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私立中高進学通信

2021年11月号

実践報告 私学の授業

上野学園中学校

体験と協働で身につける
課題を見つけ、解決する力

優れた学習環境を活かしたフィールドワーク

建学の精神『自覚』の
育成に向けた取り組み

 1904(明治37)年、『人としての自覚を持つ』ことを建学の精神として創設された同校。礼儀と節度を身につけ、人には寛容に、自分には厳しく、前向きに努力する人を育てるべく、これからの社会に必要な学びを積極的に取り入れています。

 なかでも、中1・中2が取り組む『フィールドワーク』は、思考力を高め、主体的に未来を切り拓くための基礎的な力を身につける探究的な学習活動として、2014年度から始まりました。学校のある上野・浅草を舞台に、実体験を通して抱いた疑問を、観察や取材、調査などを通して検証していくものです。

 中1では、『サイエンスプログラム』に取り組みます。自分で疑問を立てて調べ、次の学びにつなげる体験をするのが狙いで、動物や生命、地球など、理系のテーマを設定しチームで探究していきます。学校から徒歩圏内の上野動物園や国立科学博物館などの豊かな学習環境を活かしたフィールドワークです。

 中2になると、地域や社会を見る目を養う『ソーシャルプログラム』に取り組みます。鎌倉を訪れ、同じ観光地である上野・浅草と比較しながら共通点や違いを見出していきます。3学期には自分の住む地域やほかの地域に目を向け、社会課題とその解決策を考察していきます。

疑問・仮説・調査にこだわる

『フィールドワーク』に取り組むなかで、同校が特にこだわりをもって指導しているのは「疑問・仮説・調査・検証・整理・発表・評価・疑問」という探究のサイクルのうち、最初の3つのプロセス「疑問・仮説・調査」です。

「これらは、中1の段階ですぐ身につくものではありません。最初は"情報を得ようと物事を見る"練習から始めます。『チームで動物についてのクイズを3つ作ってみよう』というテーマで、上野動物園を訪れるのも、練習の一つの方法です。
 小学校の社会科見学のように、事前に情報をたくさん得てから見学に行くのではなく、自分が知りたいことがあるから本物を見に行って確かめるのが『フィールドワーク』です。この経験を積むと、疑問や仮説を立てる力がつき、どうやって調査したらいいのか、次第にわかるようになります。そうした力をつけることで、中2で浅草や鎌倉を訪ねたとき、多様な目でその地域を見ることができるようになるのです」(探究科主任/竹澤陽介先生)

 中1・中2の『フィールドワーク』の成果は、毎年、『桜鏡祭』(文化祭)で発表し、学校内外の人たちから評価を受けます。そこで膨らんださらなる疑問を、中3で取り組む『卒業研究』のテーマにする生徒も少なくありません。

"主体的に動けば学びは面白い"そんな経験を中学の早い段階から積むことが、自己を見つめ、可能性を模索する『自覚』を促すことにつながっているのです。

FOCUS!
探究の基礎的なスキルを育成する中2の『フィールドワーク』
観光地の避難誘導対策を深堀り
中2で行う鎌倉フィールドワークの様子。中2で行う鎌倉フィールドワークの様子。

 中2の『フィールドワーク』は、「社会課題」を発見する目を養うことを狙いとし、1学期は上野・浅草、2学期には鎌倉を訪ねます。

 数年前、「災害時対策」をテーマにしたグループがありました。浅草はかつて関東大震災で大きな被害を受けたことから、外国人観光客に対する避難誘導対策として標識の多言語化が進んでいます。

 そこで生徒たちは「鎌倉でも外国人観光客が避難場所に逃げられるようになっているだろうか」と疑問をもち、現地で標識を調査し、多言語化がまだ進んでいない現状を明らかにしました。現地の避難場所に足を運び、実際に避難できるかの確認も行っています。

持続可能な社会づくりへの探究
「桜鏡祭」でのプレゼンテーションの様子。「桜鏡祭」でのプレゼンテーションの様子。

 鎌倉のフィールドワークでは、災害時、車の渋滞や人の流れをコントロールするための交通規制や工夫があることも学びました。すると「では、浅草はどうなっているのか? ほかの地域は?」と疑問が広がり、持続可能な社会づくりへの探究が深まっていきました。

 調査の結果はチームで検証し、『桜鏡祭』で発表されます。協働した成果をほかの学年の生徒や先生、保護者などから評価されることで次の疑問が浮かび、さらに探究が深まります。

 自分の目や耳で得た一次情報をもとに、自分なりの考えをもつことの大切さに気づく。これがフィールドワークで身につく大きな力なのです。

FOCUS!
個人研究で進める中3の『卒業研究』
興味あるテーマを個々で研究
高2の桜美林大学連携プログラムの様子。高2の桜美林大学連携プログラムの様子。

 中3の『卒業研究』は、自分で興味のあるテーマを設定して個人研究を進めます。フィールドワークからテーマを着想する生徒もいますが、授業や部活動、学校行事などから自分なりの疑問をテーマにする生徒もたくさんいます。

 さらに現在、高校では桜美 学と連携して独自のキャリア教育を行っています。今後はその発表会に中3生も参加できるようにする予定です。一人ひとりが探究したくなる「問い」の種を見つけられるよう、さまざまな出合いの機会を用意しています。

FOCUS!
のびのびとした個性を引き出す同校ならではの取り組み
英語でインタビュー『Trip to ASAKUSA』

 英語科の授業の一環で行うプログラム『Trip to ASAKUSA』は、中2生が浅草で外国人観光客にインタビューをする活動です。フィールドワークで鍛えた質問力を活かして積極的に話しかけることで、リアルな英語のコミュニケーション力が高まります。

 人力車の魅力を海外からの観光客にインタビューした生徒が、その後の卒業研究で人力車をテーマに研究を進めた例もあります。

3年間、楽器演奏に取り組む『ひとり一つの楽器』

 フルートやクラリネットなど7種類の楽器の中から一つの楽器を選び、3年間取り組んでアンサンブル演奏会を開く『ひとり一つの楽器』は、音楽教育に力を注ぐ同校ならではの取り組み。年に2回発表会を行い、中3では学園内のコンサートホールでアンサンブル演奏を披露します。力を合わせて音楽を作り上げる“協働する力”を育みます。

ココも注目!
素朴な疑問でもまず受け入れ、一人ひとりに寄り添う学び
(探究科主任・社会科/竹澤陽介先生)(探究科主任・社会科/竹澤陽介先生)

 本校の『フィールドワーク』は、「問いを立てる」ことを要とし、どのような疑問でも否定せず受け止め、その疑問が、より本質に近づくよう導くことを心掛けています。

「シロクマはなぜ白いか」と問いを立てると、生徒たちは「動物園の飼育員さんに尋ねればいい」と短絡的に考えがちですが、文献を当たっていろいろな説があること、その本を書いた先生に尋ねること、自分たちで説を選んで、実際に動物園で確かめること。こうして得た情報のほうが、はるかに意味があるし、面白い。そんな気づきが生まれるよう一人ひとりに寄り添った指導をしています。

進学通信 2021年11月号
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