私立中高進学通信
2025年8月号
中1の始め方
日本大学豊山中学校
挨拶と思いやりを大切に
豊山生らしい空気が育っていく

真剣な眼差しで授業を受ける生徒たち。
休み時間は元気いっぱいで、授業が始まると集中力を発揮します。
中高6学年で2000名以上の生徒が学ぶ日大豊山。中1学年主任の田中正勝先生に、中学校入学後の導入期において大切にしていることを伺い、実際の授業を見学しました。
学びの機会を逃さないため
全校生徒が元気に挨拶

「広報を12年間担当してきました。本校を選ぶ生徒は、学校見学や入試の段階でもすでに豊山生らしく大きな声で挨拶をしてくれます」
「強く 正しく 大らかに」の校訓のもと、日大豊山が大切にしているのが「挨拶」と「思いやり」。中1の導入期には、特に意識して生徒に伝えています。
「『挨拶』と『思いやり』の大切さについては、生徒を尊重しながらその都度伝えています。中高一貫校では同級生とのつながりだけでなく、部活動や行事など先輩とのつながりから学ぶ機会も多くなります。そうした学びを手に入れる機会を逃さないためにはコミュニケーション能力が必要になり、その基本となるのが『挨拶』と『思いやり』だからです」(中1学年主任・田中正勝先生)
挨拶に関しては、「挨拶しなさい」と一方的な指導をするのではなく、先輩や教員が礼儀正しく元気に挨拶する姿を見て自ずと身についていきます。
「今まで育ってきた家庭環境も小学校も異なる生徒が集まるので、最初はなじむのに必死なのですが、慣れてくると同じ言葉でも捉え方が違うことがわかってきます。その時に自分との違いを認める意識が『思いやり』になります。互いを認め合い、リスペクトすることで交友関係が深まっていき、多様性に対応できるようになっていくのです。また、中1生には『自校史教育』を実施しています。学校の歴史とともに今までの自分を振り返り、将来を考える機会としています」
男子校ならではの環境で
自立心を身につける
男女別学の良さとして、「本来の自分が出せるところ」「自立心が身につくところ」の2点が挙げられるといいます。
「クラス運営や行事、部活動も異性を意識したり頼ったりすることなく、男子だけで役割分担をするため、自分らしさが発揮しやすいですし、自立心が身につきます。例えば運動部の合宿では、自分たちで食事の配膳や洗濯などを全てやります。そこでわかるのは、やはり親のありがたみです。中高生の男子というのは親に『ありがとう』『ごめんなさい』がなかなか言えない時期ですが、食事の準備から後片付けまでがどれだけ大変か、泥のついたユニフォームを洗うのがどんなに難しいか、体験して知ることで感謝の気持ちが生まれるのです」
中学生の子育ては
“手をかけずに目をかけて”
中学生になり、環境が大きく変わったことで感じる「中1ギャップ」。田中先生によると、実は保護者のほうが中1ギャップに戸惑うことも多いのだとか。
「学校説明会や入学後の集まりで保護者の皆さんにお伝えするのは、『今までお子さんに手をかけてきた分、今度は目をかけてください』ということです。中学受験を親子二人三脚で乗り越えてきた延長で、入学後も子どもの行動や勉強を細かくチェックしていると、思春期の子どもへの負担が大きいですし、自立心が養われにくくなります。また、小学生までは“子どもの失敗は親の失敗”と捉えてきた方が多いのですが、子どもたちには大人になる前にたくさん失敗して、失敗から学び、成功へと導く喜びを知ってほしいと考えています。生徒は中高6年間を通してそれぞれのペースで成長していくので、手をかけたい気持ちをぐっとこらえて、目をかけるようにしてもらいたいと考えています」
こうして成長を見守り続けた卒業生の保護者から、心温まるエピソードを聞きました。
「在学中は持ち帰った弁当箱を出すことも稀だった生徒が、ある日弁当箱をきれいに洗った状態で母親に渡したそうです。中には『6年間、本当にありがとう』という手紙が入っており、その日は最後の弁当の日だったと保護者の方が感激しながら話してくれました。教員がそうするように言ったのではなく、自分で考えて母親への感謝の気持ちを表したことがうれしかったですね。保護者と教員、共に生徒の6年間を見届けていくことができたらと思っています」




生徒とコミュニケーションを取り合いながら授業進行

田中先生が担当する中1社会科・地理の授業を実際に見学しました。この日の授業では、等高線などを使った地形図の読み取り方を学習。
田中先生は「等高線の狭いところと広いところ、どこから山登りしたい?」などと生徒に問いかけ、地形図はキャンプや登山にも役立ち、命を守るために活用されている身近で大切なものだと伝えます。また、扇状地で有名な場所について生徒から「甲府盆地」という声が上がり、果樹園に適した地形のため、ぶどうの生産量が日本一だという情報も加わりました。「では、ぶどうの生産量2位と3位は何県?」という田中先生の問いに生徒たちは口をそろえて回答し、地形図から連想される幅広い地理の知識が自然と得られるような授業が展開されていました。
(この記事は『私立中高進学通信2025年8月号』に掲載しました。)
日本大学豊山中学校
〒112-0012 東京都文京区大塚5-40-10
TEL:03-3943-2161
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