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私立中高進学通信

2025年8月号

私学の先生だから数学・理科・情報が面白い!

安田学園中学校

ロイロノートで協働学習
実社会と数学を結びつける

中2の幾何の授業風景。
生徒たちは身近なチェーン店各社のピザやケーキを比べることで、複雑な計算にも楽しく取り組めます。

仲間と関わりながら
学ぶことで広がる視点
数学科 中村亮介 先生数学科 中村亮介 先生
学生時代はハンドボール部に所属。現在はブレインスポーツ部の顧問です。

 創立者である安田善次郎氏の「実業界の有用な人物の育成は、社会発展の基礎である」との信念を実践するため、1923年に設立された安田学園。数学科の中村亮介先生は、同校の卒業生です。

「私が数学を好きになったのは、本校に入学したことがきっかけです。中学生時代、解答にたどり着く道が幾通りもあるところが楽しく、仲間とワイワイ話しながら、自由な雰囲気の中で数学を勉強していた記憶があります」

 自身の中高時代の経験を踏まえつつ母校で授業を行う中村先生は、数学の問題に取り組む生徒たちに対し、解説をしすぎないように心がけているそうです。

「教員の講義をただ聞いているだけでは面白くないと思うのです。コロナ禍を経て、学校で学ぶ意味を考えた時に、教科書に載っていることをそのまま学ぶのではなく、せっかく学校に来ているのですから周りの仲間と関わりながら授業を受けてほしいと思います。他者と意見を交わしながら解答を導き出していくなかで、さまざまな視点があることも知ってほしいと考えています」

ICTを活用して
生徒の主体性・協働性を促す

 この日の中2の幾何の授業では、協働学習・授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」を使って「相似比」をグループで学びました。

「ロイロノートは、生徒たちが主体的・協働的に学べるアプリ。今回は班ごとに考え方や解き方を共有できるように設定し、思考力を鍛えるトレーニングをしました」

 グループ学習に臨む生徒たちの真剣な表情が印象的です。

「教員が教壇から一方的に教える授業と比べても、学習の定着度はほぼ一緒だと感じています。それならば生徒主導で考える授業を、生徒たちが時間をうまく使えるように授業設計をして進め、一人ひとりの力を引き出したいですね」

 生徒たちには、数学が自分に直接関係あるという意識を持ってほしいと中村先生は語ります。

「例えば文化祭で模擬店を出す場合、商品の値段を数学的に考えられるようになればと思います。必要経費や原価計算、価格設定などを、感覚ではなく数学的に導き出すことができれば、数学が自分たちと密接につながっている学問だと気づくはず。そんな感覚も養える授業を展開していきたいですね」

こだわり その1
実社会とリンクさせて授業を展開

 生徒が数学の楽しさを見いだせるように、中村先生は実社会と結びつけて考える課題を用意しています。

「中2の『相似比』の授業では、『ピザ店とケーキ店のホームページを見て、販売されている商品のサイズと価格を調べて、どれが一番お得か?』を課題にしました。3社のピザチェーン店と3社のケーキチェーン店をチョイスして、グループごとに分かれて調べてもらいました」

 どの商品を選ぶかは生徒次第です。

「生徒たちに自らの視点で着目した商品を選択してほしいというねらいがありましたが、ふたを開けてみると、ピザ店の商品を調べたグループは、期間限定のピザを選んでみたり、オーソドックスなピザを選んでみたりとさまざまでした。ピザは平面的に考えて相似比を出せますが、ケーキは高さも価格に関係してきます。そこに気づけるかがポイントです」

 生徒たちは、実社会では教科書どおりにいかないことを肌で感じます。

「実際の商品価格の設定から相似比の計算をしてみると、数学の教科書のように答えがきれいな整数にはなりません。そのようなフワッとした部分も含めて仲間と共に考えてほしいと思いました。『この計算式ならば、正しい答えが求められるのではないか?』とグループで相談しながら、皆で楽しく学習に取り組んでいたように思います」

 日常生活でピザ店やケーキ店を訪れた際も、授業で考察した経験が役立ちます。

「世の中では数字を使って物事を表したり、意見を伝えたりする場面も往々にしてあります。そんな時、数学的能力や論理的思考を発揮することが必要です。今回の授業は、消費者として『どれが安いかな』と考える場合にも、販売店として『いくらで買ってもらおうかな』と考える場合にも有効です。実社会と数学を結びつける授業によって、数学の問題を単純作業のように解くのではなく、『世の中で使える実用的な知識なのだ』と理解してほしいですね」

教室のモニターやタブレットなども駆使し、クラス全員で論理的思考を養います。
ロイロノートの共有機能を使って班ごとに考察を深めていきます。
こだわり その2
グループ学習は毎回異なるメンバーで

 この日の授業の冒頭、中村先生が生徒たちに配ったのはトランプのカードです。

「生徒たちにランダムにカードを配って、スペードの1、ダイヤの1、ハートの1を持っている3人が組になるといった感じで、同じ数字の人同士でグループになってもらいます。基本的にグループは3人1組で、授業のたびにメンバーが替わるよう、トランプを配っています」

 グループワークは、多様な生徒が大勢集まっている学校でこそ、より活きる学習システムだと中村先生は語ります。

「勉強するうえで、1人で問題に向き合わなければいけない場面はもちろんあります。でも、せっかくみんなが学校に集まっているのですから、いろいろな仲間と関わりながら授業を受けて、さまざまな視点を持ち寄って考えてほしいと思うのです。また、教員の解説を十分に理解しきれなかった場合でも、友達に聞くことで理解が深まる生徒、教えることで理解を深める生徒もいます。教科学習に限らず、友達同士で確認し合える関係性を築くことも大事な要素として、グループワークを積極的に導入しています」

 授業の終わりに生徒たちは、ロイロノートに自分の理解度、班での貢献度、目標達成度、授業の感想を記入します。

「せっかくのグループワークなので、振り返りをしてもらいたいと考えています。なかには自己評価が低めの生徒もいますが、それも含めて経験してもらおうと、自己評価をする機会を作っています。さらに、どんなことを今回の課題で考察したのかなど、授業の感想も記入してもらっています。ピザ店とケーキ店の相似比を考える今回のグループワークでは、『何をしたらいいかわかりづらかった』という正直な感想もありましたが、それでもいいと私は思っています。とにかく考えることが大事で、班で協力していろいろと思考を巡らせるトレーニングができたらOK。数学は試行錯誤するうちに正答にたどり着く学問だからです」

自分たちの考えだけでなく、教室内を回る中村先生からもヒントをもらいます。
学び合うなかで思考の幅を広げることも、グループワークのねらいのひとつです。
進学通信 2025年8月号
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