私立中高進学通信
2021年11月号
実践報告 私学の授業
玉川聖学院中等部
世界の問題と自分をつなげる
きっかけとなる学び
今年度から、本格的に始動した『探究』の授業
先生のヒントを基にグループごとで調査や分析などに取り組みます。
“多摩川”を題材に
考えを広げていく活動
プロテスタントのミッションスクールである同校では、「世界をつなげる心を育てる」という教育目標のもと、授業や体験行事などを通じて、世界の人々とともに生きることのできる、やさしく確かな心を育てるための教育を行っています。
そのための学習の一環として今年度より本格的に始まったのが、中等部の『探究』の授業。各学年にテーマがあり、中2では「自然と環境との関係を考える」をテーマに、身近なことから地球環境について考えを広げる活動を継続して行っています。
「大きなテーマではありますが、自分たちにとって身近なところから考えていくことを最初の一歩にしようと考えました。そこで取り組んだのが“多摩川”についての学習です。本校の所在地は多摩川の中流域になりますが、上流域や下流域はどうなっているのかということを、ゴミ拾いの活動や関係者へのインタビュー、書籍やインターネットを通じた調べ学習を通して、じっくりと学んできました」と、授業を担当する山田直樹先生は話します。
春に行われた校外学習では、中2生全員が神奈川県の江の島海岸でゴミ拾いを実施。その後、クラスごとに、上流と中流、下流の担当に分かれて、それぞれで学習を深めました。
「中流域を担当するクラスは、二子玉川の河川敷にもゴミ拾いに行きました。すると、海岸で見たゴミとの形状の違いに気づく生徒が出てきます。中流域のゴミは大きくて、原形をとどめているものが多いのですが、海岸のゴミは、紫外線で分解されるなどして、小さいものが多いのです」(山田先生)
実は、そのゴミの半分以上が、川を下って一度海に出てから海岸に流れ着いたもの。つまり、中流域に暮らす私たちが、何気なく放置したゴミだということがわかったそうです。
「そういったゴミが、海洋汚染の原因となるマイクロプラスチックとなり、海の生き物の命を奪ってしまっていることに、生徒たちはショックを受けていました。このように、中2の探究の授業では、環境問題は決して他人ごとではなく、自分たちにつながっていることに気づかせるような活動を展開しています」
と山田先生は話します。
生徒の考えを尊重しながら
アウトプットにつなげる
このような形で、それぞれのクラスが上流、中流、下流についての学習を進め、その成果を9月に行われた学院祭で発表しました。
「問題提起の仕方や、調査・分析のための質問の仕方なども学習しています。中学生にとっては、先生以外の大人と話すだけでも大きな経験だと思いますが、私が誘導するのではなく、生徒たち自身の言葉や考えを自由に展開してもらうことを大事にしています。その中で、学びの面白さを感じたり、次の一歩を踏み出す自信につなげていってもらえたらと思います」(山田先生)
「世界をつなげる心を育てる」を実現する『探究』
/山田直樹先生
身の回りの人間関係から世界へと、ステップアップしながら徐々に視野を広げ、考えをアウトプットする活動を通じて、世界の人とともに生きる心を育みます。
中2「自然と環境との関係を考える」
週1回の総合の時間を中心に「身近な環境――多摩川のほとりにある学院――を知る」を目標に活動を行っています。年度の前半は、クラスごとに多摩川の上流域(A組)、中流域(B組)、下流域(C組)についての調査や分析などを行い、身近な生活と環境問題のかかわりについて理解を深めて、学院祭で発表しました。
学院祭では、これまでの探究成果を模造紙で発表し、保護者やほかのクラスの生徒にも見てもらう機会としました。
中1「よりよい人間関係をめざして」
世界とつながっていくための第一歩は、身近な人間関係から。中1では、隣にいる友達や身の回りにいる人と知り合い、よりよい人間関係をつくることを目的とした探究活動が行われます。
中3世界をつなげる心を育てる
中3では、人権問題や平和についての学びを深め、世界の今の課題を見つけて解決策を考える活動を行います。また、中学の学習の集大成として「修了論文」に取り組みます。
(この記事は『私立中高進学通信2021年11月号』に掲載しました。)
玉川聖学院中等部
〒158-0083 東京都世田谷区奥沢7-11-22
TEL:03-3702-4141
進学通信掲載情報
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