私立中高進学通信
2024年9月号
私たち、僕たちが大好きな先生
上野学園中学校
さまざまな体験を通じて
生徒の人間性を磨きたい
理科 大橋恵理子(おおはし えりこ)先生
理科教員。私立大学の農学部を卒業後、会社員を経て教員になる。現在は中1のクラス担任と学年主任、演劇部の顧問を務める。
“本物に触れる”ことをモットーとする理科担当の大橋先生に、教員になったきっかけや、探究学習で大切にしていること、顧問を務める演劇部への思いについて伺いました。
迷う生徒の背中を
そっと押せる教員になりたい
――教員になりたいと思ったきっかけを教えてください。
祖父が犬やニワトリ、アヒルなどを飼っており、母が家庭菜園で野菜や果物を育てている環境で育ったので、小さい頃から動物や植物が大好きでした。そこで、中学生の時には大学で生物を専門的に学びたいと考えていました。高校でもその気持ちは続いていましたが、苦手な理系科目があったので、高3へ進級する際に文系コースに転向しました。納得したつもりでしたが、迷う気持ちにさいなまれていたところ、担任の先生が「文系コースに移ったけれど、しっかり勉強すれば希望の大学でやりたいことが学べるから調べてごらん」と声をかけてくださいました。詳しく調べると、苦手な理系科目か国語のいずれかを選んで受験できる私立大学の農学部を見つけたのです。
やりたいことを諦めずに進路を選べたのは、その先生のおかげです。ここでの経験から、その先生のように、生徒が人生の選択に迷っていたら、しっかり背中を押してあげられる教員になりたいと思いました。
――大学ではどんなことを学んでいましたか?
第1志望の農学部に合格し、栄養学を専攻しました。食品に関する研究を重ねるなかで、カルシウムを吸収する際に、粒子の大きさがどのように影響するかを研究テーマとしました。研究では動物実験にマウスを使うのですが、成果を得るためには解剖をしなくてはなりません。必要なことだと理解しつつも命の重さを感じ、複雑な心境になりました。もし教員になれたら、理科の知識だけではなく、こうした体験も生徒たちに伝えたいと思いました。
――大橋先生は一般企業での勤務を経て、教員になられたそうですね。
大学卒業後から4年間、“営業経理”の仕事をしました。教員になる前に会社員を経験しようと思ったのは、「社会人になって困るから」と学生時代に教えられた規則やルールが、本当に大切なのかを確かめるためでもありました。例えば「遅刻に慣れたら社会人としてやっていけない」と先生方はおっしゃるけれど、実際はどうなのかな……と。会社員として働いてみて、「約束を守ること」「きちんと連絡や相談をすること」など、学校生活で身につけた素養が、社会では信用につながる重要なことだったと身に染みてわかりました。教員になった今は、その経験を生徒に伝えて、規則やルールを守る大切さを考えるように促しています。
“本物に触れる”ことを
大切に学べる環境
――上野学園の教員を志望した理由を教えてください。
理科を教えるうえで大切にしているのは“本物に触れる”こと。本校は上野公園が近いので、授業で上野動物園や国立科学博物館を訪れて学びに活用していると知り、ぜひそのような環境で生徒とともに学びたいと思いました。
現在はフィールドワークという科目の探究活動で、上野動物園や国立科学博物館を学びの場としています。2024度は中1のフィールドワークを担当しており、導入として国立科学博物館で動物の剥製を見学し、自分がテーマとする動物を決めてから、上野動物園でその動物の生態をじっくり観察する授業を行いました。動物園で1種類の動物だけにフォーカスする体験はなかなかないと思います。今後は、動物の観察から森林や海洋まで学びの裾野を広げて、SDGsのテーマとしても考えていきたいです。
“本物に触れる”ことで言えば、本校のある台東区は戦禍に見舞われた歴史をもつ場所でもあります。今では穏やかな上野公園も、明治維新の時には「上野戦争」の戦場でした。第二次世界大戦では東京大空襲の被害を受け、浅草寺には焼け焦げた木が残っています。そのような場所をフィールドワークで訪れ、生徒が“戦争と平和”について考える機会としています。平和教育の一環として高校生は沖縄へ修学旅行に行くのですが、広島にも立ち寄るスケジュールを組み、平和記念資料館を訪れました。生徒たちは戦争の悲惨さを知り、感想を書く手が止まりませんでした。
また、本校には「総合的な学習の時間」を使った“ひとり一つの楽器”という取り組みがあります。生徒全員がトランペット、クラリネット、フルート、サクソフォン、アイリッシュハープから自分で演奏したい楽器を選んで練習します。年に1度、学校のホールで発表する機会もあります。このように、6年間を通じてさまざまな方向から本物に触れる体験を提供して、生徒の人間性を磨いていくのが本校の特色です。
――演劇部の顧問をされていますね。指導で心がけていることは?
演技指導をしてくださる外部コーチの力を借りながら、演劇部の活動をサポートしています。
部活動でも“本物に触れる”ことを大切にしており、台東区の『江戸まちたいとう芸楽祭』に毎年参加し、音響も照明も備わったホールの舞台に立っています。
部員たちは明るく、とても良い雰囲気です。人とコミュニケーションを取るのが難しい、緊張しやすいなど、それぞれの苦手な部分とも向き合って、真摯に頑張っています。演劇は自分のセリフが言えれば良いというものではありません。会話のシーンをリアルに見せるには、やはり日常的な部員同士のコミュニケーションも大切です。舞台は一人ではできないので、それぞれが周りの部員たちをよく見ながら、信頼関係を築いてほしいと願っています。部活動でも「約束を守ること」「きちんと連絡や相談をすること」など、人として大事にすべきところは共通しています。そこをしっかりできるよう、生徒を支えていきたいですね。
生徒の声
井口美月さん(高2)
大橋先生のアドバイスはいつも的確なので、部員みんなが頼りにしています。昨年の公演前、緊張しすぎて表情がぎこちない私を見て、先生は「目が開いていないよ、もっと周りをよく見て」といち早く声をかけてくださいました。よく見てもらえていることに感激しました。
三宅未徠さん(高3)
2023年度まで、大橋先生が演劇部と兼部で顧問を務めてくださった科学部に所属しています。先生は「楽しむ時は楽しんで、真面目に取り組む時はしっかりと」と常におっしゃっていました。部長として、その切り替えを大切にしながら、部員みんなと活動しています。
(この記事は『私立中高進学通信2024年9月号』に掲載しました。)
上野学園中学校
〒110-8642 東京都台東区東上野4-24-12
TEL:03-3847-2201
進学通信掲載情報
PICK UP!!
紹介する学校
- 苦手科目が得意に!手厚いサポートで夢に近づく確かな学力を獲得京華中学校
- 復習の徹底と教員のサポートで『自立学習』の習慣を確立恵泉女学園中学校
- 『単元別テスト』で学習習慣と基礎学力を身につける駒沢学園女子中学校
- 中学3学年の先生方が語る一人ひとりの成長をていねいに見守る教育埼玉平成中学校
- 自己達成感や学ぶ楽しさで自主的な学びを引き出す理系授業も充実実践学園中学校
- 『学習手帳』で書くことの習慣化を徹底学びを可視化し自己評価を高める玉川聖学院中等部
- 『自問自答』で成長!目標を具現化し進路を実現する学力を養成二松学舎大学附属柏中学校
- 毎日の積み重ね学習が学習習慣の構築と基礎学力の向上に結実日本大学第一中学校
- 『学習支援センター』を活用した独自プログラムで個別最適化学習を実践目白研心中学校
- 国・数・英の基礎力を底上げ!効果的な反復学習を3年間継続し着実に学力を身につけさせる立正大学付属立正中学校
- 東邦大学理学部と連携し“理科好き”を増やす実験講座を開講共立女子中学校
- 卒業生が教授として在籍歴史的にもつながりが深い東京女子大学と連携を締結女子聖学院中学校
- 中高で美術大学の指導を体験“好き”を未来につなげる女子美術大学付属中学校
- 東京慈恵会医科大学と新たに連携医学の学びにも触れ「やりたいこと」を見つける桐朋女子中学校
- 東京理科大学と教育連携エコ発電装置を生徒が製作富士見中学校
- 進路選択につながる幅広い学びを多彩な大学との連携を通して経験普連土学園中学校
- 順天堂大学の系属校に!『医学進学コース』を新たに設立予定宝仙学園順天堂大学系属理数インター中学校
- 3大学との連携を深化 大学との連携で社会を知り視野を広げる三輪田学園中学校
- 理系大学との連携に注力!高度な研究体験を進路に活かす山脇学園中学校
- 自分のキャリアをリアルに考え 訪問する企業の魅力を探究中村中学校
- 母校の教員になりたい!在学中に抱いた夢を実現共栄学園中学校
- 学び続けることの価値や喜びを実感した中高時代淑徳中学校
- 母校の数学教員、公認会計士 目標に向かって学び続ける2人昭和女子大学附属昭和中学校
- 高校時代の台湾研修を経て留学を決意 将来は日本と台湾をつなぐ架け橋に成城中学校
- 中高時代の学びを通して大きく成長 先生との信頼関係が受験の支えに東洋大学京北中学校
- 患者様はもちろん、まわりの医師からも頼られる医師になりたい日本大学第二中学校
- 子どもたちと理科の楽しさを共有できる教員をめざして日本大学豊山中学校
- 探究活動に打ち込むことで自分の強みを確立できた文京学院大学女子中学校
- 新しい働き方やビジネス環境を社会に向けて提案していきたい森村学園中等部
- 部活動で自律&自立の力を育み個人競技でも団体演技でも成果を残す跡見学園中学校
- 3年目に入った2大コースでさらに新たな取り組みを実施春日部共栄中学校
- 中2本科コースの9つのゼミが中間発表!研究者としての確かな一歩を踏み出すサレジアン国際学園世田谷中学校
- セーラー服に合うスラックスを!生徒が主体となって制服の改革を実現十文字中学校
- 生徒のニーズに応えた新カリキュラムを導入し制服も全面的にリニューアル東京家政大学附属女子中学校
- 他者理解や自己管理を学校生活を通じて身につける大宮開成中学校
- 人は“かけがえのない存在である”ことを全ての学校生活において学ぶ光塩女子学院中等科
- 食育とカウンセリングで生徒たちの心の教育を実践駒込中学校
- 独自の創造性教育と伝統文化の継承で心を磨く瀧野川女子学園中学校
- 生徒の英文を活かしたWriting指導で意欲を引き出す聖望学園中学校
- 生徒自身が学び方を決める「自律学習」で「教わる」から「学ぶ」へ横浜創英中学校
- 学校と家庭が連携しながら生徒一人ひとりを見守る西武台新座中学校
- 安心して通える環境を第一に学習面も手厚くフォロー帝京大学系属帝京中学校
- 行事を重ねるたびに成長し 学年を越えた親睦が深まる東京家政学院中学校
- 学校生活と行事を通して「なりたい自分」と向き合う広尾学園小石川中学校
- イマージョンで英語がますます大好きに浦和実業学園中学校
- 楽しく貴重な経験ができる学びの場を白亜祭で触れてほしい!共立女子第二中学校
- ここは世界と未来につながっている啓明学園中学校
- 超“実践型”の多彩な探究活動を通して新たな自分を発見し、大きく成長城西大学附属城西中学校
- 文武両道が目標!勉強に部活動に全力で挑む専修大学松戸中学校
- 社会に貢献する喜びを知りました東京農業大学第三高等学校附属中学校
- 教員と保護者の二人三脚で生徒の青春を支えています江戸川女子中学校
- ホスピタリティーの高さと雰囲気の良さに驚かされる学校です八雲学園中学校
- さまざまな体験を通じて生徒の人間性を磨きたい上野学園中学校
- 生徒がフィールドを世界へ広げられるようにサポート富士見丘中学校