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私立中高進学通信

2022年8月号

実践報告 私学の授業

横浜女学院中学校

探究学習を組み込んだ
インタラクティブな授業

ゲーム性を取り入れ、学びを深めてモチベーションアップ!
高1の『歴史総合』の授業では、1限目に教科書の知識を学び、2限目にその知識を応用してシミュレーションゲームやディスカッションを行っています(左)。『貿易ゲーム』のプリントの一部(上)。教科の細かい知識を概念化し、現代にも通じる国際社会への視点を養っていきます。

高1の『歴史総合』の授業では、1限目に教科書の知識を学び、
2限目にその知識を応用してシミュレーションゲームやディスカッションを行っています。

現代に通じる普遍的概念で
歴史を学び多角的視点を育む

 持続可能な社会に向けた探究学習『ESD』、英語で他教科を学ぶ『CLIL』、教科横断型学習『クロスカリキュラム』など、横浜女学院は常に先進的な教育手法を積極的に取り入れ、各教科の教員が工夫を凝らした授業を展開しています。国際教養クラスの高1・高2を担当する岩田賢先生は、『歴史総合』の授業で、ESDとクロスカリキュラムを組み込んだゲームや、発表を取り入れたユニークな授業を行っています。

「歴史を過去の出来事として学ぶだけではなく、現代にも通じる普遍的な概念に落とし込むことで、興味・関心を高め、多角的な視点を育てたいと考えています。
 たとえば、高1の『歴史総合』の授業で幕末を扱った際には、『貿易』『相互依存』『グローバル化』という3つの概念をポイントとした『探究ステートメント』を軸に学習を進めました。
 19世紀は、貿易を通じてイギリスが世界の覇権を手に入れ、各国が相互依存の関係を形成した時代です。国は変われどこの構図は現代も同じ。貿易には保護貿易と自由貿易があることを学びながら、『今の日本は幕末と同様に貿易赤字だけれど、その理由は?』『アメリカと開国した幕末期に、イギリスとの貿易が8割もあった理由は?』といった問いをグループで考察していきます。
 そのなかから、貿易は国力を高める一方、幕末の日本では貿易赤字によって動乱が起こるなど政変の原因にもなったことが見えてきます。教科の細かな知識を通して、物事の本質や仕組みを捉えられるよう、多角的な観点で学べる仕掛けを随所に用意しています」

興味・関心が高まり
意欲的な質問が増加

 学ぶ仕掛けのひとつとして取り入れているのが、独自のシミュレーションゲームです。『政党ゲーム』は、貿易とイギリスの産業革命をつなげた内容で、グループ内で自由党と保守党に分かれ、法案を採決しながら19世紀のイギリス政府を運営していこうというものです。

「政党は支持者の利益に反することは行わないという原則、関税とはどういうものか、それぞれの党が関税や地租に対してどのような考えをもっているかなど、教科書で体得した知識を応用して、生徒たちがシミュレーションを行います。
 基礎知識を理解できていれば、『保守党の支持者は貴族など特権階級だから、不動産に税金はかけられない。地租を減税しよう』『自由党の支持者は、経済を自由化し、さまざまな制限を撤廃したいと考えているビジネスマンや貿易商だから、政府と利害が対立するのは当然』など、想像を巡らせて、採用する法案を選択できるわけです。
 ゲームの最中にアヘン戦争が起き、その際の対応を決めるという設定も取り入れました」

 ゲームの後は、どちらの政党に支持が集まったかをグループで議論し、発表を行いました。普遍的な概念に落とし込むことで教科横断の学びへと広がり、探究が深まると同時に、生徒たちの興味・関心も高まります。歴史の授業外で習うような専門知識や現代にかかわる視点をも養っていきます。

「ゲームを通して多角的に歴史を見ることで、政治と貿易、選挙制度など、さまざまな事象が実は密接につながっていることを、実感をもって学ぶことができます。
 こうした仕掛けを取り入れることで意欲的な質問が増え、定期テストの平均点も大幅にアップしています。今後も、さらに学びが深まるよう、教員一同、成功事例を共有・ブラッシュアップしながら、ESDとCLIL、クロスカリキュラムをより効果的に連携させていきます」

『貿易ゲーム』のプリントの一部(上)。教科の細かい知識を概念化し、現代にも通じる国際社会への視点を養っていきます。

『貿易ゲーム』のプリントの一部。
教科の細かい知識を概念化し、現代にも通じる国際社会への視点を養っていきます。

FOCUS
国際問題に対処しながら
通商を疑似体験『貿易ゲーム』

 高1『歴史総合』の授業では、アメリカ、中国など、グループごとに世界の国を割り当て、国際問題に対処しながら自国の利益となるよう交渉しながら売買を行う『貿易ゲーム』を行っています。『サウジアラビアは80の石油を輸出。コーヒーを飲む習慣があるのでコーヒー豆と、大富豪向けの金を各10輸入』というように目標を設定。『中国との貿易は関税20ドル』『中国と国交のない国は貿易不可』などの制限に加え、『コーヒー農園が森林火災でコーヒーの国際価格が高騰』などの国際ニュースが入ると、「値下がりを待ってから買う」といった戦略を練る必要も出てきます。

 価格が倍になっても買わなければならなかったり、天災によって逆に儲かったりすることも。これを幕末にあてはめると、当時の日本がイギリスと自由貿易を行うことがかなり不利である理由が見えてきます。ゲームを通して国の駆け引きを疑似体験し、必ずしも自由貿易が良いのではなく、国や時代によって考えるべきことがあるという視点を得ていきます。

国際情勢を価格に反映させ、これを読み解きながら売買のタイミングを戦略的に考えます。

FOCUS
イギリス政府の政党運営を再現する『政党ゲーム』
各政党の支持者数は、スプレッドシートで選挙区ごとに色分けで管理。色分けは生徒のアイデアです。各政党の支持者数は、スプレッドシートで選挙区ごとに色分けで管理。色分けは生徒のアイデアです。

 生徒たちがイギリスの保守党と自由党の2グループに分かれ、2期ごとに政権交代をしながら19世紀のイギリス政府を運営するゲームです。各グループに党首・顧問など役割があり、その時々で発生する時事問題にどの法案を取るか選択し、各政党の支持者数を競います。『穀物関税の減税』を採択すると、貿易は活発化し、自由党の支持者である貿易商にとっては有利となり、自由党の支持者数が増加します。

 19世紀イギリスの国際情勢と、何が市民にとって利害となるのかを理解していることが勝利の鍵となり、そのためには教科書で学んだ内容への深い理解がかかせません。ゲーム終了後は、「時事問題に対して当事者意識がもてるようになった」「今の国際社会に通用する原理原則がわかった」など、新たな気づきや学びがあり、興味・関心が高まったとの声が多くあがりました。

岩田先生が歴史的事実から法案を提示。これを基に、採択するか否かを考えていきます。

ココも注目!
『CLIL』で時事問題への理解を深めながら
英語ディベート力を磨く
国際教養クラス高1・高2
                     社会科担当/岩田賢先生国際教養クラス高1・高2
社会科担当/岩田賢先生

 高1・高2では、英語以外の教科を英語で学ぶ『CLIL』の授業を週2時間実践。ネイティブ教員と教科担当の教員がともに指導し、さまざまな教科でまんべんなく行っています。

「『CLIL』は、教科学習と英語によるコミュニケーションを同時に習得できる学習方法として非常に効果的です。加速度的に変化する現代社会において、主体的に考え、行動できる力の育成には、非常に有用な取り組みだと考えています。
 私が担当する社会科では、時事問題をトピックとした英語でのディベートを行っています。授業では、『同性婚を認めるべきか』といった問題も取り上げ、賛成・反対に分かれ、ディベートの本質である、双方の立場に立って理論的に主張できるか、という点を大切に指導しています。
『CLIL』を通して英語で自分の考えを主張するスキルを身につけ、海外大学進学をめざす生徒も増えています」

(この記事は『私立中高進学通信2022年8月号』に掲載しました。)

進学通信 2022年8月号
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