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私立中高進学通信

2021年11月号

実践報告 私学の授業

日本学園中学校

体験から創造力・発信力
育成する『創発学』

調査探究・キャリア教育を促すオリジナルプログラム
調査探究・キャリア教育を促すオリジナルプログラム

農家に生徒だけが民泊し、農家の方と生活をともにして、農業体験をする機会も。
農業をはじめとする第一次産業全般への理解を深め、そのうえで自らのキャリアについての意識を高めていきます。

知識偏重ではなく
自己創造力を育てる
中1では林業の現状をしっかり学習し、実際に林の中で力を合わせて伐採を体験。その木材を活用して椅子を作る取り組みも行います。中1では林業の現状をしっかり学習し、実際に林の中で力を合わせて伐採を体験。その木材を活用して椅子を作る取り組みも行います。

 人の成長を促すにはじっくりと待つことが大事だという意味をもつ『人を待つにかん  身を持するに厳』という言葉は、同校の創立者である杉浦重剛先生の座右の銘です。これを今の時代に具現化しているのが同校中学のオリジナルプログラム『創発学』です。創造して発信できる生徒の育成をめざし、名づけられました。「調査研究」と「キャリアエデュケーション」の2つの柱からなる『創発学』は、学年ごとにさまざまな体験プログラムを実施し、生徒の情報収集力や分析力、発表力などのスキルを育むものです。

 今でこそ、体験を通して思考力や判断力を育成する探究的なプログラムは学習指導要領にも盛り込まれ、私立中学校だけでなく、公立学校にも広がり始めていますが、同校が『創発学』を始めたのは今から15年以上前のこと。「これからは知識偏重の教育ではなく、知的好奇心を高め楽しく学び、将来を切り拓く力をつける“自己創造力”を育成しなければならない」と考えた先生方の熱意から生まれ、現在までぶれることなく続いています。

 校長の水野重均先生も『創発学』を生み出したメンバーの一人です。コンピューターを使った情報教育をいち早く開始し、ICTの発達を予見していた水野先生。

「デジタルの時代だからこそ知識も大切にする一方、ものごとの成り立ちとそのプロセスがわかっていれば、どのような場面でも応用ができる。そんな力を体験から直接身につけることが必要だと感じていました」(水野先生)

ストーリーのある学びで
先読みの力を育てる

『創発学』の特色は「調査研究」と「キャリアエデュケーション」の要素を関連づけながら感性と知的好奇心を高め、自らの将来を切り拓く力を育む点にあります。

 そのベースとなるのは、海や山でのフィールドワークです。自然を感じるだけではなく「調査・取材力」の視点をもって臨むことで「体験」を「経験」に変えていくのが『創発学』です。

 さらに職業人へのインタビュー『あつき恵み教室』や自分が関心のある、就きたい職業を深く知る「研究論文」に取り組むことで、調査や取材を踏まえた、根拠のあるキャリア観を育むことができるのです。

 ある生徒は、研究論文のテーマに特撮ドラマ『ウルトラマン』を選びました。『ウルトラマン』を制作している円谷プロダクションを訪れて、30人以上のスタッフに取材してドラマを完成させるまでを調べてまとめ、発表しました。その生徒は現在、大規模なイベントを企画・運営する仕事に就いているそうです。

「ほかにも『創発学』で選んだテーマを自分の将来の目標として、大学進学や就職を実現している卒業生が何人もいます」

 と谷口哲郎先生は話します。

『創発学』を学んだ生徒は「先を見る力が身につく」と水野先生。1つの活動で得た疑問や課題を解決するために新たな活動に取り組むという、ストーリー性のある学び方が、いつしか自分の目標達成にも応用できるようになるからです。『創発学』を通し、生徒は社会に出ても発揮できる一生ものの力を身につけ、さまざまな舞台で活躍しています。

FOCUS
中学3年間で探究力と発信力を磨くオリジナルプログラム『創発学』
Step 1
調査・取材力を高めるフィールドワーク

創発学の「創」その1

漁港の発展をテーマに、漁船体験や活魚出荷、養殖いけすの見学などさまざまな経験ができる漁業体験。漁港の発展をテーマに、漁船体験や活魚出荷、養殖いけすの見学などさまざまな経験ができる漁業体験。

『創発学』のプログラム構築を校長の水野先生から引き継いだ谷口先生は、多くの教員と検討を重ね、一次産業を中心に取材やリポートをする体験活動へと整理していきました。

「生徒たちには『特ダネを探せ!』と言っています。インターネットで何でも調べられる現代ですが、現地に行って体験し、対面で人の話を聞いたり、デジタルカメラで記録したりするなかで、生徒自身が気づきを得る瞬間があります。そうした気づきは体を使わなければ得られないのだ、と体感することがフィールドワークの大きな目的です」(谷口先生)

 山梨県での林業体験(中1)や沼津での漁業体験(中1)、栃木県での農家民泊体験(中2)、職業講話「あつき恵み教室」(中2)を通して、対象に関心をもち、よく観察し、物事を見る目が養われていきます。これらのフィールドワークは現地の生産者団体などと直接連絡を取り合い、内容を作り上げていく完全なオリジナルプログラムです。

Step 2
まとめる作業で分析力を高める

創発学の「創」その2

中1で林業体験を行った後は体験を振り返り、生徒一人ひとりが「林業新聞」に気づいたことや調べたことをまとめます。中1で林業体験を行った後は体験を振り返り、生徒一人ひとりが「林業新聞」に気づいたことや調べたことをまとめます。

 フィールドワークをはじめとする体験活動の後は、必ず「まとめ」と「発表」の機会があります。体験を自分の中でかみ砕き、自分の考えや伝えたいことをまとめていきます。

 中1生はコンピューターではなく模造紙を用いた紙新聞にまとめます。手を動かすことで臨場感やその時の感覚を再現する効果があります。ほかの班の作品のまとめ方を見て「良いところに着目した」というのがわかりやすく、互いに良い刺激になります。これを繰り返すことで「次はこんな視点をもって臨んでみよう」という視野の広がりが生まれます。

Step 3
自分の意見を表現し創造へとつなげる

創発学の「発」

論文としてまとめることで、プレゼンテーション力を高めます。論文としてまとめることで、プレゼンテーション力を高めます。

 体験で得たことをレポートにまとめたり、中3で「研究論文」を作成・プレゼンテーションを行ったりする取り組みも、『創発学』の一部です。仲間と成果を共有してこそ、新たな気づきが生まれます。

 論文作成やプレゼンテーションを行うなかで、生徒たちは新たな課題を発見していきます。そうした体験からさらに情報を収集し、分析して伝えるという創造と発信のサイクルを習慣づけていきます。

先生からの一言!
体験を経験に変える創発学。今後は高校でも展開
校長/水野重均先生

 最初のうちは何をするにも失敗することが多いものです。創発学のプログラムには、その次の活動で再び同じような場面に遭遇するような仕掛けを設定しています。すると「今度はこうしてみよう」と創意工夫が生まれてきます。これが、行って戻ってくるだけの「体験」と、工夫や気づきが積み重なる「経験」との違いです。体験を経験に変えていこうと、生徒たちに呼びかけています。

 高校では、創発学を発展させた新たなプログラムを立ち上げようと検討中です。本校の先生方は、常に「生徒たちに、今後15年先に必要な力は何か」をテーマにプログラムを作っています。ちょうど私たちが創発学を作ったときのような熱気が今もなお続いています。「こんな力をつけてほしい」という思いのこもったプログラムになるはずですので、ご期待ください。

進学通信 2021年11月号
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