私立中高進学通信
2024年9月号
卒業生が語る私の成長Story
文京学院大学女子中学校
探究活動に打ち込むことで
自分の強みを確立できた
電気通信大学
情報理工学域Ⅲ類1年
Yさん
落ち込んていた時に、ふと目にしたアニメの台詞。
「自分の限界を感じるたび、この言葉が何度も背中を押してくれました」
全国トップレベルの先進的な理数教育を提供する学校として、SSHの教育活動を積極的に推進している同校。特色ある探究活動を通じて成長し、現在も学び続けるYさんにお話を伺いました。
専門家との交流により
飛躍的に研究が深まる
同校は2012年度から6年間、文部科学省よりSSH(スーパーサイエンスハイスクール)およびコアSSH(理数教育振興の地域中核拠点)の指定を受けています。先進的な理数教育を活発に推進しており、特に注目すべきはSSHで開発したカリキュラムを基盤にした、大学の学びへとつながる探究活動プログラムです。Yさんは、まさにこうしたプログラムに積極的に取り組み成長を遂げた卒業生の一人。在学中は数々の探究活動に自発的に取り組み、その成果をさまざまな場で発表してきました。
高校から『理数キャリアコース』に進んだYさんは、ベニバナの天然色素を用いた口紅『小町紅』の研究を本格的に開始。挑戦と失敗を繰り返しながら、着実に成果を上げていきます。
「最初に取り組んだのは、生命力が強く雑草として駆除されることもあるドクダミを活用した化粧品作り。しかし、何度実験を繰り返しても思うような成果が得られなかったのです。
そこで『化粧品や色彩に関する研究』を軸に先行研究や文献を調べたところ、江戸時代の『小町紅』という口紅の存在を知りました。
文献によると、約400年前の日本では、緑色につやめく紅のなかでも最高品質の小町紅が流行していたそうです。しかし小町紅はとても高価であったため、手が出せない庶民たちはその美しい緑色を再現するべく、下地に墨を塗っていたようなのです。なぜ緑色になるのかは文献に記されておらず、その謎に挑戦したいと思いました。
当時に使われた墨の種類、色や光のメカニズムを明らかにし、さらには緑色につやめく紅と墨の条件を推定して、もともと緑色の光沢をもたない赤色色素を使って緑色を作り出すことを目標に、研究活動を再開しました」
そして高2の12月、『サイエンスキャッスル2022・関東大会』(※1)という外部の大会に出場し優秀賞を獲得。さらにその直後に参加した『JSEC2022』(※2)での発表が、大きな契機となりました。JSECでは共同研究者のOさんとともに大会に挑み、『協賛社賞(ソニー賞)』を受賞したのです。
「ソニー賞の副賞として、ソニーのエンジニアの方と交流し、探究活動へのアドバイスをいただきました。カメラ開発の研究員の方から光や色に関する知識を得て、それまでの仮説や考察を大きく見直すことで、研究が飛躍的に深まりました」
同じく高2の12月には、念願のタイ研修にも参加します。
「私たちと同じように第二言語として英語を学んでいるにもかかわらず、現地の同世代の生徒たちが英語を抵抗感なく話していることに驚きました。ここで英語はコミュニケーションツールという意識をもてたことが、後の世界大会『ISEF2023』(※3)に向けた準備にもつながりました」
アメリカ・テキサス州ダラスで開催された『ISEF2023』では、Yさんと共同研究者のOさんが取り組んだ研究が優秀賞を受賞し、文部科学大臣表彰を勝ち取りました。
「探究活動を通じて、自分の探究心をより深め、科学的な視点から新しい発見をする喜びを感じました。なかでも最大の収穫は、研究のノウハウ以上に、表現力の重要性を実感したことです。例えばレポートの書き方ひとつをとっても、その構成や見せ方次第で伝わり方が劇的に変わることを学びました。この経験を通じて、科学的な発見や成果を効果的に伝えるための技術がいかに重要かを深く理解しました」
※1 サイエンスキャッスル…中高生の研究者が集まり、自らの研究を発表し議論し合うアジア最大級の学会。口頭発表とポスター発表を中心とした大会を東京、大阪、アジアの3拠点で実施している。
※2 JSEC(ジェイセック/高校生・高専生科学技術チャレンジ)…科学・技術・数学の自由研究コンテスト。 朝日新聞社とテレビ朝日が主催し、毎年9月頃に研究作品の応募を受け付け、12月に最終審査会と表彰を行う。
※3 ISEF(リジェネロン国際学生科学技術フェア)…ISEFは世界最大の科学コンテストと言われ、日本からは「JSEC(ジェイセック:高校生・高専生科学技術チャレンジ)」と、「日本学生科学賞」(読売新聞社主催)で高く評価された研究が出場する。
将来の夢に向かい
研究者としての道を志す
現在、電気通信大学の情報理工学域Ⅲ類で学ぶYさん。入試においては総合型選抜で臨み、『自分の研究したい分野に取り組める研究室』を軸に進路選択を行い、現在の大学・学部に入学を決めたそうです。
「光と色に関する専門知識を深めたいと思い、大学と学部を選びました。さらに、化粧によって心理的に明るい気分をもたらす影響にも興味をもつようになり、将来は化粧品の開発に携わりたいと思っています」
輝く笑顔で将来の夢を語るYさん。インタビューの最後には、文京学院大学女子で学んだことに対する感謝の気持ちを伝えたいと、次のように話してくれました。
「文京学院では、『やりたいことは漠然とあるけれど、何から始めていいかわからない』という生徒に対しても、先生方が親身にアドバイスを送ってくれます。例えば、『こんなことに取り組んでみたらどうか』と具体的な方向性を示してくれるのです。
振り返ってみると、文京学院でなければ私の強みは明確になっていなかったと思います。私の場合は研究でしたが、スポーツや勉強など、自分の好きなことに打ち込み、それを強みとして確立できる環境が整っています。このようなサポートのおかげで、自分の可能性を最大限に引き出すことができました。文京学院で学べたことに、心から感謝しています」
恩師からの応援メッセージ
自分にできる最大限の努力を続け
最大限の成果を上げた
Yさんは常に自分に厳しく、努力を惜しまない生徒で、大会で受賞した際も「もっと上があるはず」と向上心をもち続けていました。ほかの中高生研究者の堂々としたプレゼンテーションに圧倒され、自信を失っていた時期もありましたが、Yさんは「こうありたい」という高い目標を掲げ、その目標に向かって絶え間なく努力し、実際に成し遂げたことは本当に素晴らしいと思います。副賞として企業のサポートを受ける際も、その栄誉に値する活動をしなければならないと、常に周囲に対して誠実な姿勢を保っていました。Yさんの夢の実現を、今後も心から応援しています。(理科教諭・探究部部長/岩川暢澄先生)
(この記事は『私立中高進学通信2024年9月号』に掲載しました。)
文京学院大学女子中学校
〒113-8667 東京都文京区本駒込6-18-3
TEL:03-3946-5301
進学通信掲載情報
PICK UP!!
紹介する学校
- 苦手科目が得意に!手厚いサポートで夢に近づく確かな学力を獲得京華中学校
- 復習の徹底と教員のサポートで『自立学習』の習慣を確立恵泉女学園中学校
- 『単元別テスト』で学習習慣と基礎学力を身につける駒沢学園女子中学校
- 中学3学年の先生方が語る一人ひとりの成長をていねいに見守る教育埼玉平成中学校
- 自己達成感や学ぶ楽しさで自主的な学びを引き出す理系授業も充実実践学園中学校
- 『学習手帳』で書くことの習慣化を徹底学びを可視化し自己評価を高める玉川聖学院中等部
- 『自問自答』で成長!目標を具現化し進路を実現する学力を養成二松学舎大学附属柏中学校
- 毎日の積み重ね学習が学習習慣の構築と基礎学力の向上に結実日本大学第一中学校
- 『学習支援センター』を活用した独自プログラムで個別最適化学習を実践目白研心中学校
- 国・数・英の基礎力を底上げ!効果的な反復学習を3年間継続し着実に学力を身につけさせる立正大学付属立正中学校
- 東邦大学理学部と連携し“理科好き”を増やす実験講座を開講共立女子中学校
- 卒業生が教授として在籍歴史的にもつながりが深い東京女子大学と連携を締結女子聖学院中学校
- 中高で美術大学の指導を体験“好き”を未来につなげる女子美術大学付属中学校
- 東京慈恵会医科大学と新たに連携医学の学びにも触れ「やりたいこと」を見つける桐朋女子中学校
- 東京理科大学と教育連携エコ発電装置を生徒が製作富士見中学校
- 進路選択につながる幅広い学びを多彩な大学との連携を通して経験普連土学園中学校
- 順天堂大学の系属校に!『医学進学コース』を新たに設立予定宝仙学園順天堂大学系属理数インター中学校
- 3大学との連携を深化 大学との連携で社会を知り視野を広げる三輪田学園中学校
- 理系大学との連携に注力!高度な研究体験を進路に活かす山脇学園中学校
- 自分のキャリアをリアルに考え 訪問する企業の魅力を探究中村中学校
- 母校の教員になりたい!在学中に抱いた夢を実現共栄学園中学校
- 学び続けることの価値や喜びを実感した中高時代淑徳中学校
- 母校の数学教員、公認会計士 目標に向かって学び続ける2人昭和女子大学附属昭和中学校
- 高校時代の台湾研修を経て留学を決意 将来は日本と台湾をつなぐ架け橋に成城中学校
- 中高時代の学びを通して大きく成長 先生との信頼関係が受験の支えに東洋大学京北中学校
- 患者様はもちろん、まわりの医師からも頼られる医師になりたい日本大学第二中学校
- 子どもたちと理科の楽しさを共有できる教員をめざして日本大学豊山中学校
- 探究活動に打ち込むことで自分の強みを確立できた文京学院大学女子中学校
- 新しい働き方やビジネス環境を社会に向けて提案していきたい森村学園中等部
- 部活動で自律&自立の力を育み個人競技でも団体演技でも成果を残す跡見学園中学校
- 3年目に入った2大コースでさらに新たな取り組みを実施春日部共栄中学校
- 中2本科コースの9つのゼミが中間発表!研究者としての確かな一歩を踏み出すサレジアン国際学園世田谷中学校
- セーラー服に合うスラックスを!生徒が主体となって制服の改革を実現十文字中学校
- 生徒のニーズに応えた新カリキュラムを導入し制服も全面的にリニューアル東京家政大学附属女子中学校
- 他者理解や自己管理を学校生活を通じて身につける大宮開成中学校
- 人は“かけがえのない存在である”ことを全ての学校生活において学ぶ光塩女子学院中等科
- 食育とカウンセリングで生徒たちの心の教育を実践駒込中学校
- 独自の創造性教育と伝統文化の継承で心を磨く瀧野川女子学園中学校
- 生徒の英文を活かしたWriting指導で意欲を引き出す聖望学園中学校
- 生徒自身が学び方を決める「自律学習」で「教わる」から「学ぶ」へ横浜創英中学校
- 学校と家庭が連携しながら生徒一人ひとりを見守る西武台新座中学校
- 安心して通える環境を第一に学習面も手厚くフォロー帝京大学系属帝京中学校
- 行事を重ねるたびに成長し 学年を越えた親睦が深まる東京家政学院中学校
- 学校生活と行事を通して「なりたい自分」と向き合う広尾学園小石川中学校
- イマージョンで英語がますます大好きに浦和実業学園中学校
- 楽しく貴重な経験ができる学びの場を白亜祭で触れてほしい!共立女子第二中学校
- ここは世界と未来につながっている啓明学園中学校
- 超“実践型”の多彩な探究活動を通して新たな自分を発見し、大きく成長城西大学附属城西中学校
- 文武両道が目標!勉強に部活動に全力で挑む専修大学松戸中学校
- 社会に貢献する喜びを知りました東京農業大学第三高等学校附属中学校
- 教員と保護者の二人三脚で生徒の青春を支えています江戸川女子中学校
- ホスピタリティーの高さと雰囲気の良さに驚かされる学校です八雲学園中学校
- さまざまな体験を通じて生徒の人間性を磨きたい上野学園中学校
- 生徒がフィールドを世界へ広げられるようにサポート富士見丘中学校