です。
  • 千葉県の上乗せ分…県内私立高校のみ支給、ただし居住地は県外も可。
年収と授業料自己負担額のシュミレーション(千葉県の制度)
授業料の例
(年額)
世帯年収
生活保護 ~270万円 270~350万円 350~590万円 590~640万円 640~910万円 910万円以上
200,000円 0円 0円 0円 0円 14,533円 81,200円 200,000円
250,000円 0円 0円 0円 0円 47,867円 131,200円 250,000円
300,000円 0円 0円 0円 21,800円 81,200円 181,200円 300,000円
350,000円 0円 0円 0円 55,133円 114,533円 231,200円 350,000円
414,000円
※千葉県内全日制私立高校の授業料最高額
0円 0円 0円 97,800円 157,200円 295,200 414,000円
  • 2019年度の制度・データに基づく。
  • 千葉県内全日制私立高校平均授業料は317,100円
  • 年収350万円未満の世帯には、入学金補助半額または50,000円の安い方が別途支給される。
  • 授業料以外の奨学給付金として、生活保護世帯には52,600円が、年収270万円未満の世帯には98,500円(23歳未満の扶養されている兄弟がいる場合には138,000円、通信制は38,100円)が支給される。

埼玉県の補助制度

対象:県内在住で県内の私立高校に通う生徒。

年収609万円未満の家庭すべてに県内私立高校の平均授業料目安と国の就学支援金の差額分が支給され、さらに入学金補助10万円が給付されます。あわせて、年収500万円未満の家庭には、施設費等補助20万円が給付されます。なお、埼玉県独自の制度として、私立高校や大学に通う子どもを3人以上抱える多子世帯については、年収720万円未満まで補助額を拡大しています。

埼玉県の制度
  • 上記は2019年度の制度に基づいています。
  • 年収は目安です。
年収と授業料自己負担額のシュミレーション(埼玉県の制度)
授業料の例
(年額)
世帯年収
生活保護 ~270万円 270~350万円 350~500万円 500~590万円 590~609万円 609~910万円 910万円以上
270,000円 0円 0円 0円 0円 0円 0円 151,200円 270,000円
320,000円 0円 0円 0円 0円 0円 0円 201,200円 320,000円
378,000円
※年収609万円未満の世帯への授業料補助額上限
0円 0円 0円 0円 0円 0円 259,200円 378,000円
420,000円 42,000円 42,000円 42,000円 42,000円 42,000円 42,000円 301,200円 420,000円
470,000円 92,000円 92,000円 92,000円 92,000円 92,000円 92,000円 351,200円 470,000円
  • 2019年度の制度・データに基づく。
  • 埼玉県内全日制私立高校平均授業料は378,558円
  • 年収609万円未満の世帯には、入学金補助100,000円が別途支給される。
  • 年収500万円未満の世帯には、施設費等補助200,000円が別途支給される。
  • 授業料以外の奨学給付金として、生活保護世帯には52,600円が、年収270万円未満の世帯には、98,500円(23歳未満の扶養されている兄弟がいる場合は138,000円、通信制は38,100円)が支給される。
  • 年収609万円以上720万円未満で、県内私立高校に通う生徒を含め、私立高校生または大学生等を3人以上抱える世帯には、259,200円までの県の補助額が支給される。

4都県の比較

以下のグラフは、国の就学支援金と合算した各都県の年収ごとの支給金額を比較したものです。東京都の補助制度の手厚さが際立っていることがわかります。

授業料支援 都県比較
  • 上記は2019年度の制度に基づいています。
  • 年収は目安です。
  • 千葉県は授業料や授業料の2/3が支給額(グラフは授業料年額414,000円で作成)。
  • 埼玉県の多子世帯のみ対象の補助額は反映していません。

まとめ

私立高校を選択するご家庭への国の就学支援金制度や各都県の授業料補助制度は、所得に関わらず教育の機会を平等とし、生徒の個性や将来の希望に合った学校に通えるようにすることを目的としたものです。

一昔前と比較すると、「私立高校の授業料を払うのは経済的に難しいから」と、行きたい学校をあきらめる必要はなくなってきています。補助制度は積極的に活用し、学校選びの幅を広げていただけたらと思います。

〈付録〉各都県私立高校の学費データ



[筆者紹介]

首都圏中学受験・高校受験に関わるようになって○十年。現在でも多くの私立学校説明会やイベント、研究会などに顔を出し、日々私立学校の情報を収集・発信している。

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