私立中高進学通信
2022年8月号
私学だからできるオリジナル教育
東洋大学京北中学校
思考力・発信力を伸ばす
独自の授業『哲学』
中学3年間をかけて行う同校オリジナルの授業『哲学』。論理的思考力を伸ばし、自由な発想で意見を述べる力を育むことで、学びを深める土台をつくっています。
思考し、話し合うことが『哲学』の授業の基本。
授業のほかにも『哲学エッセー』の執筆や哲学活動を発表する『哲学の日』を実施。
「哲学ゼミ合宿」「刑事裁判傍聴学習会」など希望制のセミナーも行っています。
グループワークや対話で
「哲学的思考」を養成する
哲学者・井上円了を学祖とし、『諸学の基礎は哲学にあり』を建学の精神に、哲学教育に重きをおいてきた東洋大学京北。中学校では週に1時間、『哲学』の授業が必修となっています。
哲学というと社会科で扱う『倫理』の授業が思い浮かびますが、同校の中学で取り組むのは「哲学的思考」の養成です。難解な理論を学ぶわけではなく、グループワークやゲームを楽しみながら、哲学的な思考を身につけていきます。
「本校の『哲学』の授業は、すべて教員が創り上げたオリジナルです。各教員が1テーマを3週間担当し、ローテーションするので、複数の教員から多様なテーマを学んでいきます。生徒たちは教員それぞれの個性ある取り組みに触れることで、論理脳が鍛えられていきます」
と、『哲学』の授業を総括する福田誠司先生は話します。
たとえば「他者と自己」がテーマの中1の授業では、レクリエーションのゲームを考案するワークを行いました。この時、「多数決やじゃんけんでゲームの内容を決めるのは本当に公平か」「みんなの意見を絞らず、全部やったら楽しいのでは?」といった意見が出て、「みんなが安心して意見を出せる空間を作るにはどうすればいいか」を考えることへとつながりました。「自己」がテーマの中2の授業では「大人とは何か」という疑問に対して、生徒それぞれが自分なりの「大人」である条件を考え、また、「私たちを縛っているものは何か」というテーマの授業では、クラス全員で仮装をして、思考の枠を拡げました。
自由に思考し、自分なりの
意見を発信する力を養う
福田誠司先生『哲学』の授業の際、教員が留意しているのは、「結論を押し付けないこと」。教員が答えを与えるのでなく、生徒の自由な発想を導いていくことが大事だといいます。
「哲学の授業では『人を傷つけなければ何を発言しても正解』『自分の意見を言うことは恥ずかしくない』と、繰り返し伝えることで、生徒たちも次第に自分の意見を自由に発信できるようになっていきます。『哲学』の授業を経て、ほかの教科でもチャレンジ精神が出てきました。論理的思考が身につき、国語の読解問題などに強くなったと感じます。
『哲学』の授業を担当することで教員側も学んでいますので、それを生徒指導にも活かしていきたいと思っています」(中3担任/上谷真琴先生)
「『諸学の基礎は哲学にあり』とは、鳥瞰的視点から論理的思考と価値創造力を用い、各教科で学んだことを、人々のために役立てるのが哲学だという意味です。哲学教育を通じ、独りよがりにならずに自己と社会を変え、自分の幸せを考えることはもちろん、世界の幸福にも貢献できる人材を育成していきたいですね」(福田先生)
中3の『哲学』授業
インフルエンサーになって動画をつくり、人の心をつかもう
中3の『哲学』の授業では、インフルエンサーの意味を考え、自分たちをインフルエンサーと想定して、製品をPRする動画制作も行われています。この日の授業では、グループに分かれ、動画制作のために「何の商品をPRするか」「どのような動画を撮影するか」などについて話し合いました。
教員が「インフルエンサーってどういう意味?」と問いかけることからスタートします。インフルエンサーについて書かれた英文の記事を生徒が一人1台所有するノートPCに配信し、インフルエンサーの定義について、意見を出し合いながら考えます。
グループに分かれ、宣伝したい商品を決めてインフルエンサーとしてPR動画を制作します。「どうやって撮影する?」「家で撮って、つなげようか」。生徒たちの会話もはずみます。
先生は全グループに声かけをして、活動をファシリテートしていきます。「それ、いいね」「そういうのも面白いよね」と、生徒がやる気になるような声かけが続きます。
ほかのクラスが制作した動画を見て参考にします。英語の商品名について先生にアドバイスをもらったり、ネット検索をして撮影のアイデアを探したりしながら、話し合いを進めていきます。
土曜日の2時限目には先生方が集まり、『哲学』の授業の振り返りを行っています。各クラスで実施した取り組みの成果を発表するほか、授業の改善方法の相談や、意見交換などを積極的に行っています。生徒インタビュー
『哲学』の授業で得た思考力・発信力
人の心を動かす動画づくりに挑戦しました
Hさん/中3自分で考える力が身につく授業
僕たちのグループでは、イヤホンをPRする動画をつくりました。約1分間という短い動画ですが、何テイクも撮影が必要で、思ったよりもかなり大変でした。クラスのみんなから大好評だったので、インフルエンサーとしては間違っていなかったと思いますが、もう少し商品情報を入れるべきだったという反省点もありました。
『哲学』の授業を経験することで、自分で考える力がつき、成長できたと思います。今後は、プレゼンテーションの技術をさらに磨いて自分の意見をアピールし、世界の諸問題に対して貢献していく活動ができたらいいなと思っています。
Fさん/中3疑問を共有し話し合うことが当たり前に
私たちのグループは『無重力スプレー』という架空の商品をPRしました。どうすれば物が浮いて見える動画をつくることができるのか、みんなで相談をして工夫をこらし、頑張って撮影しました。実際に存在しない商品を考え出すことも楽しかったです。
私は「『哲学教育』思考・表現力入試」を受けて入学しました。入学前の学校説明会で「哲学教育に力を入れている」と聞き、哲学に興味をもったからです。『哲学』というと難しく聞こえるかもしれませんが、気負う必要はなく、疑問に思ったことを口に出してみんなで話し合う、面白くて奥の深い授業です。
先生から一言
少しずつ難易度の高いテーマに挑戦
中3担任/上谷真琴先生 今回の動画づくりは、3年間哲学の授業に取り組んできた生徒たちであれば、ほぼ自由に取り組ませても大丈夫だと判断して設定した課題です。さまざまな取り組みを行ってきましたので、生徒たちは話し合いやグループワークにも慣れ、自主性に任せてもスムーズに協働できるようになりました。
今後は、「死刑制度について」など、少し難しい社会テーマも扱っていきたいですね。中学生なりに考えられることがあるのではないかと思っています。
(この記事は『私立中高進学通信2022年8月号』に掲載しました。)
東洋大学京北中学校
〒112-8607 東京都文京区白山2-36-5
TEL:03-3816-6211
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