私立中高進学通信
2021年1月号
コロナに負けない!私学のアクション
玉川聖学院中等部
新学期開始から迅速にオンライン授業に対応
今後への備えも万全に
櫛田先生が指導する高2数学の授業の様子。
櫛田先生は中高の校長としての業務に加え、数学の授業も担当しています。
授業中、換気のために教室のドアを開放し、マスクの着用を徹底。
授業終了後も教員・生徒各自が、使用した机や備品を消毒しています。
セキュリティを考慮した
Web会議システムを採択
『世界をつなげる心を育てる』をモットーに、聖書が示す世界観を通じて、自分と世界の課題に向き合う教育を実践する同校。コロナ禍においても生徒のケアを一番に考え、4月7日の緊急事態宣言以後、迅速に自宅学習の準備を整え、すでにiPadを1人1台所有していた高等部全員を対象に翌週からオンライン授業を開始しました。
その他の学年も、各家庭のインターネット環境に合わせてiPadやポケットWi-Fiの貸し出しを行い、4月23日には中高全学年でオンライン授業をスタート。いち早いオンライン学習への取り組みは、テレビや新聞、雑誌など多くのメディアで紹介されました。
「本校が迅速に対応できたのは、3月の卒業式をオンライン配信と併用して執り行ったことが大きいです。この経験から3月末の時点で、オンライン授業が必須となることを予測し、早々にWeb会議システムを検討し、導入を実現しました。
社会全体が不安な時期だからこそ、生徒が学校という拠り所をなくさないよう、心のケアを大切にしたかったのです。生徒が普段通りの生活を感じられるオンライン授業の実現は急務でした」
と、中高等部長(中高の校長)の櫛田真実先生は話します。
同校が採用したのは、ビジネスにおける利用で定評のあるWeb会議システム「Webex」。双方向型のオンライン授業に最適なサービス「Webex Meetings」など多彩な機能を有し、生徒同士が交流できる機会を設けたほか、オンラインで学びを共有・交流できる「シスコ デジタルスクールネットワーク」も積極的に活用。卓球女子日本代表の石川佳純選手、乃木坂46の生田絵梨花さんの講演や生徒インタビューなども実施し、休校中のオンラインの活用を、幅広い学びの経験に結び付けていました。
感染拡大の深刻化に備え
新しい時間割も作成済み
同校では、生徒のメンタルケアを考慮し、普段と変わらない学校生活を実感できるよう、各種学校行事や、日々の活動にもオンラインを積極的に活用してきました。
自粛期間中は、毎朝の礼拝も教員がライブ配信で行えるように工夫し、学院長の安藤理恵子先生は聖書の言葉を沿えた生徒へのメッセージをホームページから精力的に発信していました。
10月初めには、韓国の姉妹校・崇義女子高校との交流会をオンラインで実施しました。例年なら10月に高2生がホームステイ体験や修学旅行で韓国を訪れ、交流を深める予定でしたが、コロナ禍で中止となってしまいました。その代わりに、オンラインでの交流が実現したのです。
学習面では、コロナ禍での自宅学習のサポートにも取り組み、登校再開以降も、オンラインを活用した、より快適で効果的な学習環境づくりが進行しています。
「とくにサポートが必要なのは、高校生の大学受験対策です。本校では、2019年度より、難関大学志望者に向けた特別プログラムとなるSAC(スーパー・アドバンスト・コース)でゼミを開講しています。
今年は6月末から再開しましたが、その内容は録画してオンライン上で共有し、自宅学習での受験対策に役立ててもらっています」
現在、同校では登校時の検温や消毒を含め、校内施設や学習環境におけるコロナ対策を、あらゆる面で徹底しています。さらに今後の状況変化に向けた対策もしっかりと準備しています。
「中高の入学試験直前には、本校側の感染による入試の中止を防止するため授業はすべてオンラインで行うことを決定しています。
さらに、新型コロナウイルス感染拡大の深刻化に備えて、全学年用のオンライン授業時間割も作成済みです。これからも本校は、生徒の安全はもちろん、安心できる学習環境づくりも徹底し、日々工夫していきます」
櫛田先生インタビュー
緊急時こそ、生徒の気持ちを最優先にした授業と学校体制を
同校はコロナ禍においても、女子校ならではのきめ細かな生徒指導、学習指導を徹底しています。他校の校長職にあたる中高等部長として学校を牽引する櫛田真実先生に、ご自身が担当したオンライン授業での工夫、全校的なコロナ対策における具体的な取り組みについて聞きました。
――オンライン授業を開始するにあたり、事前準備はどのように進められましたか?
櫛田先生
本格的には3月末から始めました。情報科の大沼祐太先生がリーダーとなってWeb会議システムプロジェクトチームを発足し、4月に入ってすぐ、高等部全学年を対象にトライアルのオンライン授業を全教員が行いました。
この経験を基に、各教科のチームごとにどのアプリを使用するかなどの問題点を洗い出し、具体的な授業方法を調査・検討していきました。ICT機器が苦手な教員も困らないように、プロジェクトチームがしっかりとマニュアルを作成して、スムーズに授業を開始できる方法を追求していきました。
本校は20年前から校内のネットワーク環境を整備し、数年前から高速Wi-Fi環境も整えていました。こうした環境が、コロナ禍でも高い意識でICTを活用した学習に取り組めた一因だと思います。
――櫛田先生ご自身は数学の授業を担当されていますが、オンライン授業を行う際に準備されたこと、工夫されたことは?
櫛田先生
私自身、オンライン授業は初めて経験することだったので、試行錯誤の連続でした。授業動画を撮影するうち、教室によって声の反響の仕方や黒板の明るさなどに違いがあることにも気づき、より見やすく、聞きやすい音声で撮影できる場所を探す工夫をはじめ、撮影方法でもトライ&エラーを重ねました。
――オンライン授業を行ううえで、気をつけた点は?
櫛田先生
私が担当する数学という教科は、答えに至るまでのプロセスが大事です。コロナ禍以前の通常の授業ではあえてデジタルに頼らず、プリントや板書を中心に据え、生徒がノートに“書いて学ぶ・覚える”ことを重視して授業を組み立てていました。
オンラインでも、いかに通常の授業と同じ効果を生むことができるかを考えながら、工夫していきました。教える内容によっては、リアルタイム配信で授業を行うだけでなく、板書を撮影した動画を配信したり、デジタル教科書を活用したり、パワーポイントで作成した解説資料を配布したりすることもありました。
――他の教科ではどのような工夫をして、効果を上げていますか。
櫛田先生
教科によって、適切な授業方法はさまざまだと感じています。英語はオンライン授業では発音がしっかり把握できますし、理科は実験の様子を詳細に見られる利点もあったようです。
教員同士が情報を共有し、ITが得意な教員と苦手な教員が教え合い、学び合いながらより良く内容を進化させていけたことは、今後の指導にも活かされると思います。
――今後はどのようにICTを推進していきますか?
櫛田先生
2020年10月から、中等部全員にChromebookの貸し出しを始めました。これによってiPadを使用している高校生はiOS、中学生はChrome OSの活用に慣れ、校内のWindows PCと併せると、主要なOSのほぼ全種類の情報機器が扱えるようになります。
ICTの活用がより身近になっていく将来に向けて、これからも生徒にはたくさんの経験をさせてあげたいです。
(この記事は『私立中高進学通信2021年1月号』に掲載しました。)
玉川聖学院中等部
〒158-0083 東京都世田谷区奥沢7-11-22
TEL:03-3702-4141
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