私立中高進学通信
2025年8月号
中学入試のポイント
東邦大学付属東邦中学校
教科・単元の偏りなく
努力する力を見る

同校の前期入試の方針は「努力が報われる入試」です。教科や単元の偏りなく全体的に出題されるため、いわゆる「本番での一発逆転」が起こりにくい入試となっています。
算数は実際に
手を動かす姿勢が大事
「自然」「生命」「人間」の尊重を建学の理念とする東邦大学付属東邦では、例年、定員の8割以上を募集する前期入試が、4教科各100点・各45分で実施されます。前期入試の特徴について、高校数学科の土田雄大先生に伺いました。
「4教科とも全ての分野をまんべんなく問う出題方針です。配点の偏りもありません。もちろん算数も同様で、比、数の性質、平面図形、立体図形など、もれなく出題します。さらに算数では、基礎にある程度の深さを足した難度の問題を、スピーディに解く力を求めています。大問の数を絞って考え抜かせる学校もありますが、本校では毎年、6~7の大問を設けて解答の速さを測ります。深さという点では、基礎に要素を1つ加えることを意識しています。例えば昨年の大問2、(3)のように多くの受験生が得意とする『時間・距離・速さ』の問題であれば、そこに『ガソリンの燃費』といった要素を入れると歯応えが出てきますね」
今回紹介する大問4は、比と立体図形の2つが組み合わさった問題で、なるべく多くの分野から出題するという同校の方針を象徴するものです。中学数学科の田中丈博先生は、次のように補足します。
「努力する力を見ることを強く意識しています。この大問4には設定が3段階あって、段階に応じてグラフの動きが変化します。一見すると面倒に見える問題文ですが、ていねいに読み解けば計算自体は簡単なんです。中学受験特有のテクニカルなスキルではなく、粘り強さが必要になるでしょう。また、平面図形の角度や面積を求める問題では、『普段から2種類の三角定規を組み合わせて遊ぶような子なら解けるだろうな』などと想定して出題することも。手を動かす努力を惜しまないことも重要です」
「大問3から6にかけては、全ての大問で小問1に正解し、そのうえでどれか1つの大問を完答するぐらいが合格ラインです。算数が苦手な受験生でも諦めずに努力すれば、何とか到達できるレベル設定です」(土田先生)
国語は記述問題なし
書く力は入学後に養成
国語については、高校国語科主任の大塚敏久先生に伺いました。
「漢字の書き取りはただ書ければよいというものではなく、意味を理解して語彙として使える状態になっているかを重視します。それもあって漢字のみで大問をひとつ設けず、論説文や文学的文章の中で問う形式に。今回挙げた問題の傍線部『セイなるもの』の正解は『聖なるもの』ですが、ここを正しく『聖』と判断できるかどうかが文章全体を読み解くカギになっています。『聖』という漢字自体は難しくありませんが、意味を正確に理解していないと、書き取りの正答までたどりつけません。例年、そうした部分をねらって設問しています」
長文読解の問題については、気になる傾向があるそうです。
「部分的な読解は中学受験のテクニックで正解できるのに、文章全体の理解については不十分な受験生が増えています。そこで本校では読解の最後の小問で、文章の大意を聞く問題を必ず設けています」(大塚先生)
中学国語科の寺﨑信之先生も次のように続けます。
「ただ単に『点を取ろう』『合格しよう』ではなく、『せっかく出会った文章なのだから、全体の意味をつかんでみよう』という姿勢がほしいところ。国語でも、そんな努力を惜しまない勤勉さが求められます。本校の読解問題の本文は、他校より短めなところが特徴ですが、以上のような意味もあってのことです」
国語の特徴として、記述問題がないことも挙げられます。
「記述問題は採点基準の設定が困難で、入試の公平性を担保するのが難しいため、本校では、記述力は入学後に鍛えればよいというスタンスをとっています。もちろん、大学入試やそれ以降の学びにおいて書く力は大切ですし、本校には医学部志望者も多く小論文の対策などは欠かせません。ですから、高1で文章の要約、高2以降で自分の意見を文章にまとめる時間などを十分に設けています」(大塚先生)
(この記事は『私立中高進学通信2025年8月号』に掲載しました。)
東邦大学付属東邦中学校
〒275-8511 千葉県習志野市泉町2-1-37
TEL:047-472-8191
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 2024年度『高校生国際シンポジウム』で4名が最優秀賞を受賞佼成学園中学校
- PBL×個人研究でめざす“自走する学び”サレジアン国際学園中学校
- 探究テーマの宝庫で学ぶ体験『アイスランド探究ツアー』芝浦工業大学柏中学校
- 理工系の知識で社会課題を解決 唯一無二の『SHIBAURA探究』芝浦工業大学附属中学校
- 独自の美術教育と『デザイン思考』で育む創造力女子美術大学付属中学校
- 多角的・複眼的な視点を養う分野の垣根を越えた『教科横断型授業』田園調布学園中等部
- 自立的・主体的な学習者を育成 プロジェクト型探究『T‐Project』桐朋女子中学校
- 東洋大学と連携した理数探究『未来の科学者育成プロジェクト』東洋大学京北中学校
- 未来を見据えた探究力を育成する『自問自答プログラム』二松学舎大学附属柏中学校
- 社会で活躍できるスキルを育てる『R-PROGRAM』立正大学付属立正中学校
- 真の数学好きが教える授業「数学は模索するのが楽しい」狭山ヶ丘高等学校付属中学校
- 自然現象を数式化して未来予想ができる面白さ高輪中学校
- 生成AIとプログラミングで世界に自分たちの仕事を創る瀧野川女子学園中学校
- あなたの「考え」が社会を変える!「多角的思考」と「社会形成力」を育む玉川学園中学部
- 大学レベルの研究に取り組み新しい価値の創造をめざす千代田中学校
- 数学史を絡めた導入タイムで生徒たちの好奇心を刺激獨協中学校
- 生徒各自がテーマを決める100人100通りの学びがある授業ドルトン東京学園中等部
- ロイロノートで協働学習 実社会と数学を結びつける安田学園中学校
- 実験で得た喜びや驚きから探究心を育て自立した探究者を育成する国学院大学久我山中学校
- 生徒の自主学習をサポートするセルフラーニングセンターが始動かえつ有明中学校
- 日本の教育・社会にイノベーションを!学校併設の教育研究機関『BSICE』を設立文化学園大学杉並中学校
- 姉妹で同じ学校に通うことで得られる安心感上野学園中学校
- 読書で得た力を活かし企画に挑戦!生徒主体の『読書プロモーター』が始動大宮開成中学校
- オープンキャンパスに来て入学を決めました関東学院中学校
- 学びも暮らしも自分を育てる時間に新校舎で深まる学び、寮生活で育つ力秀明中学校
- 開放感ある校舎で、勉強にも部活動にも邁進日本大学第二中学校
- やるべきことを明確に伝え家庭学習の習慣化を促進江戸川女子中学校
- 小さな成功体験や達成感を学習意欲につなげてやる気と学力をアップ!神田女学園中学校
- 文武両道を支える手厚い学習支援共栄学園中学校
- 挨拶と思いやりを大切に豊山生らしい空気が育っていく日本大学豊山中学校
- 農業体験と仏教修行が育む感謝の念と寛容のまなざし駒込中学校
- 「一日一日、かけがえのない」学校生活をめざして共立女子第二中学校
- 生徒の良き伴走者として生徒が主役の学校づくりに邁進光英VERITAS中学校
- 中高3000人という学び舎で一人ひとりの可能性を紡いでいく埼玉栄中学校
- 一人ひとりの夢を叶えるため学力向上と“心の教育”を全力でサポートします淑徳中学校
- 理科の学びを通じて生徒の感性と価値観を磨きたい開智日本橋学園中学校
- 生徒が率先して学ぶオープンな授業を実践文京学院大学女子中学校
- 教科・単元の偏りなく努力する力を見る東邦大学付属東邦中学校
- 思考力・読解力が活かせると話題の「理数探究入試」山脇学園中学校
- 基礎基本・AI活用・探究を突破口に「年内入試に強い学校」へと進化秀明大学学校教師学部附属秀明八千代中学校


