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私立中高進学通信

2025年8月号

実践報告 私学の授業

佼成学園中学校

2024年度『高校生国際シンポジウム』で
4名が最優秀賞を受賞

中1から段階的にレベルアップ!
最適解を見いだす力を育む『探究プログラム』
2025年2月に行われた『第10回 高校生国際シンポジウム』に参加した高2(当時)の5名の生徒たち。

2025年2月に行われた『第10回 高校生国際シンポジウム』に参加した高2(当時)の5名の生徒たち。
グランプリ(文部科学大臣賞)こそ逃しましたが、複数の最優秀賞を受賞したのは同校のみです。

 生徒の成長に合わせた段階的なプログラムを設定し、探究力を育成している同校。探究スキルの基礎を実践によって積み上げ、ソフトウェア開発など高度な取り組みにまで昇華させています。

発達段階に応じて繰り返し養う
探究スキルと複眼的な視点
『第10回 高校生国際シンポジウム』で発表するH・Yさん(当時高2)。ソフト開発を行い、その必要性と効果を的確に発表し、部門最優秀賞を受賞しました。『第10回 高校生国際シンポジウム』で発表するH・Yさん(当時高2)。ソフト開発を行い、その必要性と効果を的確に発表し、部門最優秀賞を受賞しました。

 主体的に学び、友人と共に成長し、チャレンジできる力を養成している佼成学園。自らの手で学びを深める力、探究する力を養うため、中1から『探究プログラム』を実践しています。このプログラムの成果が大きく実を結び、全国の高校生が探究活動の成果を発表し、審査を受ける『第10回高校生国際シンポジウム』(2024年度開催)にて、同校の高校2年生4名が最優秀賞を受賞しました。このシンポジウムに初参加した2023年度にも、2名の生徒が最優秀賞を受賞しています。「課題研究の甲子園」と言われる全国レベルの大会で高い評価を受けるほどの探究力は、どのような教育によって培われたのでしょうか。

 同校の探究プログラムの大きな特長は、生徒の発達段階に応じて、中1では理系、中2では文系、中3では自由テーマによる個人探究と、3つのスタイルを順に体験できる点にあります。

 中1では、福島県での自然教室や奥多摩でのフィールドワークなど校外学習と連動し、自然科学(理系)分野を探究。自然観察から問いを立てて実験や分析を行います。

 中2では人文社会(文系)分野として社会課題を扱い、先行研究や文献を調べる手法を習得し、情報の読み解き方や考察力を養い、中3の個人探究では各自が自由にテーマを設定。スポーツ、芸術、ものづくりなど自らの関心を深く掘り下げ、主体的な学びの姿勢を育んでいきます。

「質」を重視する
高校での探究

 高校では探究の「質」に重点をおいた学びに移行。高1では、プロの映像制作者の指導のもと、社会課題をテーマにした5分間のドキュメンタリー映像の制作に挑戦します。インタビュー手法や著作権に関する知識など、実社会でも活かせるスキルを習得し、後半は本格的な個人研究に向けてテーマを明確に設定し、研究計画の作成など、じっくりと土台を固めていきます。

「準備段階をていねいに行わなければ、深みのある探究にはなりません。生成AIも活用しながら、良質な問いを立てる力を養っています」(探究学習推進部長/上野裕之先生)

 高2では本格的な個人研究へ。分野別のゼミに所属し、研究成果を論文にまとめます。この段階になると、教員の役割は生徒と対等に議論を交わす“伴走者”へとシフトします。

「研究テーマについて、教員よりも生徒のほうが詳しくなるため、教員は説明がわかりやすいか、論理構成は明快かといった点をチェックし、フィードバックする役割に回ります」

 また、卒業生による『探究チューター』制度も整備。探究経験の豊富な大学生の先輩たちがオンラインで後輩をサポートし、テーマの相談や発表の練習に付き合うなど、実践的な助言を届けています。

 こうして養われた探究力があるからこそ、外部コンテストで高い評価を得ているのです。正式なプログラムは高2で一区切りを迎えますが、探究の魅力に引き込まれた生徒たちは、自主的に研究を続け、自らの意志でさらに高みをめざして挑戦を重ねています。

生徒インタビュー
『第10回 高校生国際シンポジウム』で
最優秀賞を受賞した生徒に、研究について聞きました
職員室脇のミーティングスペースには、探究の進み具合を報告したり、課題点を議論し合う生徒と先生の姿が見られます。職員室脇のミーティングスペースには、探究の進み具合を報告したり、課題点を議論し合う生徒と先生の姿が見られます。

 人文社会学、自然科学、数学、ビジネスなど、幅広い分野の研究成果が全国の高校生によって発表され、専門家による講演やディスカッション、交流会なども開催される『高校生国際シンポジウム』(主催=一般社団法人Glocal Academy)。2025年2月に鹿児島で行われた第10回大会には、同校の校内選考を通過した高2生5名が参加。うち4名が各部門の金メダルに相当する「最優秀賞」を受賞しました。受賞した4名は、7月にシンガポールで開催される「Golcal Link Singapore 2025」の推薦参加資格を得ています。メンバーのうち、S・SさんとH・Yさんにお話を聞きました。

医療・医学ポスター発表部門 最優秀賞
感情を理解できるお悩み相談AIを開発

 病気やケガで入院中の中高生が相談できるAIサービス「ポラリス」を開発しました。共感的な返答をしてポジティブな気持ちになれるよう、感情を分析する臨床心理学の要素を加えています。もともとゲームの制作経験はありましたが、AIとの連携は初めてでした。大学病院の教授にこのサービスをプレゼンして、患者や看護師の方に使ってもらいフィードバックも得ています。

 私自身、入院経験が何度かあり、入院中に友人と話せない孤独感や、既存の生成AIでは返答が無機質な「言葉攻め」のように感じられたことから、「友達のように寄り添えるサービス」を作ろうと思いました。

 探究を通じて、自分の好きなことや思いを他者に伝えるスキル、人と積極的に関わっていく行動力が身についたと思います。プログラミングや心理学を学際的に学べる大学に進学したいと思っています。

S・Sさん

S・Sさん(高3)
「ハムスターはなぜ回し車で走り続けるのか」「体にやさしい除草剤を作ろう」「販売価格を決める要因は何か」など、
中学から多岐にわたるテーマを探究してきたS・Sさん。

数学・物理学・プログラミング スライド発表部門 最優秀賞
誰でも理解できるマルウェア被害予測ソフトの開発

 コンピューターウイルスのようにパソコン上で有害な動作をする「マルウェア」。中学時代に自分のパソコンがマルウェアに感染した際、何も対処できなかった経験があります。マルウェアの社会的認知度が低いことを知り、被害を予測するシステムを開発。予測データと実際の被害件数を照らし合わせて、システムの有効性も確認できました。

 高2の時点でこのテーマを思いついたのですが、なかなか独自性を見いだすことができませんでした。そこで、誰もやっていない被害予測に焦点を絞って探究を進めました。先生やチューターの先輩方と何度も発表の練習を重ね、スライドの修正にも多くの時間をかけたので、本番には緊張せず臨むことができました。

 将来は「セキュリティエンジニア」をめざし、大学で本格的なセキュリティ研究に取り組みたいと考えています。

H・Yさん(高3)

H・Yさん(高3)
「中1からスライド作成や発表を継続して行ってきたことが、高校生になってからの力になった」とHさん。

ココも注目!
探究の蓄積は世界への扉になる
上野裕之先生の写真です

 最優秀賞を受賞した4名に共通していたのは、教員からの厳しい指摘に対して、数日後には改善できる「アジャスト力」がずば抜けていたことです。また、学校外の専門家と積極的に連携し、アドバイスを求める姿勢も共通していました。こうした取り組みへの姿勢が高いレベルの研究につながり、受賞という結果に結びついたのだと思います。

 今後出場する国際大会では、国内で通用した内容がそのまま伝わるとは限りません。テーマの背景や社会問題が海外でどのように認識されているかを分析し、発表内容をさらに高めていく必要があります。その挑戦に大いに期待していますし、その姿が後輩たちの探究への良い刺激になることを願っています(探究学習推進部長・理科/上野裕之先生)

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