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私立中高進学通信

2025年8月号

私学の先生だから数学・理科・情報が面白い!

狭山ヶ丘高等学校付属中学校

真の数学好きが教える授業
「数学は模索するのが楽しい」

高1・Ⅱ類コースの数学の授業。自然豊かな埼玉県入間市にある同校は、ゆったりと伸びやかな雰囲気。

生徒に寄り添うため
講師から教員へ
数学科 下野哲史 先生数学科 下野哲史 先生
教員生活28年目。数学という教科への愛情は誰にも負けない。

「事にあたって意義を感ぜよ」という校訓のもと、勉学だけではなく学校生活などさまざまなことに意義を見いだせる、主体的な生徒を育んでいる狭山ケ丘高等学校付属。数学科の下野哲史先生は、生徒から信頼を寄せられている教員の一人です。

「教員になる前に、予備校の講師として働いていたこともあります。でもある時、講義を行うだけでは生徒に大切なものを教えられないと気づいたんです。生徒一人ひとりを理解したうえで寄り添っていかないと、良い授業は成立しないと感じ、学校の教員になろうと決めました」

 そんな下野先生が数学を好きになったのは、小2の算数の授業がきっかけでした。

「私はここ入間市の出身で、野山を駆け巡る少年時代を過ごしました。あまり勉強した記憶はないのですが、小2の時に受けた計算100問テストで98点を取ってクラスで一番になったんです。そこで担任の先生にとても褒めてもらい、おだてられて木に登ってしまいました。その後も先生に『面白い問題があるから考えてごらん』と言われるたびに夢中で解き続け、気づいたら数学が好きになっていました」

暗闇から明るい部屋へ
数学には爽快感がある

 数学の面白さについて下野先生は、「フェルマーの最終定理」を証明したイギリスの数学者、アンドリュー・ワイルズの言葉が的を射ていると語ります。

「彼は、『数学の勉強とは、真っ暗な部屋に入っていき、部屋の様子を手探りで調べるようなもの』と、例え話で表現しています。暗い部屋の中では家具に足をぶつけるなどして非常に痛い思いもしますが、そのうち目が慣れてきて電灯のスイッチが見えてくる。そして電灯をつけると部屋の全ての様子がわかる。そこで得られる“こうだったのか!”という爽快感こそ、数学の楽しさだと言っていて、まさに至言だと思います。ただワイルズは『電気をつけると、また先に真っ暗な部屋を見つけて、私はその部屋に入ってしまう』とも言っていて、『自分もそうだ』と笑ってしまいました。生徒たちにも明るい部屋へたどり着いた瞬間の爽快感を味わってほしいですね」

 数学の魅力を生徒に伝えるため、下野先生は今日も教壇に立ちます。

こだわり その1
“へえー!”と思う気持ちを大切に

 生徒たちに数学への興味をもってもらうために、下野先生が心がけていることを聞きました。

「勉強するうえで大切なのは“へえー!”と思う気持ち。数学は特にそうですが、『これがいったい何の役に立つの?』と思ったら、おそらく頭に入りません。まずは興味をもつことが大事なので、そのためにいろいろな工夫をしています。数学ではxyzなどの文字を頻繁に使いますが、例えば『重複・組み合わせ』の単元でx+y+z=5という式について考える際に、xをりんご、yを梨、zを柿、というように、フルーツに当てはめてみました。すると『全部で5個になるフルーツの組み合わせは、どういったパターンがあるのだろう?』とイメージができて、『りんご2個、梨2個、柿1個』などと具体的に考えられるようになり、そこから問題の理解につながっていくわけです。そこまでわかれば授業も楽しくなります。そんな生徒の“わかった!”を引き出すために、グループ学習やICTなど、効果があると思うものは何でも利用しています。ICTについては、私はプログラミングが得意なので、立体図形などの単元ではプログラムを自作して授業に用いることもあります」

 そんな下野先生の体験授業を学校説明会で受け、同校への入学を決めた生徒もいます。

「昨年の学校説明会で『先生の誕生日は1月6日です。でも半年後も先生の誕生日を覚えていられないでしょう? それは先生に興味がないから仕方ない(笑)。ところが、好きなアイドルの誕生日ならすぐ覚えられるし、忘れないよね? それは、アイドルに興味があるからだよね。まず大事なのは興味をもって素直な気持ちで“へえー!”って思うことなんだよ』という話をしたところ、今年入学した生徒が『先生の誕生日を覚えてるよ。先生に習いたくてこの学校に入学したから』と報告に来てくれたんです。とてもうれしかったですね」

練習問題に取り組む時間は、わからなければ周りの仲間に相談するグループ学習も採用。
下野先生の授業を受けながら、きちんとノートをとる生徒。
こだわり その2
“間違い”から始まる正答への道

 数学の授業では、大学受験突破を視野に入れつつ、現在、直面している課題を正しく分析して、これまでの経験を踏まえて前に進んでいく力を生徒たちに身につけてほしいと下野先生は語ります。

「特に高校では難問も多くなるので、解答にたどり着くまでに間違えることも多々あるわけです。でも、どうして間違えたのか、どこで間違えたのかという過程をしっかり解析すれば、正答を導き出すことができる。そうしたプロセスを人生にも活かしてほしいと考えています。
 あまり大きな声では言えないのですが、全教科の中で数学が一番苦手でもいいと思うんです。でも、私の雑談を楽しく感じて、数学を面白いと思ってくれる生徒もいるんですね。そんな生徒が一人でも増えてくれたら教師冥利に尽きるなと思っています。せっかく仲間と学び舎に集っているわけですから、生徒たちにはいろいろな経験をしてもらって、全てを吸収してほしいですね」

 毎日のように生徒に伝えているのは“間違えていい”ということ。

「間違えたら恥ずかしさを感じるのは人として当然ですが、間違えないとわからないことは多いと思うんです。私自身も人生を振り返ってみると、失敗から学んだことばかりだなと感じています。一方で、 “失敗して終わり”ではいけません。数学が苦手な生徒も、なぜ正答に至らなかったのか、きちんと向き合って考えることを習慣化してくれたら、それで十分だと思っています。数学に限らず、学問とは生き方を学ぶためのものだと捉えています」

 そんな下野先生を尊敬する生徒たちは、数学の居残り学習にも自主的に取り組んでいます。

「題して、“帰れま10(テン)”。月に1回程度行う計算問題(10題)の居残り特訓で、全問正解するまで帰れないという、ゲーム感覚で取り組む学習です。基礎計算力を身につけたいと望む生徒たちが、こぞって参加してくれています」

「重複・組み合わせ」の単元の学習で、xyzをフルーツに置き換えたことで生徒たちの理解が進み、先生にも笑みがこぼれます。
「授業中はいっぱい間違えても大丈夫。わからなかったら先生に聞いてね」と声をかけながら、練習問題に取り組む生徒たちの様子を観察します。

(この記事は『私立中高進学通信2025年8月号』に掲載しました。)

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