私立中高進学通信
2025年11月号
私たち、僕たちが大好きな先生
サレジアン国際学園世田谷中学校
本物を見せることで
生徒たちの興味を深める
理科 谷戸 崇(やと たかし)先生
大学の生物資源科学部でネズミなど哺乳類の研究に勤しむ。
修士課程を修了後、4年間教員を務め、博士課程に進む。
博士課程修了後に、サレジアン国際学園世田谷に赴任する。
専門分野は生物で、現在は中1の理科第2分野(生物・地学)を担当するほか、中1の担任も務める。
また、中1のプレゼミ、中2・中3のゼミ「リビングラボ」(探究学習)を担当している。
感受性が豊かで、成長の度合いも著しい中高の時期に重ねた体験は、その後の人生にも大きな影響を与えます。ご自身もそうした経験をもつ谷戸崇先生は、理科の授業で“本物”を見せることにより五感を刺激し、生徒の興味を深めることを心がけていらっしゃいます。
中高時代に積む体験の大切さを
教員として伝えたい
――教員をめざしたきっかけを教えてください。
大学の生物資源科学部で、農学や畜産系の学びを専攻していましたが、生き物が好きで、生き物を探したり観察したりするサークルに入っていました。そのサークルには、中高時代に真剣で深い活動をしていた人が多かったので、やはりその時期の経験は大切なんだと感じました。大学に入るまでは生き物についてそれほど詳しくなかったのですが、そのサークルで活動をするうちに生き物への興味が深まりました。その後、修士課程に進んでからも、中高時代に理科に熱心に取り組んだ人が周りに多く、改めて中高時代の体験の大切さに気づかされました。大学院では学芸員の資格も取得したため、生物の標本など本物を見せることで、日頃から生徒たちに生き物の面白さを伝えることができる教員の道を志望しました。
実は高校の時、ケニアに1週間ほど滞在して、サファリで野生動物に出会う体験をしていたので、その時に覚えた感動が潜在的動機となって、生物を研究する道に進んだのかもしれません。
修士課程を修了した後、4年間教員を務め、研究への思いもあって博士課程に進みましたが、その間も再び教職に就く意思はもち続けていました。
中高一貫校を志望したのは、公立校に比べて中学での学びの自由度が高く、生徒の興味をより伸ばすことができると思ったからです。
――理科の教科指導では、どのようなことを心がけていらっしゃいますか。
進路が理系であっても文系であっても、理科の授業を通じて科学に興味をもってほしいと思います。そのために、自分でつくった剥製や標本など“本物”を見せて、それまで何気なく見ていたものの見方が変わるような体験をもたらすようにしています。
例えば、学校のグラウンドで生き物を探す活動であれば、カナヘビやモグラなどを見つけることができます。中1の初めに、「今日は朝からどんな生き物を見ましたか?」と聞くと、鳥くらいしか答えが出ません。植物も生き物だとは思わないようなんです。そこで画像を見せて、「これはカタバミだよ」などと、身近なところにも目を向けるように促しています。
通常授業のほか、夏期講習の一環として希望者参加の解剖実習を実施しています。そこではマウス(ネズミ)を解剖して剝製や頭骨標本、透明標本をつくったり、ハクビシンやアライグマ、アナグマを知り合いの博物館から譲ってもらって、解剖して頭骨標本やなめし皮をつくるなどの実習を行います。視覚的な情報だけでなく、においなども含めて五感で感じる体験に、生徒は事前の想像を超えた衝撃を受けますが、集中して熱心に取り組み、予定時間をはるかに超えることも多いですね。今はインターネットなどでさまざまな映像を見ることができますが、実際の作業ではにおいや感触なども体験できるので同列には語れません。本物を見て興味を深めてほしいという思いで、この講座を実施しています。
――地学分野も担当されていますが、同じような思いでしょうか。
はい。中学での学びの初期段階で、川や山奥から採集してきた岩石を見せたり、自分が行ったことのある地層や化石がある場所の映像を見せたりしています。ナウマンゾウの化石を見せて、「木の破片のように見えるけれど、実は本物の化石だよ」と言うと、生徒は興味をもって観察してくれます。
――プレゼミやゼミではどのような活動をされていますか。
本校は探究学習に力を入れており、中1でプレゼミ、中2・中3でゼミに所属して、それぞれが興味をもつテーマに沿って研究を進めます。私は、生物系のテーマを研究する「リビングラボ」を担当しています。その成果は、本校の学園祭「サレジアンフェスタ」で発表するほか、外部の科学コンテストで発表することもあります。実際に、中高生が科学に関するアイデアを発表する「つくばScience Edge」のブースポスタープレゼンテーションに選ばれた生徒もいます。同世代の研究成果を見たり、専門の先生から質問を受けたりすることが刺激になるほか、発表することでさらなる成長が期待できるのです。
生徒自身が主体となって
自立するためのサポートを
――クラスの担任としては、何を心がけていらっしゃいますか。
生徒一人ひとりがチャレンジすることを大事にしています。部活動でも習い事でもよいので好きなことを見つけて、とことん深めていく姿勢を育むように心がけています。夏休みの科学コンテストへのチャレンジを促すなど、刺激を与えることを意識しています。授業で話せる時間は限られているので、生物教室の前に、自分で集めた科学系の図書を並べておき、自由に閲覧できるようにして、興味を促す環境をつくっています。
――中1の担任として、特に大切にしていることは何でしょうか。
小学校までは、何事も保護者に言われて行動することが多かったと思いますが、中学では保護者の手を離れて自立していってほしいので、宿題や小テストの準備をいつするかといったスケジュール管理が自分でできるように、4月に手帳を紹介して、自己管理の方法を説明しています。小学生のうちからできている生徒もいるので、生徒同士で情報が共有できる環境もつくるようにしています。自立を促すとはいえ、ほったらかしではいけないので、伴走しながらも生徒が主体となって自立していけるようにサポートしていきたいと思っています。
生物教室の前には、谷戸先生が収集し、自由に閲覧可能としている科学系図書のコーナーがあります。
谷戸先生がつくられた標本や剥製。本物に触れることができます。生徒の声
中1 A・Sさん小学校の理科の授業をつまらないと感じていましたが、先生の授業は何倍も楽しく、夏の講習などで、より興味が湧きました。
中1 S・Eさん資料・知識を総動員して教えてくださる授業がいつも楽しいです。科学コンテストに出た時も優しく教えてもらいました。
中1 A・Nさん私たちの提案を否定せず、面白さや工夫の仕方を違った視点から教えてもらえます。授業では常に新発見があり、面白いです。
中1 K・Yさん授業では、先生が好きなネズミやモグラについて力説してくれるので楽しいです。剥製を触ったりできるのも面白いです。
中1 М・Cさん探究熱心で何に対してもNOと言わないチャレンジ精神がすごい先生です。生物の専門的な話まで聞けるので楽しいです。
中1 М・Kさん生物という得意分野を活かし、豆知識を教えてくれます!写真を撮るのが好きで、思い出写真を増やしてくれます!!
中1 N・Yさん質問にはわかるまで教えてくださいます。校庭裏に一緒に畑をつくり、理科にさらに興味をもてる工夫をしてくださいます。
中2 A・Eさんいちばん好きなのは生徒に親身なところで、くだらない話にもちゃんと付き合ってくれます。いつもありがとうございます。
中2 S・Rさん生徒のことをよく考え、笑顔が素敵で生徒の信頼も厚いです。生物室の前に理科に関する本をたくさん置いてくれています。
(この記事は『私立中高進学通信2025年11月号』に掲載しました。)
サレジアン国際学園世田谷中学校
〒157-0074 東京都世田谷区大蔵2-8-1
TEL:03-3416-1150
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