私立中高進学通信
2022年8月号
校長先生はこんな人!
啓明学園中学校
さまざまな国際生が集う学園生活で
ダイバーシティを当たり前のものに
大坪 隆明 (おおつぼ・たかあき)校長先生
1960(昭和35)年生まれ、東京都出身。20代後半、海外で帰国生教育にかかわり、
帰国後に芝浦工業大学に事務職員として入職。各部署責任者を歴任し、学事部長として大学改革に携わる。
2011(平成23)年、芝浦工業大学附属中学高等学校の校長、2021年、芝浦工業大学大宮キャンパス長を歴任。
2022年から啓明学園中学校・高等学校の校長に着任。
偶然の導きで教育の道へ
若い頃の海外体験も財産に
5歳年上の姉が見聞きするサブカルチャーから影響を受けて育ち、中1の頃に部落差別を扱ったフォークソングやマンガ、小説などに触れ、社会の理不尽さに衝撃を受けたのを覚えています。そのことがきっかけで正義感が芽生え、将来は新聞記者として社会を正したいと考えるようになりました。
大学ではジャーナリズムを学び、新聞記者をめざします。卒業後、フリーランスの記者となりましたが、大学時代にアルバイトをしていた学習塾から「インドネシアへ進出するので、手伝ってくれないか」と声がかかりました。子どもの頃から海外に憧れ、大学生のときにネパールとインドを2カ月ほど旅した経験があります。毎日が冒険で、このときのカルチャーショックは非常に大きいものでした。同様にインドネシアへ行けば、新しい世界が開けるのではないかと期待を胸に渡航しました。
現地ではインドネシア人との文化の違いや経済的なギャップを肌で感じながら生活し、同僚たちといろいろなことを議論し合う刺激的な日々でした。
その後、その塾がシンガポールに日本語学校を開くことになりました。私は一時帰国して日本語教師の資格を取り、その後JICA(※)の日本語教育専門家としてマレーシアに一年弱派遣された後、シンガポールで日本語学校を開設しました。日本人の生徒に向けた塾も併設されていましたので、帰国生の教育にもかかわりながらシンガポールで5年間暮らしたことになります。
32歳で帰国し、日本でも教育関係の仕事を希望していたところ、芝浦工業大学の職員として採用されました。その後、附属中高に異動、副校長を経て、校長を9年務めます。その間に校舎移転、共学化を行いました。任期満了に伴い2021年3月で校長を退任し、大学の仕事へ戻ったのですが、縁あって今年4月から本校に校長として着任しました。過去を振り返ると、教育の道へと進んだことは偶然の巡り合わせでした。本校とのご縁も含め、いろいろな出来事が運命的につながって、今があると感じています。
※JICA…Japan International Cooperation Agencyの略。独立行政法人国際協力機構の呼称。開発途上国への国際協力を行う機関。
多様な国際生が混じり合い
個性や違いを受容する
企業も大学もダイバーシティ(多様性)を重んじる時代です。それは、多様性のなかでしかイノベーション(革新)は生まれないからだと思います。同じような人が集まるコミュニティーでは、世の中を変える才能は生まれません。
1940(昭和15)年に帰国生のために創設された啓明学園には、もともと多様性を重んじる素地が備わっていると感じます。
本校では、海外からの帰国生、外国籍の生徒、国内のインターナショナル校出身生徒らを「国際生」と呼称しますが、海外経験やバックグラウンドはそれぞれ異なります。そのため、取り出し授業や6段階もの習熟度別英語クラス、さらには一人ひとりに合わせたオーダーメイドの時間割や、中国語や韓国語、ドイツ語など英語圏以外の言語も維持・伸長するクラスを設けるなどしています。
多様性を受け入れる
やわらかな心が育つ学校
帰国生たちがそれぞれが学んできた外国の「言語」を大切に、これからも心の支えとして維持・伸長させようという啓明学園の教育方針は実に尊く、私も驚かされました。このようなダイバーシティの環境は、生徒たちに、ほかでは得がたい学びと経験をもたらすものと思います。個性や違いを受容する学校であることが最大の強みであり、財産だと考えています。
本校はキリスト教主義の学校であり、「人権と平和」は、事あるごとに伝えていきたい大事な価値観です。争いの絶えない世の中ですが、多様性を受容できる人であれば「人権と平和」を大切にしていけると信じています。
本校は「やわらかな心が育つ」学校です。キャンパス内には小学校があり、多様なバックグラウンドをもつクラスメートがいる。そんな環境で、多様性を受け入れる姿勢と精神が自然に育まれていくからです。私自身が子どもの時、小説や音楽などを通して社会について考え、将来の夢を志したように、何がきっかけで人生が導かれていくかはわかりません。多様な生徒が集う啓明学園には、その「きっかけ」を得るチャンスがあふれています。これからは経験を活かした理工系教育・キャリア教育を導入して、さらに「やわらかな心」を育てていきたいと考えています。そして一人ひとりが納得し、自信をもって歩める進路が実現できるよう、力を尽くしていきます。
[沿革]
1940(昭和15)年に三井家総本家11代目・三井八郎右衛門の実弟、三井高維氏が、東京・赤坂台町にあった私邸を開放し、海外勤務者の子どものための学校として創立。その後、昭島市拝島町に移転。キャンパス内にある旧三井別邸は「北泉寮」として東京都指定有形文化財の指定を受けている。創立時から受け継ぐダイバーシティの精神を財産として、1972年からは初・中・高に国際学級を付設。帰国生も多く、グローバルな雰囲気のなか、多様な価値観と主体性を育む心の教育を実践している。
(この記事は『私立中高進学通信2022年8月号』に掲載しました。)
啓明学園中学校
〒196-0002 東京都昭島市拝島町5-11-15
TEL:042-541-1003
進学通信掲載情報
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